[3474] 趣味の時間・仕事の時間

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《ユートピアかデストピアか》

■ユーレカの日々[22]
 趣味の時間・仕事の時間
 まつむらまきお

■グラフィック薄氷大魔王[344]
 実家でFRP立体制作
 吉井 宏

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■ユーレカの日々[22]
趣味の時間・仕事の時間

まつむらまきお
< https://bn.dgcr.com/archives/20130515140200.html
>
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<著者のご意向により削除いたしました>


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■グラフィック薄氷大魔王[344]
実家でFRP立体制作

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20130515140100.html
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ゴールデンウイーク、4月28日(日)から愛知県の実家で展覧会用の立体制作をしてました。東京に戻ってきたのはおとといの5月13日(月)。正味二週間ものロングバケーション! じゃない、猛烈に働いてたわけですが。

なぜ実家で制作かというと、樹脂や溶剤の臭いや削った粉や電動工具の音などが出し放題で、広い部屋を使えるから。東京の自分の部屋じゃ無理、っていうか気を使って遠慮がちにやるのがきゅうくつなので、ここ2年くらい立体制作は休止してたのです。

とにかく大変でした。何がたいへんかって、GWを立体制作かかりきりにするべく、残ってる仕事を全納品&待機状態にした上で実家に行ったのに、新しい仕事がいくつも入っちゃって、並行して進めながらだもん。

コンペ仕事のキャラ制作も立体制作も、どちらも楽しいことなのに、両方同時に限られた時間でやるのはキツイ。1.5人前の寿司とカレー大盛りを5分以内に食え! みたいなもん。

制作の詳細ログは、Facebookや、twilogの
4月28日 < http://twilog.org/hiroshiyoshii/date-130429
>
から
5月12日 < http://twilog.org/hiroshiyoshii/date-130512
>
まで、写真入りでいっぱい載ってます。

特に今回は、FRPに初挑戦。FRPと言えば、猛烈な臭いに加え、そこら中に散らばるガラス繊維のチクチクで有名な、とってもとってもハードコアな造形素材。立体アート作品や遊園地の造形物などはたいていFRPで作られており、あこがれてたのでした。

FRP、やってみてわかったのは、臭いはポリエステルパテをちょっと強くした感じで、猛烈ってほどでもないかな。まあ東京のマンションでは無理としても。ガラス繊維はゴム手袋をしてれば大丈夫だけど、それでも靴下にくっついたらしく足がチクチクした。

ガラスマットをちぎって貼り付け、刷毛でポリエステル樹脂を染み込ませる「含浸」って作業は楽しい! ガラス繊維につゆだくに含ませた樹脂がカチカチに硬化して強力なFRPになるわけです。

全体の手順は、
インダストリアルクレイで一次原型を作る→石膏で型取り→ポリエステルパテで置き換え→二次原型を制作→増粘剤を入れたシリコーンで前後二つに分けた型を作り、石膏で補強→FRP積層を数回→前後のパーツを接着して合わせ目を処理→下地塗装→本塗装→クリアースプレーを吹き、表面をコンパウンドで磨く、という具合。

今回の完成作品にはいくつも不満点がある。全体の曲面がちょっと雑で、微妙に大きな凸凹がある。そのあたり、本来ならしつこく何日もかけて修正を繰り返すのに、十分な時間が取れず、ほとんど全工程が一発勝負。目とかの輪郭の凹みのエッジも甘い。ここが一番時間がかかるのだ。

エッジが甘いから、塗り分けのときに中央の境界線がわからないまま塗ることになり、別の角度からの光で見るとエッジから離れたところで塗り分けになっちゃってる。そこがいちばん残念。完全にアナログで作ったわけで、「味」とか「作家の手の痕跡」とか解釈してもらえたらいいんだけど。

完璧にするにはかかりきりで3週間くらいは必要だなあ。客観的に冷静に作業結果を評価する余裕がなかった。

「原型を作り、型を作り、一個抜くところまで」って、その一個のための大変な工程なわけだけど、順調に複製できれば全工程の苦労が個数分で割られるんだよね。複製前提ってのは数を作ってこそのものだなあ。3個複製するだけだったら、丸太から木彫りで3個作るほうがラクかもと思った。

あと、型からはみ出したFRPを切り取って、前後を貼り合わせて表面処理する作業が大変すぎ。やっぱ中空レジン方式でポリエステル樹脂を「流し」するのがいいかな。気泡の問題もなくなるし。ガラスマットを入れないと強度の問題があるけど、ガラスマットを5mmくらいに細かく切って樹脂に混ぜて何層か流し込むのがいいんじゃないかと思う。それで何層か流し込めば相当強くなるんじゃないかな。

塗装は下地の色以外、マスキングなしの筆塗りだったけど、やはり面倒でもマスキングしてエアブラシを使わないとダメだな。何度も塗り重ねても不透明度が上がらず、目の輪郭一組を塗ってる間に、45分のポッドキャストを2本聴けちゃうくらい時間かかるのはどうかしてる。

とか考えてたら、おとといまで「立体なんて二度と作らん!」とか思ってたのに、また作りたくなってきた。思いついた方法を試したい。経験値上がってるし、次は絶対にもっとうまく要領よく早く作れるに違いない! とか思っちゃうんだよなあ〜。いつもそう思うんだけど、作り始めると「やっぱ大変〜〜!」って後悔するw

......っていうか、元にしたCGで作ったキャラは、「展覧会用に、こんなの作ったらどうかな?」の参考見本として、2時間くらいで作ったもの。それをアナログで立体にするのに2週間もかかるって、クリエイティブとしてはどうなのか? まるまる2週間使えたら新しいキャラがCGで40〜50個は作れてしまう。僕にとっての立体制作は、そこまで価値があるものなのか、ちょっと悩んでみたり......。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

先日、「3Dプリントは「作品」になり得るか?」で、立体作品作るならぜったいアナログ! とか書いたけど、ちょっと揺らいだ。形を作るところまでは3Dプリンタ利用で多少はデジタルを取り入れてもいいかな。


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編集後記(05/15)

●百田尚樹「夢を売る男」の中で、カモのひとり、小説なんか書いたことのないフリーターの人間像が興味深かった。俺は世間の奴らとは違う、俺はいつかジョブズのような男になるんだ、という根拠のない自信を持っている若者だ。自分以外はバカと思っている、他人を見下ろす若者の典型だ。彼は「努力こそが人から自由を奪うんだ。具体的な何かを目標にするということは、それに縛られるということなんだ。正社員にならないでフリーな立場でいるのも、人生の大きなチャンスのときに動けるような立場に身を置いておきたいんだ」と妄言を吐き、仲間の支持を得ている。仲間もみんなバカである。

こんな若者をその気にさせるのは簡単で、自分はやればできる男、と思っている自尊心に餌をたらしてやればすぐに食いつく。君は本当の天才だよ。君の凄さをわかる編集者は滅多にいない。レベルが突き抜けている。そうおだてて舞い上がらせると、フリーターは「ハイリスク・ハイリターンのギャンブルだ。半端じゃないリアル人生じゃないか。147万が惜しくてやらなかったら俺は一生後悔することになる」なんて自分自身を納得させてしまう。そんな人物だから、コロッと騙されてなけなしの金をふんだくられても気の毒ではない。

「俺はまだ本気出してないだけ」なんて、未熟な若者が言うから多少は許容できるが(人によるけど)、40歳で会社やめてマンガ家めざすバカとなると、ひとかけらの同情の余地もない。青野春秋の漫画「俺はまだ本気出してないだけ」の主役・大黒シズオがその人だ。妻はいないが高校生の娘がいる。その娘から金を借りたりしている。「シズオよ。そろそろ目を覚ましたらどーだ?」「世の中なめてんのか?」と、いつも青筋たてて説教を垂れる父親がいる(わたしも彼と同意見だ)。

シズオは本気出せば売れる漫画家になるはずだと思っているが、才能はない。持ち込んだ出版社ではボツの連続。ハンバーガーショップのバイトで年下にバカにされながら、なんとか収入を得ている。ヘタなとぼけた絵だが、ギャグではない。けっこうシリアスでつらい漫画は5巻で終わった。堤真一主演で映画化されたが、予告編を見るとどうやらコメディみたいで、違うんじゃないかと思う。ところで、共産党の穀田恵二をテレビで見るたびに、あっ堤真一の兄さんだ、と必ず言うわたしである。(柴田)

< http://www.oremada.jp/
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映画「俺はまだ本気出してないだけ」公式サイト
原作紹介のページで16ページの試し読みができる
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「俺はまだ本気出してないだけ」


●小橋建太。引退記念試合を見たいがために『G+』の契約をしたよ。「完全生中継」を録画で見た(涙)。そして、もう生では見られないんだなぁと。とはいえ生で見たのはたった一度。テレビで見ている時はジュニアの試合が好きだったんだけど、生だとヘビーの重量感や存在感に圧倒された覚えがある。小橋のサイン入りTシャツを買い、三沢と握手してもらった。すてきな思い出だ。

引退記念試合はカウントダウンからはじまり、ハヤブサの開会宣言、花束贈呈や10カウントなど。川田が登場したよ。野田元首相が楽しそうであった。いいなぁ、チケットとれて。

プロレスが嫌いだった。大変さを知らなかったから。技が成立するためには、技を受ける人がいないといけない。よけたらダメ。よけるのは次の技に繋がる時のみ。次から次に技を繰り出すためには、相手と呼吸を合わせる必要があって、下手な相手だと、いくらひとりが巧くても、塩試合になってしまう。(続く)(hammer.mule)