笑わない魚[220]希望を失ったときは、こう考えよう/永吉克之

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,200文字)


「門松は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」(一休禅師)

先週、51歳になって、また一歩、地獄に近づいた。私のような貧乏人が極楽に行けるはずがない。貧乏人はカネがない境遇を呪い、金持ちを怨んでいるから、それが業(カルマ)となって、地獄に落とされるのである。

しかし金持ちも、いい気になって外車を乗り回し、しょっちゅう海外旅行をしているから、それが当たり前になってしまい、車も持てず、湯河原温泉に行くこともできない貧乏人を嘔吐物のように見下していて、それがカルマを生み、地獄に堕ちることになるのだ。

また、貧乏でも金持ちでもない普通の人たちも、どっちつかずの日和見で臆病な生き方をしていることがカルマを生む結果となり、地獄に落とされるのは覚悟しなければならない。そうやって、みんなみーんな地獄に行けばいいのだ。

どっちみち1999年になったら空から恐怖の大王が降ってきて、アンゴルモアの大王を復活させたり、マルスが幸福の名の下に支配したりして、われわれはみな地獄にたたき落とされることになっているのだから、夢も希望ももたずに、それを待っていればいい。


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昨年の11〜12月はやたらと忙しくて、二件も仕事を断るという暴挙に及んだほどだったが、おかげで、その二か月間で約40万円という破格の収入を得ることができて、これで貧乏とはおさらばじゃ、それどころか年収200万円以上の、いわゆる富裕層の仲間入りも決して高望みではない、来年は税金対策も考えねばのう、ふはは、と思っていた。

しかし今年に入ってからの二か月間の収入は、約12万円と急に下がってしまった。平均すると月6万円だから年齢相応の収入だが、それが3月には5千円にまで下がり、また貧乏人に戻ってしまった。一月5千円では、食費と光熱費、新聞代だけで精一杯だ。貧乏人の星の下に生まれた者は死ぬまで貧乏人なのだ。

それと、10数年前から、今ごろのような季節の変わり目になるとよく起きるのだが、視界の端になにやらキラキラしたものが見え始めて少しずつ広がり、ついには視界全体を覆って、ものがよく見えなくなるという症状に見舞われる。

一時間ほどで治まるのだが、強い偏頭痛が残り、それが翌日まで続く。医者に聞いても、自律神経がどうだからこうなのだよ、と言うばかりで治療はしない。それが昨夜も起きて、これを書いている今もまだ偏頭痛がする。きっと一生治らないだろう。病人の星の下に生まれた者は死ぬまで病人なのだ。

蛇足ながら、私はほかにも一生つきあっていかなければならない病気をふたつ抱えている。ひとつは痛風、もうひとつは神経の疾患。何年間も毎日薬を飲んでいる。神経科の方では、セパゾン、デプロメールという薬を使っているが、これがどういう薬か、ご存知の方はご存知だろう。

ソンナコンナで、このところ厭世観と無力感に支配されていて、面白い話など書けるはずがない。休載を申し出ようかと思ったが、今年の始め、編集長に連載を隔週にしてくださいと頼んだとき「隔週にしろだと? なんだなんだ人並に忙しく働いてるみたいな口ききやがって…まあいい。そのかわり絶対に休むなよ」とクギを刺されているので、とにかく何か書かねばならない。しかし、書くからには、自信の回復につながりそうなポジティブなことを書こう!

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ずいぶん以前に書き上げてあったが、いまいち自信がなく、掲載をためらっていた『自信の根拠』というショートストーリーを、ひょっとして誉めてくれる人がいるかもしれない、そうすれば自信をとり戻せるだろうと期待してブログにアップしてみた。そして翌日にアクセス解析の結果が出るので、朝起きると、トイレにも行かず、まずそれをチェックすると、48アクセス(IPアドレス)だった。

これは、単純に考えれば、48人しか読んでくれていないということなのである。しかし、掲載したばかりで、まだ気づいていない人がたくさんいるんだなと、むりやり楽観的に考えて、その翌日また見てみると、今度は37に減っていた。コメントもついていない。よっぽど、読むに堪えない内容なのだろう。批判すら書く気にならないほど、素人丸出しの無価値なゴミなのだろう。それなら結構ということで、このブログは閉鎖することにした。

オール讀物 2007年 04月号 [雑誌]そのうち短編小説を「オール讀物」に投稿しようなんて考えて、いろいろ構想を練っていたが、そんな大それたことはやめた。早稲田実業からドラフト一位で巨人に入団した正体不明の投手が、マラッカ海峡で貨物船を襲う計画をしたものの、親類の法事と日が重なり襲撃を中止する、という学園小説だったが、やめた。完全に自信をなくしたから、やめた。

ついでに、絵を描くのももうやめた。なぜなら、いくら描いてもぜんぜんモノにならないからだ。個展、団体展含めて、これまで30回以上展覧会をしている。賞も何度かもらったが、それが「日の目を見る」につながるようないい話に発展したことが一度もなかった。だから、自分のグラフィクス作品を掲載しているサイトも閉鎖する。

この際、仕事もやめる。何をやってもどうせ貧乏から抜け出せないと思うと、働く意欲もおきないからだ。だから飯を食うのもやめる。昼夜を問わず、寝床でごろごろして餓死するのを待つことにする。どうせ失敗した人生なのだから、命など惜しくはない。それと、mixiもやめる。

【ながよしかつゆき/犬】katz@mvc.biglobe.ne.jp

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