[4055] 腰痛デビュー の巻

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《おふくろ、ナイスプレーだったよ!》

■わが逃走[174]
 腰痛デビュー の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[34]
 英語教員を目指していた頃のお話
 関口浩之

■展覧会案内
 成安造形大学・卒業制作展&進級制作展2016
 クリエイションギャラリーG8「30年30話」




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■わが逃走[174]
腰痛デビュー の巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20160128140400.html

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その日の朝、目がさめたが起き上がれない。なんか腰がヘンだ。気のせいだと思い放置していると、ほんとに立てなくなった。

思わず笑ってしまった。笑うと腰が痛い。くしゃみするともっと痛い。これはいかん。寝ていると天井の模様がうごめく虫に見えてくる。

いま赤紙が届いたら兵役免除されるかな、とかわけわからんことを考える。

動かないと痛くないので、好きなモノのことを考える。好きなモノといえばライカのレンズだ。エルマリート135mmという不人気レンズが妙に欲しい。これで全国の構造美を撮影したら楽しいだろう。しかしこのレンズは重い。重いレンズは腰にくるなあ……。

そんなことを考えつつ一日が終わる(ちゃんと仕事もしてる)。

翌日になったら治っているかと思ったが、前の日とぜんぜんかわらない。むしろ悪化している。どうやら気のせいではなかったようだ。

30分くらいかけて起き上がる。実際は10分くらいだったと思うが、そのくらいゆっくりなイメージ。すり足歩行で移動。顔を洗えない。歯みがきはできるけど、うがいができない。

ちなみに一度立つと座れない。ズボンも靴下も靴も、履くのにものすごく時間を要する。

これが腰痛というやつか! 噂には聞いていたが、耳で聞いたり本で読んだりしたところで、経験を伴わない知識など全く役に立たんということがわかった。

部屋にあったカメラ用の一脚を杖がわりにしてみた。なかなかイイ。耐加重性能はイマイチだけど、足腰にかかる力を少し分散させるだけでも絶大な効果がある。うーん、杖ってすごい。

そして、手すりのありがたみを身にしみて感じている。旅先で出会う渋いお寺や神社の階段に設置された、ピカピカのステンレス製の手すり。

かつて何度も、場違いだろ! とツッコミを入れた私であるが、この場を借りて謝ります。設置していただくだけで嬉しいです。ありがとう。

と、起きてからここまでに3時間くらいを要している。これは医者に行かねば。というわけで、通常よりも6倍遅い歩行速度で某整形外科に向かった。

ゆっくり歩くのも危険だ。たとえば時速120キロで流れている高速道路を20キロで運転するようなもので、普通に歩いている老人や、猛スピードで歩道を飛ばしてくる自転車にどつかれそうになる。コワイ!

普段は5分の距離を30分かけて、午前中の診療時間ギリギリに到着した。保険証と診察券を出すと「おかけになってお待ちください」という。お気持ちは嬉しいのですが、座れません!

診察室に入るとベッドに横になるよう指示される。こっけいなスローモーションで仰向けになると、まず左足を徐々に持ち上げられた。

「痛いですか?」
「いいえ」

次に右足を持ち上げられると、背骨と尻の間に「うぐごっ!!」激痛が走った。

「うーん、ヘルニアかなあ……」

あ、先生それ知ってます。名前だけ。以前は古代生物っぽい名前だなーと思っていたけど、最近はトクホのお茶みたいだなーって思っています。とか言ったところで何も解決しないので、あえて語らず。

レントゲン撮影の後、とりあえず痛みをとりましょう、ということになった。背骨のホネとホネの間にぶっとい注射をするという。こ、こわい。

しかしこの痛みから解放されるなら、ということで打ってもらった。おかげで痛みは7割減。結局病名も確定されず、“ようす見”ということになった。

帰りの歩行速度は通常の3倍の遅さとなり、視界にいくぶんか余裕が出てきた。とはいえ、ちょっとした段差が命取りとなるので、足元をよく見ながら慎重に歩を進める。

そこで気づいたことがふたつ。

・犬の糞が減ったこと。
・ボタンがやたら落ちていること。

犬の散歩のときに糞を持ち帰るよう徹底されてきたのは、30年くらい前だったかな。確か中1のときの英語の教科書の挿絵で、Mike君が公園で犬を散歩させているものがあるのだが、2年生になったとき後輩の教科書を見せてもらったところ、そのカットが修正されているのを発見したのだ!

なんと、彼の左手にはスコップと袋が描き加えられていた! いま思い出したぞ! 誠にもってどうでもいい話だが。

確かにその頃までは曲がり角ごとに犬の糞があり、当時の少年達は爆竹を使ってそれらを爆破するという無意味な遊びに熱狂したものだった。S玉県ではね。

そしてボタン! 世の中にこんなにも多くの種類のボタンが落ちているとは!さまざまな色と形、大きさのボタンがそこここに落ちていたのだ。

これらを拾って撮影し、一冊にまとめたら面白い本ができるのではないか。と思い立ち、手を伸ばすも、拾えない。そりゃそうだ。腰が治ってくると落ちてるボタンに対する興味も薄れるのだろうか。

いずれにせよ、下を向いて歩くと新しい発見、見えなかった世界が見えてくる。

そして見えなかった世界といえば!!!「バリアフリー」である!!!とにかくひどい。あまりにもひどい。

次回、実体験に基づく『日本のバリアフリーはなっとらん』の巻をお楽しみに。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[34]
英語教員を目指していた頃のお話

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20160128140300.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。40年ぶりの大寒波がやってきて全国的に寒い日が続いてますが、体調くずしていませんか?

先週土曜日、急に喉が痛くなって体がすごくだるい状態になりました。やばいと感じてしっかり睡眠とることにしました。このところ、土日もほとんど休んでないし、ときどき徹夜もしていたので、抵抗力はかなり落ちていたんだと思います。

かかりつけの内科の先生から薬をもらって、栄養のある食事をとり一日中寝てました。僕は喉が痛くなると、同時に鼻にきて「あー、完全に風邪ひいたー」という状態になりがちです。そして一度、風邪をひくと数週間長引く体質なのです。(アレルギー性鼻炎って感じの症状が続く…)

今回、珍しく悪化せずにもちこたえています。明日から青森県と福島県に三泊四日の出張なので、体調が悪化しなくて良かった!

●英語の先生になりたかった

昨年11月12日発行のデジクリ編集後記で「この期に及んで教員免許状交付には一科目不足していることが判明、採用は取り消しになった」の編集長の記事を楽しく読ませてもらいました。僕も似たような体験をしてたので、今日のテーマにしました。

英語の教員になりたかったので、実家がある群馬県の公立学校教員採用試験を受けました。

でも、なんで、教員を目指してたんだろう……。当時を思い出してその経緯を書き出してみました。

・小さい頃から海外に興味があって(とりわけアメリカに憧れてた)、英語がしゃべれるようになりたかったので、外国語学部にある大学に入った。

・教員免許状ぐらい取得しておくかなと思って、教員資格を得るための必須科目も選択した。

・大学時代に、この分野でこんな仕事をしたいという明確な目標が見つからなかったので、教員でもやろうかなと思った。

・四年生時に自分が通った群馬県の中学校で教育実習を経験した。楽しかったので教員を本気で目指すようになった。

・人に何か教えるのががうまいねと言われることが多かった。自分もその気になっていた。

なので、大学四年生時、ほとんど就職活動はせず、教員試験落ちたら来年受け直せばいいじゃんと思っていました。

結局、四年生時の教員試験は落ちたんですけど……。

当時、群馬県の英語教員の採用枠は非常に少なくて、競争倍率もすごく高かったんです。不安になって、就職も考えたほうがいいのかなぁーと思っていた1月頃に(世の中はすでに就職戦線は終わっていた)、とある週刊誌を手にしました。

その週刊誌の特集で、ベンチャーの雄、異色のコンピュータメーカ「ソード」と「日本デジタル研究所」という記事を目にしたんです。そして、日本デジタル研究所では、『新年度にアメリカ西海岸に支社開設予定』って書いてあったんです。

これだって思いました(笑)

・英語がろくに喋れないのに英語教員になってどうする……

・大学で英会話の授業をとっていたが、日常会話と簡単なビジネスコミュニケーションができる英語レベルしか身についてなかった……

・一度社会人になって、その後、教員になりたい気持ちが強くなったら、また教員試験を受ければいいじゃん……

・社会人の経験を積んでから教員になったほうがまともな先生になれるんじゃないかな……

楽天的な発想です(笑)

早速、日本デジタル研究所の総務部に電話してみました。

「御社にすごく興味があるんですが、新卒採用、まだやってますでしょうか?」
「すでに新卒採用は終わってます」

ガーン………

「情熱だけはあるので、一度お会いさせていただけませんか!」
「いいですよ」

おっ、会ってくれるのですね。うれしい。急いで履歴書を郵送して会社訪問しました。運良く、採用していただきました。そして、入社二年目に海外駐在員第一号として海外赴任の経験もさせていただきました。

●母の「そういえば」話に驚愕

これからが本題です。以下は、社会人一年目のお盆休みに群馬に帰省した時のおふくろとの会話です。

「そういえば、今年3月に群馬県教育委員会から電話があったよ」
「そうなんだー。で、なんだったの?」

「◯◯高校の英語教員に欠員が出て、今年は臨時教員扱いになるけど先生やりませんかと言ってたよ」
「それで?」
「うちの息子は、3月1日から会社勤めしちゃっているんですと説明して、断っておいたよ」

ガーン………

「えっ、なんで、『うちの息子に確認して折り返し連絡させます』って言わなかったの???」
「だって、3月1日から会社勤めしてるんじゃなかったっけ?」

たしかにそうでした。正式入社日は4月1日だと思ったけど、3月1日から会社勤めしてました。内定者向け研修に参加するため、2月末に群馬の実家をでて、東京でアパート暮らしを開始してました。

僕が新卒入社した会社は、当時、100万円で買える業務用日本語ワードプロセッサ「文作くん」という大人気製品を製造販売していたコンピュータメーカでした。会社が内定者に日本語ワープロ講座を開催してくれてて、毎日参加していました。

もし、臨時教員の話を聞いていたら、会社に事情説明して入社辞退の選択もあったと思います。たしかに、携帯電話はなかった時代ですし、アパートの部屋には電話はひいてなかったし…。とはいえ、電報とかで知らせる手段はあったはずですよね。

「うちの息子は会社勤めしちゃったので、教員のお話はお断りします」と即答しなくてもいいのに………

ところで、臨時教員に採用されて評判が良いと、その年の教員試験を受ければ、ひどい点数でなければ次年度には正式教員に採用されるという噂もありました。本当のところはさだかではありませんが。

本気で英語教員になりたいと思っていたので、かなり落ち込んだ記憶があります。でも、いつの間にか、教員になりたい気持ちは失せていったような気がします。

今、思うとそれがよかったんだと思います。25歳の時に米国西海岸にて一年間仕事する機会をいただいたし、英語の実力もある程度、身に付いたと思います。

日本デジタル研究所で11年間勤務した後、インターネット会社であるソフトバンクで20年間以上にわたり、いろんなことをチャレンジさせてもらいました。その経験もすごい財産になったいると思います。

おふくろは半年前に天国に行きましたが、あのとき、僕に声を掛けずに教育委員会からの話を断った事件(?)は、今となっては笑い話だし、おふくろには大感謝です。

おふくろ、ナイスプレーだったよ!

さて、僕が教員採用試験を受けるために勉強してた1983年当時、大好きだったグッズ達をご紹介して、今日は終わりにしますね。ジャーン!
http://goo.gl/VzWBro



◎セミナー情報

今週と来週で6つのセミナーで登壇予定です。Webフォントのお話や書体トークやります。

HTML5fun×AOITコラボイベント in 青森
「現場で使えるライブラリとJavaScriptの基礎」
1月30日(土)13:00-17:00 アピオあおもり(青森市)
http://wdha.jp/


HTML5fun×AOITコラボイベント in 福島
「現場で使えるライブラリとJavaScriptの基礎」
1月31日(日)13:00-16:30 市民交流プラザ(郡山市)
https://html5-fun.doorkeeper.jp/events/37078


The Next PowerCMSツアー in 広島
「エンタープライズにおけるウェブサイト運用の課題を解決」
2月8日(月)13:30-17:20 日本マイクロソフト 中四国支店
http://www.sixapart.jp/seminar/sa/2015/12/27-1502.html


The Next PowerCMSツアー in 大阪
「エンタープライズにおけるウェブサイト運用の課題を解決」
2月9日(火)14:00-17:20 日本マイクロソフト関西支店
http://www.sixapart.jp/seminar/sa/2015/12/27-1529.html


あと、The Next PowerCMSツアー開催同日の夜に、Movable Type ユーザグループ「MT広島」と「MT大阪」のイベントでも、もじもじトークで出演する予定。
https://www.mt-hiroshima.net/2016/01/mt-live-movinon.php



【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。


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■展覧会案内
成安造形大学・卒業制作展&進級制作展2016

https://bn.dgcr.com/archives/20160128140200.html

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まつむらまきお(デジクリ「ユーレカの日々」連載)がイラストレーション・マンガ・絵本を教えている、成安造形大学の卒業制作展です。

本年度のイラストレーションクラスまつむらゼミは23人。在学中に商業誌まんがデビューした学生もいる実力派揃いです。ぜひご高覧ください。

会期:1月27日(水)〜1月31日(日)9:00〜17:00 最終日は16:00まで
会場:京都市美術館 本館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
市バス「京都会館美術館前」下車すぐ 地下鉄東西線「東山駅」下車徒歩10分

※ファッションショー、進級展の一部は別会場。Webでご確認ください。

成安造形大学 卒業制作展・進級制作展2016
http://www.seian.ac.jp/news/event/28547.php



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■展覧会案内
クリエイションギャラリーG8「30年30話」

https://bn.dgcr.com/archives/20160128140100.html

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クリエイションギャラリーG8「30年30話」
会期:2月1日(月)〜3月18日(金)11:00〜18:50 日祝休館
※閉館時間が通常と異なります。ご注意ください。トークショー開催の土曜日は、一部ご覧いただけない展示がございます。どうぞご了承ください。
http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/g8_exh_201602/g8_exh_201602.html


クリエイションギャラリーG8は、1985年、画廊ひしめく銀座で初めてのグラフィックデザイン専門のギャラリーとしてスタートしました。以来30年にわたって、日本のグラフィックデザインを中心に、さまざまなクリエイターや作品を紹介してきました。

今回は、「30年30話」と題し、ギャラリーの30年間を振り返る展示とともに、30回のトークイベントを開催します。

展示「30年」
1985年から2015年までの展覧会を、ポスター、ブックデザイン、パッケージ、プロダクトなど、実際に展示された作品とあわせて振り返ります。

トークイベント「30話」

期間中、ギャラリーとゆかりのある30人に出演をお願いし、それぞれ対談相手を指名していただくトークイベントを開催します。出演スケジュールや参加方法は、ギャラリーウェブサイトでお知らせします。

各回定員:40名 入場無料

参加方法:開催時間の1時間前に整理券を配布します。なお、整理券はご本人様のみ一枚の配布となります。先着順各回限定40枚、なくなり次第終了とさせていただきます。

出演スケジュール
[第1話]2016年2月1日(月)19:00〜20:30
出演:箭内道彦(クリエイティブディレクター)・鈴木康広(アーティスト)
タイトル:「漂流のゆくえ」
※当日18:00より整理券を配布します。

[第2話]2016年2月4日(木)19:00〜20:30
出演:松永真(グラフィックデザイナー)・大迫修三(JAGDA事務局長)
タイトル:「半径3メートルの発想」
※当日18:00より整理券を配布します。

[第3話]2016年2月5日(金)19:00〜20:30
出演:長友啓典(アートディレクター)・阿川佐和子(作家/エッセイスト)
※当日18:00より整理券を配布します。


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編集後記(01/28)

●黒川博行「螻蛄(けら)」を読む(新潮社、2012)。768ページもの分厚く重い文庫本。クセになるほど面白い「疫病神」シリーズの第四作。今回は宗教団体のお宝である絵巻物をめぐる、強欲なワルどもによる大争奪戦だ。テンションMAXな自称経済ヤクザ桑原と、ストーリーの説明役である自称建設コンサルタント・二宮のコンビが、東海道を股にかけ、金のためとはいえ短期間にあきれるほどよく働く。死ぬほど働く。じっさい死にかける。登場人物は多い。いや普通かな。わたしには多すぎる。途中でこの名前の役を忘れている。展開もうろ覚え。でも、そんなこと気にせずにぐいぐい読み進めて問題ナシ。

六年の懲役という大勲章のある桑原。性格は極めて凶暴、世の中にこわいものがなく、いったん金の匂いを嗅ぎつけたら、なにがあろうが食いついて離れない。天性のイケイケで、極めつきの疫病神。ヤクザの論法、どこまでも自分勝手で都合のいいように解釈する。誰よりも口が巧い。猜疑心の塊。二千万で仕入れた商品は一億で売る。相手に少しでも負い目があれば、それを五倍、十倍のシノギにするのが、桑原という天性のヤクザの生き方なのだ。桑原に言わせれば、二宮は「ぐうたら小僧」で「スポンジ頭」だ。二宮に言わせれば、桑原とは、暴力と破壊をまき散らす厄災の権化なのだ。堅気には手を出さないが。

ほぼ二宮目線でストーリーが転がっていく。桑原に対する愚痴や悪口が情けないけど面白い。金輪際、桑原とはかかわりたくないと思っているが、金が欲しいためにいいなりになってしまう。その結果、東京ヤクザにボコボコにされる。もちろん桑原が仇を取ってくれる。ふたりのかけ合いシーンは多く、物語に絶妙なリズムを与えている。「おまえ、わしのこと嫌いなんか」「いや、好きですよ。たまには」「わしはお前が嫌いや」「はいはい、そうですね」www ふたりの悪態、罵り合い、毒舌のトークバトルの楽しさといったら。関西弁だからいいのだ。上品なわけないが、口汚くは聞こえない関西弁だからいいのだ。

ストーリーはペテン、トラップ、裏切りが組み込まれ、正直よく分からなくなる(わたしの場合)が、最後まで全力疾走に引っ張り回される。カタルシスがない終わり方だったが満足満足。ご都合主義っぽい桑原の出没だけど、まあいい。「螻蛄(疫病神シリーズ)」は、BSスカパーで2月19日から連ドラで放映される。桑原役は北村一輝、二宮役は濱田岳。北村はいいな。これからは「疫病神」シリーズを読むとき思い浮かべよう。わたしは最初から、二宮は二宮和也と決めていた。ところで桑原の言う「極道と政治家は数やないけ。数を集めたら天下をとれるんや。ま、金もいるけどな」はシンプルな正論だ。(柴田)

黒川博行「螻蛄(けら)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/410137015X/dgcrcom-22/


BSスカパー「螻蛄(疫病神シリーズ)」
http://www.bs-sptv.com/kera/



●サークルKとサンクスがファミマになる。独自商品は消滅しちゃうのかな。近所はファミマとセブンイレブンだらけ。少し減ってローソン。こうなるとミニストップ頑張れと言いたくなる。

仕事中のBGM続き。「作業用BGM」をはじめて知ったのはニコニコ動画だったような気がする。Youtubeと言ったのは、種類が豊富な上、対応アプリが多いからであって、他の動画サイトでもいい。

そしてスマホからの再生にすると便利。というのはプレイリストの作れるアプリが豊富にあり、バックグラウンド再生が可能だからだ。BGMなので動画は必要ない。

検索ワードは「作業用BGM」「カフェ」「ラウンジ」など。関連動画が豊富に出てくるので、気に入りそうなものをピックアップ。続く。 (hammer.mule)