[3333] ドローイングと紙のコスト

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《もうひょっとしてマックもいらんのちゃうの》

■武&山根の展覧会レビュー 特別編
 ヤマネのお悩み相談
 武 盾一郎&山根康弘

■グラフィック薄氷大魔王[316]
 ドローイングと紙のコスト
 吉井 宏




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■武&山根の展覧会レビュー 特別編
ヤマネのお悩み相談

武 盾一郎&山根康弘
< https://bn.dgcr.com/archives/20120919140200.html
>
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山:こんちはー。

武:......

山:おーい。

武:......

山:おーい!


武:おお、ごめんごめん。

山:やっと反応が。

武:アトリエ < http://www.facebook.com/open.atelier
> にいたけど、PHS鳴らなかったw


山:なんで鳴らへんねん。もうiPhoneにしたらいいやん、5に。

武:auのはデザリングできるらしいからな、そうすると無線出来るマックに買い替えないと。

山:もうひょっとしてマックもいらんのちゃうの。


武:イラストレーターとフォトショップとフラッシュはいまだに使うんすよ、ネット用やデザイン化とかに。パソコンで作品を作るわけじゃないからスペックはそんな高くなくていいんだけど、そろそろ環境の換え時だとは思っております。したっけNTT解約できるもんな。そして自家発電して東京電力解約が出来れば夢が叶う!w


山:そっか......って、まあ最初からわかってたことやけど、全然デジタルクリエイターじゃないな。僕はさらに絵描きでも何でもなくなってきたが。

武:そして今回は、展覧会も観に行けないじゃないすか。

山:そうなんすよ。困った。


武:どうするかチャット? 前のインタビューの続きにしましょうか?
< https://bn.dgcr.com/archives/20120704140200.html
>

山:今日はぜんぜんインタビューする気にならんな、、じゃあ、なんでもいいからとりあえず作品のこと話してみてよ。


武:あ、そうだ! インタビューじゃなくて、俺の相談に山根が答える悩み相談室てのはどう?

山:なんやねんそれはw いつも相談にのってるようなもんやないか!


武:『ヤマネの、やらなあかーん! あかーん、あーん、、、(←エコー)』
<
>

山:完全にオールナイトニッポンやないかw


武:ディレクター「はい、5秒前! 4、3、、、」

山:えっ! は、はい、いやー始まりましたけど、もうねえ、9月ですよ! まだまだ暑いよねー。ほんま、はよ秋なれ! って感じですけどね。では早速お葉書いってみましょう。なんやねんこれw

武:タイトルコール「ヤマネのお悩み相談〜、パッパパ〜ン!」


   ┌売れてないアーティストなんですけど、
●──│経済自立するには
   └どうしたらいいですか?


山:「ヤマネ! 毎晩ラジオを聞きながら仕事をしています。キャリアはもう20年近くなるんですがちっとも売れてないアーティストです。今月から電気の契約も10Aにしました。これから売れてちゃんと経済自立し、結婚して子どもも欲しいのですが、そうするにはどうしたらよいでしょうか?44歳、男」

ほほう、いきなりきましたね〜。たいへんやねー、ちっとも売れないアーティスト! ってどういう意味なんやろ?

アーティストってミュージシャンってことなのかな? でもちょっとは売れたりするんじゃないのー?

だってやね、20年続けるってすごいよ。だいたい20年生きてる訳やろ?! 電気代節約してさ。で、まだやっぱり売れたいわけか。すげー!


武:ディレクター「ヤマネ、電話繋がりました〜」


山:え? 何? 電話繋がってんの?? えーと、もしもーし!こんばんは!


武:あ、もしもし、、あ、ヤマネですか?


山:そーですよ! いつも聞いてくれてありがとね〜。で、何何? 結局何やってんの? ミュージシャン?


武:えっと、武盾一郎っていう名前で絵を描いています。


山:武さん! 初めまして! いやー、あんた絵描いてるんや。しかし、20年やるってすごいよな。売れた時とかあるんでしょ? ないの?


武:えっと、デビューで突然、注目を浴びたことはあったんです。ちょっとだけですけど。


山:え、すごいやん!


武:売れはしなかったんです。その頃は藝術家は商売ではないと純粋に思ってたので、お金にすることを考えちゃいけないと思ってたんです。


山:なんでなんで? お金貰えないと大変やん! あかんの?


武:なんていうか、藝術のことを考えてばっかりで、他に考えが回らなかったんです。


山:考えが回らなかった......マジですか! ほー、やっぱ芸術家ってたいへんなんやね〜。。でも実際の問題ってあるでしょ、お金ないと。ほんまにまったく売ろうとは思ってなかったんかいな。


武:売れたら嬉しいなあとは思ってたのですが、売り方が分らなくって。壁画の仕事をもらったり、売るというより、請け負う形で絵を描いたりはありました。


山:なるほど〜。じゃあ、そうやって目をかけてくれる人はいたんやねー。仕事になってたわけやん。じゃあその人にまた、お願いするとかはどうなん?


武:あ、その人はもう大分前に会社が潰れちゃって、、


山:潰れてしまったかー!! それはしょうがないな〜。パトロンいなくなってしもたわけか。


武:はい。大きい所はなくなってしまいまして。それでも続けて来れたのは、家族にいろいろ助けてもらってるのが大きいです。けどそれもタイムリミットがあるので、これからは売れないと生きていけない、こちらから売って出ないとなあって思っているんです。


山:おー、その意気込みはいいやんか! 応援するよ!


武:ありがとうございます。自分から売って行きたいんですけれど、なかなか売れるものじゃなくて、食べ物とかもらって、しのいだりしてます。


山:えー!いやー、人間食ってりゃなんとかなるとはいえ、すごいな! でもなあ、、そうや、売れたいんやもんな。どないしよ、考えよう! みんなで考えよう!


武:はい。ぜひ売れたいです。


山:そうやんな〜。で、何? 売れて嫁さん貰って子どもも欲しいと。


武:え、あ、はい。昔はそうでもなかったんですけど、最近は独りが身にしみるんです。。


山:そうやな〜、わかる! わかるよ! 僕も独りやからね、さみしいよねー! でも、お金稼がないとなー。10Aじゃなあ。


武:はい。藝術だなんだと追求してきたつもりなんですけど、けど、フツーに人として暮らしたいことに気が付きまして。フツーに暮らして、ちゃんと絵を描いていける生活ってできないものか、と、そう思うようになったんです。


山:なるほどね〜、絵を描いてる人って、大変なんやなー。絵を描かないとやっぱりダメなん?


武:絵を描くのが好きだ、という感激はさほど起らないんですけど、なんていうか、日課のような感じで描いてまして、他のことでお金を稼いでもいいのかも知れないけど、もう潰しがきかなくて。ハローワーク行ってもこの歳の男のパートは雇ってもらえないんです。なのでずっと続けてきた絵を描くことを生業にしたいんです。


山:そうか、シピアやねー。なんせ20年続けてきてるわけやもんなー。


武:やめるきっかけを失ったというか、、そんな感じです。


山:なるほどー。で、どんな絵描いてるの?


武:今はボールペンを使った線画を描いてます。


山:ボールペンで描くんや! どんな絵なんやろうねえ。一応ラジオという媒体なんで見れないねんけどね。どんな絵か、ちょっと言ってみてよ。


武:無意識的に適当に線を引く感じで描き進めて行くんです。


山:ほー。


武:フリーハンドで描くんですが、楽譜のように音楽を内包してる「譜」のような絵でありたいなあと思ってるんです。なので、「線譜」と自分では呼んでるんです。


山:へー! 音楽を内包しているような絵ですか。でも、観ないと全然わかんないねー! そうか、そんな絵を描いてる武盾一郎さんが、まあとにかく困ってるわけだ。


武:はい。


山:じゃあですね、どうやって売れたらいいかはまったくわからないんですけどね、なんか宣伝でもしとこうか。なんかないの?


武:あ、えっと、線譜をデザインしてネットショップに置いてあります。
< http://www.upsold.com/dshop/original/take_junichiro
>
< http://clubt.jp/myshop/S0000040833.html
>


山:あ、そんなのあるんやん! 安いねー!


武:ほとんど売れてないんですけどね。


山:そうか。。で、でもわからんからね、これからどんどん売れる、、、かも知れないから!


武:なんか、こうやったら売れる! みたいなアドバイス欲しいんですけど。。


山:そうやねえ、、いやあ、もうこうなったら売れなくてもいいんとちゃう?20年続けて来れたんやから、それはすごいし、あと20年ぐらいなんとかやれるんちゃうか? このまま行けばいいと思いますよ!


武:...あ、ありがとうございます。


山:はい、応援してますよ! そろそろ時間なのでこのへんで!


武:あ、はい、それから、ステッカーとサインください!


山:あ、ステッカーね、ってそんなもんは作ってないんでね、なんか適当に自分で作っといて下さい。裏にサイン入れてね。はい、どーもー、おやすみー。(ぶちっ!プープー)

というわけで、20年間絵を描き続けている武盾一郎さんだったわけですけれども、10アンペアの契約だと、チャット中に電子レンジが使えないので、チャットを落とさなくてはならないんですね〜。売れるか、自家発電に成功するか、今後に期待したいと思います!

それではまた来月。失礼致しました!

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/もうじき売れっ子画家になる】
宮城県多賀城市にあるギャラリー「GAONG」に作品納品しました! お近くの方、ぜひ観に来て下さい!
< http://www.gaong.net/
>
アーティストプロデュース「Picaresque(ピカレスク)」で活動致します!
お楽しみに!
< http://www.facebook.com/picaresquejpn
>
地元上尾の「原市アースカフェ」にも作品あります!
< http://ameblo.jp/koushintounoarucafe/
>
facebookページ < http://www.facebook.com/junichiro.take
>
Twitter < http://twitter.com/Take_J
>
take.junichiro@gmail.com

【山根康弘(やまね やすひろ)/9月はなぜかいろいろ】
yamane.yasuhiro@gmail.com

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■グラフィック薄氷大魔王[316]
ドローイングと紙のコスト

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20120919140100.html
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●メーカー製PCを分解

某所で事務所の片づけを手伝ってきた。ものすごい量の不要品をゴミ袋に放り込んで運び出す作業の中で、僕的担当としては、古いパソコン2台を捨てる準備。顧客情報入りのHDDがそのままではマズいので消去するんだけど、ちゃんと消すには時間かかりすぎる。Macを処分するときだって、「0を書き込む、それを7回繰り返す」とか。数日がかりになっちゃう。

手っ取り早い方法は、以前にデジクリにも書いた「HDDにブスブス穴を開けて廃棄するサービス」を利用すること。自分の不要HDDもいくつかたまってるし、いっしょに出せたら都合がいい。

2台のうち片方はノートPC。裏蓋をはずしてフロッピードライブとワンセットになってるHDDを取り外す。これは簡単。問題は10数年前の富士通のデスクトップパソコン。

カバーを開けて機械をむき出しにしても、HDDが見当たらない。まさかHDD非搭載? CDドライブもついてるし、そこまで古くはないだろう。おかしいなとケーブルをたぐって探すと、なんとフロッピードライブの下のCDドライブの下の底面にあった! たどり着けるのか??

ドライブをマウントしている金属板のあっちこっちを探し、はずせるネジを全部はずしてもビクともしない。数10分後、前面の樹脂カバーをバコッと全部とりはずさないと見えなかったネジを発見。なんとかフロッピードライブとCDドライブをはずし......。

ところがドライブ全体を覆う大きなマウンタが外れない。今度はのたうつケーブルを全部ひっこ抜いてみると、一個のネジが中央に! ああっ、ひょっとしてこの一個を取り外せばドライブ全体が外れたのか〜〜〜っ! と思ったけど、そんなに単純ではなさそう。

パズルのように組み合わさった金属板をどうにかはずし、無事HDDを取り外し完了。あとはテキトーにネジ一個ずつつけてとりあえず詰め込んでフタ。ってことでネジが数10本余ったけど、いいやこれで。捨てるパソコンを律儀に組み立てるのもバカらしい。エアコンがない部屋での作業、ヘロヘロ状態に。あー、しんどかったぜー。

今までWindowsパソコンの中を開けたのはDellくらいしかなかったけど、けっこう考えられてて簡単ワンタッチでした。Macもちょっと前のノート型はHDDにアクセスするのも大変でしたが、最近のモデルは拍子抜けするほど簡単。メモリーやHDDなどけっこう頻繁に出し入れしてたので、パソコンを分解って感覚が麻痺してた。昔のPC、おそろしいです。もういじりたくない〜。

●OA連続用紙白紙フォーム

上の片づけ作業は店舗兼事務所を廃業みたいものだったので、新品や新品同様の不要品が山ほど! 事務用品や机や棚などいろいろほしいものがあったけど、いちいち気にしてるときりがない。そんな中、OA用紙の束だけもらってきた。

この紙、PLUSの「OA連続用紙白紙フォーム」っていう両端に小さい穴が並んだ、A4くらいのサイズ。薄手でカサついてて鉛筆で描きやすい。2000枚入りのうち半分くらい入ったもの。つまり1000枚! ミシン目で分割できる、長〜〜〜〜く繋がった紙。長さ28センチ×1000=280メートルだよ! わくわく! もうドローイング用の紙は数年は買わなくていい!

●ドローイングと紙のコスト

スケッチは全部デジタルでやりたいんだけど、キャラのラフを何10個とか描くようなときは鉛筆やサインペンのほうがぜんぜん速い。アナログのほうが明らかに効率が良さそうな作業だけ、プリント&スキャナで「パソコンの外に一旦出し、戻す」ってやりかたをする。トレースにはUSBから電源を取れるLEDのトレース台を使ってます。

紙にボールペンで粗く描いて、トレースして形を整えて、もう一回トレースして本番前状態、それに赤で修正とか描き入れる。それをもう一回本番トレースする。都合3〜4回トレースすると、完成度上がるねえ(トレースの元の絵と新しい紙を重ねて固定するとき、3Mの「プリットひっつき虫」っての便利。錬り消しでもオーケー)。

普段なら途中で面倒になってデジタルに移行しちゃうけど、先日は鉛筆で最終トレースまでやってみた。仕上げトレースはPhotoshopでやっても時間的にはたいして変わらない。ただ、Photoshopでトレースすると全部ていねいに描かないと粗が目立っちゃう。

鉛筆のちょっと汚いテキトーな線のほうがラフ的にはいい感じなのだ。サインペンも有用。筆圧をかけなくてもいいので疲れないし、二度描きが少ないので速い。

で、使った紙はマルマンスケッチブックでおなじみの、厚手のボコボコした画用紙。粗描きのときはいい感じの摩擦で描きやすいけど、鉛筆で細部をじっくり描くと、ボコボコの凹凸に沿って芯が滑ってしまってダメ。

こういうときはTooの「PMパッド」にかなう紙はない。途中で気がついてたけど、タッチの統一という点で途中で変えるわけにもいかず。PMパッド、とっておきってことでA4が3冊ストックあるけど、新しい紙とか買い込んだり先日のOA用紙みたいに大量入手しちゃうもんだから、いつまでたっても使わない。

PMパッドはA4と書いてあってもひとまわり大きい。いつも裁ち落としてA4にしてる。A4ジャストのPMパッドがあればいいのに、と思ったらあるんですね。「PMコピー」という商品がそれ。でも高級だなあ。50枚で800円近くする。A4コピー用紙なんか500枚で1000円もしないよねえ。

とはいえ、一回の仕事で50枚も使うことは滅多にないし一枚16円って考えると、仕事の道具としてはコストを無視できるくらい安いんだけど。っていうか、一瞬高いと思った比較対象のコピー用紙が安すぎるってことか。

安いコピー用紙を検索してみたら、A4コピー用紙500枚×5冊で1298円ってのがあった。1枚0.5円! どんだけ激しく描きまくったって2500枚あれば半年や一年はもつでしょ。仕事のコスト的には一日一冊500枚使ったって痛くも痒くもない。もうドローイング用の紙についてはコストは実質ゼロ円と思ってまちがいないな。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

いまだに「笑っていいとも!」って、「笑ってる場合ですよ」の次に始まった新番組、って感覚が抜けない。

●iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」ver.2.0がリリースされました。
「長押しロール」のオン・オフ切り替えスイッチを追加しました。
「オフ」ではレスポンスが速くなるので、素早い演奏が可能になりました。
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV
>
●「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb
>

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編集後記(09/19)

●ロンドンオリンピックは数々の感動をもたらしてくれたが、なかでも熱狂したのが、男子400メートルメドレーリレーの銀メダルだった。これほどスリリングでおもしろい競泳種目は他にない。堂場瞬一スポーツ小説コレクション「水を打つ」を読む(実業之日本社文庫、2010)。この作家の「チーム」「ヒート」をおもしろく読んで来たから、上下800ページにもなる書き下ろし長編も期待大。今度は競泳メドレーリレーを舞台にした男たちのドラマだ。

究極の個人競技である競泳の中で、個人のタイムだけで決まらないただ一つ競技、それがメドレーリレーだ。背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形の4人が順番に泳ぐだけではない。引き継ぎを伴うリレーはチームプレーである。自分以外の選手のために泳ぐ気持ちがないとリレーでは勝てない。この物語は、駅伝テーマ「チーム」の山城と同様に、リレーに関心を示さず、ハリネズミのように刺々しい殻をまとう、常識はずれの傲慢小僧・小泉という、チームワークになじまない男の心をどうやって溶かすのかというのが主題のひとつである。

さらに、30歳前に衰える水泳界の早い老いや、驚異的な高速をもたらすハイテク水着の開発というリアルな問題もテーマとなっている。登場人物のキャラ立ちも鮮やかで、いやはやなんというおもしろさだ。もちろん、小泉も加わってのチームが東京オリンピック(!)のメドレーリレー決勝に進出するのはお約束だが、そこに至るプロセスの読ませるテクのうまさといったら。「自分を信じるな、自分を信じるっていうことは、自分で限界を決めてしまうことだ、突き抜けろ」をはじめクサい台詞も多いが、それも快い。決勝レース16ページは何度もくりかえし読んでしまった。泳げないわたし(それが何か?)だが、充分に楽しめた「水を打つ」。このタイトルだけがイマイチである。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4408550027/dgcrcom-22/
>
→「水を打つ 上」をアマゾンで見る(レビュー6件)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4408550124/dgcrcom-22/
>
→「水を打つ 下」をアマゾンで見る(レビュー5件)

●続き。裁判所で、(魔女狩りのように)市民が市民を裁く今の状態はおかしい、理想はどうなったのかとジャンは皆に訴える。亡命を見逃した証拠を突きつけられ、彼は言う。止められなかったことを悔やんでいる、しかし貴族社会に対しての憤りや平等という理想と、アントワネットとの親交は別だと。民主化を望む気持ちは皆と同じ、アントワネットはすばらしい人で、農夫らを宮廷に招いて食事を振る舞っていた、人間には情がある、人と人とのつながりは別なのだと。陪審員らの中にも貴族に仕えていた人たちがいて、あの人はいい人だった、あの人は私に良くしてくれたと口々にいいはじめ、恐怖政治ジャコバン派へのクーデターも重なり、ジャンは無罪になる。

台詞を覚えているわけではないのでうまく書けないんだけど、このくだりがとても日本人っぽいなぁと。舞台がフランスとはいえ。植田景子さんの脚本は好きだ。彼女の作品は、若手よりも渋いベテラン向きだと思う。脇役らの熱演がとても良かったよ。アントワネットには食傷気味だし、主人公は時代と関わりのなさそうな地味な人。ドラマは期待できそうにない。なのであまり気が進まなかったが、見てみたら、なんだか今の日本と中国・韓国みたいだなぁと思ったわ。続く。(hammer.mule)