[4843] 子供の頃の時間感覚を取り戻せ◇自分も楽しいライブ配信バンザイ!

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《生放送中にテンションがぐぐっと上がりました》

■羽化の作法[90]現在編
 子供の頃の時間感覚を取り戻せ
 武 盾一郎

■LIFE is 日々一歩(103)[ウェブ]
 『WordPressテーマ作成にチャレンジ!』放送スタート!
 森 和恵




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■羽化の作法[90]現在編
子供の頃の時間感覚を取り戻せ

武 盾一郎
https://bn.dgcr.com/archives/20190820110200.html

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●寝込んだのは9年ぶり
 
久しぶりに食中毒になりました。なぜ食中毒と分かったかというと、前日に同じものを食べた妹も、同様の症状になって寝込んだからです。

気持ちがすこぶる悪くなり目眩でフラフラ。頭痛と腰痛もあります。熱を計ると38.5度。これはダメだと思って横になりました。腰痛は熱が上がってもなるんだと思いました。

ただ、妹と連絡を取り合って同じ症状だと分かったので、気分的には随分と楽になりました。最初は熱中症かと疑いましたが、なんか違う。原因不明の体調不良か? と思うと、一瞬ものすごく不安になったのです。

熱を出して寝込んだのは2010年以来、9年ぶりです。熱が高いと寝るのもしんどいんですよね。

などと書いておりますが、この原稿では寝込んだ報告がしたいのではなくて、子供の頃の時間感覚がよみがえったことなんです。

一晩寝て大分すっきりしました。朝目覚めて熱を計ると36度台。前日の地獄から、朝日を浴びた天国に居るような気分でした。

例えるならジョン・レノンのイマジンのイメージビデオのような、白い宮殿でオノ・ヨーコが窓の戸を開けて、白い光が入るシーンみたいな気分でした。

ジョン・レノン『イマジン』


起きて階段を降りると、まだ目眩がします。朝ごはんを少し食べ、午前中は安静にしてようと再び布団に戻り、横になってスマホをいじりながらウトウト寝落ちしたりしていました。

ふと気がついて時間を見ると、午前10時過ぎくらい。

その時「ああ、まだ10時なんだ」と退屈混じりに思いました。そこでハッとしました。

「午前の時間を退屈に感じ、時間が過ぎるのが遅く感じた感覚」

これは小学生の頃に風邪引いて学校を休んだ時、病の峠を超えた翌日の午前中の気持ちではないか!?

あの頃、病み上がりの心地良さと退屈さでパジャマのまま起き出し、誰も居ない居間の壁掛時計を見るとまだ9時台。ぶり返すといけないので寝てた方がいいのかも知れないけど、体は元気になって行くので寝る気にならない。

テレビを付けると、どのチャンネルもつまらないので、仕方なく教育テレビに合わせて教材用の番組を観る。普段は学校が休みならいいなあなんて思ってたくせに「早く学校行って友達と遊びたいなぁ」なんて思う、あの退屈感が蘇ったのでした。

思えば毎日毎日、「ああ、もうこんな時間だ」と時間が足りない感覚で過ごしていました。子供の頃のあの「退屈な時間」は、遠く記憶の彼方に忘れていました。

「退屈」を感じることは、実はとても重要なのではないだろうか?

病気がだんだんと良くなって行く段階で実感する、生きている喜び。身体を動かしたくて生命がウズウズしている感じが、この「退屈な時間」にある。

錆びついた頭と身体に「せめてもうちょっと働いておくんなまし……」と、油を注いだりおだてたりして、やっと自分を動かしてた毎日でした。

寝込んだおかげで、久しぶりに自分の命の本性に触れることができたような気がしました。私の命はガッツリ生きようと、凄まじいエネルギーを発しています。しかし、普段は恐らく何かがその生命のマグマに蓋をしているのです。食中毒になり、全身の細胞が菌と戦うために蓋を外したのでしょう。

このリミッターみたいなものは、確かに命を持続させるのに必要だと思います。そして年齢と共に強化されていくのかも知れません。しかし、過剰に働くと生命の瑞々しさを失わせてしまいそうです。

●本当は老化していない

それはアレルギーに似ています。

“私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに体内に「抗体」がつくられ、これら外敵をやっつけようとする「免疫」というしくみがそなわっています。

ところが、この免疫のしくみが、食べ物や花粉など私たちの体に害を与えない物質に対しても「有害な物質だ!」と過剰に反応して、攻撃をし過ぎる結果、逆にマイナスの症状を引き起こしてしまうのが「アレルギー」です。本来は体を守るはずの反応が、自分自身を傷つけてしまうアレルギー反応に変
わるのです。”
https://allergy72.jp/anaphylaxis/allergy.html


私たちは皆誰でも、爆発的なエネルギーを持った生命体です。それを制御するために、脳と筋肉は成長・変化してきました。

しかし、その脳が逆に生命を抑圧してしまうことがあります。使い方によっては、「思考」が自分を檻に閉じ込めて、自分自身で疲弊してしまうのです。

生命力に蓋をしてるのは、私の場合は「無駄な思考」にあるのかなあって思ってます。

例えば、ここのところ「今この瞬間が楽しいはずなのに、明日のやることを考えて面倒臭くなっている」ことに気が付いたのです。

なんでこんな思考をしてしまうのか、自分でも分からないのですが、自分で自分を凹ませてる思考であることは間違いない。

この無駄な思考を省きたい。そうしたらもっと生命力が溢れてくるんだと思うのです。

「いやいや単なる老化でしょ? 頑張っても変化しないから仕方ないよ」と思う人もいるでしょう。ところが、最近は脳も身体もずっと変化し続けると分かってきたようなのです。

例えば、たまたまTEDを見つけたのですが、脳は常にいつでも、そしていつまでも変わり続ける、というスピーチです。

『この講演で、あなたの脳は変わる | ララ・ボイド | TEDxVancouver』


私の脳の状態は、毎日の脳の使い方に合わせて、更新し続けているということです。

ということは、「脳の老化」と普段呼んでる現象は、「老化」ではなくて脳の使い方に対応した変化ということになります。

歳を取って少し偉くなるのと、本当は頭をうんと使う仕事を部下がやることになったり。経験が増えてパターンを獲得していくのは良いのですが、その後はパターンに当て嵌めるだけになっていったり。

ルーチン自体も悪くないのでしょうが、新規探索がなくなってしまったり。確かに年齢を重ねると、社会的にも自己欲求的にも頭を使わなくなって行く感じがします。

「脳が変化し続けるのは分かったけれど、筋肉は老化するよね」と思う方もいるでしょう。ところが、筋肉も同様に老化しないという、ちょっと驚きのレポートがこちらにあります。

【武田邦彦 ブログ 音声】身体を老化させる最大の原因がわかった! 老化の常識が一掃された。【武田教授 youtube】


筋肉も脳と同様に歳を取ると使わなくなっていくから、それに応じて変化してるだけで、老化してるわけではないとのことなのです。筋肉も70歳くらいまでは老化しないという、ちょっと驚きの内容です。

確かに昔はもっと動いてましたよ。毎日あちこち動き回ってました。

日々の脳と身体の使い方の積み重ねに応じた変化が、今の脳と身体に出ているだけで、それは「老化」ではなく暮らし方の結果に過ぎない、ということのようです。

そう思うと、歳のせいにはできなくなりますが、変化し続けるならば今日からでも変えることが可能になるので、希望が湧きますよね。

●子供の頃の時間感覚に戻るには

ところで話は戻りますが、思考についてです。子供の頃のあの時間感覚は「無駄な思考」がなくなると起こるのではないだろうか。

久しぶりの食中毒に、身体の細胞たちがびっくりして全力で治療に当たり、無駄な思考をしなくなったことによって生じた感覚ではないだろうか。

子供の頃はきっと無駄な思考をあんまりしていないのだ。と言うと、いやいや子供の頃の方が無駄なこと考えてたなあって思うのだが、そうではないのだ。

子供の頃の「無駄なことを考える」とは想像である。「無駄な思考」とは、元々は自分を守る為の判断や予測のことである。

雲を眺めてると、犬に見えてきてあんなふわふわした犬に乗りたいなあとか、ちぎって食べたら美味しそう、とかが子供の頃の「無駄なことを考える」ですよね。

雲を眺めたら、雨が降りそうだから窓は閉めて寝よう、のような実用的な判断や予測が「無駄な思考」になって行く、と思うのです。

確かに怪しい雲行きの夜に、窓を閉めて寝るのは賢明だろうが、猫がひょいと窓からやって来て、友達になる物語への可能性は閉ざされてしまう。

歳と共に、自分の身を守るための「無駄な思考」を強化してしまいがちになる。なくなってはならないものだけれど、あまりにも思考が強いと生命力と想像力を阻害してしまい、段々と動かなくなり頭も使わなくなって行く。

「老化」とは自己保全の「無駄な思考」が生み出した、皮肉な知恵の姿なのかも知れない。

子供のままでいることが良いとは思わないが、あの頃の感覚にいつでもチューニングできるようにしておきたい。

そのためには何をしたら良いのだろうか? ちょっとまとめてみました。

私は子供の頃の時間感覚を取り戻せているわけではありませんので、以下は自分用の仮説ノートです。お役に立てたら幸いです。

<子供の頃の時間感覚を取り戻す為のメソッド>

自分を守るために生まれた「判断」と「予測」であるが、それは後に「無駄な思考」となり、生命力と想像力に過大なブレーキをかけてしまうことがある。そんな状態を感じたら、以下を実行する。

1◇判断をしない

何につけてジャッジをしない。他者の作品、他者の言動、時事問題etc。なんでもいったんそのまま受け止めてみる。もし違うと感じたら、ダメージを受け過ぎないようにさっと受け流す。その時に批判や非難の言葉を生み出さないようにする。出てきてしまったら、公言せずに紙に書いて捨てる。

自分を守る為に何かを叩いてしまう思考は、頭を使っているようでいて、最も脳内エントロピーを増大させるだろうから要注意。

批判精神や反骨精神はもちろん重要ですが、それは自分が進む道を塞ごうとした具体的な邪魔者が、マジョリティだったり常識だったりした時にのみ必要なこと。道無き道をかきわけて歩くなら、別に批判精神とか反骨精神とか持ち出さなくても好奇心があれば大丈夫。

2◇予測しない

予測しないで生きていけるのか? と思うかも知れませんが、「無駄な思考」は頼んでもいないのに未来を予測します。そして、勝手に不安になったり悲観したりするので本当に無駄です。

未来を不安に思わないって、ものすごく大切だと思うんです。予測しないで、じゃあ何をするのか?

好きなこと楽しいことを考えるんです。そして、それが実現するにはどうしたらいいか考えるんです。これにはうんと頭を使います。

具体的に何をすれば良いかが分かったら、試してみます。失敗しても構いません。またやり直せばいいのです。そして、未来でも過去でもなく、今に集中することが重要です。

エクササイズとして、やっぱり瞑想が良いでしょう。閉眼片足立ちも良いでしょう。目を瞑って歩くのも良いでしょう。

上記を実践して、子供の頃のあの永遠のような時間感覚が蘇ったら成功です。

今日からまた張り切っていきますよ!


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■LIFE is 日々一歩(103)[ウェブ]
『WordPressテーマ作成にチャレンジ!』放送スタート!

森 和恵
https://bn.dgcr.com/archives/20190820110100.html

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こんにちは、森和恵です。8月に入り、YouTubeライブ配信の新シリーズをようやくスタートさせました。暑さと湿気で体調不良が続き、思ったように集中する時間が取れなくて焦ったりしましたが、スタートは快調でした。

【Adobe Dreamweaver で WordPressテーマ作成にチャレンジ!】再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PL7LtdGFp5DwQiQyDS0pFHthvOF8rL4Hyr


もうシリーズで3回放送していますが、毎回ご視聴くださる方もおられて、うれしく思っています。しばらく配信をストップしていたので、もう忘れられてるんじゃないかな~と不安に思っておりました。

放送中にチャットコメントを頂けたことも、励みになりました。遠く離れた場所でも、視聴者の方と一緒に授業を進めているのを感じられて、心強いです。

YouTubeではライブ配信中の番組が目立つようになっていたり、ライブ配信のみを検索する機能があるので、配信中に通りすがりの方に見つけていただくこともあります。

そんな中、2回目では新しい方との出会いがありました。授業形式でライブ配信している番組をはじめてご覧になったそうで、「おもしろいことしてる」との感想をいただき、生放送中にテンションがぐぐっと上がりました。ありがたいです。

短いものだとチップス的に録画動画を公開することもありますが、できるだけ『ライブ』にこだわって配信をしています。失敗したところを切り貼りして無駄のない動画を作るよりも、『その時にしか作れない生放送コンテンツ』のほうが、より興味を持ってもらえるのではないかと思っているからです。

編集してきれいに整えた動画は、ショップで売られているコンテンツのようで、わたしには静かすぎるのです。

ただし、ライブ配信はやり直しできず、途中編集もできず、ひたすらリアルタイムに進んでいくので、事前にしっかりとした準備が必要です。無計画にやっているようでも、きちんとした筋道がないと、何かを説明する『授業』としては成り立っていませんよね。

そのために、シナリオを書き、デモンストレーションの準備をして、いちど軽くリハーサルします。そうやっておおよそのストーリーを決めてから臨みますが、ライブが始まるとその時の流れやチャットコメントを見て、「ここは念押しで説明が必要かな?」と思ったときは、事例を替えて繰り返し話したりしています。

45分のつもりが、終わってみると1時間近く話していたり。シナリオ通り進まないこともありますが、これはこれで自分が楽しいからよいかなと許容範囲としています。

ライブ配信の授業では、ストーリを大きく崩さないようにしつつ、心のままに進めるのがしっくりきそうです。

受講料を頂いて実施するリアルなセミナーでは、参加されている方のご予定もありますし、気軽に時間を延ばすわけにはゆきませんが、配信だと後から録画を見なおしてもらうこともできます。ライブ配信バンザイですね。

では、シリーズ1回目の放送の見どころをまとめておきます。リンクをクリックすると、ちょうどその時間からご覧いただけますので、興味のあるところだけでもぜひご覧ください。

● Local by Flywheel & WordPress のインストール


前回のコラムで紹介した『local by flywheel』をインストールし、続けてWordPressをインストールするまでの工程を見つつ、注意点を確認しました。

『local by flywheel』は、ローカルにWordPressの開発環境を準備するための一番楽な方法なのではないかな? と思います。

● WordPressの初期設定


『local by flywheel』が英語ツールなので、インストールされるWordPressも英語版になっています。

WordPressの設定を変更して日本語版にしたり、必要なプラグインをインストールしたりして、WordPressの初期設定を行いました。

● Local by Flywheel が動く仕組み


『local by flywheel』を使うと、とても簡単にローカル開発環境を手に入られますが、その仕組みをきちんと理解しておくことも大切です。

Virtual Box・Ubuntu Linux・Docker・nginx・PHP・MYSQL など、WordPressを動作させるために必要になる、複数のユーティリティが用いられています。

どれがなんの役割をしているのかを知ることで、ツールを安心して利用できますし、不意のトラブルにも対応がしやすくなるかもしれません。

● DreamweaverでWordPressテーマを扱う準備


デフォルトのテーマの変更をするために、Dreamweaverからテーマファイルを所定の場所にアップロードしました。(このテーマのコード解説は、次回に行います)

今回のシリーズでは、Dreamweaverを用いてWordPressテーマの開発をするので、ファイル管理もDreamweaverを使います。そのためには「サイト設定」をして、ローカルやウェブサーバーの情報を登録しておく必要があります。

Dreamweaverを使わなくても、エディタとブラウザがあれば同様の作業を進められますが、総合開発環境であるDreamweaverを用いれば、あれやこれやとソフトを切り替えずに作業が進められて便利です。どう便利になるのか? は、この後のシリーズでお伝えしていきます。

● Local by FlyWheelの『Live Link』


通常、ローカルで動かしているWordPressを他のマシンを使っている人と共有することはできません。

Local by FlyWheelの『Live Link』を使えば、一時的にローカル環境を他の人と共有することが出来ます。ライブ配信中に一時的にURLを発行して、みなさんにもご覧いただきました。

この機能を使うと、制作途中のサイトを他の人に見てもらうことができるので、とても便利になりますね。例えば、クライアントに確認をとるときなどに使えると思います。

……ということで、今回はここまで。YouTubeライブ配信は、毎週日曜日の夜22:30から放送予定です。チャンネル登録お待ちしています。
https://www.youtube.com/r360studio


ではまた、次回お会いしましょう!
(^^)


【森 和恵 r360studio ウェブ系インストラクター】
mail:r360studio@gmail.com
サイト:http://r360studio.com/



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編集後記(08/20)

●偏屈読書案内:齋藤 孝「100年後まで残したい 日本人のすごい名言」

はっきり言って、イージーな企画である。編集チームが「名言」集めをして、それを筆者に渡す。そういう分野は楽勝の人だから「100年後まで残したい日本人の名言」というコンセプトで30個選んでサクサク解説、というコース、だと思う。そんな平凡な企画が通るのは、誰でもネットで言葉を発する機会が増え、それが常に評価にさらされている時代への「傾向と対策」なのだろうか。

「いいね!」の数、リツイートの数、相手からの好評価の数、みんな欲しいから、とにかく評価を前提に発信するため、言葉を選ぶようになる。「こう言ったほうが、いいね! を押してもらえる」「逆に、炎上して注目してもらえる」なんて考える人も多いらしい。わたしなんぞ、無警戒に危ない発言(じゃないな、発信か)をして、痛い目にあったような気がするが、気のせいであろう。

でもたぶん、ネットで高評価を狙って発言するには、あるいは用心深く言葉を選んで発言するには、かなりエネルギーを消耗するだろう。そんなとき名言を利用すれば楽チンである。名言を日常生活の中で使っていく。引用したり、価値基準としながら行動すれば、自然に身について、心を支えるものになる。というわけで、筆者は「100年後まで残したい日本人の名言」を30個提示する。

日本人ならこの30個は暗唱できるようになってほしい、後世に語り継いでほしいという言葉たちである。「名言は心の砦になります。雪崩のように心が崩壊するのを食い止め、漏電のように常にエネルギーが消耗されていくのを防ぎます」っていうくらい凄いパワーらしい。暗唱せよ、後世に語り継げ、という。

本文中の重要なところはゴシック、というこのごろ実用書定番の安易な手法は正直うっとうしい。本文組版として美しくないし、ゴシック拾い読みでも大まかな内容が分かってしまうのは、読書といえるのだろうか。言葉のプロ中のプロが、叙述に軽重をつけるため書体を区別するなんて、情けないではないか。

心が折れそうなとき、背中を押してほしいとき、成長したいと願ったとき、人付き合いに悩んだとき、道に迷ったとき、と5分類しほぼ等分に名言を配する。各名言に「名言年齢」を記す。古い言葉、新しい言葉、それぞれの良さを味わってほしいからだという。その言葉の普遍性や実用性の証として、どれくらいの年月、歴史を超えて受け継がれてきたのか一目でわかる。好配慮だと思う。

いいと思った言葉に出会ったら、「声に出して読む」。その次は「暗唱する」。そこまではその通りだが、その場の文脈に合わせて取りだし、雑談の中でどんどん使えば「教養のある人になれる」という。そうかなあ。このご時世、かなりリスキーな行動だろう。残念ながら。そんなストレートなやり方は嫌われる。

先生の選んだ30の名言。わたしも共感したのをいくつか。赤塚不二夫「天才バカボン」のパパの決めゼリフ「これでいいのだ」。金子みすゞ「みんなちがって、みんないい」。藤子・F・不二雄「いじわるされるたびにしんせつにしてやったらどうだろう」。これだけかい。ほかはけっこう辛気くさい(使う気にならない)名言揃いだが、さすがに齋藤先生の解説はウマすぎるわ。(柴田)

齋藤 孝「100年後まで残したい 日本人のすごい名言」アスコム 2019
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776210517/dgcrcom-22/



●気のせいじゃないっす!(汗)/どちらもやっちゃう。無駄な思考か……。/「Live Link」なんてのまであるのか〜。

/この休みの間に、二度、若い人のごまかしに遭遇した。どちらもレジで。

スーパーでは、「研修中」の名札をつけている若い男性。私はいつも「レジ袋不要」の札を、レジの人に一番近いカゴの縁に置き、持ち手ではさんでおく。商品をバーコードに通す際に邪魔になるので、最初に気づかれやすい。

カゴの中に入れておくと途中で気づかれることになる。スーパーによっては、札にバーコードがついていて、途中でその札をレジに通すところもあるが、そうでないところだと、全部を通した後に「レジ袋不要」を示すであろうボタンを押して、数円の割引が行われる。

後者のスーパーだと、札をレジの所定の場所にいったん置いておき、合計ボタンを押す前に、その場所に何もないか確認しているようだ。(hammer.mule)