◎宮脇淳子「日本人が教えたい 新しい世界史」徳間書店 2020
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198650748/dgcrcom-22/
この本は2015年に「DHCシアター」で収録し、いまも配信されている筆者の教養番組「歴史とはなにか」30分12回分をもとにしている。
師であり配偶者である岡田英弘が2001年に刊行した「歴史とはなにか」(文春新書)と、2016年に完結した「岡田英弘著作集」全8巻の内容を解説したものだという。宣伝っぽい。
近ごろは世界史がブームになっているという。本当だろうか。
「真面目な日本人が、世界のあらゆる地域における激変に直面し、これらの変化にどうやって対応したらいいのか戸惑って、過去の事例を参考にするために世界史をもう一度勉強し直そうと考えているからではないかと思います」とあとがきにある。
「正しい本当の世界史はあるのかと聞かれたら、それはないと言わざるをえません。というのも、100年後、もし誰かが世界を説明したときに、いまと同じ説明ができるとは限らないからです。歴史は未来を予測できません。常に起きたこと、結果からさかのぼって見ることしかできないものだからです」
歴史というのは、いま自分が生きている世界が、昔なにがあったからこうなったということを理解するためにある。過去の出来事から現在を意味づけて、みんなが知るために書かれるものである。
したがって、時代が変われば、そこから過去を見るわけだから、整理の仕方が変わってくる。そうすると結果が違うから、そこから見ていく説明も違ってくるが、実はそれが普通なのだという。
「神様ではなくて人間が書くものだから、しかも人間が人間の世界を説明するのだから、絶対的に正しい歴史、絶対的に正しい世界史はないんだということを、まず私たちは最初にしっかり認識すべきです」。
そういわれても、受験生は参考書を一生懸命で記憶する。正しい歴史が云々、言ってる場合じゃない。
岡田英弘が「歴史とはなにか」の結論で言っているのは、国を超えて時代を超えて、なるべく多くの人が「それはそうだよね。その説明はもっともだ」と納得するように、史料をきちんと整理して書き残すということで、それが結果的によりよい歴史になるのだという。絶対的に正しい歴史というものはない。
「私は歴史家なのに自分の仕事を否定するようなことを言いますが、歴史家がしていることは全部正しいと思ってはいません。問題点もたくさん見つかります。そういうものなのです。でも、よりよい歴史をつくる努力はできます。歴史家たるもの、嘘を見抜き、常に本当はどうだったのかといことを真摯に考えるべきなのです」と正論。
師であり夫である岡田英弘の宣伝本みたいな……。
【柴田忠男/へんしゅうちょー】