[5128] ローマでMANGA:サイレントマンガで日本へ!

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《一つの漫画作品をゼロから作る》

■ローマでMANGA[166]
 サイレントマンガで日本へ!
 Midori




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■ローマでMANGA[166]
サイレントマンガで日本へ!

Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20201120110100.html

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●ローマでコロナ:現状

状況が変わっているので、まずこれについて。

ほぼヨーロッパ中で、新型コロナ感染陽性者が増え続け、ロックダウン、セミロックダウンに入っている。

イタリアでは11月2日から、午後9時以降の外出を自粛という項目が、飲食店午後6時閉店、家庭内であっても6人以上の集まり自粛、に追加された。

11月5日から、イタリアをその「危険度」で黄色、オレンジ、赤の三種に分け、度合いを変えた自粛の首相令が出された。

[赤]はほぼ北イタリア+南イタリアのカラブリア州。飲食店はお届けのみ可。食料品と薬品を除く店舗、映画、劇場、フィットネスなどの施設は閉鎖。公共交通機関は50%の乗客。不必要な外出を自粛。午後10時以降は、仕事や保健などの特別な事情がない限り禁止。学校はリモート授業。市を超えての移動も自粛。

11月14日から、ナポリが州都のカンパーニャ州も[赤]に仲間入り。

[オレンジ]はプーリア州とシチリア。飲食店は閉店。お届けは可。高速道路のサービスエリアでは軽食と飲み物の提供可。高校以上のリモート授業。

不要不急の外出を自粛。午後10時以降は、仕事や健康などの理由以外は外出禁止。市や州を越境しての移動は、仕事などの理由以外では禁止。

我がラツィオ州を含めた[黄]は、市を越えての移動可能、飲食店を含めた店舗は午後6時まで。飲食店はお届けの場合は、時間の制限なし。幼稚園、小学校を除いた学校はリモート授業。午後10時以降の外出規制。

[黄]ゾーン、11月12日には10州あったが、次々と[オレンジ]、[赤]ゾーンに転向し、15日にはローマがあるラツィオ、サルデーニャ、南イタリアのモリーセ、ベネツィアがあるベネト、ベネトに隣接するトレントの5州になってしまった。

5月末にロックダウンが解除され、7月、8月のバカンス時期に、イタリア総移動があり、三密が守られなかったことも、秋の陽性者増加に繋がったのだとの意見が多い。

総移動があったことで、観光業やそれに付随する業界が若干息がつけたことも確かだ。皆がもう少し三密を避けていたら、秋のロックダウンが避けられたのではないかな。

セミロックダウンが発表になって、ライブ芸能業界、タクシー業界がデモをした。このデモは平和的だったが、それに便乗して「とにかく暴れるのが命!」の輩たちが、紙爆弾など持参して大暴れ。

機動隊と衝突して怪我人が出て、騒ぎに乗じて店舗を襲撃(トリノではグッチの店のウィンドウが割られて、マネキンが持っていたバッグが奪われた)。これがナポリ、トリノ、ミラノ、ローマで起こった。

「とにかく暴れる!」集団は言い訳の余地がないが、仕事がなくなっている業界の人々は、追い詰められてきている。国からの支援も間に合わない。食べることはできても、店舗が借家の場合、払いきれなくなれば閉めざるを得なくなる。

新型コロナは陰謀だ! マスクなんて何の役にも立たない! と感情的に(科学的ではない)騒ぎ続ける人にも困ったものだ。その集団のデモもあった。

国民の健康を守るのか、経済を守るのか、そのバランスが難しいのはどの国も同じ。
期間限定で「ベーシックインカム」を実施するっていうのはどうなのかな。経済システムはまったくの無知なので、実施できる可能性があるのやらないのやら、わたしには判断できないけど。

他のインフルエンザウイルスと同じ、新型コロナだけ特別視するのはおかしい、という意見もあるけど(これが陰謀論に繋がっているんだね)、個人的には人工ウイルスだと思っていて、変化が他のウィルスに比べて予測が難しい、感染力が強い、パーセンテージは低いものの重篤になり得るので、避けられるものなら避けたい。

私にできることは限られているけど、マスクの効果をなるべく話すようにしている。
その効果は科学的に証明されたし。
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20201027_01/


イタリアの細菌学者パルー氏が、「新型コロナは変異を重ね、現在、感染力が強くなっているが、重篤を引き起こす力は弱くなっている」「これまで、香港風邪しかり、スペイン風邪しかり、2年以上猛威を振るったウィルスはない」として、2021年の1月か2月に収束するのでは、と言っている。だといいなぁ。
https://www.ilprimatonazionale.it/cronaca/virologo-palu-picco-gennaio-febbraio-nessuna-pandemia-due-anni-172959/


●新型コロナ下での授業

新たな首相令で、我らが学校の授業もすべてリモート、ということになった。13人の生徒の中で、ネット環境が悪くて落ちる子が二人。前回、イタリアのネット環境が良くなるように祈る、と言ったけど、祈りの力が弱いようだ。

一回につき3時間だった授業時間が、今季から4時間になった。前回のロックダウンの時は、まだ前年期だったので3時間だった。だから自分の担当でない授業も、何かしらしながら参加していた。

今季は4時間なので、ちょっと家事などを放棄して聴講してるのはきつい。私の担当ではない日は、Teamsを立ち上げて、用事をしつつ、聴いたり聴かなかったり、ちょっかいを出したりしている。

●まずは2ページ

今季は授業内容をちょっと変えて、講義よりもネーム(ストーリーボード)を中心にすることにしている。

まず2ページ。アイデアを出してもらい、1ページ毎に3段2コマの6コマ、2ページで計12コマにとりあえず分けて、各コマごとに何が入るのかを書かせた。

それを見ながら、次段階ではどのコマが一番重要かを決めさせ、そのコマを大きくし、それに合わせて、残りのコマの大きさを決める。次に、ストーリーボードにしてもらって、若干のお直しをして原稿制作。

この2ページの目的は「短編漫画を仕上げる」ことにあるので、それ以上はお直しをせずに原稿制作に入ってもらった。

決めた期日までに仕上げて、Teamsにアップしたのは6人。クラスは13人だから50%強。もうちょっと行くかと期待していたのだけどな。たった2ページでも、大仕事になってしまうのだ。経験のなさが露呈しているということだろうな。

あまり時間がないので、ここで止まっていられない。次に進む。制作速度が遅い生徒を置いて行ってしまうことになるけど。どうやって遅れている生徒を取り戻すか、しかもリモートで。考えなくちゃ。

●次は8ページ。今ここ。

「サイレントマンガオーディション」参加を、授業の一環にしている。2年前まで3月末が締め切りで、こちらは10月から12月までmanga文法の講義を主にする時間が持てて、1月からオーディション参加に集中していた。

昨年、1月末の締め切りとなり、悩んだ末に参加を決めた。manga文法講義を4回ほどして、オーディション参加の制作に入った。

しかし、文法を知らず、ストーリーボードをあまり経験せずに、いきなり20ページの作品制作、それもセリフなしだったから、かなり皆苦労した。期日に間に合って実際に原稿を送ったのは一人だけ、という散々な結果だった。

だから、今年も1月末締め切りだったら、参加しないでゆっくり講義とネームの練習をしたほうがいいかなと考えた。

果たして、今年も1月の締め切り。悩んだ末、やっぱり参加を強行することにした。
文法の講義は、ネームの練習と同時にする。ネームのお直しをしながら、文法を説明していくのだ。

2ページの次は8ページの作品。そして16ページでオーディションの参加作品を作る。8ページは鉛筆下書きまで、とする。個々で時間が取れれば完成原稿にしてもらう。完成原稿にした生徒には、点数をプレゼントするのもいいかな。

2ページの時と同じように、テーマに添ってアイデアを1〜2行で出してもらう。サイレントマンガオーディションに近づくため、今回のテーマ「泣く、笑う、愛する瞬間」の中から一つ選んで、「微笑む瞬間」をテーマにした。

アイデアは1、2行でいいんだけど、みな頭が硬い。2ページの時と同じように、ほとんどの生徒が2個くらいしか出してこない。頭を柔らかくしてもらうには、どうしたらいいんだろう。

この8ページも「一つの漫画作品をゼロから作る」のが目的なので、あまりグダグダ言わずに出てきたアイデアを採用した。

普通は片起こしといって、1ページ目は単独で、2ページと3ページ、4ページと5ページ……とコンビを組んで行く。ここでは、1と2、3と4……と組んで4つの見開きページで構成してもらうことにした。

「起承転結」を説明し、見開き一件づつ「起」「承」「転」「結」を割り当てることにした。「転」の中でも特に重要な場面は7ページ目に配置する、という約束にした。見開き四つをA4の紙を横長にしたものに描き、それぞれの見開きに何が来るのかを書いてもらうことを宿題にした。

13人いると、勝手な解釈をする者が現れる。一人は、1ページごとに何が起こるのかを手書きの、しかも筆記体で書き、それをスマホで写真に撮って送ってきた。読みにくいことこの上ない。これは却下。解読はしないで、図にするようにお願いした。

もう一人は1ページを表す長方形を描き、その横に何が起こるのかを書いてきた。これは全部ブロック体で書いてきたので解読可能。見開きじゃないとあまり意味がない、というか、練習の目的に叶ってないんだけど。

あまり時間を取れない(良い言い訳じゃないけど)ので、この生徒のものはそのまま受け取った(Teamにアップしてるから、受け取り拒否とか出来なんだけど)。

オンライン授業で提出された見開き図をフォトショップで開けて、生徒が書いたテキストを元に、各見開きをどのように構成したら良いのかをサジェスチョンし、コマを描き込んだり、説明を入力したりした。

学校で講義を始めた時は、ネーム(ストーリーボード)の見直しは家でじっくり見ないと、どこをどう直したら良くなるのかわからず、一週間仕事になっていたけど、さすがに20年やってると、お直しはほぼその場でできるようになった。

でも、一回の授業で全員分できないのが困る。人のお直しを見るのも勉強になるのだけど、授業でお直しを受けた生徒は、すぐ次に取り掛かかれるけど、そうでない人は次を待つ、という不公平が生じてしまう。

かと言って、私が授業外に自分の時間を使うのも、なんだかな〜という思いもあって、今のところどちらが勝つのかわからない。何を基準に判断するのか迷ってる状態なのだ。

●学校外の「教え子」エレナ

正確な年齢は知らない、というか忘れたけど、30代後半だと思う。彼女が19歳の時、mangaを描きたいのだけど、とコンタクトをとってきて、以来、サジェスチョンをあげ続けている。

ものすごくモチベーションが高く、できることは全部やる! という感じ。ここで何度も出て来る「サイレントマンガオーディション」が、海外にも門戸を開いた時から投稿を始めた。

ノミネーションされても受賞には至らず、落ち込んで「今度、受賞しなかったら、もうmangaはやめる」と言ってきたことがある。

それまで、なんとなく馴れ合って、なんだかなー、と思うこともはっきり言わずに、彼女の意思の方を大事にするようなサジェスチョンをしてきた。

その「もうmangaはやめる」という言葉に、彼女の本気が痛いほどわかって、これは彼女の意思を尊重してる場合ではない、と思い至り、ダメな部分を遠慮せずに言って、結果、大賞を取った。2017年のことだ。
https://cargocollective.com/elenavitagliano


エレナはもちろんのこと、私も嬉しかった。私の助言が役に立ったことは、私にも自信が持てた。

その後、「サイレントマンガオーディション」で賞を取ることはなかったが、同編集部とワンショットを描いたり、イベントでmanga風似顔絵を描いたり、ネットで請け負ったりしてお小使い稼ぎをしている。

今年、「サイレントマンガオーディション」関係で描いた作品を集めた本を、イタリアで出版にこぎつけた。
https://uppercomics.com/product/silent-smiles/


オーディションから出版へ、という流れはコースの生徒にも叶わない夢ではないし、具体的な道なのでエレナを授業に招待した。エレナは現在ロンドン住まいで、リモート授業を活用しようというわけだ。

私が担当の木曜日。2時間私が授業をし、2時間エレナに話してもらった。パワポを用意して、サイレントマンガオーディション大賞受賞作品についてはもちろん、漫画家になるという夢を実現するための心構え、具体的に何をすべきかまでまとめてくれた。

サイレントマンガオーディションで、熊本県で行われたマスターコースの時の写真も途中で挟んで、生徒の緊張を緩める時間も作った。ほぼ全員、日本に憧れを持っていて、いつか行きたいと望んでいるから、サイレントマンガで日本へ! という夢を追加することになった。

ロンドンの学校で美術史を教えていた時期もあり、すごく本を読む人だし、深い内容をとてもわかりやすく、かつ理路整然として説明してくれて、生徒も喜んでいた。また来てもらおうと決めた。エレナの新しい本の宣伝もしてもらったのは言うまでもない。

●エレナにお直し

この時期、11月30日締め切りだというコンテストに応募する作品を制作していて、そのサジェスチョンを何日かに渡ってした。

11月に入ってから、以前にSMAの編集部からアイデアをボツにされたものを拾って、焼き直し。

これの他に、大賞賞金二百万円という賞を見つけていて、これに勝つために協力して! 賞金を取ったら◯割(何割って言ったのか忘れた)協力金として払うから! とも言っていた。

半分冗談、半分本気で言っている。manga家になりたい、というのは本気で、しかも日本市場でmanga家になりたいと思っている。何度かかなり難しいことを言ったのだけど、諦めない。講談社「モーニング」誌で90年代に外国人作家に書き下ろしをしてもらった企画以外に、外国人作家を採用した例を知らない。

あ、最近、「ビックコミック」でイタリア人モデルが、自分の東京体験を連載漫画にしてるから少しは望みがあるのかもしれない。
https://bigcomicbros.net/comics/31674/


これまでなかったからといって、絶対にないと決める理由もないので、夢を後押しすることにはしている。

そうだ、それに、集英社の「ジャンプ」もちょっと世界に門戸を開いている。モナコのMonaco Anime Game International Conferenceというmanga、アニメ、ゲームのフェスティバル「MAGIC」で漫画作品を募集、一等を獲得した作品は「少年ジャンプ」のウェブサイトに掲載されることになっている。
http://www.magic-ip.com/


10月末締め切りだった今年のコンテストにエレナが参加し、10人を選出する一次予選を通ったと喜びの報告があった。(タイトルの羅列で作者の名前は出ていない)
http://www.magic-ip.com/le-covid-narretera-pas-linternational-manga-contest/


何作応募があったのかもわからない。でも、とにかくめでたい。1月に5人選出の二次予選、そして2月の本選が待っている。

エレナの絵柄は個人的にはあまり好きではないのだが、あくまで私個人の好みに過ぎないので、賞に参加するのに問題にならない。

ネーム自体は悪くない。話がよく理解できるし、テンポも良い。キャラクターの性格づけもそれなりにされている。たまに小さなチョンボをするものの、絵のレベルは良い。デジタルを使ってトーンを貼るが、その使い方も良い。

話は主に日常生活を語り、トーンは真面目、それにコミカルな場面を入れる。コミカルな時はキャラの顔が変形する。ただ、何か違和感がある。喉に魚の小骨がひっかかっている感じ。

色々考えて後、若干の手がかりとなるだろうなとたどり着いたのは、エレナの作品には読者が不在だということ。誰に語っているのかわからない。

もちろん、どんなmanga作品も、あえて誰に捧げたかなんて書いてないけど、日本の場合、少年漫画、少女漫画、青年漫画、レディスとジャンルが分けられていて、単行本になった場合も、元々はそれらの週刊誌や月刊誌に掲載された後だから、ターゲットははっきりしている。それは決して無駄な行為ではないのだ。

大人が読んでも面白い少年漫画とか、男子が読んでも面白い少女漫画があるけど、それは別の話だ。

それについて、よ〜く分析して理解していくのが、今の私の課題だ。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

A3のスキャナ+印刷機が欲しいなぁと思ってるが、けっこう高い。それが、スキャナだけだけど、1万円以下のものがあるのを知った。人から教えてもらったんだけど、indigogoというサイト。お金がないけど何か作りたいという人が、ネットで資金を募集して実現させていく仕組みだ。

そのサイト内で本をスキャンできます。A3までできます。というものがあり、すでに必要な資金はあって、製造段階に入っている、ということだった。
https://www.indiegogo.com/projects/shine-ultra-next-gen-portable-powerful-scanner#/


キックスターターという似たような仕組みのサイトがあり、以前にこのサイトでイタリア人作家の出版を支援したことが三回ほどあって、いずれもうまく行ってちゃんと現物を送ってもらった。
https://www.kickstarter.com/


製造段階に入っているならと、さっそく購入ボタンをポチったのが、今年のはじめ。
2月に見にいくと、「もうすぐ発送しますので購入した方、少々お待ちください」。待っても待っても届かない。5月に見にいくと、「コロナのせいで色々遅れてます」。

夏過ぎても届かず、やられたかー! とがっかりしていた。

ところが11月にひょっこり届いた。ちゃんと公式サイトもあるのを発見した。
https://www.czur.com/


疑ってごめんね。アップル社なみの豪華な偉そうな梱包で、箱を捨てられずにいる。断捨離に程遠い思考の持ち主な私。


↑アメリカ人解説。素敵な箱が見られます。

日本人による日本語解説


使って見た結論。テキストの本のスキャンには良い。私が使いたかった大きな漫画原稿のスキャンには向かない。

A3もB4もスキャンできるけど、インクや墨の黒が妙に黒光りして、黒い線と白い紙面の境に妙な筋が入る。真上からの光で撮るからだろうな。

ライブカメラとしても使用できるので、オンライン授業では役に立ちそう。

外出して店舗を見て回ることがもともと少なかったけど、コロナでさらに減って、ついついオンラインでポチってしまい、何度か写真とは似ても似つかぬ質の低いものを買ってしまってるので反省しつつ……も、ついポチる。

A3のスキャナ+プリンターは私の財布には荷が重くてポチれない。

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http://bn.dgcr.com/archives/midori/



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編集後記(11/20)

●偏屈BOOK案内:丸山淳一「今につながる日本史」中央公論事業出版 2020 
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120053091/dgcrcom-22/


今は歴史本のブームだといわれるらしいが、史実の裏付けもなく勝手な史観をつなぎあわせただけの「マユツバ物語」か、細部を極めただけの「オタク物語」のどちらかしか読まれていないらしい。BS日テレ「深層NEWS」のキャスターだった歴史好きの筆者が、今を知るため歴史を学ぶ視点で「読売新聞オンライン」に連載しているコラムをまとめた本で、37本を収録している。

スポーツのジャンルでは箱根駅伝をつくった「日本マラソンの父」金栗四三(かなくりしそう)の話が面白かった。3回出場したオリンピックマラソンはリタイヤ2回と16位。国内無敵でも世界では通用しない。それが日本マラソンの実力だった。後に金栗らアスリートが、アメリカ大陸横断駅伝を発案し、多くの大学に呼びかけて予選会をやろうという会話から、「箱根駅伝」が生まれた。

第一回箱根駅伝は大正9年(1920:100年前だ)出場4校、総合優勝校は東京高等師範学校。このときは近道を探して走ってもよいというルールで、走者が箱根の山登りをするころは日没、箱根の青年団が沿道で松明を焚いて走者を誘導したため、自然とコースが定まった。優勝記録は15時間5分16秒、2020年の青山学院大学の優勝タイム10時間45分23秒より4時間以上遅い。

昭和42年(1967)75歳になった金栗のもとにスウェーデンのオリンピック委員会から「まだ、どこかを走っていると思われる。ゴールすることを要請する」という招待状が届く。ストックホルム大会(1912)で金栗は大会本部に棄権を届けず帰国したため、「競技中に失踪、行方不明」扱いになっていた。オリンピック55周年に向けて、当時の記録を調べていたオリンピック委員会が発見した。

招待に応じてストックホルムを訪れた金栗は、競技場をゆっくり走ってゴールした。アナウンス「日本の金栗、ただいまゴールイン。タイムは54年と8か月6日5時間32分20秒3、これをもってストックホルム大会の全日程を終了しました」。しゃれたことやる国だねー。金栗はインタビューで「長い道のりだった。この間に妻をめとり、6人の子どもと10人の孫に恵まれた」と応じた。

金栗はマラソンシューズの開発でもマラソン界に貢献し、1928アムステルダム大会では「金栗足袋」を履いた日本選手が4位と6位に入賞、1936ベルリン大会では孫基禎(日韓併合中の朝鮮半島出身)がマラソンで日本初の金メダルを獲得した。大坂・道頓堀の大看板で有名な江崎グリコの「ゴールインマーク」は、金栗をモデルに描かれているらしい。

箱根駅伝公式サイト
https://www.hakone-ekiden.jp



●『SwitchBot Hub Mini』の続き。『SwitchBot プラグ』も買った。壁のコンセントに直接つけるもの。このプラグに直接、家電のプラグを差し込み、コントロールする。消費電力の確認やスケジュール・タイマー機能もある。

これはまだ使っていない。サーキュレーターに使おうかなと考えている。物理スイッチでボタンを押し込むようになっているから、電気が流れたらオンになる。実際には消し忘れ確認を外出時にできたらなぁと。

先に書いた、電気コーヒーメーカーも物理スイッチなので、こちらに使うかもしれない。

スマートメーターとの連携で、家全体の消費電力量が確認できるという『Nature Remo E lite』も気になったけど、まだまだお値段が高めなので断念。続く。(hammer.mule)

SwitchBot プラグ
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07TVSGJT4/dgcrcom-22/


Nature Remo E lite
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B086WGR1TZ/dgcrcom-22/


スマートメータ対応製品一覧(関西電力)
http://echonet.jp/product/sma/