[4074] ものづくり支援の新拠点@関西

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《ネットで買い物すると早く着きすぎてこわい》

■ショート・ストーリーのKUNI[189]
 新しいマリ子
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンター奮闘記[73]
 ものづくり支援の新拠点@関西
 織田隆治




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■ショート・ストーリーのKUNI[189]
新しいマリ子

ヤマシタクニコ
https://bn.dgcr.com/archives/20160225140200.html

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「あなた、レタイル社の権藤さんがお越しよ」

マリ子の後から、穏やかな笑みを浮かべた権藤が入ってきた。

「これはこれは、おひさしぶりですな」

広澤祥一郎も血色のいい顔にいっぱいの笑みを浮かべ、古くからの友をにこやかに出迎えた。マリ子は会釈して立ち去り、部屋は二人だけになった。

「いよいよ悠々自適というわけですか。事業の大半は後進に譲られたとお聞きしまして」

権藤が言うと、広澤はうなずいた。

「まだまだするべきことはあるのだが、少しずつ身辺を整理していこうと思っている。せっかく自分で起こしてそこそこの規模にまで成長させた会社だからこそ、今のうちに今後の道筋をつけておきたい」

「確かに…思えば私が初めて広澤さまにお会いしたときは、まだ30歳になったばかりの頃。それから30余年。お互いに年を取りました」

「その通り。君はある意味、この30数年の間で最も深く私と関わった人物といえるかもしれない。そう思うと、胸にこみ上げてくるものがある」

権藤もうなずき、聞いた。

「マリ子さまの具合はいかがですか」

「ああ、申し分ない。口数は少ないがいつも静かに私を見つめ、微笑む。ただそこにいる、そのことだけで私を支えてくれるようだ。こういうのを理想の老後というのだろうか。こんな日々が私にも訪れるとは…そうだ。久しぶりにあの部屋に行ってみるかい」

広澤が目配せしながら言うと、権藤はうなずいた。

広澤は地下室の鍵をあけ、壁のスイッチを押した。白っぽい照明が一斉につき、がらんとして、ほとんどものが置かれていない室内を照らし出した──ただ、中央の三つの透明なケースを除いては。

広澤は三つのうちのひとつの前でたちどまった。その中にはマリ子とそっくりの女が目を閉じて横たわっている。マリ子はレタイル社製のアンドロイドなのだ。広澤はついに人間の女性とは暮らさず、アンドロイドを伴侶としてこれまでの月日を過ごしてきたのだ。

「今のマリ子の前だから、何と言えばいいかな──前マリ子とでもいうべきか。前マリ子もよくやってくれた。こうして見るとさまざまな思い出がよみがえるようだ。今から10年前、今のマリ子に交替するまでの7年間、私とともにあったのだ」

権藤は小さくうなずくとケースの蓋を開け、自分のポケットからリモコンのようなものを取り出した。そして、いくつかのボタンのうちのひとつを押すと、前マリ子はぱっちりと目を開け、いきなりしゃべり始めた。

──あら、あなた、どこにいらっしゃるの? まだ寝てらっしゃるの? 朝ですよ。もう起きないと会議に間に合いませんわよ…ええ、朝ご飯はいつものように目玉焼きとトースト、オレンジジュースね…はいはい、目玉焼きの黄身は半熟、ケチャップをかけておきました…

広澤は驚いた。

「これは…こんなものが残っていたのか。データはすっかり消去されたと思っていたが」

「普通はそうするのでございます。古くなったアンドロイドを処分するときはリサイクル専門業者に引き取ってもらい、部品に分けられ、またどこかに流れていきます。

当然、その際には過去のデータ一切を消去するのですが、広澤さまの場合はこちらで保管されるとのことでしたので…私も、自分が開発に携わったアンドロイドですから、なるべくそのまま残しておきたかったのです。

もっとも、アンドロイドとしての機能はすべて停止させておりまして、単なる記録にすぎませんが…勝手なことをいたしまして、申し訳ありません」

「いや、そんなことはない。よく残してくれた。君の開発したアンドロイドは相手と会話をしながらどんどん学習してゆく。相手に合わせ、相手が喜びそうなことを常に考える。そう、確かに当時、私は目玉焼きとトースト、オレンジジュースの朝食をとっていた。目玉焼きにはケチャップだった。今は納豆とご飯だが」

「がらっと変わったのですね」

「長生きするには納豆だよ。君もそうしたまえ」

「はあ」

権藤はうなずきながら、前マリ子の隣のケースを開けた。そして同じようにリモコンを操作すると、やはりマリ子と同じ顔だがメイクやヘアスタイルの違いで、多少若く見えるアンドロイドがしゃべりだした。

──あら、あなた、どこにいらっしゃるの? いないのか…どっかに行ったのかなあ。ラッキー…。

広澤は驚いた。

「な、なにがラッキーだ。この前マリ子、じゃない、えっと、前マリ子の前は元マリ子になるんだろうか」

「いや、総理大臣ではないので…そうでございますね。全部『前』とか『前々』でよろしいのでは」

「そうか。とすると、これは元元マリ子なのだな。前々マリ子め。前々マリ子は前マリ子と交替する前の9年間をともにしたのだが、こんなやつだったとは」

前々マリ子は広澤にかまわずおしゃべりを続けた。

──ほんとに最近、何だかいらいらしてるみたいで困ったものだわ。たまにこんなときがあるとほっとしちゃう。でも、たぶん忙しすぎるのよね。身体をこわさなきゃいいけど…それが心配だわ。

そうだ、せめてカルシウムの多いお料理でも作ってみよう。でも、消化が良くってコレステロールは少ないほうがいいわね。うーん、なにがいいかしら…

「ははは、やっぱりあなたのことを案じておられる」権藤が言うと、

「どうもそのようだ。前々マリ子、ありがとう。確かに前々マリ子と過ごしていた頃はちょうど事業が大変な頃でもあった。それまでは順調に黒字を重ねてきたのに、出す製品出す製品ことごとく不評だった。

アンポコポロニカもダマストメイラーも、ニャンバンドロリンコも不発。社内でも一旦すべてを見直すべきだ、新しい製品を出すのはしばらく止めるべきだとの声が出た。私は確かにいらいらしていたと思う」

「でも、広澤さまは新規開発を止めることはしなかった。果敢に新製品の開発を推し進めた。そして、ついにボヨヨヨスクリャーピンが大ヒット」

「そうだ。なんとかそれで落ち着いたが、前々マリ子には苦労させた。さっきは誤解してすまなかった、前々マリ子」

広澤はやさしく声をかけたが、前々マリ子はそれには無反応でひとりぶつぶつとしゃべり続けた。

「人間同士でも、伴侶というのは不思議なものでございます。一緒に長い年月をともに暮らしているうち、それぞれが互いの鏡となり、証人となる。出会う前とは別の人間に変わってゆく。アンドロイドの場合、それがこのように端的にデータに反映されるのでわかりやすいというだけのことで」

権藤はそう言いながら、さらにもうひとつのケースを開けた。眠っていたアンドロイド──前々々マリ子がぱっちりと目を開き、しゃべり始めた。桜色のほほ、華やかにカールした髪が愛らしい。

──だれ? ショウちゃん? ショウちゃんじゃないの? あーん、キスしてえ〜ん。

広澤が耳まで真っ赤になった。

「ショ、ショウちゃん…」

「そ、そう呼ばれてたようだな、おほん」

──今日はショウちゃんといっしょに食べようと思って、いちごのケーキ作ったよ! いっぱいいっぱい食べてね!

「広澤さまが甘党だったとは知りませんでした」

「ま、人間の嗜好は変わるんだよ。あー、えへん、おほん」

──ショウちゃん、どこに行ってたの? お仕事ばっかりしちゃだめだよ。マリ子、さびしいからね!

「そうか。当時の私たちはこんな会話をしていたのか。すっかり忘れていたが…私はまだ30代だった。徹夜しても平気だった。ラーメン2杯、余裕で食えた。みそせんべいを自前の歯でばりばり食べることができた。今から思うと夢のようだ」

──ショウちゃん、ねえ、あたしのこと好き? あたしはショウちゃん、大好きだよ。ずっと…ずっといっしょにいようね〜。

前々々マリ子はかまわず甘い言葉を発し続けていた。

「えー、その…おほん…はい、私もそうです。それでですね、実は私もこのたび引退することになりまして、広澤さまとのおつきあいも今度の新しいマリ子さまが最後になりまして」

──ショウちゃんのクリームパンみたいなお手々が好きよ〜。

「ああ、そそ、そういうことだったね…どうも気が散っていけないな…寂しい限りだが仕方ない。で、新しいマリ子はもう完成したのかね?」

広澤は汗を拭いた。

「あ、はい…だいたいできましたので、今日は見ていただこうと」

権藤はそう言うと、さっきとは別のポケットからトランプのカードほどの装置を取り出した。そして、それを操作すると権藤の前方1メートルほどの空間に、ふわりとアンドロイドの姿が投影された。

「これが完成イメージだと思ってください。基本的には代々のマリ子さまと同じ骨格ですが、それとなく年齢が加わったと感じられる風貌になっております」

「うむ」

新しいマリ子は地味なドレスに身を包み、髪をまとめていた。ドレスの裾を揺らしながら、歩く。壁に向かって。そしてターンしてまたこちらへ。

「おや」

広澤が何かに気づいたように言った。

「歩き方が…ちょっと変だな」

「お気づきになりましたか」

「うん。かすかなものだが…どこかをかばいながら歩いている感じだ」

「さようでございます。新しいマリ子さまは若干腰に不具合を抱えており、日によっては痛みが強くなるというふうに設定しております。年齢相応と申しましょうか。といって、大きな支障になるほどではございません」

「なるほど。リアリティというやつだな」

「実は私、広澤さまが現役を退かれるとお聞きしまして、心配で」

「どうして心配なのだ」

「忙しくしていた人が急にひまになると、体調を崩したりするものでございます。人間、適度の緊張やストレスがないとだめになるのです。身近に多くの例も見てきました。

そこで私の提案なのですが…これまでは、マリ子さまが広澤さまをさまざまな面で支えてきた。今後は、広澤さまがマリ子さまを支える、という生活はいかがかと」

「なるほど。それもいいかも知れん。どうすればマリ子のためになるかを考えるのも、それはそれで張り合いのある生活だろう。よし、なんだかやる気がわいてきたよ」

「気に入っていただければ幸いです」

権藤が装置をしまう間、広澤はケースの中で横たわる前マリ子、前々マリ子、
前々々マリ子を眺めた。そしてしばし考え込んだ。

仕事優先で脇見もせずに進んできたこと。友人たちが次々に伴侶を得て幸せそうな家庭を営むのを横目に、アンドロイドで十分だ、それも機能は優れているが最長10年で更新されてしまうレタイル社のアンドロイドのほうがいっそのこと気楽でいい、過去なんかどうでもいいと自分に言い聞かせてきたこと。だが、いまとなって後悔するところがまったくないと言えばうそになる。

「権藤くん…」

「はい?」

「新しいマリ子に…過去のマリ子のデータの一部を移植することはできないかな…いや、それは…むずかしいのかなあ」

「えっ」

権藤はしばし考え込んだ。

「それは…いや、そうですね……できないことはないと思いますが…えーっと…過去の記憶として別領域に納めることはできるかと…で、あーしてこーして、それと連携させる…という感じでしょうか」

「うん。たまに、昔のことを思い出しながら語りたいんだよ、マリ子と」

「…わかりました、やってみましょう! 少し完成が遅くなるかもしれませんが、私の最後の仕事としてやらせていただきましょう。あまりクリアでなく、適度にぼやけたり歪んだりした記憶に、加工したほうがよいかもしれませんね」

広澤はうなずいた。

前々々マリ子はまだおしゃべりを続けていた。

──ショウちゃん、何むずかしいこと言ってんの? ショウちゃん、こっちに来ていっしょに遊ぼうよ。でないと、お尻ぺんぺんしちゃうぞー!


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
http://midtan.net/

http://koo-yamashita.main.jp/wp/


最近、ネットで買い物すると早く着きすぎてこわいくらいだ。私のことなのでだいたい注文するのは真夜中、1時とか2時だったりする。それが翌日にちゃんと届く。すごいの一言。どうなってるんだと思う。

だけど、実際はそんなに急がなくていいことも多い。ネット印刷みたいに、ゆっくりでいい場合は安くしてくれないかな(笑)


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■3Dプリンター奮闘記[73]
ものづくり支援の新拠点@関西

織田隆治
https://bn.dgcr.com/archives/20160225140100.html

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ご無沙汰してました。今回はちょっと宣伝まじりな内容になります。手前味噌ではありますが。

最近では、FABLAB(ファブラボ)といわれる、さまざまな工作機械を備えた、工作が可能な工房が一般にオープンされ、ネットワークができています。

これは、個人での様々なものづくりの可能性を拡げ、DIY(Do It Yourself)「自分で作る」を可能にすることを目指しています。

基本的には、レーザー彫刻機、CNCルーターや3Dプリンター等、各種デジタル制作機械や、色々なアナログ工作ツール、電子工作ツールを備えていて、個人でもある程度の物作りが出来るようになっています。

このファブラボとは、ただこういう設備を整えたというだけではなく、世界ファブラボ会議や連携プロジェクト等、国際的なファブラボのネットワークに参加し、一般にオープンして共有することが不可欠となっています。

まあ、簡単に言うと、色々な制作機材を設置して、それを一般にオープンしますが、その活動は世界的なネットワークに属している必要があるわけです。機材だけ置いておき、どこの機関にも属さない単独の場所は、ファブラボとは言えないのです。

さて、そういったファブラボ、実は僕は利用したことがありません。基本的に、工作機械はある程度揃っていますし、個人的なネットワークもそれなりにあったりするからなんですね。

それと、重要なのは業務でものを制作する場合、その制作物が他の人の目に触れることが、守秘義務に関わって来る場合もあり、オープンにするのが難しいんですよね。

趣味以外での利用では、そういった所を利用するのはなかなか難しいのかなぁ…と思って、これまで参加したことがなかった訳です。

昨年、そういったプロが使う場所が出来ないか? という相談を受け、一年間色々と準備してきまして、この度、大阪市内にてやっと「シゴトバLAB」のオープンにこぎ着けました。
http://shigotoba-lab.com/


これは、シゴトバBASEという、大阪市内にあるコワーキング・シェアオフィスに併設された施設となります。
http://shigotoba-base.com/


施設の案内を少し…。まず、ここは一般にオープンされた施設ではないので、先に述べたFABLABではありません。シゴトバBASEの会員に限定された施設となっており、その内部や活動は、基本的にクローズドとなっています。

常設されている機材は、今のところ下記のもの。

国産の3Dプリンター、Bellulo。成型範囲が200×120×200mmの光硬化樹脂プリンター、マスターEV。300mm×500mmサイズの範囲を持つレーザー彫刻機。

それに、簡単な塗装が可能な塗装ブースや、ブツ撮りもできるフォトスタジオを完備していて、入居される方はどちらも安価で利用可能です。

この他、3Dプリンターに必須の3Dデータの制作ソフトウェア、ライノセラスや、Zブラシの講座、3Dプリンターの基礎講座なども随時実施しますので、初心者の方も安心して3Dプリンターを使えるようになっていただけると思っています。

さらに、マーケットプレイスとして、製作した物の販売サイトも利用できるようになって行きます。

つまり、企画から販売まで一貫してサポートして行こう、ってことなんですね。

場所も大阪心斎橋から徒歩10分で、アクセスも最高です。近くには東急ハンズなんかもあったり、大阪日本橋も比較的近いので、すごく便利ですね。

これまでのコワーキング・シェアオフィスとは違い、完全に独立した個別の部屋も用意しました。

そこで、もの作りを総合的に支援するため、もの作りを生業とされる方の入居を、現在募集している訳です。

工業デザイン、造形、模型製作、屋外広告、試作業務など、あらゆるもの作りの企業、個人事業主をターゲットとさせて頂いており、F-D-STUDIO、私も管理者として入居していますので、あらゆるもの作りを支援させて頂こうと思っています。

また、シゴトバLABにて使用できる範囲や、クオリティを超えた出力、造形、塗装仕上げなどは、私の方でお手伝いもさせて頂こうかな…と準備しています。

シャワーも使えますので、作業で汚れた体をリフレッシュできます。これ、結構重要なんですよね(笑)

僕みたいなモノ作りの仕事を個人や少数でやっていると、かなり遅くまで仕事していたり、徹夜する事なんて結構あったりします。

2〜3日帰れないなんてザラでして、その度に銭湯なんか行ってたら、結構な出費になる訳です…。塗装や研磨で汚れたりしますし、ここはとても僕的にはありがたい部分です。

ただ今募集している部屋は、小部屋の2部屋となり、365日、24時間利用可能。セキュリティ会社とも契約しているので、こういった意味でも安心なんですね。

それから、賃料なんかも気になるところですが、電気代、ネット利用込みで、月6万円、保証金は2ヶ月。なんか生々しい話になると通販サイトみたいなんで、ここはサイトを見てください。

まだ色々と準備中のサイトではあるんですが、おおよその内容は理解していただけるかとは思います…。

LABに設置している機種の他、僕が大体常駐してますんで、大型のプリントや、特殊な造形なんかも、僕がお手伝いできるようにと思っています。昨年12月に先行で入居して、色々準備してきて、やっとここまで来るのが大変でしたけど、ここからも大変なんだろうな〜なんて思っています。

でも、3Dプリンターでモノ作りをバリバリやっていく企業さんや個人さんが増えていって欲しいですから、とにかくなんとか頑張って行くつもりです。

問い合わせは、LABに直接でも結構ですが、もちろん、僕宛の連絡でもOKですので、大阪市内でそういう所で仕事してみたいな〜なんて方は、お気軽にご連絡ください。頑張ります!


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp



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編集後記(02/25)

●図書館のヘビーユーザーである。最近、蕨市の図書館本館が意外に近い所にあること知り、ユーザー登録した。これで県南三市の図書館を自由に利用できるようになった。もっとも、川口以外はかなりヘボい。三つの図書館に、時には同じ本の予約を入れたりしているから、到着メールは二日に一冊ぐらい来る。常に五冊ほど手元にあるが、読むのはけっこう早いほうだから、一日おきぐらいに図書館に行く。三か所を巡るルートが決まった。どこの図書館に行っても目立つのは白髪が多いご同輩であるが、なぜか女性は少ない。日中図書館に来る子供はいないし、若者だって勉強スペースに来る人以外は見あたらない。

ほんの数年前まで、これほど図書館を利用するとは思っていなかった。若い頃のような、本を手当たり次第に買いまくる経済力が、いまや完全になくなったからだ。もはや図書館なしの読書生活はありえない。図書館さまさまだが、かつて出版業界で飯を食っていた者として、図書館のゴーマンさに許しがたいところがある。それは貸出至上主義で、公共の無料貸本屋になり下がった部分だ。図書館の住民サービスという名を借りた、話題の新刊の大量買取がある。図書館が仕入れる本は一冊と限られているが、紛失や破損を考慮して、複本として予備も仕入れられる。それを悪用して、新刊本を大量に買い上げている。

するとどうなるか、新刊の売れ行きに大いに影響し、薄利多売の出版業界、町の書店、そして筆者を苦しめている。図書館は本を生産、販売する側の事情に一寸の配慮もない。出版側は、本に愛情のある図書館に敬意を表しつつ、出版社との共存をはかっていただけませんか、決して無理なお願いではありません、と終始へりくだって、新刊の無料貸出はせめて半年は猶予して欲しいと懇願している。しかし、図書館側は居丈高に「図書館の貸出サービスは民主主義の原点である。それを否定するのか!」と拒否する。偉そうなことを言うが、たぶん公共の無料貸本屋という自覚、引け目があるから、そういう反応になる。

「どうぞ卵をただで配って下さい。しかし、そのことによって肝心の鶏が死んだらどうするのですか」というのが私の思いのすべてだ」と、新潮社の常務取締役・石井昂氏が語る。泣ける。無料貸出はせめて半年は猶予、それぐらい譲ってもいいじゃないか、図書館。むしろ一年にしろと言いたい。それから文庫本や新書の新刊も、無料貸出は一年後とすべきである。

東野圭吾「虚ろな十字架」37冊、又吉直樹「火花」37冊、東野圭吾「祈りの幕が下りる時」36冊、村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」36冊、東野圭吾「ラプラスの魔女」35冊、和田竜「村上海賊の娘」上下各34冊、東野圭吾「人魚の眠る家」33冊、西加奈子「サラバ」上下各34冊………川口図書館、バカみたい。数か月、一年以上予約待ちする人もバカみたい。 (柴田)

ほぼ同様のことを一年前に書いていた〜
https://bn.dgcr.com/archives/20150218140000.html



●権藤の声が及川光博で再生されたわ。60過ぎなのか。ま、そのままにしておこうっと。広澤は竜雷太にしようかなと読み進め、ある時から吉田鋼太郎になった。

「ゆっくりでいい場合は安く」。それいいなぁ。

西大橋(北堀江)にこんなところがあったなんて。そしてラボができちゃうなんて!

確かに半年から一年は貸出を猶予した方がいい。図書館も利用する身としてはアレだが、借りる本がなくなっては元も子もない。もちろん購入もしているし、オーディオブックとして買うこともあるよ〜。

図書館の貸出限度が8冊から15冊に増えて困っている。今年に入るまで知らなくて、最初は喜んだのだが、予約しておいた本がどんどん届き、読めないまま返却となりそうだ。

本の要約サイト「フライヤー」。無料の要約もアリ。auスマートパスに入っていたらシルバー会員扱いで、月5冊の要約が読めるよ。 (hammer.mule)

フライヤー flier
https://www.flierinc.com/

見ると、欲しくなる読みたくなる