[4699] FFK(増えて増えて困っちゃう)の巻◇!important #10 レポート

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《涙ちょちょぎれの開発秘話》

■わが逃走[230]
 FFK(増えて増えて困っちゃう)の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[98]
 !important #10 -ウェブと紙- レポート
 関口浩之




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■わが逃走[230]
FFK(増えて増えて困っちゃう)の巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/2018121310200.html

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年末といえば大掃除だが。

ものを捨てると、捨てた分だけ増える。

場合によっては、捨てた分以上に増える。

なので、結局部屋はものだらけのままだ。

10年間開いていなかった本を何冊か処分すると、その翌月に必要になり、買い戻した、ということも一度や二度ではない。

せめて部屋の角度に対し、積まれているものを水平垂直に並べ直して「よし」としたい。

それすらできない年が続いたので、今年こそ大掃除ならぬ大並べを敢行しようと思う。

それはそうと……冬になると池波正太郎を読みたくなる。

とくに理由はないのだが、冬の空気が物語に登場する旨いものを想起させている可能性は大きい。

「鬼平犯科帳」と「剣客商売」を一年おきにゆっくり読み返し、全巻読了するのが梅の咲く頃だ。

鬼平が24巻。剣客商売が16巻。

つまりこの40冊の本は、年間を通してほとんどの時間をインテリアの一部として存在している。はたしてこれは限りあるスペースの無駄遣いなのだろうか。

少ない本棚を有効に使うため、これらの本の電子書籍化も考えた。

しかし、実際タブレット端末で試し読みしてみたがどうも調子が狂う。

内容が頭に入らなくはないのだが、入った内容が紙とは異なる脳の引き出しに保存されるようで違和感があるのだ。

不思議なのは、一律電子書籍はダメ、というわけでもないこと。ただ、私の読む本の7割以上は紙でないとしっくりこない。

それは制作における写真資料についても同様なのだ。透過(モニタ)と反射(紙)の違いだけではない。

たとえ解像度が同じだとしても、紙の資料から得られるアイデアの方が、絶対的に多い。

思うに本の厚みとか質感、重さといった本文以外の要素も手を通して脳に働きかけ、それらが視覚情報と統合されて記憶されているのではないか。

生まれたときからタブレット端末で、インターネットにアクセスしている子供とは、確実に脳の仕組みが異なっているはず。

私は手触りとか匂いとか、数値化できないもので夢を見る旧人類なのだ。

漫画『巨人の星』に、花形満の「星くん、我々現代っ子は……」というセリフがあり笑い転げたものだが、いまの私は笑い転げられる立場にあるわけだ。

本棚を必要としない者たちの部屋は、「カーサ ブルータス」のように広々しているのだろうか。

そんな生活に憧れなくはないが、自身の脳の仕組みから類推するに、それはどう考えても無理なのである。

今書いているクダラナイ文章も、いちいちプリントして校正している。そうすることにより、気づかなかった誤植が発見できるのだ。というか、そうしないと誤植に気づかない。

ペーパーレス社会に求められる人材とは、モニタ内で完結できる者ということなのだろう。

であるなら、私は完全なる不適格者である。

そんな不適格者・齋藤浩には、最近気がかりなことがある。

神田神保町の古本の平均価格が、下落しているように感じてならないのだ。

高くて買えなかった本、貴重な本が安く買えるのは嬉しいことだが、必要としている者の絶対数が減っているのではないか、と感じていなくもない。

質の高いコレクション本が、大量に入荷している。しかも安いとなると、ああ、オレの知らないところで同じ趣味のじいちゃんが死んだのか。などと思ってしまう。

もし自分がその立場だったら、少なくともその価値をわかっている人にひきとってもらいたい。

そして人生を豊かにするために役立ててもらいたい。と思うはずだ。

わかったよ、じいちゃんありがとう。買うよ。

というわけで、また本棚に入りきらない蔵書が積まれていくのだった。

みなさま、今年も大変お世話になりました。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[98]
聴講者の満足度4.9(満点5)のセミナー

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/2018121310100.html

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こんにちは。フォントおじさんこと、もじもじトークの関口浩之です。

今年も残すところ、あと半月あまりになりました。一年って、ほんと早いですよね。今年最後の「もじもじトーク」です。今日も元気に楽しくやっていきましょう。

今回で98回目のデジクリ。もう少しで100回かぁ・・・…。2014年7月に寄稿開始してから4年5か月。いつも読んでいただき、ありがとうございます。

●!importantセミナーとは

先週土曜日、福岡でセミナーを開催しました。

!important #10 -ウェブと紙- powered by FONTPLUS DAY /
2018/12/8(土)福岡開催
https://important.01w.jp/post-1001/


主催は、福岡在住の永野英二さん。ジョージとかケバブとか、呼ばれています。合同会社01waveの代表であり、全国各地のセミナーでよくお見かけする方です。

合同会社01wave
https://01wave.co.jp/


01waveのウェブサイトみたら、おおぉ、素晴らしい。社員ひとりひとりが紹介されている。しばらく、サイト見てなかったことがばれてしまった(笑)

このサイト、好きです。「クリエイティブおねぇさん、マネジメントおじさん、開発おじさん、フロントエンドエンジニア」と書かれていて、ほっこりします。

最近、こんな素敵なサービスも開始しました。ぜひ、使ってね〜〜

らくらくURL短縮サービス
https://01w.me/


では、話を戻します。

日本全国で、いろんなセミナーが開催されています。企業主催セミナー、イベント会社主催セミナー、コミュニティ主催セミナーとか、いくつかのパターンに分類されます。そして、無料セミナーと有料セミナーがあります。

この「!importantセミナー」は、どちらかといえば、コミュニティ主催に分類されます。

主催が「合同会社01wave」代表の永野英二さんで、共催が「FONTPLUS DAY(ソフトバンク・テクノロジー株式会社)なので、企業主催セミナーにようにも思えます。

「どちらかといえば、コミュニティ主催」と書いた理由は、製品PRはセッションの中では、ほとんどなかったからです。

ここでは、会社主催またはイベント会社主催とはセッション自体も主催者目線(主催者の製品PRの場)、コミュニティ主催は参加者目線(参加者の知識や知見向上の場)、と定義しています。

そして、会社主催セミナーは平日開催が多いですが、コミュニティ主催セミナーは、土曜日開催が多いです。

●第10回!importantセミナー開催報告レポート

セッション概要はこんな感じでした。

◇セッション1
Adobe XDの基本と応用、アドビ最新事情 / 鷹野雅弘
http://swwwitch.com/takano/


昨年(2017年)10月に正式版となった以降、毎月、アップデートを続けているAdobe XD。待望のレスポンシブリサイズが加わり、“使える”ツールに成長しています。

その一方、Adobe Senseiと呼ばれるAIフレームワークが、Photoshopをはじめとするツール群に導入され、クリエイティブ制作での自動化の時代が現実のものになろうとしています。このセッションでは、Adobe XDの基本と応用、および、アドビ最新事情をお送りします。

◇セッション2
フォントおじさんのWebフォント最新事情 / 関口浩之
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html


当たり前のように使われはじめた、日本語Webフォント。アクセシビリティやUI/UX観点からも、サイトリニューアルの際にWebフォントの導入検討が必須要件になってきました。

大手企業の実案件を紹介しつつ、Webフォント導入理由や導入効果を解説します。また、「どうやってクライアントを口説けばいいの?」「メリットやデメリットは?」「どんなフォントが人気あるの?」などの制作現場の疑問にお答えします。

また、知ってるようで、意外と知らないフォントの世界。街中で見かける看板の書体を題材にして、フォントソムリエ感を磨くためのコーナーも設けます。

◇セッション3
筑紫書体のこれまで、と、これから / 藤田重信
https://fontworks.co.jp/company/designer/01


本年(2018年)8月にリリースした筑紫ヴィンテージ明朝、そして、来年にリリースを控えている筑紫アンティーク丸ゴシック等が、どのような背景や経緯で書体制作されてきたかをお話します。

また、筑紫明朝の制作に着手した1999年当時の秘話や苦労話、その後、豊富なバリエーション展開を進めてきた、筑紫書体シリーズの変遷や曲線美のこだわりも解説します。

さらに、Futuraに合うゴシックが欲しいとの声に応えて開発中の筑紫AMゴシック、筑紫楷書(仮)、筑紫宋朝(仮)などの筑紫書体群も試作中。今後、果たして、どこまで広がっていくのだろうか。など、開発中の裏話も紹介します。

筑紫書体の藤田重信さんのお話は何度も聴いてますが、今回は特に涙ちょちょぎれものでした。

筑紫書体の誕生とこれまでの変遷という歴史に、立ち会った感がありました。そして、その歴史はこれからも続くのです。

藤田さんは、写真植字機の株式会社写研・文字デザイン部門に1975年に入社。1998年、フォントワークス株式会社に入社し、筑紫書体ほか数多くの書体開発をしている方です。

1975年ということは、それまで伝統的な明朝体が主流だった書体から、「タイポス」や「ナール」という特徴のある書体が誕生した数年後に、藤田さんは写研に入社したことになりますね。

それ以降、新書体ブームとなり、さまざまなフォントが誕生することになったのです。

文字をつくる─ナール生みの親が公開する 文字デザインの原理とその実際
http://bit.ly/2C7SWfd


今回のセミナーは、共催者、登壇者、スタッフ、聴講者のすべての立場で参加のですが、今年一番のセミナーだったかもしれません。

「セミナーに参加して良かったですか」のアンケート結果も、5点満点中、4.9点でした。

セミナーレポートを書こうと思ったら、参加者の「つたちこ」(@tsuta)さんがすごくいいセミナーレポートを掲載しているので、それを紹介します!

セミナーレポ「!important #10 -ウェブと紙」フォントの奥深い世界の端っこを覗く
https://tsutachi.co/blog/2018/12/important10/


セミナー開催の二日後にアップされてました。仕事が早い! 僕はこんなに素早くレポート書いたことがありません(汗) 時間かければいいレポートになるわけでなく、気持ちが熱いうちに、そして記憶が残っているうちに書くのが正しいのです。

スイッチ鷹野雅弘さん、フォントおじさん(関口浩之)、筑紫書体デザイナー藤田重信さん、パネルディスカッションの各セッションの内容が、的確にまとめられています。

そして、「筑紫書体見本帖」の奥付をみて、名久井直子の作品であることを発見したり、フォントおじさんトートバッグ生地の品質まで観察している点もすばらしいです。

本セミナーに関連したツイッターまとめを二つ紹介します。

!important #10 -ウェブと紙- ツイートまとめ
https://togetter.com/li/1296597


藤田重信さんの新書体に関連した呟き
https://togetter.com/li/525569


最後に、僕が撮影したセミナーの様子を何枚か掲載します。
http://bit.ly/2UERhVl


次回お会いするのは、大晦日の「デジクリ、行く年来る年」、そして、2019年のお正月になります。

それでは、少し、早いですが、みなさま、良いお年をお迎えください。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com

フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして日本全国を飛び回っている。

Schoo、マイナビ IT Search+、日刊デジタルクリエイターズ等のオンラインメディアで文字に関する授業や記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。

Twitter: @HiroGateJP
Facebook: フォントおじさん
https://www.facebook.com/hiroyuki.sekiguchi.8



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編集後記(12/13)

●近藤大介「未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること」を読んだ。中国は今後、人類が未体験の巨大規模な少子高齢化社会に突入する。だが未だに充実した年金制度や老人ホームなどの、セーフティーネットが敷かれていない。介護保険法すらない。第14次5か年計画(2021〜2025)は、少子高齢化への対応という「人間の安全保障問題」が主題になる、と中国の識者は言う。

2018年、中国でも「人口減少時代」が始まった。長年にわたる「一人っ子政策」が、少子高齢化時代の到来を大幅に早めた。全面的な「二人っ子政策」元年と言える2017年に、出生数は増えるどころか63万人も減少してしまった。2017年の日本の出生数が94万1000人なので、実にその2/3の規模も減少したのだ。

経済学者グループは出生数の減少を招いた背景として、子育てコストの上昇、公共サービスの欠如、出産観念の変化の三点を挙げる。いずれも的中している。だが筆者は、彼らが決して指摘しないもう一つの理由を「スマホ中毒」にあると見抜いた。その結果、恋愛→結婚→出産という従来型コースから外れていく。

スマホで遊んでいるほうが楽しいからだ。休日は朝から晩まで自宅でスマホをいじっている「空巣青年」と呼ばれる若者たちが急増している。若者の「スマホ中毒」は日本でも同様だが、日本は先進国になって社会インフラが整備され、介護基本法も敷かれた後から少子化の時代を迎えた。だが中国は、依然として世界最大の発展途上国である。すべてが未整備の中、少子化に突入した。

2019年、首都・北京の人口もごっそり減る。その理由は? 学者はもっともらしい理屈を述べているが、筆者はこう断言する。ただ一つ、中南海に鎮座する第5代皇帝が、愛する故郷・北京の人口密度にご立腹だからだ。つまり習近平主席が、自分が若かりし頃の「旧き良き北京」に戻したいのだ。2018年元日、いまの北京の町並みは、本当に20年前にタイムスリップしたと筆者は驚く。

2020年、適齢期の男性3000万人が「結婚難民」と化す。「一人っ子政策」によって男女比率が歪み、女性100人に男性118人。「剰男」と呼ばれる余った男たちは3000万人。人類未到の「超男性社会」が到来する。筆者の予測では、三つの現象が起きる。中国より貧しい国々の女性を娶る。すでに農村部ではそうなっている。二つ目は男性の同性愛者の増加、三つ目は「空巣青年」の増加だ。

2021年、中国共産党100周年で農村の貧困人口がゼロに。年収3000元(約39000円)以下が2017年末時点で約3000万人いる。それを無理やりゼロにする。2021年7月1日に中国共産党創建100周年を迎えるので、習主席はそのとき「歴史上初めて貧困を撲滅した」と貧困ゼロを宣言し、半永久政権を敷く目論見だ。

2022年、大卒が年間900万人を超え「大失業時代」到来。2017年9月現在、中国の現役大学生は3696万人、日本の13倍近い大学生を抱える。800万人の卒業生と海外留学組48万9000人の帰国で、就業は非常に厳しくなる。…といった面白話が具体的な数字を用いて次々と展開される。興味津々である。続く。(柴田)

近藤大介「未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること」2018 講談社現代新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065120489/dgcrcom-22/



●a-blog cmsの勉強会に行ってきた。場所はJUSOコワーキング。大阪初のコワーキングスペースなんだって。阪急十三駅から徒歩3分程度と近い。活気があり、元はバーやカフェなんだろうか、適度にリラックスできる雰囲気の場所だった。利用したのは1Fのリビングルーム。

完全に浦島太郎状態で、あれもできるようになっている、これもできるようになっているという驚きが。どう変わったのかは後で書いてみる(つもり)。知識のアップデートをしないと損だなぁと改めて思ったわ。いろいろ勉強時間取らないとなぁ。

a-blog cmsはバージョン1.xの時、勉強会に出たことがある。問い合わせフォームが欲しい、ニュースとイベント情報(ブログ)だけお客さん自身で更新したい、などというニーズにぴったりのCMSだと思った。何よりいいなと思ったのは、デザインとHTMLコーディングしかできなくても実装しやすいことだった。

お客さんからは、更新のしやすさで喜ばれた。WordPress5.0でも実装されたらしいブロックエディタを初期から採用していた。WYSIWYGエディタだとワープロソフトを使っているようなもの。テキストを入れておき、ボタンを押して画像を呼び出して本文内に入れ、左寄せだの、回り込みの解除だのを指定するスキルが必要。HTMLのお作法知識が微妙に必要だったりする。続く。 (hammer.mule)

JUSO Coworking
https://juso-coworking.com/


a-blog cms
https://www.a-blogcms.jp/


「a-blog cms awards 2019」開催中
https://www.a-blogcms.jp/awards/