[4505] なぜ分かりにくいのかが分からない生徒たち

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《♪UFO〜別次元のおいしさ》

■ローマでMANGA[127]
 なぜ分かりにくいのかが分からない生徒たち
 Midori

■グラフィック薄氷大魔王[553]確認
 「40年、謎だった曲」他、小ネタ集
 吉井 宏




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■ローマでMANGA[127]
なぜ分かりにくいのかが分からない生徒たち

Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20180207110200.html

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●ユーロmangaコースのその後

2017年10月から新学期が始まり、20年のセミナーを経てmangaが正式コースに組み込まれた。学校は三年制で、一年、二年で基礎をやり、最終学年の三年生でコースに分かれる。

これまでの「海外(フランスのBDとアメコミ)」「ギャグ」「イタリア」に「ユーロmanga」が仲間に加わったのだった。

イタリア国内でmanga家として作品を発表している、35歳のパオロ君が実技を担当して、私が構築法を担当する。

構築法の中には物語制作の基本(三章に分ける方法を基本として、二章目を二つに分けて「起承転結」にする方法を解説)と、キャラの感情をベースに物語るための方法を種々解説及び実技をする。

先に進む前に「イタリア国内でmanga家として作品を発表している35歳」というところに注目していただきたい。とても微妙な言い方をしてみた。

「イタリア国内でmanga家として活躍している」と書こうとして手が止まってしまった。manga家だけでは食べていけない状態だから。もちろん、manga王国の日本だって、mangaだけでは食べていけないmanga家志望者はいる。

イタリアではさらに難しいことを強調したい気持ちが、手を止めたのだと思う。

参加の生徒は、おしゃべり君、やる気はあるけど追いつかない君AとB。家庭の事情でうつ気味で欠席気味君、絵が上手くて学校の企画に呼ばれて欠席が多くなった君、しつこくネームを送ってくる子ちゃん、授業を熱心に聞く子ちゃん、いつも焦ってる子ちゃんの8人。

既成のmangaページのアレンジから始まって、独自に短ページのネームを作ってもらう実技に移行している。

そして、コミックゼノン社が企画する、サイレントマンガオーディションの参加を義務付けて、1月からはそのネーム作りを始めた。

サイレントマンガオーディションは、その名の通りサイレントで作品を作る。つまり、フキダシは一切使わないのが条件なのだ。キャラに喋らせてはいけないわけ。コマ構成の演出を学習するにはうってつけの方法。

mangaって難しいんですねー。

ストーリーが面白いかどうかの判断は二の次。キャラの感情を中心に語ることが難しい。見たネームはどれも紙芝居だ。共通している「mangaとは呼べないネームになってしまっている理由」は、次の通りとなっています。

・コマと次のコマが連続していない

・感情表現はキャラの表情に限られていて、その表情が一辺倒

・キャラの感情が動いた時に、キャラの顔のアップ一コマで済まして、次の行動のコマに移行。構図がバストと顔のアップに、ほぼ限られている

「コマが連続」というのは、時間が繋がっている感覚を読者に持ってもらうように、コマと次のコマの構図を工夫する必要があるわけで、それを「物語のユニット」ということで課題にしている。

映画のワンカットを表現する時に、最低三コマを使わないと表現できない。それをほとんどの生徒が、一コマで表現してしまうわけ。だから紙芝居。

紙芝居はお話絵で、文章で解説があるからそれでいいのだけど、サイレントマンガではト書きや台詞での説明がないから、ワンカット=一コマでは読者の理解が難しくなる。

生徒の方では自分の頭から出てきた話で、状況がよくわかっているから、読者が理解できなさそうということがわからない。なぜ分かりにくいのかを、生徒にわかってもらうのが難しい。

例えば、しつこくネームを送ってくる子ちゃんの場合。

「ゲーム内の友達としか付き合えない、引きこもりの主人公。遊んでいる途中で友達のアバターが落ちてしまう。何も言わずにゲームからいなくなってしまったことに、ショックを受ける主人公」

ネームはまず家の外観から始まる。夜であることを表すために空は暗い。窓が一つだけ明かりがついていて、それは主人公の部屋で一人だけ夜遅くまで起きていることを示す。

そして、それで主人公が引きこもりであることを表現したという。その後は主人公の部屋のシーンになり、主人公がコンピュータに向かっている姿を、後ろから描いたコマに続く。

「窓一つに明かりがついている家と夜空のバック」だけで、主人公が引きこもりであることを読者に伝えるのは不可能だ。

友達が消えてしまってショックを受けるシーンを描くのに、何コマかコンピュータ画面のゲーム内の絵の後、友達が画面から消えるコマに続く。

その直後にびっくりしてる(ショックを受けた)主人公の目のアップのコマ。そして、ワナワナしているマウスをつかむ手のアップ。

二つとも、紙芝居式になっている。

●感情移入の方法

他の生徒たちも、表現方法は似たり寄ったりだ。どうしても、キャラの行動を追うことでしか、物語を進められないらしい。

正式コースの前は週に一度のセミナーで、参加者は課題にまだ追われていない一年生だった。

だから、スムーズに演出ができないのは仕方がないと思っていたのだが、どうやら演出という能力にかけては、一年生のセミナーの生徒も、正式コースの三年生も、あまり変わりがないことにちょっとビックリしてしまった。

mangaをたくさん読んでる子たちなのに……。

だいぶ前にここで、「イタリア語は過去形がたくさんあって時制にこだわる。日本語は時制が曖昧で、いつの出来事でも現在とつながっている」という意味のことを書いた。

どういうことかというと、イタリア語では物語を書く時には大過去という時制を使い、現在と隔てができる。今読んでいる私と、過去に行動をしたキャラに隔てができるのだ。

その思考の仕方が、manga文法と欧米のマンガ文法と違って来たのではないかという考え方だ。

自分が主人公になったつもりになって、その状況でどう感じるのか、どういう思いになるのか想像してみて、と言ってみた。

しつこくネームを送ってくる子ちゃんは、ダメ出しにめげずに六回目のネームを提出してきた。

「今度は自信がある。私だったらどう感じるかって考えてみたのよ」と言いながら。結果は、だいぶ良くなったけどまだ。カットを一コマで表現している部分があって、今ひとつ読者としては感情移入できない。

さ、もう一踏ん張り。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

昨年に引き続いて、お友達の教授率いる女子学生のご案内でローマ、フィレンツェ、ベネツィアを回ってきた。ベネツィアの由緒ある高級ホテル・ダニエルの見学や、カーニバルの仮面やベネツィアガラスの店を彼女等と回って、ヨーロッパと日本のメンタルの違いを再確認したので、ちょっとそのことを。

日本は「黒子」という認識の仕方があるように思う。歌舞伎や人形浄瑠璃で黒尽くめで役者のお手伝いをし、観客は黒子をいないものと「見なす」のがお約束だ。

それにプラスして、店では「お客様は神様」ということになっている。お客は店員に声をかけられることを嫌い、店員が見えていても自分が必要とするまで彼らは黒子なのだ。

だから、彼らの前で品物を触り、自分たちのおしゃべりに精を出す。買う気はさらさらなくても品に触り、言いたいことを言っていく。

ヨーロッパでは、あるものをないことと見なす、ということはあり得ない。あるものはあり、ないものはない。

だから、店に入って店員(小さい店の場合は店主かも)を居ないものとみなして無視し、まだ自分のものではない品物をあれこれ触り、言いたいことを言って写真まで撮って、そのまま出て行くというのはすごく無作法だ。

「空気を読む」ことが基本のはずの日本人が、ヨーロッパ旅行中の店でその基本に蓋を閉めてしまう。シャイなせいもあって、ことさらに店員を居ないと見なすことに精を出してしまう。

ヨーロッパでは意思を隠すのは奇異なのだ。だから、買う気はないけど店内を見てみたいなら、それを黒子ではないちゃんと存在している店員さんに示せばいいのだ。

言葉がわからなくても構わない。そこに存在する店員さんとちゃんと目を合わせ、ニコッとして「見る」という意味で目を指差してたり、指をあちこち指したりすれば察してくれる。good morningやlookぐらいは言えると思う。

ベネツィアの有名高級ホテルのダニエルを見てみたい場合。あくまでもホテルであって、モニュメントではないことを意識してほしい。

キャーキャー言いながらドヤドヤと、ドアマンを黒子にして入って行ったら追い出される。ドアマンは正式なお客様に不愉快な思いをさせる部外者は、入らせない権限と義務がある。

ダニエルのロビーはティーサロンなので、ドアマンやレセプションの人にお茶をしたい旨を言い、ちゃんとお金を払って落ち着いて座ればいいのだ。


[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT


MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/


主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/


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■グラフィック薄氷大魔王[553]
「40年、謎だった曲」他、小ネタ集

吉井 宏
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●古〜いHDDとDVD-RAM

ずいぶん前から某所に預けっぱなしになっていたポータブルHDDやDVD-RAM、CD-Rなどを回収。HDDに何が入ってたのか確認しようとしたら、インターフェイスがFirewire400のみ。困ったな。

初代iPod付属のFirewire400ケーブルを引っぱり出してきてFirewire800のアダプタをつけ、さらにThunderboltアダプタをつけて、ようやくMac Proに接続できた。

最近のMacしかなかったら、さらにもう一つUSB-Cアダプタをつけなくちゃいけなかったところだったw
http://www.yoshii.com/dgcr/HDD_IMG_0703

Firewire400って登場したときは超強力! って印象だったけど、意外に寿命短かったなあ。

HDDの中身を消してバックアップ用に使おうかと思ったのに、容量はたったの40GB。これじゃSDカードの容量と大して違わない。

情報を見ると、15年前の2003年にフォーマット、最終更新は2008年、中身といえば2008年の仕事の途中段階のフォルダばかり。つまらん。

5枚のDVD-RAM。仕事のファイルやデジカメ写真など、重要ファイルをまとめてあったもの。
http://www.yoshii.com/dgcr/DVDRAM_IMG_0705

DVD-RAMドライブはPowerMac G4に内蔵されてた。他のディスクより長期保存可とのことで「これからはDVD-RAMの時代だ!」と、MOやCD-Rなどから全部コピーしたんだよなあ。すぐ搭載されなくなっちゃったけど。

その後しばらく、外付けドライブを買ってまで使ってたのだった。まだクローゼットに数十枚のDVD-RAMが残ってるはず。

大容量なのに一回しか書き込みできないCD-RやDVD-Rってもったいないじゃん!と思ってたのもメインに使った大きな理由だったけど、実際には消したり上書きって、ほぼしなかった。ライトワンスで正解だったんだ。

●40年、謎だった曲

タイトルも演奏者もわからず、ずっと謎だったラグタイムピアノっぽい曲。高校一年ときにラジオを録音したカセットテープ、上書きで消しちゃったのか、行方不明。当時何十回何百回とヘビロテして、頭の中にはしっかり残ってたのだが。

たまたま、Apple Musicで「巴里のアメリカ人」のサントラ盤を聴いてたら、聞き覚えのあるメロディが。タイトルは「Do Do Do」、ガーシュインの曲だった。YouTubeでも見つけた。



ガーシュイン本人の演奏もある。ラジオを録音したのはこれかなあ。もうちょっとクリアな音質だった気もする。

https://apple.co/2s6Z6Jw


40年来の引っかかりが取れた〜〜! 一昨年、Apple Musicで古いジャズピアノの巨匠の全集みたいな100曲入りとかのアルバムを、片っ端から頭出しして探したのに見つからなかったのだった。

●UFOのおいしい食べ方

日清焼そばUFO。夜に半分食べて、残りを別の皿でラップして冷蔵庫に入れておいたのを翌日の昼にチンして食べたりするのだが、12時間たったUFOはめちゃくちゃおいしい。しっとりとソースが麺に馴染んでる感じ。

で、先日。普通に3分待って食べようとしたときに思いついて、別の皿に盛り、電子レンジで2分チンしてみた。おいしい! ソースのトゲトゲしさがなくなり、余計な水分は飛び、香ばしさはアップしてる。

食べてる途中で冷めてくるので、少しチン。またまたおいしい! 別次元のおいしさ。

UFOは食べてる途中でクドくなってくるのだが、もう一個食べたい気分。最近コンビニでは大盛りしか売ってなくて残念。大盛りは、買うのも食べるのも罪悪感がw


【吉井 宏/イラストレーター】

HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」の予告編キタ〜! ワクワク感大きいし、楽しそうでなかなかいいぞ! 画面がスター・ウォーズらしくないところがイイ。地球寄りというか、60年代の戦争アクション映画みたいな。画面はちょっときれいすぎるけどねw



◎吉井宏がデザインしたスワロフスキーの招き猫が発売されてます。
フクロウや干支シリーズなどよりひとまわり大きい5cm。
http://bit.ly/2ni8HaD


・スワロフスキー干支モチーフの「ZODIAC」
https://www.fashion-press.net/news/33277


・スワロフスキーのLovlotsシリーズ「Hoot the Owl」
http://bit.ly/2ruVM9x


・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500


・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii



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編集後記(02/07)

●黒澤明、32歳、監督デビュー作、1943年の「姿三四郎」を見た。わたしは黒澤映画のセリフが聞きとれないので、必ず字幕を出す。黒澤映画はすべて字幕で理解する。戦意高揚映画しか認められない時代だったが、黒澤はただただ活動写真の面白さを出そうと、七つの格闘シーンを配するアクションドラマに仕立て上げたという。いま見ると、全然迫力が感じられない。わたしの場合。

大河内伝次郎演ずる矢野正五郎が、敵対する門馬門下の6人に襲撃され、堀をバックに一人づつ(律義な襲撃者だ)戦い、すべて水の中に投げ込む。なんだか身を躱すだけみたいだったが、資料を読むと、背負投、小手返し、肩車、掬い投げ、大外はずし、巴投であった。大河内は柔道の経験はなかったという。

夏祭りで暴れる三四郎(藤田進:柔道経験あり)には技というほどの技はない。道場破りの檜垣源之助(月形龍之介:柔道経験なし)は矢野門下生を肩車で道場の羽目板に叩きつける。三四郎VS門馬三郎、三四郎の大技・山嵐で門馬は死に至る。ってそんなすごい技だったのか。カメラワークで演出している。道場の乱取りで、矢野は20以上の技を使い三四郎を投げ飛ばす(そうだったのか)。

檜垣の師匠・村井半助(志村喬:柔道経験あり)と三四郎の試合。村井が肩車と裏投げで三四郎を攻めるが、三四郎は猫のように宙で返って(そうだったかなあ)倒れない。三四郎は山嵐で村井を投げること三度、村井が頭を垂れるまで、10分間近い攻防戦が続く。100カット近い、この映画の見せ場のひとつ。

そしてクライマックス、村井の後継者を自認する檜垣と右京ヶ原での果たし合い。貧弱なセットに不満な黒澤は会社と交渉し、箱根仙石原で三日以内のロケを認められる。ロケ最終日に待ちに待った神風が吹き、激しく流れる雲や波打つ薄の原が、ダイナミックな舞台となる。ここの攻防シーンは見応えある。

「姿三四郎」といえば蓮の花のエピソードが見どころらしく、パッケージもそれである。「先生の命令とあれば、いまでも僕は死ねます!」と豪語し、書院の縁側から蓮池に飛び込むが、死ねずに(って、命令されてなかったと思うが)一本の杭にしがみついたまま一夜を明かし、蓮の開花を見てなにやら悟りをひらく(ンだと思う)。映画のお客さん、本当に理解納得したのかなあ。

当時の映画技術からいって、この映画のアクションシーンは高く評価されるべきものだろう。しかし、現在の映画鑑賞者にとっては、いくら黒澤明監督という冠がのっていても、退屈に思うだろう。この後、「續 姿三四郎」を見た。評価はあまり高くないようだが、わたしはこっちの方が分かりやすく面白かった。なぜ理解が早かったのか、前作と殆ど同じ構造だったからだ。 (柴田)

「姿三四郎」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00CR8T3ZQ/dgcrcom-22/



●プレゼントのご応募お待ちしております!/Zipドライブ……。

/Facebookアカウント凍結続き。どのツイートが問題かわかった時点で、フォロワーをブロック。そして自動リプライを止めることにした。

Twitterのアプリ連携設定を見たが、ピンと来ない。ひとつひとつ連携先を見に行くが、それらしきものはない。既にないサービスやアプリもあったので、それらは連携解除。

連携で思い出した。ちょっとしたゲームや懸賞で連携を要求するものがあるが、ダイレクトメールを見たり、プロフィール編集をも許可させるものがあるので要注意よ。                       (hammer.mule)

プレゼント「グローバルWebサイト&アプリのススメ」
https://bn.dgcr.com/archives/20180130110100.html


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