Otaku ワールドへようこそ![160]割とダメダメな日々
── GrowHair ──

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東電の野郎、本当に電気止めやがった。うん、言われなくても分かってる。電気代の支払いを滞ってた俺が悪い。そんぐらい分かってらぁな。けどよォ、電気って大事じゃんか、ないと死んじゃうじゃんか。だからそうそう止めたりはしないんじゃないかなぁ、と。甘かった。仏の顔もなんちゃらじゃないけど、3か月滞ったらスパッとやられた。

●ネットカフェ難民

深夜、ウチに帰り着くと、電気が点かなかった。9月7日(金)、仕事は割と早めに上がったのだが、気分を変えて、普段と違う経路で長めに電車に乗って帰ったもんだから、中央線上り電車が終点中野駅に到着したのは、0:50だった。コンビニに寄って、梨味のガリガリ君とコノスルというチリ産のワインとサワークリームオニオン味のポテトチップスを買って帰る。軽く一杯飲んでくつろいでから寝ようと。

パチッ。あれっ? 点かない。ブレーカーが落ちてるのかな? おや? ちゃんと上がっとるぞ。付近一帯停電とか。いやいやお隣はちゃんと点いてるし。あ? あれか? そういや、なんか赤い字ででかでかと「重要」って書いた封書が届いてたっけ。だいたいだ。赤で「重要」って書いた封書が届いたら用件は「金払え」に決まってる。開いてみなくたって分かるからいいやと思って放置してたのだった。

どこ行ったっけ? 郵便物の山から探し出さなくてはならない。真っ暗で何が何だか分からんぞ。背負って帰ってきたリュックをドアに挟んでストッパーにして、外の光を入れる。これでいくぶんか見える。おお、あったあった。外の通路に立って、開封して読んでみる。9月3日(月)に止めるとか何とかって最後通牒。いちおう数日は待ってくれたのか。今朝はちゃんと点いてたもんな。

んで? どうすりゃ再開できるんだ? ええと...。東電に電話しろ、と。急ぎでない用件だったら平日の昼間しか受け付けないけど、止められた電気の再開については、平日でも休日でもよく、時間も真夜中まで受け付けてくれるらしい。って、過ぎてるじゃん。つまりは明日朝まではどうにもならないってことか。




パソコンは、バッテリーまで使い果たして息果てている。ううむ、メールぐらいはチェックしておきたい。ネットカフェ行くか。いやいや、落ち着け。このままじゃガリガリ君が融ける。まずは食ってからだ。暗闇で、なぜか立って食うガリガリ君。さびしい。むなしい。

中野のネットカフェで朝まで過ごす。朝、東電に電話すると、一時間半以内に再開できるという。ブレーカーを切っておくよう指示され、その通りにして待つ。上げると、おお! 点いたっ! こうして土曜の昼前には平常の生活に戻ったのでありましたとさ。ああ、ひでえ目にあった。

だいたいあれだ。こういうの、苦手なんである。マネジメント。めんどくさい。日本語で切り盛りと言い換えてみても、やっぱめんどくさいことに変わりはない。こういうのをしっかりやってくれるカミサンとかいてくれると助かるんだがなぁ。って、昔いたっけ? リアル3次元のカミサン。

28歳のときに結婚して29歳のときに別れちゃったんだった。1年2か月。もろもろのマネジメント、けっこうしっかりやってくれていた。けど、別れちゃったもんは仕方がない。ユキコ〜(←漢字忘れた)、特に未練はないぞぉ。勝手にしろー! って、別れてから20年も経つのに言ってるのもアレか。

マネジメントがダメダメなことはよーく自覚しているので、それのせいでいろいろと変なことが起きてもあんまりびっくりしなくなってきてる。慣れってコワい。けど、そんな私でも、たまーにびっくりすることはある。ウチに帰ると、なんか誰かに見られてるような感覚があって、どうにも落ち着かない。その正体は...キノコが生えていた。とか。

バレンタインデーにもらったチョコは梅雨入り前ならなんとかなるが、秋口に発見するとマリモになってる。真空パックで密閉したまんじゅうをもらった。しばらく経つと、ブツとパックとの間に隙間ができてる。どっかに穴が開いてて、密閉されてなかったのか? もうしばらく経ったら、風船みたく、パンッパンに膨れ上がっていた。ほぼ球形。パンパンすぎて危険な状態。爪楊枝でぷすっと穴を開けてみると、出てきた気体は臭かった。

●権利? 手段? 行為? 何を買ったのかよく分からん

訳の分からんトラブルをもう一件、最近やらかしている。電気の場合はお金を払ってなくてひどい目にあったのだが、こっちのは、お金を払ってひどい目にあっている。話はちょっと複雑だ。複雑ったって、本質的には似たようなもんで、よくよく読めばちゃんと書いてあるんだけど、読まずに早とちりした俺が悪い。

けど、世の中広いんで、もしかすると同じ勘違いをしている人がいるかもしれない。ここで説明しておくことで、同じ轍を踏むのを避けることができたって人がもしいれば、ちょっとはお役に立てるかもしれない。

それは音楽のダウンロードの話。最近は、一曲100円とか200円とかでウェブサイトから楽曲をダウンロードできるサービスなんてのが、あっちこっちからちらほら出てきてますな。これって、お金を引き換えに何を買っているものと認識してます? 楽曲データ? 音楽を聴く権利? 音楽を聴くという行為? 私はデータを買うものだと認識してました。けど、それってどうやら正しくないみたいです。

ちょっと話は逸れますけど、ソフトウェアなんかも、妙な感じになってたりしますな。ネットでソフトウェアを買ったら、インストール用のCDやら分厚い冊子になったマニュアルやらが入った箱が郵送されてくるのかと思ったら、届いたのは薄い封筒。中身は紙っぺら一枚。20桁ぐらいの数字が書いてある。で、それが「使用許諾証」になっている。

インストーラもマニュアルも、ウェブサイトからタダでダウンロードし放題。だけど、インストールして走らせようとすると、最初の一回だけ、「ライセンス番号を入力してください」って画面が出てきて、郵送されてきた紙っぺらに書かれている番号を入力すると走る、って仕掛けになっている。

この場合、お金と引き換えに送られてくるのは、数字の書かれた紙っぺら一枚だけど、ただの紙っぺらにしちゃ、値段がやけに高い。買ったものの本質は、紙っぺらという実体ではなくて、ソフトウェアを使用する権利だったというわけだ。

楽曲のダウンロードも似たようなもんなのだが、ソフトウェアとはちょっと違うところもあって、ややこしいのである。私がやらかしたのは、clubDAM.com からのカラオケ音源のダウンロードにおいてである。そのウェブサイトへ行くと、カラオケの店舗でかかるのと同じカラオケ音源が、一曲あたり105円でダウンロードできるサービスが提供されている。

ソフトウェアの購入とは異なり、タダでダウンロードし放題というわけではない。まず楽曲を選択しておいてから、クレジットカードで代金を支払うと、その楽曲がダウンロードできるようになる。なので、楽曲データそのものを購入したもんだと勘違いしやすい。私は何の疑いもなく、そういうもんだと思っていた。

購入してダウンロードしたのは、9月9日(日)の夜のこと、まずいことに、ネットカフェでであった。しかも、46曲もいっぺんに。そんなに要るのか、と問われるとなんともかんともなのだが、なんだか所有してるだけでもいいような気がして、ついついあれもこれも、と。〆て4,830円ナリ。

ダウンロードしたデータをUSBメモリに入れて持ち帰り、ウチのパソコンで聞こうとすると、...あれ? かからない。ライセンスがどうとかこうとか言われて拒否される。

ここで初めて「どういうことだ?」と思い、よくよく説明を読んでみれば...。なんと、ダウンロードした楽曲は、そのパソコンでしか聴けないようになっている、とのことで。がーん! 購入したものの本質は、楽曲データそのものではなくて、ダウンロードするときに使っていた特定の一台のパソコンだけで視聴することができる権利だった、というわけだ。

一台のパソコンったって、ネットカフェの、その特定の席でしか聴けないってわけか。実は、後で実験してみて分かったのだが、それすらもできない。そこのネットカフェは、パソコンを再立ち上げすると、使用中にハードディスクに書き込んだファイルは全部消去され、インストールしたソフトウェアも消去され、一定の初期状態に戻るような仕組みになっている。

ダウンロードした時点で、ライセンス情報がパソコンに置かれるのだが、再立ち上げした時点で、それは消えてしまうのである。club DAMのサイトからは、一度購入した楽曲を再ダウンロードすることができるようになっているが、それをしたとしても、結局、再生しようとしたときに、照合すべきライセンスデータがパソコン側に残ってないために、拒否されてしまう。

つまりは、もはや、購入した楽曲は、どんなことをしても再生する手段が存在しない、という状態になっていたのである。そりゃまあ、確かに、データを購入したのだとすると、そのコピーがネットでばら撒かれでもして、誰でもタダで入手できるようになってしまっては商売にならないので、それを防止する仕組みが組み込まれているというのは、分からないでもない。

けど、購入したこっちとしては、聴く手段がまったく存在しなくなっているのだから、払ったお金と引き換えに得た価値が、もはやゼロになっている。説明書きをよく読まなかったこっちが悪いとは言え、はいそうですか納得しましたって言えるほどの度量は私にはない。

しかも、説明書きには、「商品の性質上、一度購入したものの返品は受け付けません」とある。そりゃあ、ダウンロードしたデータをアップロードしたら返品したことになるって代物じゃないってことはよーく理解できる。しかし困った。club DAMのウェブサイトに問合せフォームが置かれているので、ダメモトで、かくかくしかじかの事情なんで、購入を取り消せませんか、と書いて送ってみた。

9月12日(水)に、第一興商 club DAMサポートセンターから返信が来た。購入した楽曲は、ダウンロードしたパソコンでしか再生できない仕組みになっている旨、非常に丁重な調子で説明してくれている。で、商品の性質上、通常は、一旦購入した商品のキャンセルは受け付けていないことになっているけれども、今回に限りキャンセル処理した、との旨が書かれている。ふう、助かった。club DAMさん、寛大な対応、ありがとうございます。

で、性懲りもなくまたやってる私。いやいや、今度は意図的に。一曲だけで。実験してみたかったのである。どういう結果になるか、見て確認することによって得られる情報に105円の価値を見出したってわけです。その結果、ネットカフェのパソコンは、再立ち上げすると、ライセンス情報は消去されてしまい、データを再ダウンロードしても、もはや再生する手段がまったくないのだということが確認できたってわけです。

●本質な解決の決め手は個人認証でしょう

club DAMのカラオケダウンロードの一件、個別の問題としては解決した。仕組みはようやく理解できたし、club DAMの寛大な対応には感謝しており、そこに不満があるわけではない。けど、なんかすっきりしない。

こっちが欲しいと思っている商品と、実際に売っている商品との間に若干のズレがあるという点だ。例えば、文具店でノートとボールペンを購入したら、それらは完全に私の所有物となり、どこへでも持ち歩くことができるし、いつどんな使い方をしたってかまわない。ダウンロードした楽曲についても、同じことを期待するのは自然なことのように思う。

もちろん、ボールペンは一本購入したら、それを100本に増殖して、人々にタダで配って歩く、などということはできないので、そこは楽曲データと異なるのは分かる。楽曲データにはコピープロテクトを施しておかざるをえず、売り手と買い手の双方の思惑の妥協点として、今の仕組みがある、というわけなのだろう。

ただ、これが楽曲データ販売の最終形態だとは、とても思えない。技術が進歩し、仕組みが整備されていく流れの中で、まだ過渡期の段階であるのは間違いない気がする。妙に中途半端な感じがする。中途半端と言えば、どこへでも持ち歩きたいというユーザー側の要望に答える仕組みは、いちおう用意されてはいるのである。

ダウンロードしてくる楽曲データは、Windows Media Audio(WMA)フォーマットのファイルの形態であるが、これをCompact Disc Digital Audio(CD-DA)フォーマットに変換して、CD-Rに書き込む作業をすればいいのである。この作業は、Windowsに標準装備されているソフトウェア "Windows Media Player" を使うことで可能である。

この作業は違法でも何でもなく、club DAMのサイトでも、こうすれば持ち運べる旨、説明がなされている。実際、先ほどのネットカフェでの実験でも、パソコンを再立ち上げする前にCD-Rに焼く作業をしておけば、持ち帰ってウチのパソコンでも、CDプレイヤーでも聞くことができるを確認した。ただし、パソコンを再立ち上げした後では、この作業自体も拒否される。

しかし、これができてしまうということは、ここからさらにmp3にでも変換すれば、結局はデータの形でネットなどでばら撒くことは(違法ながら技術的には簡単に)可能になってしまうのではあるまいか。それじゃあ、やっぱりコピーし放題なのではないかという気がしなくもないが、そこはどういうふうに考えているのか、よく理解できていない。やっぱり中途半端な感じがしてしまうのである。

理想的な最終形態は、どこへでも持ち運べて聴けるというユーザー側の利便性が確保された上で、不正コピーが技術的に不可能なようにしっかりとプロテクトがかかっているという、提供側の権利も確保されているという状態である。

そのための技術的なブレイクスルーは、個人認証の仕組みにある。パソコンの楽曲再生ソフトのプレイボタンがつっつかれたり、オーディオプレイヤーの再生ボタンが押下されたりする、その都度、個人認証がなされ、その楽曲データを購入して所有している本人ならば音が出るが、他人であれば拒否される、という仕組みである。譲渡とか一時的に代理とか遺産相続とか、そういうこともできるような仕組みになってなくてはならない。

それほど遠くない将来、国民全員のID情報が、政府または民間の運営するクラウドに預けられる時代が到来するのではないかと私は予測している。住基ネットの導入にはずいぶんすったもんだして、強硬な反対意見も表明されていた。人間を番号で扱うとはまるで囚人かロボットみたいな扱いで非人道的だとか、行政機関が国民を番号で便利に管理できてしまっては国家権力の危険な増大を招くとか、懸念が示された。意見の多様性を尊重しないわけではないけども、なんか、一度導入されてしまえば、別にどうってことなかったような気がする。

むしろ、お役所に行って、住民票やら戸籍謄本・抄本の写しを発行してもらう際、ほとんど待たされずにすっと出てきて便利じゃんかと思う。コンビニでも発行できるようになったら、もっと便利だ。なら、いちいち紙に出力しなくたって、ソフトウェアで本人確認できるようになればさらに便利だ。オーディオの再生ボタンを押す都度、データの持ち主本人かどうか照合しに行けばいいわけだ。

技術的な課題としては、照合のほうは大した障壁ではなく、個人の識別のほうに高いハードルがある。生体認証(バイオメトリクス認証)はすでに実用化されつつある。例えば、銀行ATMで、暗証番号と指紋認証を併用するオプションを選択すれば、取引上限額を高く設定できるとか。けど、今の技術の到達レベルでは、暗証番号やパスワードなしに、生体認証を単独で使うには、確実性に不安が残る。

確実性の高い方法としては、例えば、固有のID番号を電波発信するデバイスを体内に埋め込んでおくことを、国民全員に義務づけるとか。うーん、なんかやだなぁ、それ。そこまでやったとして、それでもまだIDを偽造して他人になりすますことを試みる人は出てきそうで、その手の犯罪がそうとうグロテスクなことになりそう。

しかし、なんらかの上手い仕組みが開発されて、そこさえ技術的に突破できてしまえば、いろいろな課題が一気に解決して、世の中の仕組みやわれわれの生活のスタイルがガラッと変わる。現金、クレジットカード、鉄道カード(SuicaとかPasmoとか)、電子マネー(EdyとかWAONとか)の類がいっさい要らなくなる。

お店に入ったら、買いたいものをカゴに取り集め、出口へ向かうと合計金額が通知され、それでOKならば、なにもせずにすっと出てくればよい。銀行の口座から、代金が自動的に引き落とされている。預金がマイナスになっても、買い物は続けられる。ただ、一日あたりに使える金額の上限が設定されたり、ぜいたく品の購入や遠くへの旅行が自動的にブロックされたりする。それさえ気にしなきゃ、生きていくのに支障はない。

すべての商取引がクラウドに記録され、税金の確定申告の計算なんかも全自動。本人はなにもしなくても、勝手に引き落とされている。会計上の不正は、ぜーったいに不可能。ついでに、本人の位置情報を常時発信するデバイスが体内に埋め込まれていて、足取りなんかもすべて記録される。

誰がいつどこにいたという数値が機械的に記録されるだけでなく、列車の運行の遅れ状況のデータなどとも連動し、誰と誰がどの列車のどの車両に乗り合わせていたはずだ、というような情報としても抽出できる仕組みになっている。犯罪の捜査がラックラク。アリバイ工作なんて、ぜーったいにできない。

そうすると、個人のプライバシーというものが確保できなくなって、問題なのではないかという意見はあろう。けど、これも住基ネットと一緒で、やがて、人々の感覚は麻痺していくであろう。新宿歌舞伎町の路上に防犯カメラが設置されたときも、ちょっとした議論になったけど、いまやそんなのそこいらじゅうである。

人の道に背いたよからぬ関係にあるカップルがラブホテルに入る映像なんかも、当然、みんな記録されている。けど、もはや誰も気にしてないのではあるまいか。犯罪検挙率が上がるという社会的メリットがあるならば、プライバシーよりもそっち優先でまあいっか、ぐらいで。プライバシーという概念も変化していくんじゃないかな? どんなヤバい店に入ったとか、誰とイケナイ関係になっちゃったとか、隠せないなら隠せないで、まあ、いっか、と。

少なくともアレだ。電気代の支払いを滞ったために送電を止められる、なんて事態は決して起きなくなる。ダメダメ人間が面倒な事態に陥ることなく楽々暮らせるダメダメ社会、じゃなかった超高利便性社会が早期に実現することを望んでやまない。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。

よくお世話になっている人形作家の清水真理さんは、西武池袋線大泉学園駅から徒歩4分のところにあるアトリエで人形教室「アトリエ果樹園」を営んでいるが、そこの生徒さんの一人が近々個展を開くという。そのときの展示用に、作品の写真撮影を頼まれた。ヒムカコノエさん。

8/25(土)、私が勝手に「スピリチュアルの森」と呼んでいる、とっておきのロケ地へ。森の奥のほうに渓流があり、水しぶきのせいか、真夏でも辺りの空気はひんやりとしている。巨石や倒木は青々と色鮮やかな苔で覆われている。苔もシダも生き生きとしてみえる。遡ると滝に行き着き、山頂の神社の人がよく白装束で滝行をしている。ここで撮るのは3年ぶりくらいか。

神社の周辺はちょっとした町になっていて、宿やら茶屋やらが立ち並ぶ。熊の目撃情報が掲げられ、注意を喚起している。いつも立ち寄る茶屋兼土産物屋がある。下界は猛暑で空気がどよんと淀んだ感じで、何もかもが不活性に陥っているが、ここまで登ってくると、さわやかで快適だ。茶屋の窓からはいい風が入ってきて、道のほうへ抜けていく。山菜そばが美味くて、このときもまたそれにする。熱いそばが苦もなくするすると食える。

ここにいつもいたおばあさんは、聞くと2年前に亡くなったそうだ。そうとうなお年だったようで、店に姿が見えない時点で、そうかなとは思っていた。前に来たときまでは、快活でいつも元気そうだったけど。よく面白い話を聞かせてくれた。

埼玉の平らなところから山の上に嫁いできたのは、兵器の製造のためにあらゆる鉄という鉄が政府に回収されていた時代のこと。ケーブルカーも例外ではなく、歩いて登ってきたそうだ。駅からだと、まず山にとっつくまでの歩程が長く、登り始めてからは道が険しくなり、標高差400メートルほどの登りはそうとうきつい。途中にお地蔵さんがいて、そのあたりでもう限界だと思い、やっぱり帰りたいと余程言おうかと思ったそうである。けど、お世話になった仲人さんも一緒に登ってくれていたので、言い出せなかったのだそうだ。

不便だったろうし、苦労もしただろうけど、いつも明るくて、楽しそうに暮らしているようにみえた。たまにしか現れないヨソ者が無責任に言うのもアレだけど、案外といい人生だったんじゃないかなぁ、なんて。

ヒムカコノエ人形展「モダンハコニワイズム展」
会期:2012年10月4日(木)〜9日(火)
会場:初台「画廊 珈琲 Zaroff」
< http://www.house-of-zaroff.com/ja/gallery_2nd/20121004/index.html
>
< http://garirewo.s318.xrea.com/strnew/
> アトリエ果樹園

女装アイテムを調達しようとユニクロへ。フロア案内が日本語のほかに韓国語と中国語で書かれてて、「レディース」って中国語で「女装」なんだね。めっちゃツボった。フリフリロリロリの浴衣着て、猫耳つけて、そのフロアーをうろうろしてるおっさん、まるで勘違いの図。ちゃんと買えたけど。はいはい、こっちはダメダメ人生でやんす。