[3960] 行列のできるセーラー服おじさん

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《いよいよオレもオワコンかいな?》

■Otaku ワールドへようこそ![216]
 行列のできるセーラー服おじさん
 GrowHair




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■Otaku ワールドへようこそ![216]
行列のできるセーラー服おじさん

GrowHair
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いつまでもあると思うな人気と仕事。飛ぶ鳥もいつかは下降し着地する。夏草やキワモノどもが夢の跡。

6月はシンガポールに行き、タイに行き、ばたばたした日々を送っていたが、タイから帰ってくると、そこからの予定が急にがら空きになっていた。

私は芸能でメシを食ってるわけではなく、裏ではこそこそと本業にいそしんでいるので、A面が暇になったところで飢え死にするわけでなし、何が心配ということもない。原宿にでも行って、竹下通りで女子中高生たちからきゃーきゃー言われて写真を撮られまくって過ごしたっていい。

けど、スケジュールがこうも急に過密から空白へと転じると、ひょっとするとこのまま金輪際なにも来なくなって、いよいよオレもオワコンかいな、と若干不安にならなくもない。

その心配はまだ無用だった。6月22日(月)、6:55amに羽田空港に到着したタイ国際航空 TG682 便を降りると、若干ヒヤヒヤしなが、セーラー服姿で職場の最寄駅を通って帰宅し、その日は仕事を休んだ。

あらためて寝なおすかと思ったところへメールが届いた。10:23am タイトルは「『行列のできる法律相談所』ご出演依頼」。番組の制作会社からだ。

●まだ喜ぶ段階ではない

この種のメールの例にもれず、「突然のご連絡、失礼いたします」で始まる。番組の企画でこの人を出演させたいとなったとき、どうやって本人に連絡をつけるかがひとつのハードルとなる。ネットで検索かけまくって、メールアドレスにたどり着いたのであろう。

いま、自分で試してみたら、そう簡単にはたどり着けない。「セーラー服おじさん メールアドレス」で検索かけたぐらいじゃ、出てこない。がんばったなー、じゃなくて、申し訳ない。いま、ツイッターのプロフィール欄にメールアドレスを書き加えてきました。

日本テレビ『行列のできる法律相談所』という番組を制作している〇〇社の××と申します、と自己紹介があり、企画概要が述べられており、収録予定日と放送予定日が書いてあり、ついては、「当番組に出演することは可能でしょうか?」とある。さらに、「出演可能な場合、収録予定日はスケジュールが空いていますか?」と聞いてきている。

日曜夜9時から放送される日テレのこの番組、けっこう人気高いらしい。テレビや芸能方面には極端に疎い自覚のある私でさえ、なぜか聞いたことあるぞ。この番組を知らないって人を探すのはそうとうたいへんかもしれない。

私は今まで、TBSテレビ『有吉ジャポン』、日本テレビ『月曜から夜ふかし』、NHK Eテレ『Rの法則』などに出演しているが、この番組は、視聴者層の幅広さがだいぶん違う感じがする。これに出たら、そこそこ有名になっちゃうかも。

しかし、まだ喜ぶ段階ではない。この段階から放送に至るまでの道のりにおいて、感覚的にだいたい半分くらい行き止まりになる。断られることを想定して、出演枠よりも多くの人に声をかけていて、出演OKの回答が多すぎた場合には、誰かが切られるとか。

制作会社で企画を詰めて、だいたいの手はずを整えて、局側に提案したら、ボツを食らったとか。

収録してから編集会議でカットされちゃうとか。放送を待つばかりの段階まで来て、出演者の一人がなんかやらかして、番組が丸ごと吹っ飛んじゃうとか。天変地異や政変が起きて、実況ニュース番組に切り替わっちゃうとか。

メールにも先手を打って書いてある。「正直なところ、出演枠以上の方にお声をかけさせていただいており、すべての方にご出演いただけない可能性もあります」と。

これ、書いとかないと、後で怒る人、いるんだろうなぁ。テレビ出演なんて、一生にいっぺんあるかないかの千載一遇のチャンスと思って構えてたのに、ぬか喜びさせやがって、と。親戚中に触れまわっちゃったぞ、とか。

コップに水が半分しか残っていないと思うか、まだ半分あると思うか、って話じゃないけど、ものごとをあんまり楽観しないタチの私は、放送開始直前の最後の瞬間まで、どうせ結局はボツになるんでしょ、と、はすに構えているので、ちっとも浮かれた気分になれない。

●これをもって運気を占おう

過去を振り返ると、割と運気が強いほうだったかと思う。偶然にしては生起確率のそうとう低そうな事象が、けっこう平気でよく起きる。

天のほうからなんかよく分からない力が作用しているんじゃなかろうかと思えなくもないが、数学を専攻した理系の人間であるからして、あんまり神秘主義的な方面へ走るのもどうかと思う。

そこで、自分なりに、「上昇気流仮説」なるものを練っている。ざっと言えば、運気を上昇させる気流は、誰にでも等しく吹いてくるものであるけれど、その気流をずっと維持できるかどうかは心がけ次第だ、というような理論である。若干怪しげであることは否定しきれない。

運気とは、マクロ物理学における「気体の温度」みたいなもんかと捉えている。われわれのまわりには空気があるけれど、物理的な実体として空気というモノがあるわけではない。

実際には、真空中に窒素分子や酸素分子などの恐ろしく小さな粒子が恐ろしくたくさん飛び交っていて、それらの総体が、空気として認識されている。

一個一個の粒子は、重力の影響を無視すれば、別の粒子と衝突するまでの間は等速直線運動をしている。速いやつもいれば、遅いやつもいる。飛んでいく向きもあっちこっちバラバラである。別の分子と衝突すると、運動量保存則とエネルギー保存則にしたがって跳ね返る。

大量の粒子が互いに衝突・跳ね返りを繰り返しつつ飛び交っているという状態が、空気と称される対象のほんとうの実体である。一方、われわれは、空気というものを、もっと「もやっ」とか「ふわっ」としたものとして、感覚的に捉えている。それが間違った捉え方だというわけではない。微視(ミクロ)的捉え方と巨視(マクロ)的捉え方の相違である。

質量 m の一個の粒子が速度 v で飛んでいるとき、この粒子は(1/2)m v^2 という量の運動エネルギーをもつ。いろいろな質量の大量の粒子がいろいろな向きにいろいろな速度で飛び交っているとき、個々の粒子の運動エネルギーの全粒子にわたる総和を考えることができる。それがほぼ「温度」という概念そのものである。

ついでに言うと、個々の粒子の速度ベクトルの、全粒子にわたる総和がゼロベクトルになっているとき、これが無風状態である。そうでないとき、その総和ベクトルの向きと大きさに応じた風が吹いていると知覚される。

真空中に粒子が一個あるだけでは、それそのものに温度があるわけではない。風だって、どこにも吹いていない。粒子が大量に集まることによって初めて、総体としての状態を表す特徴量として、温度や風という概念が生じるのである。

下位レベルには存在しなかった概念が、上位レベルにおいて発生するという点において、「創発」の一種と捉えてもよいかもしれない。

個別の粒子のレベルでは、等速直線運動と衝突・跳ね返り以外に何も起きていないにもかかわらず、マクロなレベルでみたときに、風、つむじ風、乱気流、エアポケットといった風変わりな現象として観察されることが起きたりもする。

逆にわれわれは、温度や風は肌で感じとることができるけれども、一個一個の粒子については存在を意識することすらできない。

ここまではれっきとしたマクロ物理学の話だが、これを比喩的に、運気のメカニズムの原理へと移植できないかと考えるのである。

地球上にはいっぱい人がいる。何十億だか。日本だけでも一億人以上いる。一人一人がどんな姿をもった人で、どんな性格で、どんな挙動をとり、どんな気分でいるのか、全人類にわたって個別に把握しきることはできない。

また、人と人とが、血のつながりがあるか、友達か、上司と部下か、ただの知り合いか、相手を好きか嫌いか、仲がいいか悪いか、信頼しているか用心しているかなど、関係性によって張りめぐらされたネットワークを全人類にわたって個別に把握しきることもできない。

それは、われわれの感覚が、空気を構成する分子の一個一個の存在や相互の衝突を知覚できないのと同じことである。

しかしながら、膨大な数の人々が集まることによって初めて形成されるある種の空気みたいなものを肌で感じとることはできる。それが、お国柄とか、民族性とか、活気とか、ムードといった言葉で称される、「もやっ」、「ふわっ」とした感覚的な何かである。

それは、気体の温度や風が肌で知覚されるのと同じことである。

人の集まりの形成するムードが、自分を押し上げてくれる上向きの風として作用しているとき、上昇気流が吹いていると考えてよい。これが運気の正体であろうと考えている。

もし一人一人の状態や関係性をすべての人にわたって個別に把握することが可能であれば、そこに神秘性の入り込む余地はなく、分子の挙動のように基本原理に極めて忠実な振る舞いをみることになろう。しかし、実際にそれができない以上、運気は神秘性を帯びて感じとられる。

たとえば、ここに性根の曲がった人物がいたとして、表向きには人当たりよく振舞っているが、陰ではなんとかして人の成功を邪魔して、蹴落としてやろうといつもこそこそと策略を練っているとしよう。

このとき、一件一件の悪巧みは、人に見破られることなく、うまく隠しおおせることができているかもしれない。しかし、もしかすると、なんだか気を許せないという「感じ」がなんとなく察知されてしまっているかもしれない。

そのとき、まわりの人々は心の隅っこのどこかで用心がはたらいて、なんとなく距離を置いてしまう。そうなると、親しい間柄でなら伝わりやすいオイシイ情報が、この人にだけは伝わりづらくなっていくかもしれない。

結果として、その人にはいいことがあんまり起きず、なんだか損ばかりしていることになる。ミクロ視点でみれば、おそらくそんなところであって、どこにも神秘性はない。けれど、個別のメカニズムが把握できない以上、みかけ上、神様はすべてお見通しで、 悪いたくらみをした人には必ず天罰が下る、というふうにみえるかもしれない。

この種の神秘主義的信仰は、ミクロのメカニズムが把握できないことに由来する、マクロ視点の捉え方であって、あながち非科学的だとか、気の迷いだとかと否定しきれるものではない。と、私は思う。神秘主義とは、マクロ物理学みたいなもんなんじゃないかと考えている。

すごい偶然が起きるか起きないかは、時の運による。単なる確率の問題であるとするならば、その時々でいい目が出るとき、悪い目が出るときがあっても、繰り返せば均されていく。

サイコロを100回続けて振って、ずっと 6 の目を出し続けることは、とうていできない。だいたい確率どおりに合ってきちゃうもんで、誰がやっても結果に大差はない。

運気というのは、そういう偶然の産物ではなくて、裏にはちゃんと必然の法則が隠れており、6 の目が100回出続けるのに匹敵するようなことが、現実には平気で起きる。

上昇気流の吹き始めの機会は、誰に対しても、ほぼ公平に訪れる。その上昇気流が吹き続けるかどうかは、その人の心がけ次第である。

悪い心がけを発動させたとたん、気づかないのは本人ばかりであって、その瞬間に実は自分で上昇気流を蹴散らして吹っ飛ばしてしまっている。その人が乗っかってた気流が雲散霧消すれば、ぴゅーっと下降していく。

私は、他人についても、自分についても、上昇気流が吹いているかどうかがなんとなく見える気がする。おまえ、今、この瞬間に、自分の上昇気流を自分で吹っ飛ばしたからな、というのが察せられる。

ところが、本人はさっぱり気づいてないことが多く、たいへんじれったい思いをすることがある。

概して、他人に吹く気流よりも、自分に吹く気流のほうが見えづらい。私については、何年にもわたって上昇気流が吹き続けており、6 の目が出続けているという感覚がある。

ところが、ここ一〜二か月の間、そうとも言えないような目が出ることがあり、ひょっとすると、ついに私も自分の上昇気流を知らず知らずに吹っ飛ばしてしまったかと、若干心配になっている。

なので、今回来たテレビ出演話が、途中で頓挫することなく放送までこぎつけることができるかどうかをもって、自分の運気を占ってみようか、という運試し的な心が生じているのである。

●こっちからダメ出し

だったら、何がなんでもゴールに到達できるよう、全力でがんばってみるべきところではある。しかし、あんまりガツガツしすぎるのも、かえって上昇気流を吹っ飛ばす結果をもたらしかねない。

6月28日(日)、17:09 中野発の中央線中央特快東京行に乗り、17:19 に四ツ谷駅で降り、徒歩で麹町の日テレへ。二階の暗めのロビーを抜けて会議室へ案内され、番組の担当ディレクタ氏と制作会社の人と私の三人で打合せ。局側の人は参加しておらず、この段階ではまだ私の出演は決定していない。

ディレクタ氏がまず、企画内容を説明してくれた。ネットで話題になっている人に会ってみようというもの。聞いてすごーく心配になった。それって二年以上前に出演したTBSテレビ『有吉ジャポン』と同じではないか。

あの時点ですでに私はネットでけっこう話題になっていて、ネット上のメディアでインタビュー記事がすでに何本か出ていて、私がどんな人物であるかについて、結構な情報がすでに公になっていた。番組としては、まだ知られていない側面を拾い上げたいと意欲的で、七回にわたる密着取材を敢行してくれた。

今回の企画を聞くと、第一に、主旨がほぼ同じ、第二に、時期があの番組よりも二年遅い、第三に、外での取材が一回だけと手薄である。このまま進めても、「いまさら」感のどよっと漂う気の抜けた企画になっちゃうのではあるまいか。

黙ってられなくて、思ったとおりに言ってしまった。せめて、海外のイベントに参加してきたことなど、最近の話題を取り上げていただくなどして、どこかで今までになかった新しさをアピールしてはいただけないでしょうか、とお願いした。

後で振り返ると、ディレクタ氏の全人格を否定するような言い方になっちゃってたかも。そんな企画じゃしょうがない、ってけなしてるようなもんだもんなぁ。こりゃ、行き止まりの袋小路かな。あーあー終わった、終わった。

翌日、6月29日(月)の夕方、打合せでご一緒した番組制作会社の人からメールが来た。「本日の番組会議で小林様にご出演していただく方向で決定しましたのでご連絡させていただきました。改めてよろしくお願いいたします」と。おおおっ、出してくれるのぉ?

「つきましては昨日お話しさせていただきました密着ロケを今週の日曜日、7月5日に行わせていただくことは可能でしょうか」。はいはい、行きます、行きます。

●ちょっと触りすぎじゃないですか……原宿で収録

7月5日(日)、新井薬師前駅前まで迎えに来てくれた日テレのロケ車に乗って、原宿へ。デカい中継バスみたいなやつではなく、普通のバンみたいな車。

霧雨と小雨の中間くらいの、傘を差すか差さないかの判断が難しいビミョーな雨が、降ったり止んだり。一日中そんなだった。梅雨だからってそんなに忠実に降らなくたっていいよ。

収録隊はもっと早くに到着していて、街で通行人に声をかけて、コメントを拾っているらしい。「街録(がいろく)」という。私の収録は3:00pmぐらいからを予定しているが、いつまで経っても戻って来ない。

欲しいコメントがなかなか取れなくて苦労しているのだろうかと心配になっていたら、雨が止むのを待っているのだという。

トイレに行こうと車を出て、外を歩いいたら、つい今しがた街録されたっていう若い男性に声をかけられた。以前にも私と会って一緒に写真を撮ったことがあるという。インタビューでは、「その後、いいことはありましたか」と聞かれて言いそびれちゃったけど、早稲田大学に合格して私の後輩になったという。

んもー、それ大事じゃん。言ってよ言ってよ。チャンスは一回こっきりしかないんだから、後で思いついて言えばよかったー、と後悔しても、遅いんだってー。私にもよくあるけど。

予定より一時間以上遅れて、4:00pmごろから私の収録が始まった。表参道から、明治通りをまわって、竹下通りに入ったあたりまで行く予定。

表参道と竹下通りは平行に走り、さほど離れていないけれども、雰囲気ががらっと違う。表参道はパリのシャンゼリゼ通りを模したという説があり、エレガントな大人の街並み。みんなツンとすましていて、ここを私が歩いても、声をかけてくる人はあまりいない。

対照的に、竹下通りはストリートファッションまばゆいきゃぴきゃぴの女子中高生たちがひしめきあってにぎわうカワイイ街並み。フリフリヒラヒラのロリ服の店とか、かわいいアクセサリーやキャラ系の小物の店とか、アイドルのグッズの店とか、クレープ屋とかが立ち並ぶ。

日曜の午後だと、私の場合、原宿駅から明治通りまで歩き抜けるのに、一時間では済まない。たいへんな人だかりができ、通りすがりに入れ代り立ち代り撮っていくので、動けなくなるのである。もしテレビの収録隊が入ったりしたら、人々の通行やお店の営業の妨害になりかねない。

明治通り側から竹下通りに入ったすぐのところは人の通行があまり多くないし、片側が工事中の鉄板の壁になっていてお店がないので、あの場所なら収録しやすかろう。

……そこまで行く必要がなかった。ラフォーレ原宿の前あたりで、あっという間に人だかりができた。若い女の子たちにモテモテであることを証明する狙い通りの映像がいとも簡単に撮れてしまった。一時間半とってあったのに、30分で終了。遅れを完全に取り戻した。

ロケ車までの戻り道でディレクタ氏いわく「ちょっと触りすぎじゃないですか?」。あー、いえいえ、怒ってなさそうなんで、だいじょうぶなんじゃないですかー?

さっそくツイッターに写真つきでツイートが上がっている。

・ @GrowHair 今日は写真撮ってくださりありがとうございました
  これからも活動頑張ってください
  16:36 - 2015年7月5日
うわ、抱きついてるし。

私がこのツイートに気がついたのは翌朝のことで、それからのやりとりで、もし映像が採用されて放送されたら、一緒に祝杯を上げましょうって話になっている。

ロケ車で再び新井薬師前へ。5:00pmごろ到着。行きつけのお店であるところの「ぢどり亭」へ。私の行きつけのうちでも、行く頻度がいちばん高いお店だ。

鳥刺し二種盛りが絶品である。同じチェーン店でも他店には置いてなかったりする。にんにく醤油にちょいとつけて、赤ワインでいただくと、しみじみ美味い。至福のひととき。大したことない一日だったとしても、すばらしい一日だったような気がしてくるから不思議だ。

いや、この日は大した一日だった上に、目の前でまだテレビカメラが回ってるけど。事前に提出した行きつけの店リストから、番組制作会社が選んで、店長に連絡しておいてくれている。

店長さんもカメラを 向けられて、「最初入ってきたときはびっくりしました」とか。ちょっと緊張気味?

大きな声じゃ言えないけど、常連サービスか、店長はいつも私に多めにワインを注いでくれる。この日はスペシャル多めで、ふちぎりぎりまで。それを三杯飲んだ。収録隊は、勘定を済ませると、まだ飲み食いしている私を置いて、帰っていった。ごちそうさま〜♪

●酒がよく湧いてくる日

それから徒歩で中野へ。ひよ子さんと落ち合う。ひよ子さんは、かつて私がカメコとしてよく撮らせてもらっていたコスプレイヤーである。

中野ブロードウェイセンター 二階の「Zingaro Space」でコスプレイベントがあり、ちょうど終わったところだった。じゃ、飲みに行こうか。中野通り沿いにある「全席個室 楽蔵」へ。

後で聞くと、そこでまたグラスワインを三杯ぐらい飲んだらしい。このへんから記憶がほとんどないのだけれど、上尾まで帰るひよ子さんを中野駅まで送っていって、私は徒歩で飲み屋街を早稲田通り方向へ。

セーラー服を着たおっさんがへべれけに酔っ払って、千鳥足で中野の街を歩く姿というのは、どうにも絵にならなくて困るが。途中で、女性から声をかけられ、一緒に写真を撮る。

シンガーソングライターでタレントでモデルである立花夢果さんだったことを後で知る。キャッチフレーズは「弾丸☆野球シンガ〜♪」。

お店の人? 近く? じゃ、寄るよ。みたいな感じでお店へ。「少年野球指導教室・居酒屋 中野塾」。ジャンル違いな気がして、入ったことはなかった。カウンター内には、芸能人がもうお一方。コンドル斉藤さん。元女子プロレスラーで、ダンプ松本率いる極悪同盟の一員だったらしい。

カウンターの隣席には新聞記者の方が二人。うちお一人は、中学・高校の先輩であることが判明。私は何をどれだけ飲んだのか、さっぱり覚えてないのだが、その方が勘定をもってくださった。ごちそうさま〜♪

「†Gothic Bar Two Face†」の前を通り過ぎたタイミングで、店長のアライさんがお客さんを送り出すために道へ出てきたようで、うしろから声をかけられた。けど、寄ってけとは言われなかった。よほどフラついていたらしい。

そのすぐ先、「居酒屋 野武士」の前を通ったとき、中で飲んでたお客さんに引っ張りこまれた。ここも入ったことのないお店であった。もう、ほとんど何も思い出せない。カウンターの隣りにいた女性とスカートをめくりっこしたことぐらいしか。

そこも勘定を払っていないが、誰が払ったのか分からない。ごちそうさま〜♪

四軒ハシゴして、払ったのは一軒だけ。よく酒が湧いてくる日だった。

●放送事故防止のためひざ掛けをかけられた……スタジオ収録

ちょうど一週間後の7月12日(日)、14:42中野発の中央線快速東京行に乗って四ツ谷で総武線千葉行に乗り換え、14:58に市ヶ谷に到着し、徒歩で麹町の日テレへ。

この前打合せした部屋と同じ建屋の一階がGスタジオだった。ぱっと見てから二階に上がり、控え室へ。しばらく待ってから、カメリハ(カメラリハーサル)に呼ばれる。

この段階では出演者は誰も来ておらず、名前を貼ったスタッフが代理を務めている。スタッフは台本を持っており、これがそうとうな厚みで、背が平らな平綴じになっている。

私は、登場シーンでの台詞しか見せてもらえなかった。この番組では、タレントではない一般人のゲスト出演者には台本を渡していないのだそうである。

素人の場合、おそらく必死になって台詞を覚えた挙句、棒読みになってしまったり、うっかり「なんだっけ? 忘れた」と言ってしまったりと、あんまりいいことがないのであろう。

控え室に戻り、8:00pmの本番開始まで三時間以上、空きができた。持っていったパソコンで、デジクリの原稿を書いて過ごした。前回配信分の。

本番の様子は、ネタバレになるので、あんまり詳しくは述べないでおきましょう。芸能方面に極端に疎い私でも、徳光和夫さんは分かった。ほかに知っている出演者がいたかどうかとか、聞かないでね。

公開収録で、スタジオの中に設けられた野球場のスタンド席のような階段状の座席に30人ほど見学者がいて、ほとんど女性ばかり。

54分間の番組のために、三時間収録する。途中に15分間ほどの休憩をはさむ以外は、流れを止めずに進行する。見学者たちに対しても、ライブショーとして成り立っているところがすごいと思った。

台詞を多少間違えたり、進行がおかしくなったりしても、「今のシーン、もう一回」と声がかかることはめったになく、そのまま進んじゃう。というか、台本どおりに進まないのが普通なんだそうで。

レギュラー出演者たちは、みんなアドリブの天才。どんな状況に対しても臨機応変に対応し、場に応じた当意即妙の発言ができる。タレントがタレント(才能)と呼ばれるゆえんと思った。

私はさほど緊張したりはしなかった。……つもりではあったけれど、あのバカでかいレンズの向こう側に何百万人かの視聴者がいるのかと思うと、ろくにそっちを向けなった。表情が堅く、伏し目がちになっていたのではなかろうか。

ずいぶん失敗をやらかしたような気がする。ゲストの方が、台本どおりの答えを引き出そうと質問してきたのに察知できず、ズレたことを答えていたかもしれない。投げかけられたコメントに対してろくにリアクションできず、芸人さんたちから、怒らなきゃ、と言われたり。

さらには、人が言うはずの台詞を横取りしちゃったかもしれない。カメラの脚の脇に出ているカンペ(カンニング・ペーパー)の存在に気づいたのは、ほぼ終わるころであった。

自分のコーナーが終わって、控えの席に座ったら、スタッフの人がひざ掛けをかけに来た。あ、それがなかったら放送事故だったと。

全体が終わった後、ディレクタ氏は「割とよかったです」と言ってくれた。ほめられてかえってどっと冷や汗が出たのは、自分では素人のダメダメさを思い知らされてヘコんだ気分だったからかもしれない。やっぱそれを生業にしてる芸能人って、すげえわ。

やれやれ。とにもかくにも終わった。11:00pm。車で去っていく徳光さんに手を振る。

帰りがけに「ぢどり亭」に寄る。VTRには店主がコメントするシーンもちゃんと映っていたことを報告する。

それと、原宿での収録の後にツイッターで@ツイートを投げてくれた女性も映っていた。ツイッターで報告する。いつもより赤ワインの回り方が早かった気がする。

●早く出た次回予告

放送予定日が8月2日(日)なので、その一週間前、7月26日(日)の放送の最後の次回予告で、私の姿がチラっと映るのだろうと思っていた。

ところが実際は、その日は番組がお休みで、別番組をやる日であった。その前の週、7月19日(日)に予告が流れた。つまりは収録の翌週。こんなに早く出るとは思っておらず、完全に意表を突かれた。

ツイッターでエゴサしていて発見した。次回、私が出ることについて述べたと思われるツイートの推移は下記のようであった。

 21:47 7件
 21:48 2件
 21:49 1件
 21:50 0件
 21:51 2件
 21:52 62件
 21:53 30件
 21:54 0件
 21:55 2件
 21:56 5件
 21:57 2件
 21:58 3件
 21:59 1件
 22:00 0件

「バルス!」。2013年8月2日(金)、『金曜ロードショー』で『天空の城ラピュタ』が放送された際、示し合わせた時刻である11:23pmにツイッターや2ちゃんねるなどで、「滅びの呪文」であるところの「バルス!」を一斉に書き込む遊びが発動された。いわゆる「バルス祭り」である。一秒あたり14万ツイートを記録したそうである。

それには遠く及ばないものの、ちょっとしたお祭り気分であった。本放送になったら、話題のキーワードを示す「ツイッタートレンド」は多分いただきかな。

キャプチャ画面を貼ってくれてる人がけっこういて、原宿で@ツイートを送ってくれた人たち、映っているではないか。予告編ですでに。こりゃ祝杯だ。

収録のときはさほど緊張しなかったのに、もはやこっちからはまったく手出しができなくなったいまごろになって緊張してきた。どうせ最後にはボツになるんだからと、現実直視を避けてきたが、放送日が近づいてきて、いよいよ現実味を帯びてきた 。

あと二日。天変地異や政変は、もしかすると起きないかもしれない。遥か離れた地方で、ネットにも親しまず、私の存在なんて聞いたこともなかったって人々が、家族で見てたりするんだよね? だいじょうぶだろうか。ヤバいぞ、ヤバいぞ。

日テレの番組告知ページ:
< http://www.ntv.co.jp/program/detail/21842513.html
>

写真:
< http://picasaweb.google.com/Kebayashi/NTV150802pre
>


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/
>

7月18日(土)、入間川の河川敷に行った。廃車で猫と一緒に暮らす上田友浩氏はまだいるだろうかと。この場所に行くのは、去年の 5月18日(日)以来である。

橋の下で暮らしていたゆうじろう氏は、一昨年の夏ごろ亡くなったことを去年の春に知った。第一発見者は上田氏だったとのこと。

橋から上田氏の「住居」へ向かう小道は、両サイドから背丈よりも高く伸びた草が上からばっさばっさと覆いかぶさり、ほぼふさがりかけていた。小雨が降ったり止んだりの日で、草をかき分けると上から水がばばばっと落ちてくる。これはもういなくなってるかな。おーい、いるかい?

いた。相変わらず車の中にいて、窓からこっちを見ている。やぁ! 畑の人も郷に帰っちゃったとかで、そのあたりでは一人になってしまったそうで。なんだかさびしそうで元気がない。

あの小道は上田氏が手入れしていたそうで。橋に行く用事がなくなっちゃった今は放置状態で、道がふさがりかけているのだとか。

まあ、とにもかくにも、相変わらずちゃんと暮らしているようで、よかったよかった。

7月20日(月)、鉄ヲタの邪魔をしてきた。わたらせ渓谷鐵道。
< http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Railroad150720
>


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編集後記(07/31)

●デジクリは8/3から8/21まで夏季メンテナンス休暇に入ります。土日を含めて23連休。次号発行は8/24の予定です。お暑うございます。お体をいたわって下さい。こんな時期に東京オリンピックでマラソンなんて、無茶だ〜


●初めて見たとき、なんというクソつまらないデザインだと思った。東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムのデザインのことである。オリンピックは祭典である。祝典である。それなのに、よりによってドーンと黒帯である。不吉でさえある。なんやら解説があったが、説明抜きで一瞬で分からなければ意味がない。これはオリンピックのイメージではない、というのが普通の人の感覚だ。おそろしく意気があがらない、最低のデザインである。ゼロベースで再出発の競技場は絶対になんとかなる。しかし、シンボルがこれでは先行きが怪しい。エンブレムのデザインも白紙撤回せよと言おうと思っていたら……。

このデザインはパクリであるという声があがり、証拠も見せられると、たしかにこれは盗作の疑い濃厚である。肝心のデザイナーはSNSから逃亡し沈黙を決め込んでいる(7月30日現在)。ますます怪しい。どんな弁解や説明をしても、祭典にはふさわしくない、暗くて陰気な、つまらないデザインだと思う。深読みすれば、失敗を約束する「呪われた」デザインである。疑惑の告発が出た段階でもうアウトだろう。ところが、こんな状況でも東京五輪・パラリンピック組織委員会は「特に本件に関して懸念はしていない」とコメントしている。国民は大いに懸念しているよ。ほんとにグズでクズな連中である。

今日の読売の記事によれば、東京エンブレムデザインがベルギーにある劇場のロゴマークの著作権を侵害している疑いがあるとして、そのデザイナーと劇場がIOCに使用差し止め請求をする方針だという。日本国内ではいくら反対の声を上げても覆せないかもしれないと思っていたから、これは天佑神助だ。内圧には強く、外圧にはからっきし弱いのが日本のお役所系だ。ぜひ使用差し止めを実現して欲しい。また、三井不動産の新聞広告でこのシンボルマークが使われていたが、オリンピック祝祭のイメージはまったくない。ゼロベースで再出発だな。ダサいと酷評まみれの東京都観光ボランティアの制服も一緒にな。

亀倉雄策が提案しデザインした、1964年東京オリンピックのシンボルマーク。白地に赤い太陽と金色の五輪マークと文字(TOKYO 1964)という、すでに存在していた形の組み合わせだけで、衝撃的なビジュアルが生まれた。そのままB全の大きさに拡大したものが公式ポスターの第一号になった。亀倉が工夫をこらしたところは、赤い太陽と金色の五輪の間の、わずかな空間のもたらす緊張感であった。あれほど日本人として誇らしく思えたビジュアルは、その後現れていない。「TOKYO 1964」を「TOKYO 2020」とさしかえて再登場させるのがいいのではないか。これこそ「祝福」された日本のオリンピックだ。 (柴田)


●行列見なきゃ。/天佑神助。「天や神の助け。ご加護。また、偶然に恵まれて助かること。」の意味で、想像通りではあったが知らなかったことが悲しい。

エンブレムの盗用疑惑問題。編集長と被った。編集長毒舌すぎる〜。シンプルだし、偶然の可能性は無きにしも非ず。右下の三角の意図は知りたい。

商標を調べたという話だけれど、Google画像検索してみれば良かったのにとは思う。抵触していなくても、似たようなのがあったら避けたい。シンプルなのは国際的なイベントでは使わない方が無難なのだと知った。

プレミアム商品券当選。普段行くスーパーで利用できるからと申し込んだら、ヨドバシ・ジョーシン・エディオン、百貨店や隣接商業施設でも使えるようになっていた。たまに行くスーパーやドラッグストアなども。ありがたい〜。生活費の足しにさせてもらいます。

sqoreやってみたよ。まだ使っている人が少ないみたい。タイムラインには同じ人のコメントが並ぶし、ひとつの商品に3件のコメントがせいぜい。知らない商品、限定品がずらりと並び、物欲が刺激されることは確か。買ってみたいリストを作れたらいいのになぁ。

一足早く夏休み。熱中症、熱射病にお気をつけください〜。 (hammer.mule)

< http://news.mynavi.jp/articles/2013/09/09/tokyo2020logo/
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招致ロゴがエンブレムだと思ってた。好き! グッズにも向いてそう