《電波にだまされてるのでは?》
■晴耕雨読[32]
共謀罪のなにが問題なのか
福間晴耕
■はぐれDEATH[24]
はぐれの電波妄想はWi-Fiリストに恐怖する
藤原ヨウコウ
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■晴耕雨読[32]
共謀罪のなにが問題なのか
福間晴耕
https://bn.dgcr.com/archives/20170317140100.html
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この記事が出る頃には、既に共謀罪(テロ等準備罪)が国会で決着がついているだろうか。なぜ共謀罪がここまで騒ぎになっているか、わからない人もいると思うので、大雑把に説明する。
共謀罪は他の罪と違い、ある特定の犯罪を行おうと、具体的・現実的に合意することによって成立する罪だからである。
つまり、ざっくり言うと共謀罪では犯罪行為を行ったり準備したりするのではなく、それについて計画しただけで罪に問えるのだ。
これは非常に強力な法律で、上手く使えばこれまで対応が難しかった暴力団や悪徳商法、国際テロ組織などを有効に取り締まることが出来る反面、悪用すれば国民の一般的な社会活動(デモや集会)などでさえも取り締まりの対象にすることが出来てしまう。
そのせいもあって、過去三回も提出されながらもすべて廃案になって通らなかった先例がある。つまり、それくらい強力な反面危険な法律なのである。
さてその共謀罪が今回、テロ等準備罪という名称で国会に提出された。今回は過去の反省も踏まえて、悪用されないよう対象をテロ行為に限定するという事で、名称も変えて出されたわけだが、実はその危険性はなくなっていない。
例えば、今回対象となる犯罪行為を676個上げて出したものの、あまりに対象となる犯罪が多すぎるということで277個に減らされたが、その中には著作権侵害などかなり微妙なものまで入っている。
実は今回のテロ等準備罪は平成12年11月に国連総会で、効果的に国際的な組織犯罪を防止し戦うために協力する事を目的とする「国際組織犯罪防止条約」に日本も加盟するための条件に、共謀罪も含まれている。
その中にICPO・インターポール(国際刑事警察機構)からの勧告で模倣品や海賊版の売上げの一部は、組織やテロ組織の資金源となっている可能性があると警告を受けているのと、国際組織犯罪防止条約が「長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪」を共謀罪の対象犯罪とすることを義務付けている為に、一絡げに対象となる犯罪行為を入れているからこんなことになっているのである。
よく共謀罪は現行の法令により許容された範囲内で捜査を尽くすから安心してほしいとか、暴力団、詐欺集団、テロ集団のような犯罪集団が共謀しない限りは適用されないから大丈夫と言う意見もある。
しかし、法律は文面に書かれたものがすべてなので、大丈夫と言うからには法律の文面で書かれていなければならない。
そうした観点から見ると、実は今回の法案は反社会的集団の資金源、海賊版定義が現行法で明確でないので、リスクをはらんだものだと言うことがわかるだろう。
噛み砕いて言ってしまえば、コミケの二次創作物のようなものでさえも、共謀罪の対象になる危険性は残っているのである。
また、共謀罪には他にも著作権法違反などの親告罪の対象が、非親告罪化になってしまう問題もある。親告罪とは対象者が親告して始めて罪に問える犯罪なのだが、共謀罪の対象になればこれらは親告罪の対象ではなく、非親告罪の対象になる(さもなければ警察が捜査できない)。
これのなにが問題かというと、多くの二次創作物やパロディは権利者の暗黙の了解で成り立っているのだが、これらもまた権利者の暗黙の了解があろうとも処罰の対象に(法律的には)なってしまうのだ。
たかが二次創作物が、テロ等準備罪に問われるわけはないだろうと思う人も多いかも知れないが、法律的に罪に問えるとなると、第三者の告発があれば一応警察は動かなくてはいけないので、単なる嫌がらせの為に警察に通報しまくるだけで、現場を萎縮させるには十分効果があるのだ。
このように、共謀罪(テロ等準備罪)は強力かつ非常に危険性も高い法案なのだ。法案が通るのか通らないのか、この記事を書いた時点では分らないが、いずれにせよ細かいところも含めた国会での審議が今後も必要で、懸念点は条文上で担保されるようにしなくてはならないのである。
【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/
HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。
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■はぐれDEATH[24]
はぐれの電波妄想はWi-Fiリストに恐怖する
藤原ヨウコウ
https://bn.dgcr.com/archives/20170317140100.html
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別にボクが電波系とかいうお話ではない。電波系かもしれないけど(笑)
京阪電車に乗って京橋駅で降り、JR環状線京橋駅に乗り換え、鶴橋駅で更に近鉄に乗り換える。で、いちいちiPhone君がWi-Fiを拾ってくれるのだが、とにかく量が凄まじい。
ボクはiPhone以外のスマホを使ったことがないので分からないのだが、とにかくWi-Fiのリストがずらっと並ぶ。使えないのばっかりだけど。
Wi-Fiに関しては伏見の仮住処と出向先で繋ぐだけ、その他は普通に(?)4G通信となるわけだが、これをボクはほとんど使わない。月に1GBいかない。歩きスマホもしないし(老眼のせいで出来ない)せいぜい業務メールぐらい。
ボクのスマホネタはかつて記したのでここまで。本筋はここからである。
目に見えない電波を気にする人は稀だろう。よほどの山間部にでも行かない限り「この国は得体の知れない電波に覆われているのでわ?」と勘繰ったりするのは、ボクのようなひねくれ者だけかもしれない。ちなみにボクの生活圏内では、無数のイマイチ役に立たない電波が飛び交っている。
いつの間にか日常生活の一部になってしまっている、この目に見えないヤツらがスマホのWi-Fiリストという形で目の当たりにして、薄々気になっていた電波に気持ちの悪さを感じ始めている。
関東にいたときは全然気にならなかったのに、ナゼか京都に戻ってきて京橋経由で出向をするようになってから、ひどい違和感というかなんというか、妙な感じなのだ。
伏見が長閑(のどか)すぎ、という指摘もあるかもしれない。否定はしないけどね。じっさいボケボケしているので、ボクは気に入っている。伏見以外の場所で見るWi-Fiのリストは、何某かの強迫概念をボクに与えているのかもしれない。主に京橋だけど。
一般家庭にある通信機器が固定電話しかなかった頃は、こんなアホなことを考えもしなかったが(もっとも固定電話は有線だが)携帯電話が普及し始めて、ボクの電波妄想は始まった。
一般家庭に無線電波が最初に普及したのはラジオだろう。日本初のラジオ放送は、1925年(大正14年)3月22日9時30分、社団法人東京放送局(JOAK:現在のNHK東京ラジオ第1放送。略称:AK)が東京・芝浦の東京高等工芸学校(千葉大学工学部の前身)内に設けた仮送信所から発したものだそうだ。
テレビが始まるまで、一般家庭での電波系媒体の主流だったことは敢えて書くまでもないだろう。
ボクが中高生ぐらいの頃は、深夜ラジオを聞くのがちょっとした流行だったのだが、ボクは寝るのが早いので(昔からだ)肝心の深夜には爆睡している。
同級生の会話には当然ついていけないのだが、夜は寝る時間と頑なに信じ込んでいる節があるので、当時(今もだけど)会話についていけないからといって疎外感を味わったことはない。むしろ「そんな時間まで起きてて、朝よう登校できるなぁ」と感心してたぐらいだ。
ラジオの娯楽も掘り出すと面白そうだが、キリがなさそうで、面倒くさいのでいつも通りじゃんじゃん飛ばす。
とここまできて、ふと「場所と設備を選ぶが電報というのもそうなのか?」と思って、ちょいとググったらこっちは有線だった。逓信省の管轄だったようだ。
ついでにちょろっと調べたのだが、ボクが「電波」と呼んでいるのは「電信」と呼称するのが通例のようだ。ラジオも後述するテレビもアマチュア無線も、この中に含まれるらしい。この稿では、あくまでもボクのうやむやな定義の電波で統一表記することにする。
で、テレビだ。1953年(昭和28年)2月1日、日本放送協会(NHK)のテレビ放送が開始だそうだ。普及の歴史もじゃんじゃん飛ばす。
ちなみにボクが、無線電波というのを初めて意識したのはタクシー無線。続いてアマチュア無線となる。ラジオもテレビも生まれたときには一応あったので、無線電波を意識することはなかった。
それでも、母方の祖父の家は周りを山で囲まれていたので、受信状態はとてもじゃないが良好とは言えなかった。あの時の体験で「テレビも無線電波なんや」と確信したのだ。今からでは想像もできないだろうが、そんな時代もあったのである。
携帯電話の前にはポケベルなどというものもあったが、もう今や完全に化石やな。短い生涯だった。合掌。
そして携帯電話が登場する。気がついたら周りは携帯電話一色で、ただただ狼狽していたのだが、祇園祭の大工さんのお手伝いの直前になって「どうやら携帯を持たないとマズイっぽい」と思い、ボクも持つことにした。大工さんのお仕事中に、本業の依頼電話が入ってくるのを恐れたのだ。
大工さんのお手伝いの期間は文芸雑誌の締め切りと被るので、当然依頼そのものも被ることになる。
お仕事さえ入ってしまえばこっちのものだが、とにかく文芸雑誌は時間が勝負なのである。来るお仕事はきっちりゲットしないと困る。実に分かりやすい理由である。
もっとも、大工さんのお手伝いをしていないときは家にいるので、携帯はあんまり役に立たなかったりもするのだが。
21世紀の現代は、ボクが生まれ育った昭和の日本の空間を飛び交っていた電波の量とは桁違いだろう。情報そのものの量は言うまでもない。情報の質はあえて言及しない。
ここも掘り出したらキリがないからだ。ボク如きが口を挟む件ではないし、その気もまったくない。ややこしい事に首を突っ込むのは御免である。なのでどんどん飛ばして先にいく。
ちなみに現代のテレビ電波に関してはもうさっぱり分からない。BSくらいまではなんとかついていけたのだが、CSだの地デジだのになると、使ったこともないのでチンプンカンプンである。
実家の今あるテレビのリモコンの使い方も、ボクは分からないのだ。あのボタンの量で触る気すらしなくなる。多すぎやろう。この辺は察していただきたい。
テレビついでに、最近4Kだの5Kだのが会話の中で出てきて、大ボケをぶっかました。バブル末期の印刷会社に勤務していたので、つい3K(きつい、きたない、きけん)を思いついてしまった。
「最近また何か加わったのかなぁ」と思って話をしていたら、話が全然繋がらない。画面解像度の話だということに気がつくにの、かなり時間がかかった。おまけに、今のテレビって液晶なんですね……でかいけど薄い。
実はこの時流にもしっかり乗り損ねているのだがまぁ良かろう。どうせ見てないんだし、必要性も感じない。
脱線ついでにもう一つ。地デジになった時にNHKはなぜスクランブルを導入しなかったのだろう? ちょうど買い換え需要があったはずなんだから、そこに紛れ混ませれば良さそうなものをそのままスルーしてしまうから、受信料の件がいつまでたってもややこしいままになるのだ。アホちゃうか……。
電波といえば人工衛星からのものもある。こっちは宇宙からですぞ。通信用は言うに及ばず、GPSだのなんだの(GPSしか思いつかなかったのは内緒だ)色々あるだろう。世間様は自然界の紫外線で大騒ぎしているが、個人的には衛星からの電波の方がよほど気になる。監視されてるみたいだし。
直接、日常生活とは関係ないが、レーダーだって色んな種類のものがあるらしい。らしい、というのは興味があんまりないからだ。レーダーの基本原理は電波を対象物にむけて発信し、その反射波を測定する事で様々な情報を得る。航空用レーダーなどは分かりやすい例だろう。
これに軍事が絡むともうワケが分からん。どこの国がどんなレーダーを使って何を監視しているのか、もちろん分からないし、ステルスがどうのチャフがどうのと言われても混乱するだけである。
そういえば、ひと昔前は携帯電話から出る電磁波が、人体に及ぼす影響がどうのこうのという話もあったが、いつの間にか聞かなくなった。結局、どんな結論になったんだろう? ただの都市伝説か? それとも業界をあげてウヤムヤにしたのか?
このようにして、ただでさえ怪しげな電波はどんどん怪しくなる。ボクが知らないだけかもしれないが(実際知らないんだけど)、ボクの中では電波が得体の知れない何かにどんどん変化していっている。
ボクが過敏なのか、世間が鈍感なのか、そもそも世間様ではこのような事は気にするようなことですらないのかもしれない。ただボクは気になるのだ。
前にスマホの件でも白状したが、今の日常生活の中の常識とやらが、ボクには胡散臭くて仕方がない。デジタル一辺倒になってから不信感は増すばかりで、それこそ電波系的な被害妄想になりかねない。
いや、何かの電波を受信してこの作文を書いてるわけではありません。多分、自分の頭で考えていると思う。無意識にのうちに変な電波を受信して書いてるとかはイヤやなぁ……五感ははたらかせているつもりですがね。
ボクが素直に信用できたり、諦めたりできるのは、あくまでも自分の五感である。万能ではないので取りこぼしや変な歪みがあるだろうが、それでも自分にもともと備わっている自然な能力である。
基準になるのは五感を通じて感じたり、考えたりしたことしかない。もちろん、他者からの意見に耳を貸さない、というわけではない。肯定するかしないかは、あくまでもボク自身である。決めるのだって基準がなければどうにもならん。
極端な自然主義者ではないし、テクノロジー否定論者でもない。
それでも京橋の駅に着いてWi-Fiのリストがずらり並ぶと、「電波にだまされてるのでは?」とつい思ってしまうのだ。
これもまたはぐれの歪な価値観なのだろう。
【フジワラヨウコウ/森山由海/藤原ヨウコウ】
YowKow Fujiwara/yoShimi moriyama
http://yowkow-yoshimi.tumblr.com/
http://blog.livedoor.jp/yowkow_yoshimi/
装画・挿絵で口に糊するエカキ。お仕事常時募集中。というか、くれっ!
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編集後記(03/17)
●日下公人「ついに日本繁栄の時代がやって来た」を読んだ(WAC、2017)。日本が嫌いな人は、タイトルや版元を見ただけで遠ざけるだろう。月刊「WiLL」に掲載されたコラムを一部改題加筆して構成したものである。日本が大好きな私は非常に楽しく読んだ。ところどころに出てくるクイズが面白い。
アメリカの小噺だが、「メリーちゃんとマーガレットちゃんは大の仲良し姉妹でした。ある時、おやつの時間ですよと言われて二人が行ってみると、テーブルにはケーキが一つしかのっていませんでした。メリーちゃんは『マーガレットちゃんの分がない』と泣き出しました。妹思いの、いいお姉さんですね」。
メリーちゃんはケーキを確保できるうえ褒められる。「これが〈優位戦思考〉の好例である。自分中心で先んずれば人を制す、である。マーガレットちゃんになってみて、何と反撃すべきかを考えて下さい」。考えたが分からない。ズルしてネットに行くと、これは有名な小噺だったと知る。でも回答はない。
マーガレットちゃんになったわたしは、メリーちゃんの行動を知らんぷりして、にっこり笑い「お母様、二つに切り分けて下さい」と言う。メリーちゃんの野望を挫きながら、顔をつぶすこともない。うまくいけば「あら、出し忘れたわ」となるかもしれない。劣位戦としては上等だと思うがどうだろう。どなたか、もっといい方法があったら教えて下さい。
クイズ:広島の人は今までアメリカに原子爆弾投下の謝罪を求めたことがあるか。分からない……。「ない。当時の日本人の気持ちを知っている私は調べなくてもそう思う。日本人は原爆開発競争に負けたとだけ思っていた。先んじていれば、日本も使うが、まず海上投下したのにと当時の大人達は思っていた」
「誰か、日本外交の腰抜けの理由を解説してください。答え:その1 何も考えていないから。その2 安倍首相に任せているから……困ったものですね」
中国が日本に漢字を教えたと言ったら、「政治用語は全部日本製だ」と言えばよい。「全国人民代表大会」は全部日本語ですよと言えばよい。
どこの国でも借金を返済できないときは領土を売った。時には国民も売った。アメリカはそれを買ってきた。その実例を挙げよ。これをテレビのクイズにしたら日本人は全滅だろう、という。ロシアからアラスカを買ったのは知っているが。スペインからフロリダ、フランスからはミシシッピ以西、独立戦争の時にイギリスやドイツから兵士を買って、ワシントンの民兵と戦わせた。
世界は「グローバリズムからローカリズムへ動く」と見なければならない。グローバリズムの敵はナショナリズムであるが、アメリカは今グローバリズムからナショナリズムへ戻りつつある。アメリカ分裂への道である。新しい動きの先頭に立つ国は日本とドイツらしい。面白いことになってきた。 (柴田)
日下公人「ついに日本繁栄の時代がやって来た」
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●消防点検。覚えてないけど、たぶん年に1〜2回はある。毎回違う人が来てくれるのだが、説明ポイントが違ってて面白い。
火災報知器を止めるための暗証番号をきちんと覚えておいてと言う人や、家具からスプリンクラーの距離を力説する人もいる。
避難ばしごのある部屋はベランダの仕切板の前に物を置くなとチェックされるものの、うちはない部屋なのでそれまで何も言われなかったが、今回の人はチェックしてくれた。まぁ何も置いていないんだけどさ。
スプリンクラーのチェックは目視なので、それでわかるのかと質問したことがある。いざという時に作動するかどうかなんてわからなくて、熱でカバーが溶けると水が出るはずなんですとしか言えないらしい。そりゃそうだ。続く。 (hammer.mule)
住宅用防災警報器の設置場所
http://www20.tok2.com/home/tk4982/kako-mon/kako-shobo.htm
はりや壁、エアコンや換気扇の吹き出し口、天井からの距離が決められている