《これだから先生はやめられない》
■ショート・ストーリーのKUNI[229]
ぼくは怒れない
ヤマシタクニコ
■3Dプリンター奮闘記[104]
3Dプリンターと「きっかけ」が作り出すもの
織田隆治
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■ショート・ストーリーのKUNI[229]
ぼくは怒れない
ヤマシタクニコ
https://bn.dgcr.com/archives/20180222110200.html
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「こんにちは。おひさしぶりです、父方の叔父さん」
「おお、純一郎くんやないか。なんや、その説明的な言い方は。まあええわ。何年ぶりやろなあ。なんかあったんか」
「実はちょっと悩んでいることがありまして」
「やっぱり」
「ぼく、昔から怒ったことがありませんでした」
「あーそうそう。それはわしも思ってた。この子はもの静かな子やなあと。いつも穏やかで、近所の子におもちゃ横取りされても黙ってたな。わしやったら瞬時にどついて取り返すとこやけど」
「そうかもしれませんね。でも普通に『それはぼくのものだから返してください』と言って、返してもらえば済むことです」
「『おまえのかあちゃん、でべそー』と言われても怒れへんかったしなあ」
「母がでべそでないことはよく知っています。少なくとも当時はでべそではありませんでした。最近見てないのでわかりませんが、事実と違うことを言われても怒る以前の問題です」
「ほんまに冷静やなあ」
「特に冷静なのではなく、ぼくとしては普通にしていただけなのですが、ふと考えて、どうもこれはおかしいのではないかと考えるようになりました。ぼくは怒ったことがないというより、どうやったら怒れるのかわからないということに気がつきました」
「どうやったら怒れるか……そんなもん考えたことないなあ。腹立ったら怒ってるし、むかついたら怒ってるし」
「それは単なる同義語です」
「すまん」
「でも普通はそんなもんでしょう。いちいち考えませんよね、きっと。ぼくはそれがわからないのです。自分が怒ったことがない、どう怒ったらいいかわからないということが実はコンプレックスとなっていました」
「そうやったんか」
「はい。怒りということが理解できないみたいなんです。『怒りの葡萄』もイカリソースもぼくには遠い存在です。だからずっとカゴメソースを使ってきました。いかりや長介はお亡くなりになりましたが」
「苦労してきたんやなあ」
「そこまではまだいいんですが、実は先日、母から打ち明けられました」
「何を」
「『あなたは遺伝子操作で怒れないようにした子なのよ』と」
「はあ?」
「母が言うには、結婚したもののふたりともすぐにカッとなる性質で、新婚当初から毎日夫婦げんかばかりしていました。ものは壊れる、部屋が散らかる、近所から苦情殺到、お互い体力消耗する。
そんな日々が心底いやになり、せめて生まれてくる子どもは絶対怒らない子がいいと思い、病院に、父にも内緒でお願いしたのだそうです。『カッとしてやったの。今は後悔しているわ、ごめん』と言ってましたが、後悔されても手遅れです」
「ほんまかいな」
「つまり、ぼくが怒れないのはどうしようもないということなのです。ぼくは一生怒れないのです。ショックでした」
「そういえば、確かにきみのお母さんとお父さんはしょっちゅうケンカしてたなあ」
「はい。ものごころついた頃から、朝になって『もう何時やと思てんのん、はよ起きてご飯食べて!』と母が言うと『うるさい! いま起きよと思てたのに言うな!』と父が言うのでもうケンカ。
その後も『パン焼きすぎや。焦げてるやないか!』『文句いうんやったら自分で焼き!』『なんで昨日、阪神が負けたんや!』『知らんわ。あんたが昨日、回転焼き買うてきたからやろ!』という調子でした」
「仲よさそうやないか」
「ぼくは慣れていたのでなんとも思いませんでした。確かに自分は両親と全然違うなと思ってきましたが、まさか遺伝子操作されていたとは」
「そうかー。嫁さんがそういうことをしたとは、わしの弟である君のお父さんも知らんかったやろなあ。しやけど、もう仕方ない。別にええやないか。それも自分の個性と思って割り切ったらどうや」
「ぼくもそう思ったんです。思おうとした、というか。ところが、昨日コンビニで買い物してたら会話が聞こえてきました。女の子二人の会話で『あ、このお豆腐、原料で“大豆(遺伝子組み換えでない)”と書いてあるわ』『ふうん。ほな安心やね』というのです。ぼく、どきっとしました。くわしいことはわからないんですが、遺伝子操作と遺伝子組み換えは似たようなものでしょうか」
「わしもわからんけど、遺伝子組み換えは遺伝子を操作したということちゃうんかなあ。わしは組み替えたことないけど」
「となると、ぼくって危険な存在なのでは」
「ええっ、そうかなあ」
「ぼく、実は好きな女性がいるんです。とてもかわいい子で、今度ごはん一緒に食べる約束したんですけど、ぼくが遺伝子組み換え大豆みたいな人間だと知ったら、ひくんじゃないでしょうか」
「可能性はあるな」
「それを考えると急に不安になってきて。なんとか彼女に知られないようにしたいんです。どうしたらいいでしょう。何しろ母も父も怒りっぽいので、ちょっと何か言いかけただけで、逆ギレされる恐れがあって相談できません」
「えーっと。つまり何やな。別に人間、怒らなあかんわけでもないけど、このままではあまりにも怒らなすぎて、怪しまれるんではと心配してるわけやな」
「そうですそうです」
「わかった。遺伝子操作に打ち勝つのは難しいけど、そのくらいやったら何とかなるやろ。要するに、かたちから入るというやつや」
「かたちから」
「たとえば姿勢を良くしていつもしゃんとしてたら、気持ちまでしゃんとしてくるとか。無理矢理にでもにこにこしてたら、だんだん楽しくなってきて、ほんまに笑えてくるとか」
「聞いたことあります」
「しやから、怒りたいと思ってなくても怒ってるような顔して怒ってるような言葉遣いしてたら、だんだんほんまに腹立って怒る、少なくとも怒ってるようにみえるはずや」
「なるほど。それはどうすればいいんですか」
「そやな。たとえば君がスーパーのレジに並んでいたとする。そこへどっかのおばはんが横から入って来た。君の前に立つ。腹立つやろ」
「いえ、だから腹立つというのが……マナーが悪い人だということはわかりますが」
「ここで普通の人間は腹立てるねん。まず眉をしかめて、横目でこう、こういう顔をしてにらみつける」
「こ、こうですか?」
「まあそんな感じや。ついでに口をゆがめてチッと舌打ちする」
「……チッ」
「そしたらおばはんが振り返る。見るからにレジの横入りでもしそうな、根性悪そうなぶさいくなおばはんや」
「そうなんですか」
「そうや。で、その顔には『なんやのん、あんた、舌打ちなんかして。私に言いたいことあるんやったら言うてみ』と書いてあるわけや」
「え、顔に」
「まあ比喩やけどな。しやからそこで君は『何横入りしとんねん、おばはん! みんな列に並んどるんやで!』とすごむ」
「なんの必要があってそんなことを言うんですか」
「何の必要と言われても……君は怒ってるんやから、それくらいしてあたりまえやねん!」
「はー」
「思い切りコワイ声出してすごんだら、それだけでそこらのおばはんは引き下
がるもんや」
「そうなんですか」
「なんか張り合いないなあ」
「横から入らずに列の最後尾にお並びください、と言ってはだめなんですか」
「それでは怒ったことになれへんがな」
「あ、そうか。ぼくは怒っている……ようにみせないといけないんですね」
「そうや。今はその練習をしてるんやないか。ちゃんと練習して、いざというときには怒ったようにみせへんと、彼女に怪しまれるやろ」
「そうでした。『何横入りしとんねん、おばはん。みんな……列に並んどるんやで』」
「気持ちがこもってないな。とゆうてもあかんのか。えっと。もうちょっと力
を入れて」
「何横入りしとんねん、おばはん、みんな、列に、並んで……る、ねんで!」
「おー、ちょっとましになったな。その調子や」
「何横入りしとんねん、おばはん!!」
「何横入りしとんねん、おばはん!!」
「何横入りしとんねん、おばはん!!」
「何横入りしとんねん、おばはん!!」
猛練習が続きました。
三か月後。
「おっちゃん、いてるかー!」
「おお、純一郎くんやないか。ええっ?! な、なんか感じ変わったなあ」
「変わったに決まってるやろ!」
「い、いきなり怒ってるし」
「怒ってないわ! これが普通やねん」
「そ、そうかいな」
「このあいだおっちゃんに打ち明けたやろ。おれが遺伝子操作されて生まれて
きた、て」
「ああ、そうやった」
「あれ、おかんの思い込みやってん」
「えっ」
「医者に遺伝子操作を頼んだのはほんまらしいねんけど、医者もめんどくさいから適当に『はいはい』言うただけやってんて。最近おかんがたまたまその医者に会うて『その節はどうもお世話になりました』と言うたら、『はあ? そんなことやってませんがな。ていうか、私がそんなんできるわけありませんやろ!』と笑われたらしいわ」
「やっぱり! 医者もてきとーな医者やな」
「それを聞いて、おれも力が抜けたというか……ほな、おれ、やる気出したら『怒ってるようにみせる』どころかほんまに怒ることができるわけやん! そう思って、おっちゃんに言われたように練習したらみるみる成果が出て、出過ぎてこの通りや。やっぱり元々素質があったのにどっかに隠れてたんやな。それがおっちゃんのアドバイスでみごとに花開いたんや。今では毎日親子三人で怒りまくって盛り上がってんねん」
「それはよかった……のかどうか」
「ほんまに、おっちゃんのおかげですわ」
「え、ほんで、その、彼女はどうなった」
「当然別れました。『純一郎くん、最近ひと変わったねえ』とか言われて」
「はー」
「しやけど後悔してない。生まれ変わったようなもんや。おれは単なる純一郎とちゃう。純一郎(遺伝子組み換えでない)や。堂々と表示できる、っちゅうねん」
どこに表示するんでしょうか。
【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
http://midtan.net/
http://koo-yamashita.main.jp/wp/
うちの近所はコンビニといえばファミマだった。一時は隣の駅前に二つのファミマが至近距離に並存する事態もあり、どうなることやらと心配したほどだった(やがて一方は閉店したが)。
テレビでは盛んにセブンイレブンのCMを見かけるが、いや、セブンって近所にないよなーと思ってた。それがこの春、最寄り駅の駅ナカにできるらしいので地元では話題(平和だ……)。
しかし、100mほど先のファミマにとっては大打撃だろう。ヤマシタさんもおっちょこちょいだから、しばらくセブンに通うだろうし。セブンのほうが近いし。恨まれるのはいやだから、時々ファミマにも行こうか。でも、最初くらいセブンに行ってもいいよね……いや、そんなに気を遣わんでもええやん。
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■3Dプリンター奮闘記[104]
3Dプリンターと「きっかけ」が作り出すもの
織田隆治
https://bn.dgcr.com/archives/20180222110100.html
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年末から体調を崩して、久しぶりに風邪を引いてしまいました。思えば数年の間、風邪は引いたことがなかったんですけどねぇ……。
年末頃、少し仕事が落ち着いてきて、つい気が抜けてしまったんだと思うんですよね。
思えば年がら年中仕事に追われてしまっていて、それが通常モードになっていて、一瞬でも仕事が落ち着いたからでしょうねぇ……。止まると死ぬ回遊魚みたいなもんか……僕は……。
そして、なんとか風邪が治ったと思ったらストレスで顎関節症に……。ほんと、休めない体になってしまいました。
結局そうしているうちに、年度末に向けての仕事がどんどん入ってきて、結局ゆっくり出来ない日々に再突入しております。
さて、3Dプリンターの話題ですが、そんなこんなでバッタバタしていて、先日行われた「3D Printing 2018」も、招待状を頂いていたのに参加出来ず……。
そして、「ワンダーフェスティバル」にも参加できませんでした。
実は、2月17日〜18日と、筑波大学の実習講義がありまして、ワンフェスと日程がバッティングしてしまい、さすがに講師の方を優先することになったわけです。
4年前から、筑波大学で3Dプリンターに関する集中講義をやらせていただいております。今年で5年目。
夏休み中に座学で一日5時間の2日間、合計10時間あまり、3Dプリンターの基礎と応用、実例を交えながらの座学を隔年で。
そして、毎年10月ごろに課題を出しておいたものを学生さんにモデリングをしてもらい、2月の集中実習までに出力。2日間で研磨、仕上げ、塗装をする実習を行っています。
3年前、学生さん達に色々なモノ作りをしてもらうために、筑波大学内に「創房」という3Dプリンターやレーザー彫刻機を設置した工房の立ち上げに協力させて頂きまして、その「創房」にて実習を行っています。
今年で3回目でした。立ち上げ当時は、FDMのプリンターが5台でしたが、昨年「クホリア」を2台追加し、合計7台の3Dプリンターが設置してあります。
筑波の学生さん達は、そこで色々なモノ作りを行っており、学生インストラクターによって運営されています。
集中講義実習では、その学生さんにTA(補助)をしてもらいます。
今回は、ちょっと前に流行った「ハンドスピナー」という課題を、昨年の10月頃出しました。その時は流行ってたんですよね(笑)
今も流行っているの???
学生さん達には、データができた段階で出力前に提出してもらい、僕の方でレギュレーションをチェック。データがOKなら、そのまま「創房」の3Dプリンターで、2月の集中実習までに出力を終了しておいてもらいます。
そして、その2日間で研磨、仕上げ、塗装を指導しながら完成させる訳ですね。研磨や仕上げのコツや塗装の仕方等、いろいろな「まめ知識」を伝授します。
毎年感じることは、初日の前半は結構みんなすぐできると思って「なめて」かかっています(笑)
そして、初日の後半から「あれ、もしかして、これ結構大変かも……」と思い始めるみたいですね。
だいたいその日の終わり時刻には、皆結構焦り始めます。そして、「こんなややこしい形状にしまきゃよかった」とか、「思ったように綺麗にならない!」などと(笑)。
僕は、講義や授業の最初に、必ず質問します。
「みんなの中で(プラモデル)を作ったことがある人いる?」
だいたい、最近の学生さん達の中で、作ったことがあるのは全体の5%くらいです。芸術系の学生でも、あまりその割合は変わらない気がします。
そして、最近ではプラモデルの精度がかなり上がっていて、「パチ組み」しかしたことがない人がほとんどです。「パチ組み」っていうのは、ランナーからパチパチ切り出して、そのまま組み立てるだけ。
最近のプラモデル、特に『ガンプラ』は本当には良くできていて、ランナーから切り取って組み合わせるだけで、ほとんど段差も出ずに綺麗に仕上がります。
プラモデルと言うより、組み立てされていない玩具を「組み立てる」って感じでしょうかね。
接着剤も必要ないですし、段差を研磨等をして加工する必要もないものがほとんど。誰が作っても、説明書通りに作れば同じものができ上がるようになっています。
本当にこれは凄いことで、設計、金型、生産の素晴しい技術の進歩ですね。
それが間違っているとは全然思わないです。
しかしながら、「考えて、工夫をして工作する」ということからは離れてしまっているようにも思います。
モノ作りの原点っていうのは、
「どうすれば、もっと良いものが作り出せるか」
「どうすれば、もっと組立やすくなるか」
「どうすれば、もっと使い易くなるか」
ということを考えて実行するのが、重要なファクターになると思うんですよね。応用力というか、マニュアルから一度目をそらし、別の方法で工夫して、より良いものを作り出す。それが、新しいものを作る原点の一つにもなると感じています。
素晴しいお膳立ては、それはそれで素晴しいことなんですが、そういったことを削いでしまっている一面もあるんじゃないかなと。
そういうわけで、「プラモデルを作ったことがある」と答えた人も、実際に3Dプリンターで出力されたものを研磨して組立て、塗装する、ということの大変さに気がつかないんだと思います。
そして、その工程を進めることで、自分の考えたものが実際に目の前に出現し、研磨、加工、塗装し、製品に近いものが出来上がっていくと、学生さん達の目の輝きが違って来るわけです。
始めは「うわぁ……大変だ……」と尻込みしていた学生さんも、2日目の後半くらいには、「もっときれいに作りたい!」という感情が出て来るように思います。
付け焼き刃の2日間で、きれいなものが作れるとは僕も思っていません。
ただ、そういった「次はもっときれいに作りたい!」という感情を持つことと、今まで3Dプリンターで立体化するだけで満足していたが、もう一つ上の仕上がりを体験することで、「もっと良いものを作りたい」と感じ、次回の制作の時には、その実習で得た知識と経験を生かして欲しいんですね。
3年前にこの実習を受けた学生さんが、わざわざ大阪の工房まで遊びに来てくれました。就職が決まった報告に。
その時、僕の実習を受けて、仕上げの大切さを知り、今までの完成とはもっと上の完成品を作る事が出来た。その作品を就職活動の際に持参したところ、そのできの良さに面接官も驚いていた。
と、とても嬉しそうに語ってくれました。面接の際に持参したという作品も持ってきて、見せてくれました。
今年卒業なんですが、その学生さんが、卒業までにまた一度新しい作品を見てもらいたい! と連絡をくれました。
本当にやって良かったと思う瞬間です。
僕の授業を「きっかけ」とし、努力したのは「彼自身」の努力です。
それでも、そういう「きっかけ」を与えられたことがとても嬉しいんですよね。
これだから先生はやめられないです。
【織田隆治】
___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp
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編集後記(02/22)
●予告編で気になった「グッド・ネイバー」を見た(2016/アメリカ)。偏屈爺さん一人暮らしの向かいの家に、ドッキリを仕掛けるという話らしいが、ドッキリとは笑って済ませる程度のイタズラを言うのだから、恐怖を与える仕掛けを施し、ハイテクを駆使して監視、記録するのはやり過ぎ、犯罪であろう。
裕福そうな高校生が二人、なぜこんなことをやるのかというと、超常現象を演出して老人が周章狼狽する様子を記録し、実験と称してネットで公開し、再生100万回達成を狙っているからだ。YouTuberとして有名になり金を稼ぎたいという動機らしいが、どうみてもこれは悪質な犯罪で、痛い目にあえ、と願う。
些か危ない老人らしい。犬が敷地に入っただけで、「こっちに来るな。今度家に入ったら切り刻んで送りつけてやる」と言う。たんなる悪態に過ぎない。不気味な変人だと決めつける方がおかしい。年寄りは殆ど偏屈なものである。年寄りのわたしが言うのだから間違いない。って、説得力ないのかもしれない。
二人の目標はすべてを記録することで、気づかれずにリアルタイムで音声と画像を管理するため、相当な金を使っている。なにやら大層な電子システムである。ただモニターするだけでなく、怪奇現象を演出する装置も必要だ。老人の留守を狙って忍び込み、カメラなど電子機器と物理的な仕掛けをセッティング。
だが、バレそうになって慌てて撤収に及ぶと、あっさり処理できるのだから、ずいぶんおおざっぱな装置である。老人に対する情報収集もいい加減で、奥さんに暴力振るって逃げられた、最低のいかれたサイコパスだなどというが勝手な決めつけである。怪しいはずの老人は、見た目は渋くて丈夫そうな男である。
手をふれないのにドアがバタバタ開け閉めしたり(脱力するおバカな仕掛け。老人はそのドアを斧でぶち壊すのは異常だが)、手を触れないのにクーラーやオーディオが稼働したり、どこが心霊現象やねん。つまらん仕掛けで老人を翻弄しようとするが、何をやっても老人はまったく怯えないんだから困ったね。
「このジジイ、かなりヤバい」というビジュアルを見て、大いに期待したのだが、「ドント・ブリーズ」のタフな変態老人にはまるで及ばない。むしろ純情ないい人に思える。頻繁に地下室に行くのが怪しいものの、警官が立ち入っても何の問題もない。タイトルで The Good Neighbor と言ってるとおりである。
ストーリーが流れる中で、往年の老夫婦のいたわりあいや、バカ高校生が裁判にかけられているシーンが挿入されて、やや説明的だがわかりやすい。6週間にわたる愚行をなにやかやと正当化するバカ高校生は、もっと痛い目に遭えばよかったのにと思う。老人のとった行動はまさに予想外であった。 (柴田)
「グッド・ネイバー」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01NGTA88F/dgcrcom-22/
●織田さんの話、すてきでした。/プラモデル作ったことのない人の割合に驚く。ボンドで手を汚したこともないのか〜。
/Tポイントカードを作りたいと思った。TSUTAYAでレンタルすることはあったし、他にもポイントのつくところで買い物をすることがあった。
どこのTポイントカードにしようか迷っていたところ、引っ越し先にとても大きなファミマがあったので、ファミマカードを作った。が、引っ越し直前に閉店した。
近所にはセブンがぽこぽこできた。最寄りのどの駅から帰宅してもセブンを通る。nanacoカードを作った……。 (hammer.mule)