Otakuワールドへようこそ![158]大失言:ヴィジュアル系をホスト呼ばわり
── GrowHair ──

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いやぁ、おっちょこちょいにもほどがある。とんでもなく失礼なことを口走っていた。しかも、その場では大失言にまったく気づいてなく、絶句して固まる相手を気にも留めず立ち去り、そのまますっかり忘れてた。

後になって、言われた側からブログでネタにされているのを発見して、そう言えばそんなこと言ったよぉ、と思い出し、激しく赤面。すみませんすみませんすみません。ご本人およびファンの方々、笑って許してくれる優しい人たちでよかったぁ。

夏休みをはさんでしまいましたが、フランスの話をもう少々続けます。

●ヴィジュアル系をつかまえてホスト呼ばわり

7月4日(水)から4日間、パリ郊外で開催されたジャパン・エキスポを見に行った私は、セーラー服姿が面白がられて、すごくたくさんの人たちから写真を撮られまくったことは、前回書いたとおりである。

多くはフランス人であったが、めずらしく日本人の若い男性のグループから撮らせてくださいと声がかかった。なんかめっちゃかっこいい。身につけてるアイテムからだけでなく、体全体から「かっこいいオーラ」が出まくっている。代わる代わる私の隣りに立ったりして、ノリノリで何枚か撮ってくれた。

「いやぁ、なんかかっこいいですね!」と言ったまではよかったのだけど、その後の一言はまったく余計だった。「ホストみたい♪」。けど、言ったことすらすっかり忘れていた。日本に帰ってきてだいぶ経った7月30日(月)に、ご本人様のブログにそのときの模様が書かれていた。写真入りで。

なんと、ヴィジュアル系のバンドではないか。DaizyStripper。会場に設けられたライブハウスで公演するために行ってたんだね。オリコンインディーズチャート1位を何回も獲得している、勢いあるバンドだ。うわっ、有名人だったのかっ。ブログには、「このおじさんに、君たちはかっこいいねぇ! ホストみたいだ♪ って言われたよ」とあり、「ホ、ホストじゃねぇやい!」と、心のつぶやきが。ひょえ〜、俺としたことが、ヴィジュアル系のバンドつかまえてホスト呼ばわりしてたのか。すすすすみません〜〜〜。
< http://ameblo.jp/yuugiri-daizy/entry-11315378564.html
>




ツイッターにアカウントをお持ちで、ファンの人たちとツイートしあって盛り上がってたので、私もお詫びコメントをツイート。そしたら、ご本人にちゃんと届いていた。「まさかのご本人!」と今度はあちらが驚いていた。それでお互いに「よろしく〜」みたいな感じで、ごあいさつを交し合う。

ファンの方々は、ご本尊をホスト呼ばわりしたことにさぞかしお怒りではないかと恐れていたのだが、私宛てにツイートしてくれる人がいて、「楽しく読みました」などと、優しい。このバンドについても「ファン思いのすばらしいバンドです」等々と紹介してくれて、なんだか温かい空気。いいバンドなんだなぁ、という感じがよーく伝わってきた。ヴィジュアル系と意外とご縁がよくある私なので、またどっかで巡り会えるといいなぁ。

●イタリア人にパリを案内してもらう

イタリアはBrescia(ブレーシア)に在住のBarbaraさんも、ジャパン・エキスポに行くとあらかじめ聞いていた。Barbara さんは、去年の4月に開かれた日伊文化交流イベント "Il Giappone nel Chiostro" での展示でひとかたならずお世話になった人である。私が日本からの出展者5人をとりまとめる役で、Barbaraさんがイタリア側の窓口になってくれていたので、準備の間、Barbaraさんと私との間で100通以上のメールがやりとりされた。

また、3人が現地に行った際にも、展示のみならず、その後の観光など、あらゆることでお世話になっている。あらかじめ城主と交渉してくれて個人所有のお城に連れていってもらったり、ヴェネツィアを案内してもらったり。非常に献身的で、勤勉で、仕事が迅速で、あらゆることに細やかに神経が行き届いて完全主義で、よく人から「イタリア人とは思えない」と言われるそうである。

Barbaraさんとはそのとき以来会っていなかったので、1年3ヶ月ぶりである。土曜は、朝、私の宿泊しているバスチーユ近くのIBISホテルまで迎えに来てくれて、一緒にジャパン・エキスポを見て回った。日曜は、会場へは行かず、パリを案内してもらった。イタリア人にフランスを案内してもらうというのも変な感じだが、グラフィックデザイナーであるBarbaraさんは、しょっちゅうパリに来る用事があるのだそうで、勝手をよく知っている。

コンコルド広場で待ち合わせ、ルーブル美術館へ。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」って、なんとなくミラノにあるような気がしてたけど、ミラノにあるのは「最後の晩餐」だった。しかもイタリアでは「モナ・リザ」のことを「ジョコンダ」と呼ぶので、最初、ぜんぜん話が通じてなかった。「ジョコンダの微笑み」って、いったいどこのおばさんだよ? って感じで、まるでニュアンス違うと思いません?

ルーブル美術館は、かつてはルーブル宮殿だった由緒ある建造物であり、おっさんがセーラー服を着て行って、入れてくれるものかどうか、やや心配ではあったが、実際には何の問題もなかった。世界中から見に来る人々で大賑わいなのは、いつものことだそうである。入るまでに、日差しの強い屋外で、長い列に並んだ。7月上旬は、日本にとってはまだ観光シーズン前なので、日本人の姿はあまり多くなかった。

アジア系の人はけっこう多く見かけるのだが、その中で、日本人って、なんとなく分かっちゃうね。どこがどうってわけじゃないんだけど、背筋がぴんと伸びてないというか、堂々としてないというか。フランスのひとつやふたつでビビることないのに〜。

モナ・リザのいる3階(だっけ?)に向かう階段を上っていると、お年を召した方々30人ばかりのご一行が降りてくるのとすれ違う。あ、たぶん日本人。と思っていると、「すごい格好していらっしゃいますね」と聞こえてきた。やっぱ日本人。やべ。

なんか、展示されてる絵よりも私のほうが人々の関心を引いてたかも。モナ・リザにゃ負けるけど。すごい人だかりだった。意外と小さい。近くから見ようと思ったら、人だかりの後ろについて、前のほうが刷けるのを待つしかなく、30分はかかりそうだ。面倒なので、人垣を見たことをもって、モナ・リザを見たことにしよう。まったくうらやましい人気ぶりだ。

その異常なまでの人気ぶりゆえ、ジョコンダが嫌いなイタリア人は多いらしい。名画なのは分かるけど、他にもいい絵はたくさんある中で、なんであれだけがそんなに特別なんだよ? って感じで。3年ほど前にロシア人女性がティーカップをジョコンダに投げつけるという事件があり、イタリア人たちは「それはやりすぎだけど、ジョコンダが嫌いという気持ちは理解できる」と言い合ったそうである。実際は、ビザが下りなかったことへの、腹いせか何かだったようだけど。

とてつもなく広く、2時間ほどでささっと回った範囲が全体の何分の1程度なのか、見当もつかない。いつもはルーブルにいるゴヤの「青い服の子供」は五反田に来てるけど、展示物が 1個ぐらいなくなってても、誰も気がつきゃしない感じ。

建物内に喫茶店「Salon de The(サロン・ド・テ)」がある。銀座にも支店のある高級店で、なかなか上流階級趣味っぽい優雅な空気の店だが、セーラー服を着たおっさんでも問題なく入ることができた。

ルーブルの後は、付近を散策。セーヌ川べりの美しい景観を汚す、セーラー服のおっさん。Barbaraさんに写真を撮ってもらったり。市街地に戻り、ブランド店のひしめく一角を歩く。日曜なので、店はほとんど閉まってたけど。私は出張で二度ほどパリを通過しているけど、まともに観光したことがなかったので、やっと普通に観光することができた感じ。姿が普通じゃないか。

Barbara さんは、11月のデザフェスに写真の出展で参加を予定している。またお会いできるのを非常に楽しみにしている。

Barbara さんに撮ってもらった写真:
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/ParisByBarbara120708
>

●イタリア人とフランスでばったり遭遇

フランスで会ったイタリア人の知り合いがもう一人いる。Biancaさん。Biancaさんはイタリアの真ん中らへんの東海岸Porto San Giorgio(ポルト・サン・ジョルジョ)に住んでいる。お兄さんと二人でゲームのお店を営んでいる。毎年、夏コミの時期に日本に来る。

去年の4月のBresciaのイベントのときは、夜行列車で来てくれた。去年の夏コミにも来ていたので、会うのはそのとき以来になる。女性にしてはやや大柄なほうで、すらっとスタイルがいいので、和装系の男装をするとめちゃめちゃかっこいい。

負けん気が強いというか、すぐ対抗意識を燃やすというか、去年、私がセーラー服姿で中野や池袋をご案内したら、「来年は男子用の学生服を用意してくるからね」と。冗談かと思ってたら、本気だった。

お互いにジャパン・エキスポに来るとは知らせていなかったので、会場でばったり会って、びっくり。「来るなら言ってくれよー」とお互いに。Biancaさんは、私が来ると知ってたら男子用学生服持ってきたのにー、と残念がっていた。

Biancaさんが日本に来たときは、いつもカラオケに行く。日本のアニソンが歌えちゃうのである。"AnimeLyrics.com" というサイトがあり、アニソンの歌詞をローマ字で載せている。ここからどっさりプリントアウトして、肌身離さず持ち歩いているのである。

アニソンカラオケといえば、ジャパン・エキスポではブラザー工業株式会社のブースが面白かった。ブラザーは、オタク文化方面との関わりあいに非常に積極的な会社というイメージがある。コスプレ衣装制作にミシンを使うから、というつながりからであろう。ブラザーは、毎年名古屋で開催される世界コスプレサミットに協賛している。本社が名古屋にあるというつながりもある。ジャパン・エキスポは、世界コスプレサミットのフランス代表を決定するための地区予選の場にもなっている。

そのジャパン・エキスポでブラザーが構えたブースでは、アニソンカラオケを展示していた。画面に表示される歌詞がローマ字なのである。来場者が自由に曲を選んで、歌えるようになっている。これに列ができていて、途切れることなく誰かが歌っている。みんなけっこう上手い。アニソンが日本語で歌えることを自慢できる人がこんなにたくさんいるとは、びっくりである。それをちゃんと分かって、ローマ字カラオケを提供するブラザーも、なかなかやるな。

Bianca さんとはしばらく立ち話して、写真を撮らせてもらったりもした。
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Paris120707#5762644913590686674
>

それから約1か月後、8月には日本でまた会った。例によってコミケに時期を合わせてやって来たので。

●イタリア人たちとのカラオケ、大いに盛り上がる

いつもは何人かのイタリア人と一緒に来るのだが、去年は震災やら経済低迷やら円高やらあって、Biancaさん一人だった。友達から、あれ買ってきて、これ買ってきてと頼まれまくっていて、滞在中は、人のための買い物で大忙しだった。しかもみんな好みがうるさくて、要望を満たすものを探すのが大変そうだった。

今年は、Barbaraさん、Charaさんと一緒だった。前述のBresciaのBarbaraさんとは別のBarbaraさんである。イタリア人は、聖人から名前をもらってつけることが多いので、よくカブる。こっちのBarbaraさんとは一昨年にも会っていて、一緒にカラオケに行っている。さて、今年はまず手始めに、8月9日(木)に、中野にある「アニソンカラオケバーZ」へ。6月にオープンしたばかりのお店だ。
< http://ameblo.jp/anisonbar-z/
>

基本的にアニソン縛り。店にはコスプレした女の子たちがいて、ステージに立って歌うお客さんを、盛り上げてくれる。私はうっかり女性にしか声をかけなかったもんだから、イタリア人3人、日本人2人の女性ばかりを引き連れて、女の子のいるお店に行く、という事態になってしまい、なんかハーレム状態みたくなって、たいへん困った。

イタリア人3人とも、かなり上手に歌える。特にBarbaraさんは、画面に表示される日本語の歌詞を追って歌えちゃうレベル。すごい! Barbaraさんは、コミケの翌日、8月13日(月)には四国に向かうという。道後温泉へ。「千と千尋の神隠し」の湯屋が、道後温泉をモデルに描かれていると言われていて、見てみたいから、というのが主な理由。

道後温泉は夏目漱石の『坊ちゃん』の舞台でもあることを言うと、それも読んだという。日本の小説は、英語を経ないで直接イタリア語に翻訳されたものがかなりあって、吉本ばななや村上春樹が人気だそうである。

8月13日(月)には、Biancaさん、Charaさんと私の仲間の寄せ集めでまたカラオケ大会。今度は池袋のパセラで。なんと、総勢11人になった。このとき、去年Biancaさんが言ったことが実現した。Biancaさんは、応援団が着るような裾を長くした黒の学ラン。私は例によってセーラー服。

さて、このカラオケ大会に参加してくれた人たちの中に、コスプレイヤーのひよ子さんがいる。かつては蝶子さんと名乗っていた。日本のトップクラスのコスプレイヤーで、いわゆる「神レイヤー」のレベルである。2006年の世界コスプレサミットでは、日本代表として名古屋のチャンピオンシップ大会に出場し、日本に世界第2位の座をもたらしている。
< http://www.tv-aichi.co.jp/wcs/2006/j/cosnews.html
>

そのひよ子さんが、私のために、ロリ浴衣を作ってくれた。白地にピンクの牡丹の花の柄で、丈は膝まで、ひらっひらのフリルがついている。帯は桜の柄の入った赤。しかも、お尻のあたりをパニエでプワッと膨らませてある。小さな女の子が着るような、ロリロリっとしてかわいらしい浴衣である。さらに、ゴスロリ風に黒のリボンが左右に数本ずつ垂れた、猫耳カチューシャ。

ひよ子さんの発案により、私はBiancaさんに甚平を用意して行った。カラオケ大会の途中で、まさかのお色直し。学ランとセーラー服から、甚平とロリ浴衣へ。違和感があまりない。こうして間違った日本文化がイタリアに伝達されていくのであった。

集まったみんなは、どういうわけか、びっくりするほど歌が上手くて、大いに盛り上がった。対抗意識の強いBiancaさんのことだから、来年はすご〜く上達してくるんじゃないかという気がしてならない。

●うにゃっ、鎌倉

翌日、8月14日(火)は、Biancaさん、Charaさんと私の仲間2人の総勢5人で鎌倉へ。日本人の仲間は、愛様(「様」も含めて名前、みたいな感じ)と佐々木さん。愛様は、行きつけのメイドバーでかつてメイドさんをしていた。丸顔にストレートの長い黒髪が美しい。佐々木さんは男性で、そのお店の常連だった人。Biancaさんは大仏を見たことがすでにあるそうだが、Charaさんが見たことないというので、まず長谷へ。

私はひよ子さんに作ってもらったロリ浴衣で。Biancaさんには甚平を持って行ってもらった。大仏、長谷寺と回って、江ノ電で鎌倉に戻り、鶴岡八幡宮へ。あれ? イチョウの木が、幹の途中から上がすっぱりとなくなってる。倒れたんだっけ?

ここでBiancaさんに甚平に着替えてもらい、一緒に写真を撮った。私の姿、どう見ても化け猫だ。
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Kamakura120814
>

帰りに、横浜のアニメイトに寄る。横浜駅で電車を降りると、同じ電車に乗り合わせていたヒゲのオニイサンが降りてきて、「ジャパン・エキスポのときのテレビ、見ましたよ」と。あ、それ関西限定で放送されたもんだから、私は見てないんですよー。オニイサンはそれだけ告げると、また同じ電車に乗っていった。なんだか有名人になったみたいな気分にさせてくれて、やー、どうもありがとう。

ひよ子さんに作ってもらったロリ浴衣はすっかり気に入っていて、私が夏休みの間、月火水木金土日と着て歩いていた。木曜は茨城へ、金曜は山梨へ、土曜は埼玉へ。人々の反応は、セーラー服のときとは微妙に違って面白い。

牛久駅近くのマクドナルドでは、中高生から大いに笑われ、帰り際には、女子高生から写真撮らせてください、とのリクエストがあった。普通の格好のときにはありえないこと。悪いことはひとつも起きず、いいことしか起きないので、プラスのモチベーションしか働かない。女装散歩、世の男性のみなさんにもオススメなんだけどなぁ。モテますぞ。

振り返って、なんか、ものすごく活性化レベルの高い夏休みをすごしたなぁ、という印象。月曜日、久々に普通の格好で会社へ。なんだか他人の服を借りて着てるみたいな違和感。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
ロリ浴衣化け猫カメコ。アイデンティティ拡散。

去年の夏から、夜中過ぎになると友達の守宮君が遊びにきて、ベランダに出る窓の外側にへばりついている。夏の間、ほぼ毎日。ちなみにイモリ(井守)とヤモリ(守宮)は別物。イモリが両生類で、ヤモリが爬虫類で、タモリが哺乳類(たぶん)。色は、イモリが背が黒褐色で腹が赤、ヤモリが背も腹もベージュっぽい。手足の指の数は、イモリが前肢に4本、後肢に5本、ヤモリが前後とも5本。

ウチに来るのは間違いなくヤモリ。窓の外にへばりつき、ガラス越しに、白っぽい腹が見える。ある朝、窓を開けると、待ち構えていたのか、守宮君は部屋に入ってきた。しかも、私の足の上をさっと歩いていった。ひゃっ、冷たい〜。物陰に隠れ、尻尾が出てて、ぴょろっ、ぴょろっと左右に振っている。あれをつかまえようとすると切って逃げるという寸法だな。

ものをどけると、ささーっと走っていって、別の物陰へ。どんどん奥へ入っていっちゃってキリがないので、放置。仕事に出かけなきゃならない時間。窓を開けっぱなしにして、そのまま出かける。帰ってきたら、いなくなってる。まだその辺に潜んでいるんじゃないかと気が気じゃない。夜中過ぎたら、いつものように、窓の外にへばりつきに来た。ガラス越しに腹をこちょこちょしても逃げないので、間違いなくいつものやつだ。

爬虫類は、われわれと姿が似てないし、体温低いし、なので、哺乳類のペットなどと比べると、感情がなさそうというイメージがあるけど、実はそのイメージに反して意外と面白いやつなんじゃないかと思えてきた。感情がちゃんとあって、知能もけっこう高くて、状況をちゃんと分かってるんじゃないかと。ぜーったい俺のこと友達だと思ってるね。