[3924] ソウルの友と文字について語るの巻

投稿:  著者:


《覆面調査員みたいですね(笑)》

■わが逃走[161]
 ソウルの友と文字について語るの巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[21]
 街中で見つけた素敵な書体たち〜第1回〜
 日本人は丸ゴシックがお好き?
 関口浩之




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■わが逃走[161]
ソウルの友と文字について語るの巻

齋藤 浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20150611140200.html
>
───────────────────────────────────

韓国のデザイナーAhn Sam-Yeolさんと、Chae Byungrokさんと私による、ソウルでの三人展が実現しました。

ソウルでのオープニングは大盛況で、韓国のデザイナー、雑誌編集者、美大生など大勢の人たちが訪れてくださいました。雑誌の取材も受けましたよー。

このときの様子を思い切り語りたいのですが、胸がいっぱいでまだ整理ができません。なので、今回はこの展示のために制作した新作ポスター三点の制作背景を語ります。

文字好きのデザイナー三人があつまり、文字の成り立ちを探しに社会科見学に出かけるというストーリーを想定、博物館、美術館、工場を見学し『飛』『明』『友』という三つの文字について考えています。

ポスターとはそもそも不特定多数を相手にすることを想定してデザインするものですが、今回はタイポグラフィをテーマとしたギャラリー展示に来てくれた人が相手なので、いつもより多少表現を変えています。

これらを見ながらこの字の成り立ちについて来場者と語り合うわけですから、つまり、一枚絵の教材のような役割の大きな紙三枚セットですね。


< https://bn.dgcr.com/archives/2015/06/11/images/001 >

「わが逃走」第159回でも、そのコンセプトというか気づきというか、そういったものを書きました。

この字はもともと飛ぶ鳥をモチーフとした象形文字ですが、それが現在の文字に至るまでのフォルムの変化が航空機のスタイリングの進化に似ている! と気がつきまして、大昔の「飛」、昔の「飛」、現在の「飛」をモチーフに飛行機をデザインし、それが博物館に展示されている様子をメインビジュアルにしました。


< https://bn.dgcr.com/archives/2015/06/11/images/002 >

この文字は「明」はbrightを意味する漢字で、「日」sunと「月」moonの組合せによってできています。

つまり、明るいものを二つ組み合わせたから明るいという意味なんだろうと勝手に思い込んでいたのですが、調べてみると「日」は窓であり、窓から月明かりが差し込むシーンを表しているという説もあるそうです。

闇というステージを用意することで明るさをより印象づけるとは、なんとも映像的な演出がなされていたんだなあ、漢字とは奥が深いぜ。

ビジュアルは夜の美術館から月明かりを鑑賞する三人。


< https://bn.dgcr.com/archives/2015/06/11/images/003 >

この字を構成する「ナ」と「又」はもともと同じ文字で、「右手」を表す字が二つ組み合わさってできたものです。右手と右手が協力しあって握手、そして「友」となるわけです。

ポスターは「友」の生産ラインを見学中の三人を、メインビジュアルとしています。

そんな訳で、新作ポスター三点の紹介でした。

現在、ソウルからウルサンに向けてKTSで移動中です。午後からウルサン大学にて特別講義をすることになっちゃった。

マジで? オレなんかでいいの? と思い続けて約半年、ついにこの日が。キンチョーする齋藤浩です。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
>

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■もじもじトーク[21]
街中で見つけた素敵な書体たち〜第1回〜
日本人は丸ゴシックがお好き?

関口浩之
< https://bn.dgcr.com/archives/20150611140100.html
>
───────────────────────────────────

こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。今回より4回連続で「まちもじ」特集お送りします。

普段の生活の中で見つけた文字にフォーカスしたお話です。街中の看板やポスター、中刷り広告、テレビテロップなどから気になる文字を取り上げます。

僕自身も肩に力入れず「この文字なんか気になる……」「こういう場面ではこの書体が使われるのね……」的な感覚でレポートします。

みなさんもお茶でも飲みながら気軽にお楽しみください。

●日本人は丸ゴシックがお好き?

書体には明朝体とゴシック体があるのはご存知ですよね。そして、ゴシック体には角ゴシック体と丸ゴシック体がありますよね。

第1回は、角が丸い「丸ゴシック体」に焦点をあててみましょう。

まず最初に、病院の案内板や病院名の看板文字を観察してみましょう。

僕はふだん病院に行くことはあまりないのですが、最近、腸炎にかかり近くの病院に行きました。それと、人間ドック二次検査で生まれて初めて胃カメラ飲みました。

それら病院の案内板はすべて丸ゴシック体を使用していました。
< http://goo.gl/tnLUPs
>

次に大手調剤薬局チェーンのWebサイトを観察してみましょう。
< http://www.nicho.co.jp/
>

このサイトは日本語Webフォント「FONTPLUS」を利用して、見出しなどに丸ゴシック体を使用しています。画像文字ではなくてWebフォントです(一部、画像文字も使っています)。

もし、このWebサイトの書体が明朝体で作られていたら、文字のハライが尖っているので、注射器の針を思い出してしまうかもしれませんね……。

丸ゴシック体なら優しさを感じられます。調剤薬局ですし、丸ゴシック体でカプセルのお薬を連想させることもできますね。

週末にドラックストアに立ち寄りました。丸ゴシック体がどこで使用されているか探索してみました。覆面調査員みたいですね(笑)

ありました! ベビーフードが陳列されたコーナーです。異なるメーカーのすべての商品パッケージに丸ゴシック体が使われてました! 
< http://goo.gl/W83aFi
>

乳幼児向け商品ですし、「やさしさ」や「かわいらしさ」を丸ゴシック体でアピールしているんだと思います。

このようなケースにかかわらず、「かわいらしい」「ひとに嫌われない」ってイメージは、マーケティング的にも大事な要素かもしれません。

ただし、格式ある老舗ホテルなどでは丸ゴシック体よりも明朝体が好まれると思います。つまり、商品やコンテンツのイメージにあわせた書体選びが重要なのです。

では、それ以外の場所で発見した丸ゴシック体の皆さんに登場してもらいます。
< http://goo.gl/ueT7JB
>

「止まれ」の看板が、丸ゴシック体だったって知ってましたか?

世界的に有名なタイプデザイナー小林章さんの著書「まちモジ 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」を先日買いました。

このエントリーを書く前に読んでしまうと、それに引きずられそうなので読みませんでした。ここまで文章を書いたので、先ほど、読みました!

小林章さんの本の中で「止まれ」の標識が例題になってました! 同じものに目が行きました……。なんかうれしいです(笑)

小林章さんの「まちモジ」の第1章 〜日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?〜 ではこんなことが書いてありました。

・手書き看板職人にとっては角ゴシックよりも丸ゴシックのほうが早く書ける
・平筆(看板書きで使用する筆)の動かし方、レタリングの観点からすると、角ゴシックのトメやハライの角処理に手間が掛かる。
・大きな文字の角ゴシックのハライ処理がうまくないと「ざわついた感じ」になる。

やはり、小林章さんの考察はすごいですね。恐れ入りました。興味のある方は
手にとって読んでください。

小林章さんの本のタイトルが「まちモジ」だったので、僕のメルマガエントリーでは「まちもじ」にしました。

過去に、文字の巨匠である小林章さんの、カリグラフィー講座やセミナーに三回参加しました。毎回、文字の歴史や文字の深い話を、わかりやすくやさしく解説していただきました。とても勉強になります。

小林章さんの書籍はそれ以外にこの二冊を持っています。読んで楽しかったのでご参考までに紹介します。
・フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?
・欧文書体 その背景と使い方

どちらの書籍も欧文書体(アルファベット)のことが書かれていますが、文字のデザインを学ぶ上で、まずは欧文書体を知ることが近道だと思います。

文字の世界は楽しいですよねー。

そういえば、デザインの月刊誌「MdN」7月号(2015年6月5日発売)ご覧になり
ましたか? 

特集は『絶対フォント感を身につける』です。特別付録の小冊子は160ページのフォント見本帳です。

この本は、文字オタク向けではなく(もちろん、文字オタクも買うと思いますが)、文字が少し気になる、フォントをちょっと勉強してみたい、という人向けに制作されています。

人気あるみたいで、僕もやっと今日入手しました。書店でも売り切れのところが多いですし、ネット書店でも在庫なしのところが増えてきました。

この雑誌の「絶対フォント感を身に着けるための参考書」のページに12冊掲載されていましたが、その中の10冊は持っていました(笑)

厳選12冊の中にデジクリ編集長の柴田忠男さんが編集した「基本日本語活字集成 OpenType版」が紹介されています!!!
< http://goo.gl/55cOf4
>

気になる方はお早めに。(ただ単に個人的にオススメ雑誌なだけです……)

次回はまちもじ第2回をお送りします。どんな書体が登場するか、お楽しみに。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
< http://fontplus.jp/
>

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。

・「基本日本語活字集成 OpenType版」は「基本 日本語活字見本集成 OpenType版」の二版目で、タイトルから「見本」がはずれています。この本については、わたしがデジクリでも書いています。(柴田)
< https://bn.dgcr.com/archives/20070423140200.html
>


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(06/11)

●自転車散歩で立ち寄った川口市アートギャラリー・アトリアで、不思議な文字に出会った。「新鋭作家展」で優秀者二人と二次審査の作家九人の作品が展示されていたが、これはインスタレーションというジャンルなのだろうか、申し訳ないがさっぱり意味不明なのだ。二次審査の作家のひとり、牛島光太郎さんの、布に描いたタイポグラフィが気になった。大きな白っぽい縦長の布に、一文字2センチ角くらいのサイズで黒い文字で横組みで物語が綴られている。行間はともかく、字間が空きすぎで、上手ではない文字組みだ。しかも、見たこともない素朴な味わいの(というよりヘタな)フォントである。

なんじゃこれは〜と接近して見ると、この文字は黒くて太い糸であった。言葉を一文字づつ布に刺繍していたのだ。漢字もかなも一文字づつ正確に縫い込んでいる。一文字目の終点が布に没し、二文字目の始点が布から現れる。もしかしたら、全文字が連結しているのか。布の裏を見たい! 監視のお姉さんに聞くと、どうなっているんでしょう、わたしも見たい、というが作品に手を触れるのは厳禁なので、共犯関係は成立しなかった。あとでネットで調べたら、この作家の得意技らしい。布に書かれた物語と、収集したモノなどを組み合わせたのが一作品なのだというが、モノは何があったのか見落とした……。

大相撲のテレビ中継を見ていると、力士の四股名を書いたプレートを掲げる観客がいる。昔はこんなみっともない行為は見たことがなかったから、最近の現象なのだろう。わざわざNHKがこんな場面を好意をもって(?)映し出すから、やってる奴は得意だろうが、テレビ桟敷の良識ある大人(わたし)は怒り心頭である。一部のファンが、野球やサッカーのような騒々しくて品のない応援を勝手にやっていて、大相撲の雰囲気ぶちこわしである。最近読んだやくみつる・デーモン閣下「勝手に大相撲審議会」(中央公論新社、2015)でもこの風潮に苦言を呈している。プレートは一応相撲の字体に似た書体が多いようだ。

この大相撲審議会でも、NHKの中継カメラの画角の中に「LOVE(ハートマーク)遠藤」とか、「頑張って!○○」とかいうのが出るようになったら、もう終いだと言っている。エスカレートすると、四股名に色がついたり、金モールがついたり、振ったりして……。だから絶対にこの段階で止めないといけない。ほんとは禁止したいが。せいぜいA3サイズ、四股名だけ、メッセージ一切なし、これが許せるギリギリのところだ。野球のようなバカ騒ぎ応援になるまえに、相撲協会が観客に向けてキチッと言うべきではないか。相撲文字似のフォントで四股名だけね。絶対に「創英角ポップ体」なんか使ってはだめよ。 (柴田)

< http://artium.jp/exhibition/2010/10-02-ushijima/
>
ART GALLERY ARTIUM 牛島光太郎作品が見られる

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120047075/dgcrcom-22/
>
やくみつる・デーモン閣下「勝手に大相撲審議会」


●マラソン続き。ホテルに戻ったら、キャンセルが出たとかで別の部屋を案内された。洗浄ボタンを試してみたら軽い。ということで移ることに。

このホテルは禁煙喫煙の区別がなく、だからすぐに予約終了にならなかったんだろう。ということを新たな部屋に入って思った。ボタンとタバコの臭いとを両天秤にかけ、消臭スプレーを横目にタバコを取った。

ひとりになってから、消臭スプレーを天井から壁、空間、カーテン、ベッド、床などにかけまくった。と、なんということでしょう。タバコの臭いが消えていく〜。

見たことのないスプレーで、パッケージには「清水香」と書かれてあった。白元とも。欲しいと思ったので検索してみると、開発ストーリーが引っかかった。タクシーでよく見る名前、国際興業の人が発起人で、白元と共同開発をして出来たものらしい。

「試せば分かります。消臭効果をみれば、自然とうちの製品に切り換えてくれます。」「プロの現場が使う、プロが納得する、プロ仕様の商品を完成させる必要性を感じていた。」「当時は主に企業やホテル・バス会社等にシステムやネットワークを販売していた。」「異業種交流会で、偶然白元の現社長と出会う。」「約1年半の歳月をかけ清水香は完成することになる。」「いかににおいに対する問題を抱えているところが多かったのかを、改めて実感する。」

なるほどなぁ。本当にきくと思ったわ。以前同様のケースで、市販の消臭剤を使った時と違っていたもの。続く。 (hammer.mule)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00BF7893W/dgcrcom-22/
>
無香料やシトラス、フローラ&フルーティー、ウッディーグリーン。ホテルのはシトラスだった。

< http://seisuika.com/story/
>
共同開発ストーリー

< http://seisuika.com/
>
清水香と書いて、せいすいかと読みます。

< http://www.hakugen.co.jp/
>
白元がアース製薬に事業譲渡していた〜! ミセスロイド〜