電子浮世絵版画家の東西見聞録[27]美術館巡りは楽しい……か?(6)/HAL_

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前回のつづき「サムソン美術館」Leeum、美術館巡り最終回です。

さて、古美術は階を昇り進んで行くに従い新しいものになってきます。一緒に行ったイーヒョンギョンは「あ、これは教科書で見た」「この水墨も教科書で」「……も教科書で」、と、教科書ずくめの感嘆ぶり。不思議な感動の言葉は韓国風なのか? まぁ、ケンチャナヨ!

最上階、古美術館が終わったフロアーから降りるのは、有名な螺旋回廊を使います。この螺旋回廊は全てのフロアーに繋がり上下を往き来できるのですが、作品を見て回るうちにいつの間にか最上階にまで到達しまっていました。そして、最上階だと気がついた時に、目の前の真っ白な壁につつまれた回廊に入るのでとても衝撃的です。


回廊の上を見上げると、鉄骨の枠に入ったガラスから雨上がりの白い空が見え、見下ろすと柔らかく明るい自然光に包まれた回廊が続きます。その回廊には螺旋の壁を縦長に四角くくりぬいた窓穴が続いています。その窓穴は壁の光を暖かみのあるやさしいベージュ色に変え、何とも印象的で、回廊は何処までも、何処までも続くかのようです。



Leeum Museum 1はマリオ・ボッタの建築です。マリオ・ボッタはヨーロッパの古典建築であるロマネスク教会に影響を受け、その地域の伝統を表現した作品が多いそうですが、この階段室はどこからイマジネーションが生まれたのでしょう。ニューヨークのグッケンハイム美術館は美術館自体が回廊になり、スロープに作品が展示されていました、青山のスパイラルもその名の通り螺旋が主役です。螺旋系はなにか人間の感性に訴えるものがあるのでしょう。私も螺旋は大好きです。

Leeum Museum 2はジャン・ヌーベル設計の現代美術展示場です。こちらはエレベーターで最上階へ行き、各階を見ながら徐々に階段を下りてくる構造になっています。上の方の階はペイント作品が多いのですが、一階には、ナム・ジュン・パイク、イー・ブル、リー・ウーハンといった韓国の作家作品が揃えられています。他にもマーク・ロスコ、フランク・ステラ、ドナルド・ジャッド、デビッド・スミス、ヨゼフ・ボイス、アンディ・ウォーホルなど海外の作品も数多く展示されています。

このミュージアムの外にはルイーズ・ブルジョア作の「mamanママン」が二体あります。入り口の右側にも見えているのですが、三階の窓から見下ろすママンは窓のフレームとその奥に広がる雨上がりの街がコントラストをなして、非常に目を引きました。会場内は撮影が無理なので、これをベストショットとしてフレーミングしていたら、係の人に注意されてしまいました。この窓からの眺めも芸術作品の一部なので、撮影許可は出せないと言うことです。でも、撮っちゃった!!



このママンは世界に6体あります。六本木ヒルズのランドマーク的存在なので、ご覧になった方も多いですよね。四階から一階ごとに降りて、現代美術を見終わる頃には、すっかり疲れが出てしまいました。パワーがいるんですよね、アートに接することは。皆さんはそんなことはありませんか?

そして最後に、一階にあるダミアン・ハーストの薬のカプセルを並べた作品「Dance of Death」には、現代に生きる人間の「生きる」ということの怖さを見せつけられました。私はサプリメントはもちろん、他の病気に対抗する薬もほとんど服用せずに生きているのですが、こんなに沢山の薬を真正面から並べられると、その奥に見えないさらなる薬の存在を伺わせ、そんな中に人間が浸っていると思うと、未来が、いや、現代が折れ曲がって来ているという事実のハンマーで頭を殴られた気がしました。

ナム・ジュン・パイクの作品は、ぐちゃぐちゃしたオブジェクト群の中に無数のモニターがあるという形をなしていますが、この形だけが作品ではなく、映像をじっくりと吸収していかなければならないのですよね。しかし、これも、かなりのパワーが必要です。

確か一番奥にあったと思いますが、スゥ・ドーホーの作品も展示されていました。床にばらまかれた数千枚の軍犬タグが、中央で立ち上がりながら民族衣装風なぴかぴかの鎧に変化する構成の作品です。これを見ると、生と死を強く考えさせられることとなり、現代美術を見ていると我が身と心を酷使するかのような気がしてきます。

帰国後に調べたら、マシュー・バーニーの「クレマスター」があったそうです。マシューバーニーは「拘束のドローイング」で知っていたのですが、映像作品「クレマスター」の方も有名で、こんな所にあったとは、勉強不足でした。ちゃんと見てみたかったなぁ。でも作品上映時間の3時間はここにいられません。いずれにしても、別の機会を待つことにするしかありません。

ゆっくりまわりすぎて、もう疲れちゃいました。ここらへんで、珈琲でも飲んでゆっくりします。と言うことで、三人でお茶を飲み疲れをいやし、この後はパワーのある夕飯を求め街へ繰り出していくことになります。

Leeum SAMSUNG MUSEUN OF ART
< http://leeum.samsungfoundation.org/eng/main.asp >


【HAL_】横浜在住アーティスト hal_i@mac.com
Web < http://homepage.mac.com/HAL_i/ >
Web < http://lohasfood.exblog.jp/ >
Web < http://Web.mac.com/hal_i/ >
Sound Drawing グループ「ZIetZ」の公式サイト
< http://zietz.hal-i.com/ >

「塗り絵で親しむ俳句の世界」(桃園書房)著者名・飯田晴山
「Shade 9 ガイドブック」BNN新社「ArtRageで絵を描こう!」BNN新社
「Photoshopバージョンブック」毎日コミュニケーションズ
「Illustratorバージョンブック」毎日コミュニケーションズ

・参考リンク
スゥ・ドーホーのインタビューと作品(designboom)
< http://www.designboom.com/eng/interview/dohosuh.html >