[4951] オモシロイ被写体の巻-1◇FONTPLUS DAY セミナーに登壇

投稿:  著者:



《美学! 水のない川。》

■わが逃走[254]
 オモシロイ被写体の巻 その1
 齋藤 浩

■もじもじトーク[123]
 フォントおじさん、FONTPLUS DAY セミナーに登壇
 関口浩之
 



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■わが逃走[254]
オモシロイ被写体の巻 その1

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20200213110200.html

───────────────────────────────────

尾道に行ってきた。
尾道にはオモシロイ被写体がたくさんある。

というよりも、もしかしてこれはオモシロイ被写体なのではないか? と思える風景や物件であふれている。

ちなみに、オモシロイか否かは誰かに決めてもらうのでなく、自分で決めるのだ。「何事に対しても積極的にオモシロがり、人と違うことをしなさい」と大学時代の恩師・コタニ先生は言う。言語化されると明快だ。

他人が決めた名所旧跡を、他人と同じ角度で撮っても無意味なのである。皆が通り過ぎる場所に立ち止まり、皆が見上げている場所で足元を観察する。ツマラナイものも、角度を変えたり、寄ったり引いたりしてみると、
意外な発見があるものだなあ、とつくづく思う。

タモリ倶楽部の名投稿人・高橋力さんは、空耳探しのコツについてこう語っていた。「外国語の歌を日本語だと思って聴くのです」。

オモシロイ被写体探しにも、同じことが言えると思うのだ。

たとえば階段を彫刻として見る、洗濯物をインスタレーションとして見るよう意識するだけで、今見ている世界が全部美術館になるのだ。

中でも、とくに優れた作品を展示しているのが、瀬戸内方面。とくに尾道。という気がしている。気がしているだけなのだが、私がそういう気になって、かれこれ30年が過ぎた。

そこで、先月もカメラ片手に1泊2日の旅に出て、写真を撮ってきたので見てください。


早朝の新幹線で出発、尾道に着いたのは朝の10時半。

初日はレンタカーを借りてしまなみ海道を往復し、翌日はひたすら山手を歩くこととした。

天気は快晴。向島まで船で渡り、しまなみ海道で一気に大三島へ。青い空に青い海。景色が穏やかだと、心も穏やかになる。ちなみに生口島までは広島県尾道市で、大三島から先は愛媛県今治市です。

昼メシの後、海に沿って島を一周しつつ気になる物件を探す。
こ、これは!

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/13/images/001

子供の頃、誰もがこの“顔”に恐怖を感じたのだ。うーん、久々に見たが今でもコワイ。コワくてこれ以上近寄れない。副葬品として使うと泥棒よけになるのではあるまいか。

そういえば、笑っているように見えるハニワ、実は墓荒らしに対する威嚇の表情なのだと聞いたことがある。我々にとってかわいいと思える表情も、古代人にはこのように見えていたのだろう。

さて、さらに海沿いをゆくと、クリストの新作! と思われるようなアートが出現した。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/13/images/002

モノクロでコントラスト強めに仕上げると、雪山のようにも見える。実際、雪山のように見えたのだが。

この写真は、ここ数年に撮った写真の中でいちばんイイな、と思っている。

暖かい日差しのもと、瀬戸内海をバックに、なんじゃこりゃ! な唐突感。たぶん、この写真を見せられた人のほとんどは、なんの写真だかわからないだろう。

撮ってる本人が、なんじゃこりゃ! な訳だから、わからなくて当然なのだ。むしろ、わからないことが伝わればしてやったり、なのである。

どうやらこれは、柑橘類を守るためのシートのようだ。カラーで見ると、こんな感じだ。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/13/images/003

もともとこの写真はモノクロで仕上げるつもりで撮ったので、カラーだど、やはり説明的になってしまう。タネ明かしているみたいで、ツマラナくなるのだ。

デジカメの光学ファインダーを覗きながらモノクロ前提に撮る、ということはフィルム時代のように、モノクロフィルムを詰めているという意識が撮影時に必要になってくる。

モノクロ変換された液晶モニターを見ながら撮るスタイルを、否定するつもりはないが、鮮やかな光学ファインダー越しに無彩色の世界をイメージしてシャッターを切る方が、オモシロイ写真が撮れるから不思議だ。

趣味の写真は依頼仕事じゃない。ということは、「失敗」することなど絶対にないのだ。だったらカメラはすべてを提示せず、少しくらい撮影者に想像の余地を残してくれてもいいじゃないか。とも思う。

さらに海沿いの道をゆく。西側からの日差しが眩しい。あっ! いま通り過ぎた橋の向こうにフシギ物件が見えたぞ!! すみやかに車を脇に停め、カメラを持って道を駆け戻る。そこには、いとあはれな風景が。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/13/images/004

美学! 水のない川。船上に寝転んで潮が引くのを待ち、着底の瞬間を背中で感じたい。

島の人にしてみれば当たり前の風景なんだろうけど、訪れた地の当たり前と、自分の当たり前の対比こそ、オモシロがる価値があるのだ。

そして、さらに行く。
冬の海水浴場に、冬のシャワーが。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/02/13/images/005

私は趣味で全国各地の構造美をみつけてはオモシロがっているわけだが、実態よりも影をオモシロがることも少なくない。

影を見ると、その実体はどんなかたちなのか? とつい想像するでしょう。するんです。

フレームの外をイメージしてもらうためにも、影を積極的に画面に取り入れるという手はアリだよなあ、と思う昨今である。つづく。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■もじもじトーク[123]
フォントおじさん、FONTPLUS DAY セミナーに登壇

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20200213110100.html

───────────────────────────────────

こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

前回のもじもじトークでは、「フォントおじさん、テレビ地上波に出演」をお送りしました。たくさんの方から「日本テレビの『ニノさん』で、フォントおじさんが出演しているのを見ました」と声を掛けられました。ありがとうございます。

といっても、5秒ぐらいの出演ですけど。

可愛らしい文字で「フォントおじさん」と書かれている派手なTシャツを着ていたので、それが目立って見えて、「あっ、フォントおじさんだ!」って気づいてもらえたのだと思います。

改めて、その時の様子を公開します。
http://bit.ly/mojimoji122a


Tシャツの文字ですが、実は、フォントイベントつながりの大阪のお友達、FONTDASUさんの作品なのです。

このロゴ、FONTDASUサイトから、PDFデータがダウンロードできます。「需要あるかわかりませんが」と書かれていますが、「フォントおじさん」でGoogle検索すると、検索結果の5番目にでてくるので、もしかして、少しは需要があるのかもしれません(笑)

ダウンロードして自由に利用できます。URLを紹介します。
https://fontdasu.com/2047


フォントダスさんの人気書体と言えば、「とっぽいゴシック」「しっぽりゴシック」「しっぽり明朝」ですね。「モッチーポップ」も結構好きです。

フォント好きの皆さん、フォントダスのサイト、じっくり眺めてみてください。そして、気になるフォントがあれば、ダウンロードしてみてください。
https://fontdasu.com/


さて、今日のお題です。「フォントおじさん、FONTPLUS DAYセミナーに登壇」をお送りします。なんか、先週のタイトルに似てるような気がします……

●おさえておきたい文字まわりのトレンド CSS Nite Shift13拡張版

僕は、隔月ペースで、FONTPLUS DAYセミナーというイベントを企画開催しています。「書体とデザイン」にまつわる講演イベントということで、過去に、中村征宏さん、藤田重信さん、片岡朗さん、小林章さん、今田欣一さん、山本太郎さん、白井敬尚さん、祖父江慎さん、副田高行さん、大石十三夫さんなどをお招きして、80名規模の無料セミナーを開催しています。

自分が主催するイベントなので、ゲストをお招きすることはあっても、自分が登壇することはありませんでした。

今回、24回目のFONTPLUS DAYセミナーですが、自分は、初めてのメインセッションの登壇者になりました。

昨日2月13日(水)に、ウェブ系セミナーとして日本最大のCSS Niteの鷹野雅弘さんと、「おさえておきたい文字まわりのトレンド CSS Nite Shift13拡張版」と題した2時間セミナーに登壇しました。

また、鷹野さんと僕のスライド作成にあたり、フォントトレンドや書体ネタを真面目に深く考察してヘルプしてくれる良太郎さんにも、座談会で登壇していただきました。

FONTPLUS DAYセミナー Vol.24
https://fontplus.connpass.com/event/163033/


平日の忙しい中、80名もの方に参加いただきました。感謝です。楽しかったですね!

●参加者からのコメント

たくさんの方から、アンケート用紙に感想をいただきました。意見や質問のたくさん書いていただき、とてもうれしかったです。その中から、気になったコメントをいつくか紹介しますね。

その1◎文字をいじって、こんなイケてることができるぜ! とかではなく、さりげなく働きをさせるために、どう書体を選ぶか、そもそも文字の役割とは? ということを考えることが、結果として、イケてることにつながるよね〜 ということが印象に残りました。

鷹野さんも良太郎さんも僕も、テクニックよりも、本来、言葉を伝えるためのテキストの表現方法、文字の置き方(配置や組版)などが大事にしているので、それを共有できたことが、すごくうれしかったです。

その2◎ウェブまわりのことばかりやっていて、紙媒体のフォントのことをあまり意識していませんでした。お話を聞いて視野が広がりました。

そういう意見、よく耳にしますよね。でも、ユーザーの立場、つまり、見る側の立場で考えてみてみましょう。見る側が、文字情報や文字を含むデザインを目にする時、それが、紙であるか(ポスター、看板、チラシ、書籍、雑誌など)、スクリーンであるか(パソコン、スマホ、タブレット、テレビなど)の区別を意識しながら、見ているわけではないですよね。

人間は、何かをみた瞬間に、それが何であるかを0.5秒ぐらいで判断しています。つまり、ウェブコンテンツであっても、情報を正確に伝えるためのフォント選びは、紙媒体における、その重要性と変わりないのです。

その3◎フォントに詳しい人たちのイベントに少しおびえていたのですが、来て良かったです。

この感想は、とてもうれしかったです。フォントイベントは怖くないのです!

その4◎色々、小ネタをはさんでいただいて、勉強になりました。

この感想も、とてもうれしかったです。小ネタ、好きなんです。

昨日のスライド(約500ページ)は、参加者へは共有されます。なお、1か月後ぐらいには、皆さんにも閲覧できる環境が用意できると思います。その時、もじもじトークでもご紹介します。

今年12月に、CSS Nite Shit14が開催されるので、来年2月にFONTPLUS DAYセミナーで拡張版をまた開催したいです。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

Facebook
https://www.facebook.com/hiroyuki.sekiguchi.8/

Twitter @HiroGateJP
https://mobile.twitter.com/hirogatejp


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(02/13)

●偏屈BOOK案内:里見清一「『人生百年』という不幸」

「週刊新潮」の連載「医の中の蛙」2017〜2019から選んだものに加筆した40編。すべて非常に読み応えがある。考えさせられる。わたしが考えても仕方がないが。最後の「人が死ぬのはそんなに嫌か」を紹介したい。いままでわたしの家族の死は7人になるが、全て死に頃で、いわば「自然」だから何の感慨もない。

ところが、いまや死は「自然」どころの話ではなく、「見たくない」を通り越して「あってはならない」くらいの扱いを受けているようだ。神戸市須磨区で、余命宣告を受けた末期患者とその家族を受け入れ、介護や看護を実費で提供する「看取りの家」施設が計画された。まことにけっこうな話である。ところが、住民の猛反対に遭い、計画はけっきょく頓挫してしまったというのだ。

事業者側の説明会の申し入れを住民自治会は拒否し、揉み合いで警察まで出動したという。主な反対理由は「住宅地に死を持ち込むな」だった。ある住民女性は「必要な施設だが離れた場所につくって欲しい。見える範囲でなければあってもいい」と語ったという。“NIMBY(not in my backyard)”自分の裏庭には嫌だ、という言葉があるが、彼女のセリフはそれの最たるものである。

例によって新聞は、誰に何を遠慮しているのか、事業者側の手続き的な不備を含めて中立「的」に報道している。これが、「裏庭に米軍基地ができてうるさい」とか、「原発ができるのは不安だ」とか、「兇悪犯専用の刑務所ができるのは怖い」とかいうのなら理解はできる。しかし、よりよき死に場所を求めている人に「自分の近所で死んでくれるな」とは、何たる言い草かと筆者は怒る。

「それなら、孤独死しそうな独居老人を近隣から追い出す方がはるかに理にかなっている。死んでから数か月もたって発見されたりすれば後片付けも大変だ。一方、施設で家族に看取られる病人が、コミュニティにどういう迷惑を及ぼすというのか」。この計画では5人程度の受入れだったそうで、せいぜい亡くなるのは週に一人だろう。大きな病院ではどこでも毎日、死亡退院が出ている。

「死を日常的に目にするのがつらい」という住民コメントは、ほとんどビョーキだ。そりゃ、若い人や子どもが事故や犯罪の犠牲で死ぬのはつらいが、不治の病の人がやすらかに臨終を迎えたいというのを「どこかよそで死んでくれよ」と喚き立て、警察沙汰にしている人たちの神経はとうてい理解できない。筆者は「現代の社会は人が死ぬことを認めないかのようである」と書くが……。

いや、認めないのではなく、死から目をそむけたいのだ。それは人命を軽視していることだ。「お疑いの向きは、『人が死ぬことを認めない』現代の延命治療の現場をご覧になればよい。そこで『命』が尊重されているように感じられるだろうか?」。わたしは癌で死にたい。痛くない癌ね。そして治療しない。すぐには死ねないから、ぎりぎりまで人生の整理ができる。いいね。(柴田)

里見清一「『人生百年』という不幸」2020 新潮新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106108445/dgcrcom-22/



●頸動脈エコーもやった。集団検診でコレステロール値が基準値の倍近くに。項目別判定は六段階あるのだが、上から二番目の「要治療」に。メタボには非該当。糖代謝や貧血は「軽度異常」。

検索すると脂質異常症(高脂血症)と出た。「さまざまな遺伝的要素や体質、食習慣、運動不足、肥満などが背景にあることが多いようです」「動脈硬化が進み、脳梗塞、心筋梗塞など血管系の病気が起きやすくなります。」「中性脂肪値が高いと急性膵炎を起こすこともあります」。

二年前までは毎朝走っていたけれど、今は全然。マラソン大会に落ち続けていて、モチベーションが上がらなかったのだ。運動らしい運動をせず、家にこもりっきり。栄養つけなきゃと食事だけは頑張っていて、そりゃ脂質異常になりますわな……。(hammer.mule)

脂質異常症(高脂血症)といわれたら……食生活を見直しましょう!
https://www.mikura-clinic.jp/news/health/dyslipidemia/