笑わない魚[230]矛盾の起源/永吉克之

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,500文字)


神経痛が軽くなったと思ったら、今度はこの数日、めまいやだるさにつきまとわれて、起きているのが苦痛で、原稿が書けないのである。それでもなんとか1/3は書いたが、あとが続かない。結局、第228回に続き、今回も以前に他の場所で使ったテキストで、その場しのぎをさせてもらうことにした。

とはいえ、アクセス数が多い時でも80かそこらの、取るに足らない弱小ブログに載せたテキストなので、多分、まだだーれも読んでおられないはずだ。

●矛盾の起源

矛盾した発言とは、「こうしたい」という本能的欲求と「こうしなければならない」という理性的判断の間で調整がつかない時に、ポロっと口をついて出てくるものなのである。


妻を家に閉じ込めて、男はおろかオス犬にも会わせないようにしたい、というくらい嫉妬深い男が、いやいや、そんなことしたら時代錯誤なヤツと思われてしまうから、もっと進歩的に振舞わなければならない、と理性を働かせて、

「これからは、子供がいる女性でも外に出て男性と対等に仕事ができるような社会にしなければなりませんねえ」

なんて言ったりすることもあるだろうが、必ず何かの拍子に、つい「メシを作るのが女の仕事だから」と言ってしまうのだ。

その点、動物は矛盾したことを言わない。彼らの言動は常に首尾一貫している。本能に忠実で、人前を取り繕うということをしないからだ。

20年ほど以前のことになるが、オス野良ネコを「飼って」いたことがある。始めは、アパートの部屋の外で餌をやるだけだったのだが、部屋の中で食べさせるようになってから、あるとき彼が「ちょと、すいません」と言って私の脚に頭をこすりつけてきた。

「それは、私になついているという証を見せているのかね」
「ちがう。匂いつけるですので、だからナワバリわかる。ここが、ほかのネコが。習性ですので」

ネコの話す日本語だから文法がおかしいが、言わんとするところは解る。

「でも、私は人間なんだけど」
「人間もいい。柱も壁もですが。匂いつけるする。ぼくら習性ですが」
「でも、そんなことしなくても、この部屋に他のネコが入ってくることはないと思うけど」
「だから習性。それですが、お腹が空いたがですか。食べ物ください」

習性だ本能だと言われたら、そうですかと言うしかない。

●何が華か

ブログを始めた頃、友人の矢野から「君のブログには華と云ふものが無い。文字ばかりで、写真も無ければ絵も入つてゐないぢゃないか。電話帳だつて絵くらゐは載つてゐるぞ。君は絵描きだらう? 自分の作品を宣伝し給へ」とメエルで意見してもらつた。意見は有難いが、電話帳と比べられてはかなはない。

しかし「広告も入つてゐないなんて、ブログと云ふものが分かつてをらん」と訳知り顔で講釈してゐるのを読んで、少なくとも、この男も分かつてをらんと云ふことは分かつた。

成程、イムパクトの有る視覚的要素がもつと入れば、なほ見場が良く成るであらうことは想像に難くないが、悲しいかなイラストレエシオンや写真等を縦横無尽に配すること未だ不如意である。出来ないことをしようとするのは自然の理に刃向う様なものだ。したがつて、僕は今の儘が一等好きだ。例へば小説を思ふ。ギョオテやモオパツサンの小説に気の利いたイラストレエシオンが載つているのを見たことが無い。表紙の外は文字ばかりである。然るに、『若きヱルテルの悩み』には華が無いと云ふ意見は聞いたことが無い。

亦うちは浄土真宗で、父の命日には坊主が経を上げに来るが、その経本を覗き込んでみても、絵も写真もイムパクトのある広告も載つていない。珍紛漢紛な文字の列が並んでゐるだけだ。だからと云つて、此の経には華が無い等と云ふのは見当違ひも甚だしい。

●迯抂を堽する

「咫閙の一杯を罟さざれば氓珥赱ありとも冏なり」

これは春秋時代の中国の思想家、淦子の言葉である。つまり、咫閙を一杯も罟さない者が氓珥赱を持っているのは、危機を前にしながら冏いているようなものだ、という意味の歃莟だ。

淦子は欹りながら弟子たちに教えを説き、黽蚣歌を艢したという逸話が残っているほど、酥斌しい風流人だったらしいが、この匳ない言葉からは、乱世に生きた思想家の弃皈的な驥岷藺観、そして簽冱贏脯甄主義が読み取れる。

われわれ日本人が現在直面している危機といえば、喨にある政治の腥蟒状態であるが、それにもかかわらず自ら飆行しようとしない醯う気な日本の政治家たちには、綟えんすべく座右の銘に加えて欲しい网廈だ。

●メールでの会話

墨田です
もちろんOKですっ! お〜足立さんも板橋さんも参加ですか。早くお会いしたいです。では19時に噴水の前で。

荒川です
え、どうして飲み会のこと知ってるんですか? そのメール、これから送ろうと思ってたのに…。

墨田です
ふふ、ついにウチも光ファイバーにしたんですよ!

《このジョークの解説》

つまり、光ファイバーのアクセス速度があまりに速いので、荒川さんがメールを送信する前に隅田さんがそれを受信してしまった、ということが言いたいわけです。

いくら光が速くても、送信していないメールが受信できるわけがありません。そんなことができるのなら、もうメールを送信する人はいなくなってしまうでしょう。そして、

「ぼくの心の中には告白の言葉がとっくにできあがっているのに彼女に伝えることができない。せっかく書いたのにいつまでも送信しないメールのように」

といった、ちょっぴり物悲しいけど気の利いた詩は、地上からなくなってしまうかもしれません。

【ながよしかつゆき/弱小ブロガー】katz@mvc.biglobe.ne.jp
もうあまり寿命がないような気がする。べつに長生きがしたいわけではないが、これまでに行ってきた数々の罪業を生きているうちに償っておきたいものだ。

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