[4821] おせっかいおばさんの演説◇ガンダムをめぐる「SFか否か」

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《僕は「ガンダムはSF」派だった》

■ローマでMANGA[144]
 おせっかいおばさんの演説
 Midori

■グラフィック薄氷大魔王[616]
 ガンダムをめぐる「SFか否か」
 吉井 宏



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■ローマでMANGA[144]
おせっかいおばさんの演説

Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20190703110200.html

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●今年度の授業、完了!

これを書いているのは(書き始めたのが)6月28日、金曜日。私の受け持ちの日で、今年度の最終日だった。先月の記事にも書いたように、生徒は卒業制作のマンガ作品二作を仕上げるのに懸命の時期だ。

卒業試験ならぬ講評は7月5日。つまり、残すところ一週間ですべて仕上げねばならないのだ。1分でも制作に打ち込みたいところだろうけど、最終日の今日、おせっかいおばさんをやろうと決めていた。

授業の最後の30分を使って、演説を打とうと決めていた。前の晩から頭の中で、言うべきことをシミュレーションして、ぬかりなく準備した。

日本のメンタリティでは「節目」と言うものを大事にする。入学式、卒業式、始業式、終業式、学期の始めと終わりにも「式」というほど大げさでないにしろ、朝礼で校長先生が話したりする。一日の始めと終わりも朝礼、ホームルームがある(今もあるのかな)。社会に出た後も、朝礼をやる会社は少なくないと思う。

ヨーロッパでは、そういうことがない。学年の終わり、夏の始めに、イタリアでは学生たちが風船に水を入れて膨らませたものをぶつけ合う行事が恒例になっているけど、オフィシャルではない。「終わった!」という気持ちを表現したいというのは誰にでもあるものなのかも、と思える恒例行事ではある。

それで、「おせっかいおばさん」で私なりの節目をつけようと思った。普段通りに授業をして、普段と変わらずに「良いウィークエンドを!」で別れるのは寂しいではないか。

●脚本術でいう『テーマ』が自分

おせっかいおばさんとしては、これから社会に出て頑張ってね、ではなく、もうちょっとこれからの人生に役立つような訓示をしたいと思った。

最近出会った本が二冊あって、まったく違う分野の話をしてるのに、共通点がある。

一冊は脚本家のための本で「感情から書く脚本術」(カール・イグレシアス著)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4845915820/dgcrcom-22/


↓ざっくりコメント
https://bookmeter.com/books/10790174


↓かなり詳しいこの本の解説
https://akkungo.com/emotionalimpact1/


もう一冊は成功哲学、自己啓発本
「七つの習慣」(スティーブン・R・コヴィー著)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863940246/dgcrcom-22/


↓3分で読む要約
https://jmatsuzaki.com/archives/3346


↓10分で読む要約
https://type.jp/tensyoku-knowhow/skill-up/book-summary/vol1/


二冊目はかなり有名らしいので、すでに読んだ方もいるかもしれないけど、私は最近出会った。まだ読み始めたばかりだけど、20代の頃に読んでいれば! と思った本。

そこで、脚本家のための指南書と成功哲学&自己啓発の本に共通点がどこにあるのかと言うと、ここです。

「感情から書く脚本術」で、「テーマ」について語る章がある。テーマは物語の核、何を語りたいのかの芯になる物。テーマがはっきりしていれば、物語の中に何が必要で何が必要ではないのか、はっきり理解することができる。

「七つの習慣」で「主体性」について語っている。他人に依存したり、物に依存したり、立場に依存したりというのでは、自分の主体性がない。主体を自らに置いて生きれば、他人の言葉に翻弄されたり、何かを持ってたり持ってなかったりで右往左往したりしない。

主体性がある人は自分が人生で何をなすのか、どう生きるのかを知っているから、外からの刺激に翻弄されない。なにが必要で何が必要でないのか、はっきり理解することができる。

正確な言葉使いは違うけれど、私の理解はこうだった。おせっかいおばさんの演説ではこれを軸にした。

授業は9時半から12時半まで。授業開始と同時に、12時になったらおしゃべりを始めるので、原稿制作を続けていてもいいから聞きたい人は聞いてね、と言っておいた。

脳内シミュレーションとは裏腹に、話しているうちに、感情が高ぶってしまって、頭が白くなり、次の言葉が出てこなくなってしまった。まぁ、幸い、すぐに持ち直して言葉を継ぐことができた。

昨年の「無事全過程終わってよかった〜、じゃーね」とはうって変わって、生徒の将来に対する不安に感情移入して、我が子たちが小舟で大海原に出ていくのを見送る親の心境だった。

上記の二冊の本に繋げて言ったのは、次の言葉。

「みんなには幸せになってほしい。ただ、幸せっていうと何を思い浮かべる? 夢が叶ってプロの漫画家になること? なんの不自由なく生活できること? 

なんでも好きな物が買えること? でも、なんでもすぐ手に入ると人間ってだめになるんだよね。それに今言ったことって、何かに依存してるってこと。本当の幸せは、自分自身でいられること。脚本術でいう『テーマ』が自分。」

「今後、いろいろネガティブなことが起こると思う。でも、起こったそのこと自体には意味がない。ただのファクト。意味をつけるのは、それぞれがどんなふうに対処するのかによって決まる。禅はあるものをあるがままに見る修行で、起こったことを感情のフィルタを通さないで見ることができるようになると、色々楽になるよね」

そして、最後にニューエイジ風だけど、核になる「自分」っていうものを、本当はみんな知っている。よーく自分の心の中を見つめてみると(それが瞑想。お皿洗いなど、考えずにできる単純作業でも可)きっとわかる。

そして、下手な習字で「自信(自分を信じる)」と書いたものを生徒に渡した。若いみんなは不安でいっぱいなのだ。

もっとも、私だって「起こったそのこと自体に意味はない」と、スッと思えるほど悟りを得てるわけじゃないけど。でも指針があるのとないのとでは違う。大海原で迷った時に、磁石を持ってたり、星を見て方角を知る知識があったりすれば、方向を定めることができる。

●SMAの結果、まだ?

なんにしても、とりあえずの目標はプロの漫画家になること。

3月締め切りの「サイレントマンガオーディション」に課題の一環として強制連行、違った、強制参加をさせた。6月28日に「結果が出るよー」とオフィシャルサイト、FB、ツイッターにお知らせが出たので、何度も何度も確かめに行ったけど、発表がないまま三日が過ぎた。

SMA(サイレント・マンガ・オーディション)で賞をとると、賞金の他に担当編集者が付き、作品を上げるとサイトに掲載されて、原稿料が払われる。

mangaとアニメで漫画家になりたいと思うようになった生徒にとって、日本で作品が掲載されるというのは「夢の達成」に等しい。マンガ/mangaだけで食べて行けるようになるには、さらなる険しい道を歩いていかなければならないのだけど。

SMAをキッカケに(+本人のたゆまぬ努力と実践)、世に出たナポリ出身の若者がいる。

サルバトーレ・パスカレッラ君だ。百科事典分割販売の「デ・アゴスティーニ社」で「manga&Anime」シリーズの監修をした時に、ウェブの同タイトルコミュニティで知り合った。もう10年前の話だ。

その時から熱心に課題をこなし、質問してきたり積極的にコミュニティに参加し、真剣にプロになりたい人集まれ! とグループを作って自費出版を何年か続けたりした。

そしてサイレント・マンガ・オーディション。台詞なしの演出だけでmanga作品を作る、というmanga言語の特訓のようなオーディションだ。

「北斗の拳」の原哲夫さん、「シティハンター」の北条司さんなど、大御所が立ち上げた出版社コアミックス主催。

印税がガポガポ入ってくる先生方がいらっしゃるせいかどうか、同社刊の雑誌がそれほど売れてるとはおもえないけど、海外の受賞者を渡航費用など会社持ちで授賞式に招待するなど、大判振る舞いをしてくれる。

海外のmanga好きにはありがたい、manga言語を広めたい私にとってもありがたい存在だ。

SMAのURL
https://www.manga-audition.com/


サルバトーレ君は2016年にたて続けにグランプリを獲得した。
http://smacmag.net/v/smaex1/a-smiling-tree-by-salvatore-nives/
GRAND PRIX
http://smacmag.net/v/sma5/your-sound-by-salvatore-nives/
GRAND PRIX
http://smacmag.net/v/sma6/basket-children-by-salvatorenives/
the ECXCELLENCE

その翌年も賞を獲った。つまり、manga言語を理解した、と言うことだ。

その後もコアミクッス編集部とコンタクトを取りつづけて、短編が同ウェブサイトに掲載された(ちゃんと原稿料が出るそうです)。

サルバトーレ君はあちこちに売り込んで、ついにフランスからmanga(たぶん、主に絵柄のことを言ってるのだと思う)を出版するところで、まずウェブ掲載、そして今年の6月19日に本の出版と相成った。

フランスの出版社「Editions H2T」
https://www.editions-h2t.fr/catalogue-manga

(サルバトーレ君の紹介は下の方、SHONENで出ています。「FLARE ZERO」)

この時期、パリで開催される「Japan Expo」の同社のブースに招待され、本の販売促進に貢献中。
https://www.hachette.fr/actualites/japan-expo-20e-impact-le-programme-de-nos-maisons-dedition


サルバトーレ君のFBプロフィール。ここでも、japanExpoの様子が見られます。
https://www.facebook.com/profile.php?id=1450883937


先月の記事にも書いた通り、海外のmanga家志望者が日本で出版しようと、自国でやるように日本の出版社とコンタクトをとるというのは、言葉の問題と日本国内にいないために旬がわからない、という問題でとても難しい。

でも、外から攻めていくという方法があり、SMAはその足がかりになる。なによりもmanga言語の特訓法だから。

大海原に出て行く我が子たちにも、SMAにどしどし参加するように呼びかけてSMAの工作員みたいになってる私だった。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師/】

G20、議長国として無事終了。日本がここまで国際社会に認められるようになったのをこの目で見ることができるとは……。

ツイッターで、安倍おろしをしてるのを見た。首脳陣全員が集まるところで、安倍首相が中央で待機し、各国首脳が次々に入場。その時に全員から無視されているという動画をあげているのだ。恥ずかしい、というコメントとともに。

その前段階の動画は切り取っている。つまり、入り口で安倍首相が各首脳を一人づつ迎えて握手、抱擁を交わすシーンだ。なんで日本人なのに(日本人なのか?)貶めよう貶めようとするのか、どうしても理解できないんですけど。

息子のバンドPSYCOLYT [注・親ばかリンク] (活動停止中)


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主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
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■グラフィック薄氷大魔王[616]
ガンダムをめぐる「SFか否か」

吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20190703110100.html

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先日SNSで話題になってた、「ガンダムはSFか?」の80年頃のアンケートと論争。なんとなく覚えてる。

おもしろいかどうかじゃなく「SFかどうか」に価値を置く人たちはいたと思う。SF初心者なのにイキってた頃の僕もたぶんその気があった。

なぜそんな風に考えてたかというと……せっかく「大人も楽しめて世界中にファンがいるSFというジャンル」にたどり着いたのに、子供向けの宇宙ものやロボットものなど、SFもどきといっしょにされるのは迷惑。SFとそれ以外をはっきり区別しないと、足元が崩れてしまう。って感じだったのかなあ。杞憂だったけど。

「ガンダムはSFではない」は人それぞれのSFの定義だからいいとして、「ガンダムはSFではないからダメだ」まで行っちゃうと、踏み外してることになるんだろうな。

なんちゅうか、僕の中でのSFの定義は……科学でも物理でも歴史でもなんでもいいんだけど、事実として知られてることや、それらの仮想上の延長をテコにして、面白い考えや物語を展開できたり、常識がひっくり返ったり更新されたり、気が遠くなるような飛躍を見せてくれるもの。

科学的な要素がなくても「もし、○○だったら?」とかもそう。例を挙げよと言われたら、たいして詳しくないのがバレるがw

たとえば、「スター・ウォーズ」はスペースオペラ/宇宙冒険活劇ではあるものの、純然たるSFとは呼びにくい。ただ、未来の話じゃなく「遠い昔」にしたことで先入観がひっくり返った感覚、つまり「未来かと思ったら昔話」にSF味があると納得してた(プラス「地球や人類の話じゃない」も)。宇宙SFの外観に剣戟や魔法を持ち込んだ意外性もある。

一方、ガンダムは「ロボットプロレスと言われてたジャンルに説得力ある理由を作った(つまり、ミノフスキー粒子とパワードスーツとしてのロボット兵器)」ところがものすごくSF! と思った。

また、スペースコロニー自体はSFでもなんでもないけど、そこで等身大のティーンが暮らしてる様子はSF。コロニーが独立国を宣言するのもSF。「コロニー落とし」もめちゃくちゃSF。というわけで、僕は「ガンダムはSF」派だった。

直接のSF要素ではないけど、ミリタリーやレシプロ戦闘機に夢中になった世代としては、レッドバロンのリヒトホーフェン的に赤く塗ったシャア専用機にもグッと来た。

あと「試作機」ってのは「烈風」などで胸熱な存在だし、量産型がちゃんと出てくるのもシビれる。敵方が新型機を次々繰り出すのは、ロボットもののお約束だけど、戦争という枠の中では説得力がある。

っていうか、やはり「大気圏突入」で1エピソードやってしまうってのは、画期的にちゃんとSFだったなあ。「宇宙空間で運用されてる格闘用ロボットが、想定外に単体で大気圏突入することになったら?」は、それだけでSF的にワクワクする。

「スター・ウォーズ EP3/シスの復讐」で、オビワンとアナキンがパルパティーン議員を救出して巨大宇宙船で大気圏突入し、船体が折れつつも無事滑走路に不時着っていう大味でムチャな力技よりは、はるかにちゃんとSFだった。

ただ、ガンダムにはそれほど夢中にはならなかった。実写の「スター・ウォーズ」「エイリアン」をはじめとするアメリカの特撮映画がいっぺんに出てきて、そのビジュアルに完全にやられてる最中だもん。

今はSFにこだわりはないし、こだわってしまいそうな場合もなるべく忘れるようにしてる。っていうか、SFに積極的に興味を持ってたのは80年代末までで、以降ほとんどアップデートされてないのが情けないw それでも、「僕的にSFと認定」な構図を見つけると、ちょっとうれしくなるけどね。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


濱村さんが書いてた佐川急便のサインの件。指でサインして残念な思いを何度もしたので、玄関に以前iPadで使ってたワコムの Bamboo Stylus solo タッチペン(グリーン)を置くことにした。何度か華麗にサインすることに成功! でもハンコの場合もまだ多いんだよね。佐川が来るのが待ち遠しいw

・先週の3DCGイラストレーターの件で訂正

「翔泳社『ILLUSTRATION 2019』も購入して調べてみた。どちらかというと若い人向けのマンガ風というかコンテンツ系のイラストレーター150名中、0人だった。」は間違いで、1人いました。

○吉井宏デザインのスワロフスキー、新製品がいくつか出ました。

・見ざる聞かざる言わざるの「三猿」
https://bit.ly/2UF4LzF


・フクロウHOOT、踊りたい気分! 「HOOT LET’S DANCE」
https://bit.ly/2Dc6p4Z


・恋に落ちたフクロウHOOTたち「HOOT WE ARE IN LOVE」
https://bit.ly/2BlyBC4



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編集後記(07/03)

●偏屈BOOK案内:菅野久美子「超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる」

特殊清掃、略して「特掃」とは何か。遺体発見が遅れたせいで腐敗が進み、ダメージを受けた部屋や、殺人事件や死亡事故、自殺などが発生した凄惨な現場の原状回復を手がける業務全般である。いまや殆どの現場が孤独死だ。そこは遺族ですら立ち会えないほど苛酷だ。約半年間、そんな壮絶で凄まじい現場に入り、特殊清掃人の作業内容をレポートするのは一人の女性ライターだ。

いままで「大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました」「孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル」を著した筆者が、取材の中で感じたのは「問題は一人で亡くなることではなく、そのもっと前の段階にある」ということだった。年間の孤独死3万人の個々の人生にスポットをあてるため、特掃という最後の現場に立ち会う仕事を通じて、一人ひとりの人生に触れたいと思った。

いま孤独死は日本社会にとって避けて通れない問題になっている。筆者は2018年12月に「30〜40代がいずれ迎える『大量孤独死』の未来」「30〜40代の『孤独死』が全く不思議でない事情」という記事を「東洋経済オンライン」に寄稿した。日本を侵食しつつある孤独死の現状を、不動産業や特掃の視点から描いたもので、トータル450万PVのアクセスを記録する凄まじい反応があった。

ツイッターのつぶやきの半数以上が「これは将来の自分だ」という反応だった。「誰もがこの時代、そしてこの日本で孤立感を抱え、孤独死に怯え、その処方箋を欲しがっていた」。しかし、この方法なら孤独死は防げるという解答などない。だからこそ、孤独死した人の人生を知ってほしいと思った。そのために現場に行き、遺族や大家などに取材するうちに、特掃のプロと知り合いになる。

遺族でさえ立ち入り不可能なものすごい腐臭の漂う部屋で、最後の『後始末』をする特殊清掃人の温かさを知り、それが筆者にとって何ものにも代えがたい救いとなった。そして、故人の死を巡って、その最後に立ち会う特殊清掃人たちの物語も書きたいと思った。この本のテーマは特殊清掃のリアルに徹底的に迫ることだ。筆者は優れて良心的な、3人の特殊清掃人に密着し現場を回る。

大量の蠅が飛び交い、蛆虫が這いずり回り、肉片が床にこびりついている。苦しみのあまり壁や床をかきむしり、脱糞した形跡もある。そんな惨状を前に立ち竦み気が滅入る筆者だったが、真の問題はそのグロテスクな表層ではなく、現場に記された故人の生きづらさの刻印だと気付く。彼らは何らかの事情で孤立し、人生に行き詰まり、セルフネグレクトに陥っていたことが分かった。

彼らはゆるやかな自殺に向かうしかなかったのだ。彼らの名もなき死が他人事だとは決して思えないという筆者は、自身の生と死、そして現代日本が抱える孤立の問題に真っ正面から向き合った。いま特掃業界は盛況で、新規参入が続々、特殊清掃と遺品整理で法外なぼったくりが横行する。いまこの瞬間も、日本の至るところで孤立死は起こっている。凄惨な現場はどんどん増えている。

孤独死の処方箋になり得る様々な取組みを紹介したあとで、筆者が卓袱台返しに言うのは「本当に孤独死の対策が必要な人への最良の取り組みは、結局のところ個人毎に異なるだけでなく、アプローチが難しいというのが現実的な答えだ」であった。それにしても、なんと優しい3人の特殊清掃人であろうか。彼らは、内心ではこういう仕事がない社会が望ましいと思っている。(柴田)

菅野久美子「超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる」2019 毎日新聞社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4620325767/dgcrcom-22/



●そうか! 自分でタッチペンを用意すれば少しは……。ワコムのタッチペンなら華麗にサインできるのか〜! ワコムのは持っていないので、使わなくなっている3Mのタッチペンを試してみるっ!

/G20続き。地図を見ると、明記はされていないものの、どのホテルに宿泊するのかがわかる。一流ホテルの近辺ばかりだから。

そして当日は国旗が揚げられているので、どの国の要人が宿泊しているのかがわかる。うちの近所のホテルには、アルゼンチンとオランダの国旗が揚がっていた。

ホテルに警官が増え始めたのはいつ頃だったかな。片耳にイヤホンをつけている背の高いスーツ姿の男性三人組も見かけたよ。続く。(hammer.mule)