[3846] 鶏もも焼きの美味さを再確認する薩摩再訪

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《このがっつり感! やっぱこれだよ!》

■Otakuワールドへようこそ![205]
 鶏もも焼きの美味さを再確認する薩摩再訪
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鶏もも焼きの美味さを再確認する薩摩再訪

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期待という名の気体で膨らみすぎた風船は、現実という名の針でぷすっとやるに限る。一昨年の12月に鹿児島で食べた鶏もも焼きは間違いなく絶品であった。食材が何であるか見た目に判別できないほどの真っ黒い小塊がごろごろと山盛りになってて、食ってみても鶏肉とは思えないほど硬い。アメリカ産の牛肉よりも硬い。この硬さと炭っぽさの取り合わせが、薩摩男の朴訥さに似て、いい味わいだ。

江戸でも食えないものかとずいぶん探し回った。鹿児島や宮崎の郷土料理を看板に掲げる店は、こっちにもけっこうあるのである。で、メニューには鶏もも焼きがちゃんと載っているのである。ところが、注文してみるとこれがぜんぜん違ってたりする。

硬くもなければ炭っぽくもない。串の刺してない焼き鳥みたいなつまらないものになっている。これは東京人の無知によるところが大きいのではないかと思う。店としては本場の味をそのまま出したいに違いない。ところが、それをやると、硬いだの焦げてるだのと苦情が来るのであろう。

ひとつの地域から生まれた商品を広範囲に販売しようとするとき、それぞれの国や地域の文化の相違を吸収して受け入れられやすくするために内容を調整することを、マーケティング用語で「ローカライズ」という。

なお、股上の浅いパンツは「ローライズ」というので、混同しないよう注意が要る。まあ、こういう用語が分かる者どうしで得々と話をするような意識高い系の人々とは、別段友達になりたいと思わない私であるが。

こっちでやっていくためには仕方なくせざるを得ないローライズ、いやいやローカライズなのかもしれないけど、私にとってはまったく余計なことで。行く店、行く店でがっかりを味わわされる。そうなると、反比例して、あれは美味かったというイメージがぶーぶーと限りなく膨らんでいく。

この風船を何とかするには、行ってまた食ってみるしかあるまい。そう思って薩摩を再訪したのであるが。その結果、本場の鶏もも焼きは、膨らみすぎた期待をも裏切らぬ美味さであることが判明し、たいへん困惑している。

●一昨年の暮れに出会ってしまった幸せの黒い鶏

前回鹿児島に行ったのは、2013年12月7日(土)、8日(日)だ。もみのこゆきとさんが、超現実的なまでの不運っぷりをツイッターで嘆くもんだから、「会うと幸せになれる」と噂されているセーラー服おじさんとしては、なんかプラスの効果でもあればといたずら心が起きて、押しかけて行ったのである。

職探ししているもみのこさんのところへ送られてくる求人情報は、的の外れたもんばっかりで、中でもひどいのが原子物理学の博士号取得者求む、というもので、あまりにも人が集まらないもんだから半ばヤケクソで、片っ端から誰にでも送りつけてるのだろうか。

しかも提示されてる年俸は6百万とのことで、優秀な技術者をおそらく危険な職務につかせておいて、これっぽっちの報酬ってことはないだろう、おいおい鹿児島だいじょうぶか、と心配になったものである。

そんな大変なときであったにもかかわらず、カラオケに飲みに観光にと連れまわしていただき、楽しいときを過ごさせてもらった。一日目にカラオケの後に連れていってもらったお薦めの店が「大安(だいやす)」である。

カウンターで隣の席の人が食べてる、真っ黒いごろごろしたものに興味を惹かれ、それ私にも、と注文したのが鶏もも焼きであった。わざわざ親鳥を使っている。親鳥というのは卵を産んだことのある雌鳥のことで、これがめっぽう硬いのである。ナイル川のワニよりも硬い。

こいつは美味いっ! 薩摩人、いいものを食っているではないか。結局、幸せになったのは私のほうであった。

●その後、サイバー戦士育成に腐心していたもみのこさん

ハローワークで思わず涙がぽとり、心やさしきおじさまからなぐさめられたけど、実は花粉症の涙であったという、語るも涙、聞くも涙の身の上話を2014年3月20日(木)のデジクリに書いて、すっと姿を消してしまったもみのこさんだが、その後、どうしていたのであろうか。

それは、12月31日(水)に発行されたスペシャル版「デジクリ行く年来る年」で明かされた。いわく、

「4月より闇組織でサイバー戦士を育成しているのだが、IT業界ブランク10年のわたしであるからして、本当に育成されなきゃならんのはこっちなんである。昔の記憶を掘り起こすのに忙しく、デジクリに出没できなくなったではないか。ただいまC言語の教科書を前に ♪そし〜て〜ぼくは途方に〜暮れる〜♪ と恨み節を唸っている」。

そういうわけでしたか。つまりはレギュラーな職に就けたってことだね。でも、聞くとけっこう大変そうである。大変そうでありながら、薩摩の明日を切り開く重い責務を帯びて、使命を果たすべく懸命に奮闘する充実した日々を送ってるって感じがあんまりしなくて、どこかトホホ感が漂うのはいったいどういうわけだろう。

その辺のところ、仕事が軌道に乗って少し余裕が出たころに、ご本人からぜひ語っていただければと願うところである。

●やっぱり違う鹿児島の鶏もも焼き

明治維新が実現してからなぜ薩摩と中央政府がモメて西南戦争勃発に至ったのであるか、日本史も世界史も万年赤点だった私はその辺の事情にはとんと疎いのであるが、1月24日(土)の午後は、心なしか上野のよりもずんぐりっとした西郷隆盛像や最期を迎えた洞窟などを、もみのこさんに案内してもらって過ごした。

明治維新から150年近く経てば、当時の文化の痕跡も残さないほどに世の中は様変わりするもんで、女子学生の格好をしたおっさんに訪ねて来られようとは、さすがの西郷さんも予測していまい。そう考えると、今から150年後なんて、いったいどうなっているか分かったものではない。

一昨年の暮れに行ったときは、新幹線を使ったが、今回は飛行機だ。1月にJALからマイルの有効期限が近づいているとのお知らせメールが来て、当月中に使わないと6,000マイルが消えちゃうという。なぜそんなにまとまっていっぺんに消えるのかよく分からないが、これを放っておくわけにはいくまい。

この時期、寒いほうへは行きたくない。どうせなら知った人がいるほうがいい。というわけで、もみのこさんに予告して、またしても薩摩におじゃましてきた次第である。

夜、前回行った「大安(だいやす)」にもみのこさんが予約を入れておいてくれた。今回は2号店だが、本店のすぐ裏手にある。さらに、二人呼んでくれていた。一人は東京の飲み会でお会いしたことのあるSさん。もう一人は前回行ったときに天文館で会って、アニメイトまで案内してくれた森野コウさん。

森野さんはコスプレイヤーとのことで、この日はセーラー服を着てきてくれた。それと、口枷屋モイラちゃんの缶バッヂをつけていた。モイラちゃんとはデザフェスで出展者どうしとして何度もお会いしているし、神保町画廊での自画撮り写真展も何度か見に行っている。他にも人形作家の美少女さんや緊縛師の一鬼のこ(はじめきのこ)さんなど、話をしていると共通の知り合いがどんどん出てくる。「住んでる」領域が近いのだ。

「大安」に入り、まずは鶏もも焼きを注文。四人なので二皿注文したら、楕円形のアルミのプレートにどっさり盛られて出てきた。二皿分合わせてあるのかと思いきや、もう一皿出てきてびっくり。

これがやっぱり東京のとはぜんぜん違う。東京のだって多少は硬いし、多少は黒く焦がしてある。けど、「大安」のは硬さと黒さにまったく遠慮会釈がない。このがっつり感! やっぱこれだよ!

それと鶏刺し。カツオのタタキよろしく表面だけ炙ってあるのだが、これがまた炭っぽい。鶏刺しはスーパーで普通に売ってて、家庭でも普通に食べてるそうだ。いいなぁ。

出てきた醤油が焼き鳥のタレみたいに粘っこくて甘い。皿から口へ運ぶまでの間に必ずつーっ、ぽとっとテーブルに垂れる。てっきりこの料理専用のタレなのかと思ったら、鹿児島の醤油は甘いんだそうで。え? じゃあ、焼き魚とか餃子にもこれなの? それはちょっと抵抗あるぞ。

鹿児島で酒と言ったら、日本酒ではなくデフォルトで焼酎だ。邪道なのかもしれないけど、私は鶏刺しはワインでいただきたい。生肉ににんにく醤油に赤ワインという取り合わせは、この世で最強なんじゃないかと思う。赤ワインは少し寝かせたコクのあるやつで、まったく甘くなくて渋めなのがいい。

余談だが、埼玉の上福岡にある「くにさき」というお店の牛刺しは最高だ。同じ建屋に肉屋と飲み屋が隣り合わせになっており、飲み屋で牛刺しを注文するとすでにシャッターを降ろしている隣りへ行って、しゃかーしゃかーとスライスしてきてくれる。生肉が大好きな私は前世が猫だったんじゃないかと。ごま油とにんにく醤油のタレがまた絶妙で、このタレだったらエチゼンクラゲでもいけちゃうんじゃないかと思うほどだ。

鹿児島の人の飲みっぷりは豪快だ。お湯割りを注文するとコップが出てくるのだが、水平に三本の線が引かれている。4:6と5:5と6:4。それ以外の割り方はナシってことかい?

焼酎だと、私の中でのオールタイムベストはオガタマ酒造の「さつまげんち」だ。10年くらい前に諫早の人からもらって知り、飲んで感動した。一時期栽培されなくなっていた「げんち芋」を復活させて造った焼酎だ。

ほくほくした甘いさつまいもではなく、筋っぽくて青くさーい、これがさつまいもの本来の味だっていうのががっつり現れている。これはめったに売ってないし、飲み屋に置いてあるのを見たことがないのだけれど、ネット通販で入手できるのでよしとしよう。

「大安」では、現地の文化もちゃんと味わうべしと思い、焼酎もいただく。控え目にと思って4:6に割ったけど、それでもそうとう強いぞこれ。調子に乗ってがんがん飲んでたら、へべれけになった。二軒目に焼酎バーへ行った記憶がほとんどない。

宿泊は去年と同じく高見馬場にある「天然温泉 霧桜の湯 ドーミーイン鹿児島」。「大安」から普通に歩ける近さだ。最上階には天然温泉大浴場があり、露天風呂もある。泥酔状態でもはやめんどうくさくはあったが、せっかくなので入ってから寝る。

●特に急がない特急

特急列車には二種類ある。お急ぎ系とお楽しみ系だ。前者を期待してうっかり後者に乗ったりすると怒っちゃうかもしれない。

エッフェル塔の前から発着するセーヌ川クルージングボートは、値段が高いやつほど航行速度が遅い。あれもこれもと欲張って見て回ろうとするせっかちな観光客たちを尻目に、ゆったりとしたときを過ごすブルジョワジーたち。

これに類すると言って言えなくもない特急が鹿児島を走っている。指宿枕崎線の特急「指宿のたまて箱」号だ。非電化路線であるため、ディーゼル車が走る。国鉄時代に主に普通列車用として運用されてきたキハ47系の車両を約一億六千万円かけて改造した三両編成の車両が一編成だけあり、鹿児島中央駅と指宿駅との間を一日に三往復する。

途中、喜入(きいれ)駅にだけ停車する。路線自体が速く走れるようなつくりになってないということもあり、特急でありながら、特別に急ごうという姿勢がまったくなく、45.7kmを55分かけて走る。途中で各駅停車を追い越したりしない。

内装はクラシックな木目調で、重厚感があってエレガントだ。海側の座席は窓に向けて配置されている。かつては西鹿児島駅と称されていた鹿児島中央駅を出ると、すぐに鹿児島本線から分岐して坂をずんずんずんずん登っていき、振り返ると鹿児島市街を見下ろして、その向こうにどどんと雄大な桜島が眺め渡せる。

「浦島太郎」の伝説は鹿児島のものらしい。駅に到着してドアが開くと屋根から煙が出る。玉手箱が開くと煙が出るという、なんたる演出! 吸ったら年老いてしまいそうだ。全車指定席なので満席になると乗ることすらできなくなる。これが大人気で、週末はたいてい満席になる。知っていたので、東京であらかじめ特急券を 二枚購入しておいた。

1月25日(日)9:58 鹿児島中央駅発の「指宿のたまて箱1号」にもみのこさんと乗る。

指宿には砂蒸し温泉という観光名物がある。砂浜からもやもやと湯気が立ち、打ち寄せる波に手を入れてみれば熱い。熱帯魚でもこりゃ無理という熱さだ。摂氏50度はあろうか。

砂むし会館「砂楽」という施設があって、入浴料920円を払うと浴衣とタオルも貸し出される。行った時間、団体さんの大きなバスが到着したりして、すごくにぎわっていた。フロントの受付には30人ほどの列ができている。こんなに混んでるとは思わなんだ。

男女別々の更衣室へ行き、浴衣一枚に着替える。これが私にとってはけっこうな羞恥プレイだ。むくつけき殿方がごちゃごちゃいる中で、セーラー服を脱ぎ、キャミソールを脱ぎ、ブラジャーを外し、パンティーとブルマを一緒に脱いでロッカーに放り込む。これはけっこう恥ずかしいぞ。かと言って女子更衣室に入るわけにもいくまい。

砂の上に仰向けに寝転んで、周辺の砂を上からかけてもらって埋まり、10分ほど蒸される。これが水分を含んでけっこう重い。心臓がばくばくと鼓動する。けど、たいへん心地よい。

試しに手の下を掘ってみたら、すぐ下の砂はものすごく熱い。ケチな性分なので、同じ料金ならなるべく長く埋まっていたいものだが、15分ぐらいが限界。下から熱が補給され続けているので、暑くてたまらなくなってくる。

建物へ戻ると、シャワーで砂を落とし、温泉風呂に浸かる。飲用に適さないと書いてあるが、試しに舐めてみると、しょっぱい。けど、海水ほどの濃さではない。地下水と混ざって湧いてくるのか。ときおり水風呂で体を冷ましたりして、たーっぷり時間をとってくつろぐ。

「砂楽」はこれほどにぎわっているのに、周辺の街並みのどよよっとした空気がたまらない。こういうの、けっこう嫌いではない。すぐ隣りは「偕楽園」と称する大きなホテルなのだが、営業している気配がない。従業員らしき人はいて、工事してたりもする。調べてみたら、2005年ごろから廃業しているとのことで、見たのは大方、亡霊か何かだったのであろう。

交通の頻繁でない通りを隔てた向かいには土産物屋が二軒ばかりあり、それぞれ二階が食堂のようになっている。あと、屋久島の木工製品の店があり、スナックやら怪しげな風俗店っぽいお店やらがあり、いちおう温泉街の様相を呈しているが、いかんせん人がまばらだ。ちょっと歩くともう全部見たという気になり、土産物屋の上で止まったかのごときまったりとした時を過ごした。

指宿駅に戻り、駅前の足湯でぱちゃぱちゃやっていると、きれいな女の人が私に会いにきてくれた。前回来たとき、鹿児島中央駅近辺での目撃情報をネットで見て、会えるかと期待してそこへ行ってみたけれど、もう立ち去った後で、会えなかったという。

今回は、鹿児島に行くとツイッターで予告したら、会いに行きたいとつぶやいてくれた。また行き違っては気の毒なので、こちらのスケジュールをツイートしておいた。そしたら指宿まで会いに来てくれたのである。

いぶたま号の指定席が満席で取れなかったとのことで、車で追いかけてきてくれて、鹿児島中央でもう一度会うことができた。改札口でお二人と別れ、私は日豊本線の特急きりしまで南宮崎へ。乗り換えて宮崎空港へ。そこから羽田へ戻ったのであった。鹿児島空港から発つのは遅い時間のがみんな満席で、宮崎空港発のにしたほうが、鹿児島に長くいられるから。

「大安」の鶏もも焼きはやっぱり美味いと再確認した今回の旅、幸せの黒い鶏はやっぱり身近 にはいないということなのだろうか。

♪ 黒い鶏逃げても〜 もう泣かないわ〜
(※)伊藤咲子『青い鳥逃げても』

写真はこちら。撮影: もみのこゆきとさん
< http://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Town150124
>

●チェーン店なのに味を使い分ける「山内農場」

焼き鳥屋ならそこいらじゅうにある。安いし、そこそこ美味い。使っている肉は、どこの庭にも二羽はいるという、名もなきふつうの鶏だ。一方、「地鶏」を掲げた鶏の店となると、とたんに値段が跳ね上がる。ユニクロとエルメスみたいなもんか。

だから、そんじょそこらの焼き鳥屋には目もくれず地鶏の店にわざわざ足を運ぶ人は、そんじょそこらの焼き鳥屋で出す肉とは一線を画する、とびきり美味いやつを期待するであろう。出てきたのがシベリア産のマンモスの化石みたいに硬かったら、まあ怒るであろう。

鹿児島の地鶏の店、というのは、それ自体コンセプト矛盾をはらんでいる。東京にあるその手の店は、どう解決しているのであろうか。

「山内農場」は鹿児島天文館に本店があり、全国に247店舗を擁するチェーン店である。「白木屋」「魚民」「笑笑」などを展開する株式会社モンテローザが運営する。

本店でやわらかい肉を出したら地元の人が納得しないであろうし、東京で硬い肉を出したら、本場の鶏もも焼きを知らない人は怒るであろう。

中野南口駅前店に行ってみた。ネットで調べると土曜は午前3時までやっているというので、午前1時に行ったら、もう閉店の時間だからと入れてもらえなかった。バスの走っていない時間なので、タクシーで行って、しょうがないからまたタクシーで帰ってきた。タクシー代、返してほしいなぁ。

調査のためと仕方なく、月曜、早めの時間に行ってみた。メニューに「地どり炭火焼」というのがあり「鶏もも焼き」とは謳っていない。出てきたやつの見た目はややそれっぽいのだけれど、非常にやわらかい。本場のを知らずに食べれば、これはこれで美味い。

じゃあ、天文館の本店ではどんなのを出しているのだろう。もみのこさんにお願いして、調査してきていただいた。もみのこレポートによると、天文館 本店のは、そんなにニセモノ感は漂ってなかったとのこと。「大安」に比べると柔らかいけど、歯ごたえはあったと。味はよかったと。

「地鶏」には日本農林規格(JAS)の定めた基準がある。種類だけでなく、飼育環境や飼育期間まで規定されている。もみのこさんはレポートしていて「山内農場」で出される素材の違いに気がついた。

ウェブサイトへ行ってみると書いてある。「山内農場」は三種類の地鶏を使い分けてて、どれを出すかは店舗によって異なるとのこと。「黒さつま鶏」「薩摩山内地どり」「丹波黒どり」の三種だ。

「丹波黒どり」って京都のブランドやんけ。本店で出しているのは「黒さつま鶏」だ。なぜか「黒」の大好きな鹿児島において、黒豚、黒牛に次ぐ「第三の黒」なんだそうで。東京近辺のお店でこれを出してるとこってあるのだろうか。中野南口駅前店は「薩摩山内地どり」だった。自社で開発して、JASの認定を受けたという地鶏だ。

そもそも鶏の種類が違うってわけだ。もみのこさんと私とで、違う舌が違う味を味わってるわけで、比較するのはなかなか微妙なところである。

ところで私は地鶏であることにはまったくこだわっていない。自撮りでも他撮りでもいいから、本場の硬くて焦げてる鶏もも焼きが食いたいのである。

「山内農場」のは値段が高くて分量が少ない。これはもみのこさんとも一致した意見である。1,270円もするのに、さっと食べきれて、なんだか物足りない。「大安」のは500円で、一人じゃもて余すくらい山盛りで出てくる。コストパフォーマンスでは、「大安」の圧倒的勝利だ。

●ゲーム性がメイド喫茶っぽい「塚田農場」

「山内農場」と似てる点が多々あり、お互いを意識しあっているライバルどうしなんだろうなぁと感じさせるチェーン店が「塚田農場」である。85店舗ある。「宮崎県日南市・日向市塚田農場」と「鹿児島県霧島市・塚田農場」とがあり、前者では「みやざき地頭鶏」を出し、後者では「黒さつま鶏」を出している。おお、これは分かりやすい。

ウェブサイトで店舗が検索できて、都内でも黒さつま鶏を出している店舗がたくさんある。「西新宿小滝橋店」とか「新宿三丁目店」とか。私が行ったことのある「中野北口店」と「新宿歌舞伎町店」はどちらも宮崎だった。肉は非常にやわらかかった。今度、鹿児島のほうにも行ってみよう。

このお店のシステムはメイド喫茶っぽい。最初に行くと「ヒラ社員」に格付けされ、回数を重ねるにつれて昇進していく仕組みになっている。マーケティングで言うところの「ゲーミフィケーション 」の考え方を取り入れていると言える。要はゲームっぽく楽しめるのである。

●肉の硬さでは比類をみない「ぢどり屋」

「ぢどり」は「地鶏」ではないので、JASの認定なんて関係ないんである。ここで出してる「ぢどり炭火もも焼き」の硬さには恐れ入った。東京でこれを出しちゃう思い切りのよさ、すばらしい!

チェーン店で24店舗ある。中野店はのれん分け的な位置づけの店で、比較的自由にやれるらしい。看板には「博多中洲ぢどり屋」と謳っていて、「もつ鍋」なんかもいいのだが、メニューには「ぢどり炭火もも焼き」があり、これがどう見たって鹿児島っぽい。楕円形のアルミのプレートに盛られてるのも、「大安」っぽくていい。

いつ行っても混んでてなかなか入れない人気店だ。

●しょっちゅう行っちゃう「ぢどり亭」

「ぢどり亭」は大阪や東京を中心に61店舗あるチェーン店である。「南薩鶏」を使っているというが、JASの認証を受けた地鶏なのかどうかは知らない。どっちでもいいことである。

ウチの最寄駅のすぐそばに店があって、帰りがけについつい寄っちゃうのである。去年一年間で52回も行っている。鶏依存症が疑わしい。

「鶏もも焼き」は、「大安」のほど硬くもなければ炭っぽくもないのだが、そこそこそれっぽい。ここは「鶏刺し二種盛り」が絶品だ。分量も多くて、これとキャベツを注文すると、それだけで満腹になる。寒い日は鍋にするが、それだけで腹がぱんぱんになり、他に何も頼めなくなる。

鶏刺しが食えなかったのが心残りで、次の日にまた行くという循環。鶏刺しには薬味としてわさびとおろしショウガとおろしニンニクが添えられて出されるが、私はもっぱらニンニク醤油でいただく。酒は赤ワインをグラスで。もうこれで最高に幸せな気分に浸れちゃう。

人間の本分は抽象思考によって発揮されるべきものであり、我利我欲に駆られて形而下的な世界のみに生きる者はまだ人間になりきれてないのだと普段は思っている私であるが、美味いもんを食うって話になれば別だ。やっぱ格好つけてても美味いもんにはかなわない。「人は鶏のみにて生きるにあらず」と言うけれど、いやいやもう鶏でいいや、と。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/
>

1月12日(月・祝)、二次元とデートしてきた。都内某所にある『BAR 嫌われ野菜』の常連さんの一人であるアイドルのトマトちゃんと。渋谷でカラオケ、それから原宿をお散歩。その模様は charamaf でレポートされています。
< http://charamaf.com/6395.html
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縛り上げられ、吊し上げられた。1月17日(土)。緊縛師は一鬼のこ(はじめ
きのこ) さん。写真はこちら。
< http://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Studio150117
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編集後記(02/06)

●2014年、国際的禁治産国家・北朝鮮が突然日本にすり寄ってきた。5月には日本と北朝鮮の外務省局長の間で合意がなされ、7月には懸案の日本人拉致問題を含む調査委員会が北朝鮮に設立された。日本にとっては拉致問題解決のチャンスが生まれた。圧倒的に日本が優位なはずなのに、日本から和解を求めているかのような一方的なマスコミ報道と、政府の甘い対応(なにも得ていないのに制裁の一部を解除とか)のせいで、北朝鮮は強気に出る。約束の9月に調査報告を提出せず、調査について聞きたければ平壌に来いと言い放つ始末。2014年中には何の進展もない。北朝鮮はなぜそんなデカい態度をとれるのか。

青木直人「日朝正常化の密約」(祥伝社新書、2014)によれば、北朝鮮の異常な強気の根拠は2002年9月17日の小泉訪朝時に取り交わされた「日朝平壌宣言」にあるという。その宣言の内容を知る国民はほとんどいない。この宣言には、日本の植民地支配への謝罪と経済支援だけはこれでもかというくらい書かれている一方、肝心の拉致については「拉致」という言葉そのものの記載がない。「国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注する」という北朝鮮にとって至れり尽くせりの内容で、これを盾にとって居直っているのが今の北朝鮮だ。しかも、その内容は5月の協議で「再確認」されたという。

拉致すら認めていない公的文書を、拉致被害が明らかになった今でも「有効」であると政府・外務省は言い続けているのだから、北朝鮮は日本側が拉致を本気で怒っていないと理解した。本気で怒っているのは拉致家族と国民だけであり、政府ではないと知った(残念ながらそれは本当のことかも)。北朝鮮の腹の中を筆者はこう読み解く。「次は日本にまだ残っている贖罪派文化人やメディアを通じて、国交正常化の世論を醸成すればいい。それに反対の声をあげる者たちには、ヘイト(人種差別)の言葉を浴びせればいい。あとは日本政府が国民を黙らせてくれるだろう」。北朝鮮は日本の制裁復活はもうないと安心しきっている。

政府はいま手をこまねいているが、まだカードはある。条約ではない「日朝平壌宣言」の破棄を通告することだ。日朝正常化ありきという合意を白紙に戻して、拉致解決を最優先とした対北朝鮮外交に軌道を修正すべきだ。しかし外務省高官にとっては、拉致問題の解決よりも国交回復のほうがお手柄だと思っているから、要らざる妥協を今後も繰り返すだろう。ところが、この本の「日朝平壌宣言」の読み方と真逆の、「完全勝利だった小泉訪朝と平壌宣言」と書かれた痛快な本を読んでしまった。どっちの解釈が正しいのか、青木直人か、それとも「説教ストロガノフ」なのか。両方正しいような? つづく。(柴田)

↑とはまったく関係ないけど
< http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42612
>
IT・国際化時代に最もふさわしい大学を創れ!
急成長「デジタルハリウッド大学」の挑戦と軌跡 川嶋 諭(JBPRESS)
デジハリの杉山知之さんをインタビュー 面白い!

●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします