クリエイター手抜きプロジェクト(番外)昔話:段ボールあれこれ
── 古籏一浩 ──

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今回は、昔作っていた段ボールについて少し書いてみます。というのも、いつもは月曜日に割り当てられているのに、デジクリ11月スケジュールを見たら27日の金曜日に移動しているではありませんか。ということは、月曜日のプログラム系ではない別のものを書けということなのかなと、勝手に解釈(勤労感謝の日で休み、きまぐれで金曜日に移動させただけ:編集部)。

コロナのせいで通販大人気。そうでなくても通販は需要が高まってしまい、配達できない! みたいな悲鳴を上げている配達業者もありました。だいたい、1軒につき移動時間も含めて10分かかるとすれば、1時間に6軒、8時間なら48軒くらいしか配達できません。

知り合いの酒屋さんが佐川急便の荷物を配達していた時は、一日50軒程度といっていたので、やはりそんなところでしょう。配達する荷物の個数を50で除算すれば、必要なドライバーの数がだいたい分かるといった感じではないかと思います。

そんな通販に欠かせないのが段ボールです。もし段ボールがなかったら、荷物は紙袋か、大きなものは木箱に入ってやってくるかもしれません。もしくは、環境問題でやり玉にあがるプラスチック系の入れ物でしょうか。段ボールが普及する前はけっこう木箱に入っていたりしましたが、今ではごく一部の商品に使われている程度です。





木箱も段ボールも同じ木からできていますが、段ボールの方が遥かに便利です。大きさや硬さなどの自由度が木箱よりも格段に高いからです。また、段ボールは使い終わったら、また再利用することができます。

実際に切り刻む機械に突っ込む時は、種類を問わずに入れていました。どのみち、まとめて溶かして段ボール紙になって戻ってきますので、切り刻む時は段ボールであれば何でもいいのです。ここらへんの、国内で再利用できるという流れを作ったのは、吉田茂首相の頃だったような気もしますが、気のせいかもしれません。

段ボールは主に二つのブロックに分かれて作られます。一つ目は製板(せいばん)です。これは段ボールの表と裏(ライナー)の中芯(なかしん:ギザギザの部分のことです)をコーンスターチ(とうもろこし)でくっつけます。180度の高温で接着させます。温度が低いと剥がれて不良品になってしまいます。

もう一つが製函(せいかん)です。これは長方形の板を組み立てた時に、箱になるように切ったり、製品名や企業ロゴなどを印刷します。段ボールなので白色で印刷することもあります。製函での処理が終わったら、後は折りたたまれた状態で束ねられて、トラックで納品となるわけです。

私がやっていたのは製板の最初の方で、段ボールの裏紙と中芯を接着する機械操作でした。裏紙は組み立てた時に箱の内側となります。裏紙と中芯を接着した後に表紙を接着します。裏紙は段ボールにとって重要です。軽いものを入れる場合と、重いものを入れる場合では、段ボールの硬さが異なります。

また、レタスのように水が付着しているものでは、撥水加工された裏紙を使います。撥水は水をはじく機能を持ちます。あらかじめ撥水加工された裏紙を使うこともありますが、短い長さの場合は一時的に撥水加工することもあります。要するにコーティングするわけです。

レタスなどは撥水でもよいのですが、水に濡れても大丈夫な耐水の紙もあります。注文されたものに応じて、それぞれ種類の異なる段ボールを両面テープで接着していくわけです。ちなみに段ボール紙は裏紙、中芯、表紙とも大きなロール紙になっています。

段ボールは紙の種類によって、C3、C4、C5、C6、K6、K5、K7、K8、撥水K7(HK7)、耐水K8(TK8)のようになっています。段ボール製作はすでに各社のシェアが決まっている狭い業界なので、多分、他のところも変わらないでしょう。

Dのつくものもあるようですが、一度も扱ったことがありません。Cで始まる紙はKで始まる紙よりも柔らかめです。また、記号の後につく番号が小さいほど柔らかくなります。番号が大きければ硬くなるわけです。Kのつくものも同様です。番号で硬さを示すわけです。

アマゾンの箱は触った感じでは、C5かC6あたりではないでしょうか。レタス箱だと撥水K6あたりだったと思います。もう20年以上も前のことなので記憶があやふやですが、宅配でやってくる段ボールのほとんどはC5あたりのものでしょう。表の紙は白色だったり、特殊な色だったりすることもあります。裏紙と表紙の種類は同じだったり違ったりします。ここらへんは顧客の要望いかんです。

また、大型テレビのように重いものを入れる段ボールの場合は、二重構造(多重構造)になっていることが多々あります。私が担当していた磯和の1億円くらいの機械ではできませんでしたが、隣のレーンにあった三菱の機械では二重段ボールを作ることができました。他にもレタスなどの段ボール内での仕切りに使う片面の段ボールも、三菱の機械で作っていたと思います。磯和の機械では作ったことがないので。

ちなみに磯和の安い機械は重労働でした。三菱の数倍大変でした。どうして、こんなクソ設計したのかと思いましたが、安いから仕方ないのでしょう(権利的な問題かもしれませんが)。設計・デザインが駄目だと、労働者が痛い目をずっと見続ける(何十年も!)というのを体験したわけです。設計は一度だけかもしれませんが、労働者は何十年もしくは一生、そのデザインしたものを使わないといけないわけです。設計・デザインする人は、ここのところをよ〜く考えて欲しいと思います。

この段ボール会社。入社して一週間も勤務すればすごい、と言われるほどの仕事場です。早い人は30分で辞めていきました(1990年代前半の時代)。一か月も勤務すれば、もう凄いことです。面白かったのは学歴の高い人ほど駄目で、中卒の人が優秀すぎて、アッという間にエキスパートになってしまったという事でしょうか。

入った当初は人が数日で入れ替わるという状態で、まともに段ボールも製造できず残業の嵐でした。それでも、やがて人が入れ替わる頻度が低くなると、今度は残業がほとんどなくなるようになりました。頻繁に人が入れ替わるとロクな事にならない、というのをここで覚えました。

通販で手元に届けられ、捨てられるだけの段ボールですが、そこにもいろいろある事を、たまに思い出してもらえばいいかなと思います。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/


調べると段ボール製造について出てきましたが、以下のページが一番詳しくてよさそうでした。

https://www.ipros.jp/technote/basic-cardboard/


勤務した会社の中では、段ボール会社が一番給料が良かったかなあ。ボーナスもたくさん出たし。だいたい、それまでボーナスなんてものに、ほとんど縁がなかったというのもありますが。ただし、会社がいわゆるブラックというよりも、入社してくる人達、働いている人達がブラック過ぎたというのはあったかもしれません。

また、ネット界隈とは違った駄目さがありました。数日でいなくなるのは日常茶飯事。二日酔いでタクシー内でゲロして出勤できず、そのまま行方不明(月曜日にトンズラ!)。バイクで事故死。いきなり心筋梗塞で死亡。リフトで轢かれる(ほぼ目の前で……)、機械に耳を切られる等、いろいろでした。ちなみに火傷は当たり前なので、特にブラックな事例には含まれません。

・創って学ぼうプログラミング
https://news.mynavi.jp/series/makeprogram


・8K/4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/


・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/