Otakuワールドへようこそ![227]中国は昇り龍の勢い
── GrowHair ──

投稿:  著者:


日出ずる国の諸氏が、年明けを祝うメッセージでSNSを賑わせているとき、私は日没する国にいて、まだ2015年であった。

上海から長江を挟んで100kmほど北に位置する南通。12月29日(火)にシンガポールから帰ってきたばかりだったが、元日に開催される漫画・アニメのイベント『SF動漫新年祭』に出るために、31日(木)に中国へ。聞いたことない地名だったが、行ってみれば大都市だ。

一切合財の費用先方持ちで、海外に行かせてもらえるだけでもありがたい話なのに、今回はギャラまでいただけた。爆買い中国、ついにセーラー服おじさんの正月の時間まで買いに走る。

長江からさほど遠くないところにある四つ星ホテル。3階の大宴会場では結婚式が進行している。並びにある個室には大きな丸テーブルが一つだけあり、われわれ一行はそこで夕食。

8階にある広い客室には、縦よりも横のほうが長いダブルベッドがデンと据えられており、枕がふたつ並べてあるが、ひとつは抱える用だ。



一時間遅れで年が明けると、花火の音が聞こえてくる。窓辺に寄ってみれば、少なくとも5か所から上がっている。それが一晩中続く。なんて景気のいいこと。オリンピック向けにちょっとばかり値の張る体育館を建てようとしたぐらいのことで、ギャースカ大騒ぎしてるどっかの小国とは大違いである。

手厚い待遇と引き換えに課せられた責務は重い。なにしろ国と国との友好がかかっている。実労働時間はわずか1時間とはいえ、時給3万円の業務の内容はとてつもなくハードである。10回捕まるまでずっと鬼を務めるハンカチ落とし。

週末をひとつ挟んで、1月15日(金)〜18日(月)はベトナムへ。さらに週末をひとつ挟んで、29日(金)〜31日(日)は、また中国へ。今度は四川省成都。漫画とアニメのイベント『FUN遊戯動漫節』に参加し、またハンカチ落とし。

成都は中国の奥のほうにある古い都市で、人々はあんまりがつがつしてなく、ゆったりゆったりと発展してきた。環状の高速道路がきれいな三重丸になっていて、計画的にインフラ整備が進められたことがうかがわれる。3本の地下鉄が走るが、あと15本作る計画がある。

中国はGDPの伸び率が2015年に6.8%へと減少し、たしかに経済成長が減速している。この先どうなっていくのかの見通しについては、見方が幅広く、もはや中国もおしまいだ、という極論まで出ている。

では、当の中国人はどうみているのか。日本から変なゲストを呼んでハンカチ落としに興じる姿にみる限り、将来展望への陰りは見えない。

●沈むか昇るか、中国の今後

無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の2015年11月23日(月)発行号にて、北野幸伯氏は「中国ハードランディングが世界を揺るがすシナリオ(ブルームバーグ)」と題して次のように述べている。

中国の不調は、一過性のものではない。2008〜2010年の危機を乗り越えることはできるが、2018〜2020年に深刻な危機に突入すると10年前から予測していた。理由は、国家ライフサイクルで成長期前期から成長期後記の最末期に移行したから。

安い賃金水準を強みに、世界の工場として急成長していくのが前期。その結果、国民が豊かになり、賃金水準が高まり、生産拠点としての魅力が薄れ、外国企業も自国企業も安い労働力を求めて、他国に逃げていってしまう。これが後期。

国家のライフサイクルという長い流れの中で、かつて日本で起きていたことが、いまは中国で起きていて、これから下降線をたどるのは必然とみている。

また、GDPという指標でみると7%成長しているようにみえるが、信じている人はほとんどいない。輸出入の指標は相手国がいるのでゴマカシが利きづらい。中国が輸入するモノの量は、2004年から2014年にかけては年平均11%増加していたのに、2015年1〜9月に約4%減少に転じている。「7%成長している国」の輸入が「4%減る」ことがありうるでしょうか?
http://archives.mag2.com/0000012950/20151123021000000.html


また、11月25日(水)発行号では、「中国から逃げ出す日本の大企業群」と題し、次のように述べている。

「もう中国経済ダメだ!」というのは、世界的コンセンサスになっている。「中国にどうコミットしていくか、日本企業の間でも今後判断が分かれていきそうだ」との見方があるが、コミットしないのが最善だと思う。

中国という「タイタニック号」はまさに沈みはじめているのに、コミットしてたら一緒に沈んでしまう。
http://archives.mag2.com/0000012950/20151125021000000.html


一方、ウェブマガジン『現代ビジネス』の2015年12月20日(日)掲載号において、田村耕太郎氏は、「中国のテクノロジーを侮るな! 世界のリーダーたちは誰も "チャイナリスク" を口にしない」と題し、次のように述べている。

「中国バブル崩壊」などありえない。日本のように「中国が崩壊する」「中国経済が長期デフレに陥る」と本気で信じているリーダーもインテリも、アメリカやASEANにはほとんどいない。

確かに中国は新興国の色がまだまだ抜けきらないが、実は、ある意味で、先進国の先を行き始めた側面も持っている。その一つが「先端技術」だ。中国のテクノロジーはとてつもなく進化している。

日本との違いは、アメリカの名門大卒のエンジニア系博士号取得者の量だ。アメリカの名門大学で博士号を取り、最高の研究機関で修業した莫大な数の中国人が、続々と本国に戻っている。かつての日本にはなかったスケール感で。そしていま、量が質に転化しつつある。

中国を馬鹿にしたり、やみくもに敵視したりする前に、われわれは、莫大な数の優秀な科学者が、国家による巨大投資のもと、確実に量を質に転化し、先進国を超えるテクノロジーを持ちはじめた中国を、リスペクトしながら警戒すべきだろう。

他国を馬鹿にしたり敵視したりすることが「愛国心」ではない。国を本気で想うのなら、まずは潜在的脅威の実態を冷静に深く分析することだ。そうした上で、国益にかなう建設的な付き合い方を考えるべきだと思う。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46962


見方が両極端に割れている。まあ、あと10年も見てれば、どっちが正しかったか判明するであろうけれども。

この手の予測には願望が入り込みやすい。敗戦以来、日本はアメリカに首根っこを押さえつけられていて、まるで抵抗できない。アジアの中では早い時期に高度経済成長を遂げた日本は、リッチさとテクノロジー優位性をもって、中国や韓国を低くみることで腹いせにしてきたようなところがある。

それなのに追いつかれ追い越されしているのが、おもしろくない。『ドラえもん』におけるジャイアンの「のび太のくせに」ってやつである。

一方、ソ連崩壊によって、世界の覇権を一手にしたアメリカは、その後、湾岸戦争などでの暴れっぷりが目に余る。一極集中はよくない。

古代以来、隣国どうし仲が悪くてしょっちゅうドンパチやってきたヨーロッパが、EUという形でまとまったこと自体は奇跡に等しい。けど、それで一気にスーパーパワーにのし上がっていくかと思えば、そうはならず、相変わらず内輪でよくモメて、もたもたやっている。

多極化と言わないまでもせめて二極化ぐらいは、となると、もう一端が担えるのは中国以外にない。中国がんばれ。

さて、当の中国人はどうみているのであろうか。それが正解ってわけでもないだろうけど。中国には中国の願望があるだろうし。

南通のイベントで通訳を務めてくれたのは羊羹(ようかん)氏である。ニックネームだが、本名との音の類似から、みずからそう称している。二次元関係者どうし、ニックネームで呼び合っているという。

羊羹氏は成都に住んでおり、そっちのイベントのときも通訳を務めてくれた。おかげで、たっぷりと話をすることができた。

羊羹氏によれば、中国は日本のバブル経済崩壊みたいなことにはならないであろうという。第一に、政府がたっぷりお金を持っている。株価が下がったら、政府が買い支えることができる。

第二に、土地の値段が高騰から一気に下落に転じて不動産バブル崩壊とはならない。共産主義なので、土地は政府のものである。買うことは、できるにはできるが、使用権が獲得できるだけであって、それも期限つきである。期限つきのものの値段が、高騰することは起こりえない。

投機対象としての高層マンションなどで、供給過多により入居者が不足して大損ぶっこいて破産した人がいたとしても、その人個人の経済が崩壊するだけであって、国の経済はびくともしない。不動産は政府に戻して、また売ればよい。

第三に、人件費が上がったってちっとも困らない。今までは為替レートを人民元安に抑えることで、世界の工場として機能してきたが、もはや自力でやっていける実力がついてきたので、下請け産業は必要なくなった。過去においては、会社の経営者層が外国人だらけで、それがとてもイヤだった。

日本人が言っているチャイナリスクなんて的外れもいいとこ、いい加減にしなさい、と言いたげな楽観ぶりである。景気がちょっとたるんでみえるのは、世界の下請けから独り立ちへの移行期だからとみてよさそうである。

●学力という名の経済指標

この種の先行き予測において、感覚や霊的な力に頼るのは、ある程度は有効であるにせよ、やや客観性に欠ける。GDPや輸出入量といった数値が下敷きになっていると、だいぶんマシになる。

しかしながら、経済指標というのは、直近の状況を表しているにすぎない。過去からの推移をそのまま延長することによって未来が言い当てられるとは限らない。特に経済においては、カタストロフみたいなことが、時折起きる。なんか、もっといい指標はないだろうか。

自由競争を原則とする資本主義経済の下での金儲けレースにおいては、頭のいいほうが勝つ。個人対個人の比較ではそうとも言えないことが多々あるが、大勢の人からなる国くらいの規模のグループどうしで統計的に比較すれば、けっこう成り立つんじゃないかと思う。

今後、国際競争が激化していき、シェアがちょっと増えたの減ったのって細かい張り合いではなく、勝者総取りみたいなことになっていくのではあるまいか。テクノロジーの先進性が勝敗の鍵を握る。

ピサというのがある。斜めに生えている塔のあるイタリアの地名ではない。経済協力開発機構(OECD)による生徒の国際学力到達度調査(PISA)。PISAはThe Programme for International Student Assessmentの略である。

3年に一度の国際調査であり、15歳の生徒の能力と知識をテストすることにより、世界的規模で教育システムを評価することを狙いとする。公表された最新の結果は、2012年のものである。65の経済単位(国や都市)から、51万人の生徒が参加している。「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野で、それぞれ相対的な点数づけがなされている。
http://www.oecd.org/pisa/


では、それぞれの分野について、平均得点のトップテンを見てみよう。まず、
数学的リテラシーについて、1位から順に、上海、シンガポール、香港、台湾、韓国、マカオ、日本、リヒテンシュタイン、スイス、オランダ。

読解力については、上海、香港、シンガポール、日本、韓国、フィンランド、アイルランド、台湾、カナダ、ポーランド。

科学的リテラシーについては、上海、香港、シンガポール、日本、フィンランド、エストニア、韓国、ベトナム、ポーランド、カナダ。

どの分野においても、トップスリーを中国とシンガポールが独占している。日本は、「脱ゆとり」でだいぶん巻き返してきてはいる。アメリカは参加してないんだろうかと思ったら、30位くらいまで見ていくと出てくる。

これが、5〜10年くらい先の景気を占う指標として機能しているんじゃなかろ
うかと私はみている。ちょっくら銀行からお金を借りて、投資しておいてみかなー。

それはそうと、中国とシンガポールの勢い、すさまじい。シンガポールについては前回書いた通りだが、中国の教育の実態はいったいどうなっているのであろうか。羊羹さん、どうなんでしょ?

●スパルタ教育、虐待レベルか?

羊羹氏には5歳の娘さんがいる。中学まではしょうがないとして、高校は日本
のに行かせたいとのこと。それはやめとけ、と私。

羊羹氏は、娘さんには、クラブ活動など幅広く経験する中から、自分で主体的に人生を選び取ってほしいと考えている。中国の教育の一番の問題は、人生に選択肢がないこと。要は有無を言わせぬスパルタ詰め込み方式なのである。

中国に私立高校はあんまりない。あっても学費がべらぼうに高い。公立高校では、月曜から金曜は、始業が6:30am。もっと早い学校はあるが、遅いのはない。終業はどこでも10:00pm。土曜は、始業は同じで、終業は5:00pmか6:00pm。日曜も丸一日休みではなく、5:00pmか6:00pmから10:00pmまでは授業がある。

寮に入る生徒が多い。朝は必ず起こしにくる。夜は所定の時間になると消灯される。ケータイやパソコンは寮への持ち込み禁止。見つかると没収される。さすが、トップダウンで強制力をはたらかせるのが大好きな中国である。虐待レベルではないか、と羊羹氏。

ううむ。でも、ある意味公平だよね。日本だと、放課後も勉強したい子供のため、というか、勉強させたい親のために、予備校とか塾とか家庭教師というシステムがある。これにはそうとうなお金がかかる。

金持ちの子供はたくさん勉強できて、成績が上がって、いい大学に行けて、将来金持ちになるが、貧乏人の子供はやっぱり貧乏人、と。これはあんまりよくない。せめて教育を受ける機会ぐらいは公平であってほしい。

しかし、ほぼ全員にスパルタ式の詰め込み教育というのもどうかと。それほどの学業レベルを必要としない職業って世の中にいっぱいあって、そういう職に就いた人にとっては、勉強してきたことってあんまり役に立ってなくて、それならクラブ活動や趣味に興じて学生時代を過ごしていてもよかったのではあるまいか。

週の時間割の中に、体育のコマはいっぱい入っている。けど、その通りに実施されない。しょっちゅう他の先生に取られちゃって、無理矢理、別の授業にされちゃう。結局、週に一回実施されるかされないか程度。

世の中で一番ラクな仕事は、中高の体育の先生なんじゃないかと言われている。そんな調子なので、スポーツはちっとも上手くならない。

卓球や新体操は世界レベルで強い中国だけど、あれは別のシステムになっている。それ専門の学校があって、幼少のころから、学業放棄で、種目に特化した英才教育が施されるのである。10歳ぐらいになってから新体操をやりたいと思っても、すでに体型が出来上がっているからと、始めさせてももらえない。

卓球は中国の国技みたいなもんで、遊び程度ならOKと習いに行かせる親もけっこういる。幼少のうちに才能を見出されるとスカウトされる。親を説得して、専門の学校に入れることに同意が得られると、学業放棄でそっちに専念する人生を送る。

学業の傍ら、クラブ活動を通じてスポーツや芸術や趣味などにもある程度深くのめり込むことが可能な環境にはなっておらず、その点において、日本の学校がうらやましいというわけである。

いやぁ、しかし。日本はまず、全体の学業成績のレベルを底上げすることが先決だろうなぁ。あるいは、10歳ぐらいの段階で、素質や希望に応じて何割かの生徒を選抜して、スーパーエリート教育を施すのでもいいような気がするんだけど。機会さえ公平に与えられるのであれば、という条件は必須だけど。だめかなぁ。

特に英語。英語ができないって鎖国とほぼ同じ。世界の進歩からぽつんと取り残される。というか、すでにそうなりつつあるのに、そのこと自体に誰も気がつくことすらできていない。ヤバいぞ、ほんとに。

●英語がなくては生きていけない

そこだけは中国の教育方針に賛同する、と羊羹氏。やっぱり語学は小さいころから継続的にやらないとだめでしょう、と。はいはい、シンガポールでも言われたよ。

学校の授業で英語を習い始める学年は地方による。小学校1年からのところもあれば、もっと遅くからのところも、幼稚園からというところも。

そう言えば、成都で私はイベント会場外でもずいぶんたくさん写真を撮られたが、小学校低学年くらいにみえる子供でも「写真を撮らせてください」程度のことなら英語で言ってきていた。特別なことのように気負うようすも、鼻にかけたふうもなく、コミュニケーション手段として、ふつうにすっと言葉が出てきていた。

ナメられないように少し長めのセンテンスで、ペラペラっと答えておくか、なんてこっちが気負っているようじゃしょうがないので、あえて「はいよ」と。

TOEFLで一定以上の得点を取ることが大学生の基本になっている。大学には英語ネイティブの先生がいるのがあたりまえ。教材からしゃべりまで英語オンリーの授業があるのがあたりまえ。ない学校は低くみられる。

私は学部と修士課程で6年間、早稲田大学理工学部で過ごしているが、外国人の先生から英語で授業を受けることは一度もなかった。社会人になって10年くらい経ってから、社内の英語研修を受けたり、自主的にECCやNovaに通ったりするようになって、やっと、ネイティブと英語で会話するということを経験した。

ということは、いくら学校で英語を習ってきても、実地で会話したことが一度もないって人が日本にはたくさんいるわけだ。英語の使い道なんて、せいぜいカラオケで洋楽歌ってカッコつけるぐらいだろ、って思ってる人、うわー、けっこういそう。で、英語不要論みたいなことになっちゃうんだろうか。電気を使ったことのない人が、暗くなったら寝るからいいよ、と言ってるようなもんじゃないかと。

●爆買い中国、どこまで行く

世界のどこへ行っても「日本人」と言えば「じゃあ金持ちなんだね」と言われたあのころ、ニューヨークの象徴的なビルであるロックフェラー・センターを三菱地所が2,200億円で買い取ったとき、さすがにアメリカは怒った。1989年10月のことである。

スペインの首都マドリード(え?そっちが首都だったの? バルセロナかと思い込んでた。マドリード、行ったのに)にある歴史的な建物を、中国一の大富豪が約370億円で買い取ったことが、2014年6月5日に明らかになっている。

このビルは、スペイン広場に面した赤白のれんが壁が美しい25階建ての「スペインビル(EdificioEspana)」。1953年に建築されたもの。

しかも、それを壊して建てなおすぞ、と言ってるもんだから、物議をかもしているらしい。買った人のもんだから、壊そうとどうしようと自由で、法的にはどうにもならないらしい。

リッチな中国だが、決定的に不足しているものがある。嫁である。一人っ子政策は2015年に解除されたけど、今の状況が急にどうにかなるものではない。

日本だと、農村の嫁不足対策としてフィリピンに目をつけてたころがあったけど、あれ、いまどうなってるんだろう。中国ではベトナムに目が行っているようである。けど、そう言や、日本にも適齢期の女性がずいぶん余ってなかったっけ、と思ってる人がけっこういるとかいないとか。

日本の少子晩婚化は異常だ、と羊羹氏。たしかにその傾向は世界的にあるけれど、日本は突出しすぎだと。『ラブプラス』のせい? と私。あれは中国でも流行ったけど、ちゃんと結婚するし、子供も作る、と羊羹氏。

金なくてデートもままならん、と言ってる日本人男性を尻目に、リッチな中国人がみんなかっさらっていっちゃうのだろうか。がんばれ、日本男児。てか、経済的に立て直さないと、ヤバいんじゃないの、日本。

●成都は唐辛子を燃料に走っている

四川省成都は食べ物が辛いことで知られている。中国の他の地方の人たちは、「あいつら頭おかしい」と言ってるくらいのレベルである。けど、ただ辛いだけではない。美味いものを食うことにかける情熱において定評のある中国でも、特に突出しているのが成都である。

「串串香(チュアンチュアンシャン)」が絶品だった。火鍋の一種だが、長〜い串に具が刺してあって、串ごと煮る。引き上げてから串を抜いて、タレにつけて食べる。

日本の焼き鳥と違って、一本の串に小さな具のかけらが一切れだけなので、一人で何十本も食べられる。煮えてる分を片側に寄せておいてから、反対側から新たな串の束をどばっと突っ込めば、生煮えのと区別がついて便利である。

鍋の中で煮立っている汁がすでにどす黒い赤で凶悪な様相。煮過ぎるとたいへんなことになる。各自のタレは、辛さが選べる。私は無謀なチャレンジを避け、羊羹氏と同じのにしてもらった。

乾いた顆粒状の唐辛子と細かく刻んだニンニクとパクチーと落花生が入った皿に、ごま油をかけて混ぜるといい香りがする。

顆粒状の唐辛子とその他の薬味が半々ぐらいにどっと皿に盛られ、油をかけないのが最上級の辛さで、成都でもそれで食べる人は勇者と言われる。私のふたつ右隣りの人がそれをやっていた。頭おかしい。

具はなんでもかんでも。うずらの玉子、ソーセージ、豆腐、餃子、エノキ、牛肉、豚肉、鶏の足先、モツ系もいろいろあって、それが特に美味い。馬の胃は実は豚の胃らしい。モップみたいな見かけだけど本当はなんなんだろう。

焼けるような辛みだけじゃなく、ビリビリとしびれる辛さ。いちばん強烈だったのはブロッコリー。フラクタルの次元の隙間にたーっぷりとタレを含み込んでいた。ひー辛い。けど、美味い。

マムシを漬け込んだ老酒(ラオチュウ)をいただく。強烈に生臭い。マムシ酒なら日本にもあるが、中国のはパワーが違う。なにしろ中国の蛇は千年生きて龍になるのだ。強靭な生命力にあやかって、ものすごくスタミナがつきそうではないか。

中国のマムシはほんとうにおそろしい。2013年9月8日、黒竜江省ハルビン市の農村で、3か月漬け込んだ蛇酒の蛇がまだ生きていて、女性の指をかむという事故が起きている。

女性はリウマチで関節が痛むのを和らげようと、友人に頼んで蛇酒を作ってもらった。それが6月。マムシの一種である「土球子」という蛇を中国の蒸留酒「白酒」に漬け込んでもらった。

その後、瓶の下部に設けたコックから酒を注いで飲んでいたが、白酒がなくなったので足そうと思ってふたを開けると、蛇が突然動きだし、瓶から飛び出してきて女性の指にかみついた。女性が手を振り回して蛇を振り払おうとしていると、騒ぎに気づいた家族が駆けつけ、病院に連れて行った。

瓶が密閉されていなかったり、酒で満たされておらず空気があったりすると、一種の冬眠状態に陥ることで代謝を低下させ、わずかな呼吸で長期間生きながらえることがある。同様の事故はたびたび報告されているそうで。

とっくに死んだと思ってたやつでもこの調子なんだから、中国はおそろしい。見くびっちゃいかんのである。

●街もおいしい

成都のイベントが開催されたのは、「成都東区ミュージックパーク」の中にある建物のひとつにおいてである。かつて工場だった古い建物群を、改装して再利用した観光タウンである。機械の一部が展示物として置かれていて、風情がある。

ストリートは屋台が出てたりして、そぞろ歩きする大勢の人々でにぎわう。イベントとは関係なく、キャラのコスプレをしている人たちもいる。メイド喫茶があったので立ち寄ったが、時間がなかったので、注文せず、冷やかしただけになってしまった。

歩いていると、メイドさんが二人、追いかけてきた。コルク栓をした瓶に入った暖かい飲み物をくれた。わーい。花が入っていて、美味い。こんなに甘やかされたら、世の中をナメた人になってしまいそう。

写真はこちら。ついでにシンガポールのときのも。

成都:
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Event160130


シンガポール:
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Event151226



【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/


skillkillsというバンドのミュージック・ビデオに、ちょこっと味付けに出させてもらった。YouTubeにアップされたのは2015年11月18日(水)。私はめずらしくB面で出ている。


これは映画『ベスト・キッド』(原題:TheMomentofTruth/TheKarateKid)のパロディー。そう言や、イタリアに行ったとき、よくミヤギ、ミヤギって言われたもんだ。

そのよしみで、1月28日(木)に新代田で開催された単独ライブに呼んでもらえた。最初、A面で受付の横に立ち、来た人全員に缶バッヂを渡す役。アンコールではステージに上げてもらった。そのときは映像に出てるのと同じ格好で。すごーく盛り上がった。

それと日が重なっちゃって、早稲田大学の会田法行先生のフォトジャーナリズムの今期最後の授業に出られなかったのは残念。先生からじきじきにお誘いが来ていたのに。

その授業では、3人のゼミ生が、課題に取り組んだ成果の集大成を発表した。張徽慶氏は私を被写体に3KA月にわたって何回も撮ってくれた。発表用に最終的にピックアップしたのはこちら(サイズは縮めてあります)。
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/ByChouKikei160128