[2497] オジサンがネトゲやってみた

投稿:  著者:  読了時間:26分(本文:約12,600文字)


<また駅弁? いいかげんにしなさい>

■わが逃走[29]
 再び軽井沢に電車(在来線)で行きたいが、それは無理なので妄想するの巻
 齋藤 浩

■伊豆高原へいらっしゃい[22]
 オジサンがネトゲやってみた
 松林あつし


■わが逃走[29]
再び軽井沢に電車(在来線)で行きたいが、それは無理なので妄想するの巻

齋藤 浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20080918140200.html >
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どうも。齋藤です。
なにやら世の中が急激におかしなことになってきてますね。毒米事件にしろ、ゲリラ豪雨にしろ、直接・関節の差はあれど、どちらも人災であると言えましょう。

先日、私は車で群馬県は藤岡付近の一般道を夜間に走行中、とんでもない豪雨に遭遇し恐怖を感じました。ワイパーがまるで役にたたない。ヘッドライトも雨に反射してしまい、道が何も見えない。当然センターラインも見えない。前の車のテールランプだけがたよりだったのに、赤信号で離れてしまうと、もう目の前は白く光る縦線だけ。一般道なので突然人が出てくるかもしれないし、後ろから追突されるかもしれない。道がアンダーパスになっててそこが水没してるかもしれないし、川と道を間違えてしまうかもしれない。

もうこれ以上は危険、と思った瞬間ピタっと雨がやみ、路面を見ると乾いている。狐につままれた気持というよりも、異常、という感じでした。前者は自然の不思議さや科学では理解できないような現象にこそ使われるべきです。このゲリラ豪雨はあくまでも、異常。

私が幼い頃は当然として、数年前でもこんな現象はなかったはずだ。温暖化とか言ってるレベルじゃないかも。日本は熱帯になって、みんなマラリアで死ぬぞ。でも、人の手によって自然がどうにかなっちゃったということは、人の手で修復も可能だと信じたい。エラい人も私腹を肥やしてる場合じゃないぞ。

と熱く語りましたが、今回の話が温暖化やゲリラ豪雨と関係あるかといえば、全く関係ありません。まあ、関係あるとすれば、「十数年前と今との対比」ってとこかしら。

一●隣の皇太子

さて、本編です。実は私、幼少の頃ご近所の方から「隣の皇太子」と呼ばれていました。わが逃走第6回「こわい話の巻」にも書いたけど、夏になるたび軽井沢の別荘へ避暑にでかけていたからです。まあ、素敵!

私の祖父(わりとエライ学者)は当時軽井沢に別荘を所有しており、モノゴコロついた頃から20歳くらいまで、夏になると毎年遊びに行っていたのです。で、そこで何をしていたかといえば、何もしないのです。ただぼーっとしてるだけ。

そんな俺様は、ぼーっとすることに飽きるとふらふらとあてもなくそのへんの小径を散歩したのです。小川に沿ってただひたすら歩いたり、苔むした岩のにおいをかいだりとかしながら、お気に入りのコースを増やしていきました。

今でも突然時間ができたりすると、散歩するためだけに車やバイクで日帰りツアーをやったりするのですが、本音を言えば少年時代と同様に電車で行きたい。もちろん在来線で。ところが、信越本線最大の難所・碓氷峠(横川─軽井沢)が長野新幹線開通と同時に廃止され、今ではそれも不可能。

そんな訳で、今日は「もしも信越本線・横川─軽井沢間が廃止されてなかったら、こんな贅沢な旅をしたい」という妄想を語らせていただきます。

二●上野─高崎

私は10代の頃S玉県の0市に住んでいたので、軽井沢に行くには大宮駅から信越線に乗るのが常でした。特急「あさま」「白山」をはじめ、季節特急「そよかぜ」や急行「妙高」、臨時急行「軽井沢」などなど、そっち方面に向かう列車はまだたくさんあったのです。いい時代です。

いずれも風情のあるよい列車でしたが、ただひとつクヤシかったのは、始発駅からの発車を味わえなかったことです。今なら上野まで行って駅弁とビール買ってから乗るのに。

幸い現在私は都内在住なので、もしそういうことになったら絶対上野から乗る!弁当はロングセラー駅弁『チキン弁当』で決まりだ。この『チキン弁当』、パッケージは微妙にマイナーチェンジしつつも、基本構成は今でもデビュー当時と変わっていない。

ちなみに、私は小学5年生のとき初めて上野駅でこれを買って食べたのだが、費用対効果に優れたスゲー弁当だ! と思った記憶がある。なにせ当時ビッグマックが一個380円くらいした(と思う)ことから考えるに450円は激安だった。なんといっても、お子様の好物ケチャップ味のチキンライスと鶏の唐揚げのセットだしなあ。

数年前、東京駅で購入したところ、当時とほとんど構成が変わってなくて感動した。パッケージが横長に変更されていたものの、オレンジ色のチェック柄のかわいいパッケージも当時のまま。ちなみに現在の価格は800円だったかな。まあオトナだからポーンと買ってしまおう。ビールもつけてな。ふふふ。

で、まずは高崎まで行く。今なら新幹線でわずか45分だが、ここはひとつ、旅の風情を味わうってことで在来線の特急か急行で1時間半ほどかけて行きたいものだ。

ちなみに、各駅停車だとさすがに飽きる。景色もあまりかわり映えのしない関東平野だしな。オレ的にはできれば急行に乗りたい。この急行ってやつは近年どんどん数が減ってきて今では絶滅寸前になってしまったが、オレの脳内ではまだ走っている。緑とオレンジ色のツートンカラーの二つドアの列車に乗り込み、ブルーのモケットのボックス席の進行方向左側をキープして、高崎に向かうのだ。

発車と同時にビールを開け『チキン弁当』をいただく。やはり駅弁は動いている列車内で食べてこそ旨い(たまに新幹線に乗ったりすると、発車前に食べ始めるビジネスマンを見かけるが、あれはいかん。駅弁とは流れる景色との相乗効果で、よりおいしくなるように設計されているものなのだから。たぶん)。

さてこの『チキン弁当』、お子様的メニューとあなどってはいかんです。レモンをしぼった鶏の唐揚げはビールによく合うし、チキンライスは古き良き昭和の味わいなのだ。

大宮、熊谷を過ぎ、徐々に山が見えてきて、大きな川を渡って列車は高崎へ近づく。左手に高崎観音が見えた頃、網棚の荷物を下ろしたりして。

三●高崎ー横川

さて、普通にそのまま乗っていれば目的地まで着いてしまうのですが、贅沢な旅はここ高崎でいったん降りる。そしてビールと弁当を買う。さっき食べたばかりでも、オトナだからいいのだ。

高崎の駅弁といえば『だるま弁当』が有名だが、オレ的に一押しは『鶏めし弁当』。オレがお子様だったら、お母さんに「いま食べたばかりでしょ」とか言われるところだが、オトナだから関係なし。そもそも同じ鶏でも、全く味わいが別モノなんだから放っといてくれよ! と脳内母さんに文句を言いつつ堂々と購入する。

で、この『鶏めし弁当』、何が素晴らしいかといえば、まずパッケージデザインだ。古き良き駅弁フォーマット。紅白の紐で十文字に括られたタテナガの箱、そして2色刷りの掛け紙が泣かせる。視覚的にすでに美味。そして手にしたときの重さというかぎっしり感。蓋を開けなくても、ごはんとおかずが詰まってる感じが伝わるのだ。

そしてあまり本編と関係ないけど、いつも気になるのが箸袋に書かれている商品リストだ。『だるま弁当』『鶏めし弁当』『御寿司』『普通弁当』。だったと記憶している。間違ってたらごめんね。オレが気になるのは最後の『普通弁当』。いい名前じゃないか。でも、果たしてこれは固有名詞なのか、それとも一般的なお弁当の総称として書かれているのかが謎なのだ。たぶんこの先もずっと謎なんだろうけど。

世の中には、駅弁もコンビニの弁当も同じと思ってる人がいるらしい。実に悲しいことである。駅弁とは、「その地ならではの食材や料理を、いかにして旅人に楽しんでもらうか」というテーマに対する地元の方々の工夫であり回答であるのだ。

そして、それをより美味しくいただくには、列車に乗って車窓を見ながら食べるべきだと私は声を大にして言いたい。

で、列車に乗る。高崎からは快速とか各駅停車とか、そういった類のものがイイ。軽井沢までなら特急や急行とも時間的にたいして変わらないというのもあるし、安中とか松井田とか、渋い駅のディテールをじっくり観察するにも適している。

ただし、弁当を食べるのでボックス席であることは必須条件だが。そんな訳で、オレは小諸行き快速列車に乗り込んだ。と妄想する。しかもEF64が牽く14系座席車の編成。

スミマセン。マニアックな専門用語を用いています。EF64とは、電気機関車の名前です。現在ではほとんど見かけなくなりましたが、私が少年の頃はまだ機関車が客車を牽引するタイプの列車が走っていました。編成の中に動力車が組み込まれる“電車”と違い、引っ張られている感覚がシアワセ感を醸し出すのです。

14系とは、青いボディに白いラインがカッコイイ特急用客車の編成です。一般的にブルートレインと呼ばれる寝台車が有名ですが、全車座席の編成も存在しており、私は14歳の夏、軽井沢に行くときに乗った快速列車がたまたまこの14系でした。特急券も急行券もナシで、リクライニングシートに座れたことも感動モノでした。このときウォークマンで聴いていた一風堂のアルバム『ルナティックメニュー』を聴く度に、私は高崎から横川へと向かう車窓を思い出すのです。

さて、高崎駅を出発。ここからは車窓もドラマチックになるので、ビールも駅弁も一層旨くなるはずだ。発車と同時に『鶏めし弁当』の蓋を開ける。醤油味で炊き上げたそぼろご飯の香りがたまらん。鶏肉のてりやきの甘辛い味付けは絶品。そしてコールドチキンで一杯。舞茸入り肉団子で一杯。

う、旨い…とか思っていると列車は安中に近づく頃だ。安中といえば東邦亜鉛安中工場。山一個まるごとブレードランナーのセットにしちゃったようなスゲエ景色なのだ。列車は左カーブを描きながら工場をまわり込んでいく。車窓を映画のスクリーンに例えるなら、絶妙なカメラワーク。そして列車は徐々にスピードを上げ、勾配を駆け上がってゆく。さて食休みでも、と思った頃、前方に妙義山が見えてくる。横川は近い。

四●横川─軽井沢

国道18号をゆく自動車と並走しながら列車は一路横川へ。このあたりから横川駅での動きをシミュレートする。横川といえば『峠の釜めし』が有名だが、素朴で質素な『玄米弁当』も捨てがたい。立食い蕎麦のコーナーで、車内持ち込み用の容器に入れてもらって山菜蕎麦という手もある。

また駅弁? いいかげんにしなさい。太るわよ。と、脳内母さんに言われようとも無視。オトナっていいな。

釜めしのワゴンはホームの何カ所にも展開しているので購入はたやすいが、玄米弁当等を扱ってる売店も蕎麦コーナーも一カ所なので、停車前にあらかじめ近くの車両へ移動しておかねばならない。さて、どうする? 中国三千年の歴史のごとくそそり立つ奇岩群を見上げながら俺は計算するのだ。

で、いろいろ悩んだ。釜めしの香りで充満する車内でひとり蕎麦をすする、もしくは玄米弁当をいただくというのもツウっぽいが、ここはやはり基本に則って『峠の釜めし』といこうじゃないか。ということにした。なんかこう、駅弁を3個食べるにあたり、フィナーレを飾るにはやはり釜めしじゃなくちゃねー、なんて思った訳です。

横川に到着。機関車連結のため5分停車。この5分間に名物駅弁『峠の釜めし』を買って、最後尾まで行って連結作業を見るのが正しい横川での過ごし方だ。さて飲み物だけどさすがにビールはもういいや。お茶にしよう。お茶といってもペットボトルに入った奴なんかじゃないぜ。ポリ製の急須に入ってる50円の奴だ。

このようなお茶も現在ではすっかり見なくなってしまったが、オレの脳内ではまだ売ってるのだ。ちなみにオレの前の世代になると、陶器製の急須に入ったお茶が定番だったそうだ。

そういえば釜めし購入の際、電車が発車してしまうのではないかという恐怖のあまり、別添えの「香の物」を受け取り忘れたことがあったなあ。たしか小学3年生だったか。もうそんなヘマはしないぜ。もうすぐシジューだしな。えっへん。

で、無事釜めしとお茶を購入したオレは機関車の連結を見にホームの端へと急ぐ。そーなんです。ここ碓氷峠は日本一の急勾配でして、列車は自力で峠を越えられないのです。なので、峠を登る際は最後尾に電気機関車2両を連結して列車を押し上げるのです。ちなみに帰りは先頭に2両連結して、ブレーキをかけながら下りてくる。連結の際の所要時間は5分。解放に3分。これだけ停車するからこそ、乗客はホームに降りて釜めしを買いに行けるのだ。

で、連結する機関車はEF63。ここ碓氷峠越え専用に開発された超力持ち機関車だ。これが2両一組で連結される。いわゆる重連てやつだ。待機していたEF63が甲高い汽笛とともに徐々に近づいてくる。黄色いヘルメットと青いツナギの作業員が線路上に降り、手際良く連結準備をはじめる。2メートル手前あたりで一旦停止し、作業員が可動式連結器を90°回転させる。

ほんと、どうでもいい話なんだけど、列車の連結器には規格がいくつかある。そのうちのメジャーどころが『自動連結器』と『密着連結器』だ。前者は機関車や客車、貨物列車などに使われ、後者は主に電車に用いられている。ここ碓氷峠はどちらのタイプの車両も通るので、EF63には自動連結器にも密着連結器にも対応する可動式連結器が装備されているのだ。

これを連結直前に相手方の方式に合わせて切り替える。この動作がなんともメカっぽくて好きなのだ。構造が視覚的に理解できるところがイイ。

今乗って来た列車は14系客車なので、自動連結器に切り替えられた後、ゆっくりと接近し、ガチャン! という音とともに連結された。あー、いいモン見たなあ。とか思っていると発車のベルが鳴る。いよいよ峠越えだ。慌てていちばん近い扉から飛び乗るとすぐ、折りたたみタイプの自動ドアが閉じた。

──とか妄想していたら、ずいぶんな文字量になってしまった。なので今回はここまで。ほんと、どうでもいい妄想にここまでつきあってくださって感謝です。次回は車窓から碓氷の山々を眺めつつ釜めしを食う話をします。お腹は苦しくないです。妄想ですから。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
< http://www.c-channel.com/c00563/ >

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■伊豆高原へいらっしゃい[22]
オジサンがネトゲやってみた

松林あつし
< http://bn.dgcr.com/archives/20080918140100.html >
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ネトゲ(ネットゲーム)、オンラインゲームと呼ばれるものが、PCゲームの主流となって久しいのですが、みなさんやったことはありますか? ゲームなんて年じゃないけど、息子が今ネトゲにはまって困っている……というお父さんもおられるかもしれません。50歳60歳でもバリバリにネットの世界に浸っている、という方もおられるでしょう。私もAround45となってしまいましたが、やはりドラクエ、FF世代ですので、RPGの行方には興味を持っています。

そんなオジサンが、ネットゲームをやってみた体験談をお話したいと思います。ただ、ネットゲームと言っても、今ではあらゆる分野が存在します。テーブルゲーム、シミュレーションゲーム、アクションゲーム、育成ゲーム、RPG……一昔前テレビゲームと呼ばれていた頃に熟成されたゲームは、ほとんどネットゲームとして存在します。

今回はそんな中、MMORPGに絞り込みたいと思います(MMORPG=マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)。簡単に言うと、多人数参加型オンラインロールプレイングゲームですね。テレビゲームにおけるRPGと、ネットでのRPG……最も違う点は、モンスターやNPCを除くほとんどのキャラが、その世界に参加しているユーザである、という事でしょう。

テレビゲームではおおむね以下のようなゲーム展開になります。
▼プレーヤーがその世界を救うキーパーソンとなって、決められたストーリーやイベントを見つけながらキャラクターを成長させる。
▼自分を攻撃してくるのは、決められたクリーチャーや敵である。
▼物語の進行具合で数種類のエンディングが用意されている。

これがオンラインRPGになるとこうなります。
▼プレーヤーはその世界の一住民でしかない。
▼自分を攻撃してくるのは、決められたクリーチャーの他に、意志を持った敵ユーザである。
▼初めて出会う味方ユーザと協力し、クエストをこなしたり、ギルド(組合)の構成員になり、コミュニケーションを取りながらゲームを進める。
▼キャラクターはテレビゲームと同じく成長するが、決められたエンディングは存在しない。

エンディングがないのですから、いつまででもプレイすることができます。では、何を目指してゲームをするのか、という事になりますが、これは人それぞれ違うでしょう。

僕の場合、ファンタジーの世界を体感できるという楽しみに浸っています。PCの性能が良くなり、ネット環境ではADSLや光ケーブルが当たり前になった事で、リアルタイムでのグラフィックも非常に美しいものになっているのです。

僕もそれほどのめり込んでやった訳ではないので、その神髄や醍醐味をイマイチ踏み込んで説明できないのですが、このMMORPG、のめり込んだらドラクエ中毒が話題となったのと同じで、中毒症状を起こします。ですので、やはり仕事や勉強の息抜きとしてやると割り切った方がいいでしょう。

●世界観が狭い無料MMORPG

しかし、初めてこの世界を体験した時は、そんな余裕はありませんでした。かなり昔の話ですが、Shadow Bane < http://www.shadowbane.com/us/ >という欧米系ゲームが全盛を迎えていた頃です。それまで、ネットゲームと言えば「東風荘」< http://mj.giganet.net/ >というオンライン麻雀をやるぐらいだったのですが、何気なくShadow Baneをダウンロードし、フリートライアルをやってみて、ショックを受けてしまいました。

中世を思わせるファンタジーの世界にいきなり放り出され、右も左もわからない……周りの人たちはみんな英語で話している……魔物を倒せばレベルが上がるぐらいしか解らない。街を出れば、行けども行けども延々と続く草原や森、砂漠……さんざん彷徨ったあげくに、遠くに微かに城の城壁が見え始める。近づいてみたところ、突然中から出てきたキャラ(プレーヤー)に殺される。

そうこうする内、日本人にも出会うようになります。コミュニケーションを図リ、ギルドに誘われ、入隊する事になります。ここで初めてこの世界の広さと仕組みを教えてもらえるのです。

このShadow Bane、今思えば特に殺伐としたゲームだったようです。しかし、その不毛で殺伐とした世界観が良いという場合もあります。行けども行けども新たな世界が展開する雄大さと、いつ殺されるかわからないという緊迫感が、中毒症状を誘います。考えてみれば、映画「ロード・オブ・ザ・リング」も「ベオウルフ」も魔物との戦いで沢山人が死にます。そんなファンタジーフィクションの世界に投げ出される訳ですから、キャラの生死をかけた戦いもあり得るのかなと思います。

このプレーヤーがプレーヤーを殺す行為をPKと言います。ファンタジー世界の一員として、戦争や抗争での戦いなら本来の姿なのですが、これが無秩序な世界での、感情的殺戮に置き換えられてしまう場合があるのです。Shadow Baneは無秩序な無法地帯となってからは、ユーザの数も大きく減ったようです。実際、僕がプレーしていた時ですら、ファンタジーゲームの要素は消え、某アジアの大国と日本人の殺し合いになっていました。ゲームが世界観無視の、民族間抗争となってしまったのでは、ユーザが離れてしまうのはしかたのないことです。

これが、MMORPGのダークな一面です。しかし、だからといって、これが政治問題に発展するわけでもなく、それに参加しているからといって、現実社会で暴力的になるとは思えません。なぜなら、そんな世界でプレーしていても、感覚としては子供の頃の「缶蹴り」や「ケイドロ」遊びをしている感じだったからです。

相手キャラを「殺す」行為は、人を傷つけようとする感情の表れではなく、自分のゲームキャラが相手より優位に立つ事の快感……つまり、ゲーム上の勝敗を競う感情でしかありません。これはスポーツにおける勝利願望と同じではないでしょうか。ただ、一度無秩序な世界になってしまったMMORPGは復活するのは難しく、運営サイドとしては、避けたいのでしょう。

現在の多くのMMORPGは、そんな過去のオンラインゲーム社会のあり方を反面教師としている節もあります。完全にPK行為ができないようにする場合もありますし、世界観に沿った戦争以外のPKに、大きなペナルティを課す場合もあります。そして最近多いのが、PKのできるサーバとできないサーバを分けている、ユーザ選択型のゲームです。これならば、殺るか殺られるかというドキドキ感を味わいたいプレーヤーも、仲間と和気藹々クエストをこなして、キャラのレベルアップを図りたいプレーヤーも、同じゲームを楽しめます。

今現在、そういった様々なゲームが乱立してきていますが、最近の流れとして、その多くが「無料」オンラインゲームとなっています。最初、無料ってどういう事? 何かお金を取られる仕組みがあるのでは? と不信感もありましたが、どうやら、そういったゲームの多くは、キャラクターの付加価値で利益を出すようなのです。つまり、通常のキャラクターのまま物語を進めて行く限り、ずっと無料なのだけれど、何か自分だけの付加価値を付けたい、レアなアイテムを使いたい……という場合のみに、「課金対象のアイテム」を購入する事になるのです。

それは、フィールドを高速移動できる動物の乗り物だったり、特殊な形状や機能を持ったアイテムだったり、珍しい衣装だったり……という具合です。つまり、自分のキャラを目立たせたい、人と違うものにしたい、というアバター的な要素で利益を上げているんですね。

いくつか無料MMORPGをやってみましたが、そういうゲームは開発やサポートの予算や人員が少ないのか、何かもの足りません。世界観が狭いのです。事実、ある地域から別の地域に移動する場合は、ほとんど転送という手段でフォールドチェンジをしなければなりません。

●通称WoW、これぞRPGファンタジー

実は、これら無料ゲームの世界観が狭いな、と思わせる対象となるゲームがあるのです。そのゲームは欧米系の「WORLD of WARCRAFT」で、通称WoWと呼ばれています。
< http://www.worldofwarcraft.com/wrath/index.xml >

欧米系なので、基本すべてが英語です。クエストもチャットもマニュアルも、HPのTipsもすべてが英語なので、ちょっと参加するには二の足を踏むかも知れません。しかし、この世界観を一度経験すると他のMMORPGが小さく見えます。しかも、気が遠くなるほど広大な世界のほとんどがシームレスに繋がっている(ワープや転送を使わなくても何処まででも移動できる)のです。これだけ巨大なゲームとなればPCの負荷もすごいだろう、と思いきや、一昔前のビデオカードやCPUでも充分プレイできる軽さです。今はやりの、派手なエフェクトを使わない分、軽いのかも知れません。しかし、グラフィックは鑑賞に充分耐えうるクオリティを保っています(と言うより、非常に美しい)。ちなみに、MMORPGには珍しく、Mac版も用意されています。

実は、このWoWは何一つ目新しい仕組みや世界観はありません。どちらかと言えば、クラッシックな、これぞRPGファンタジーという感じなのです。にもかかわらず、有料アカウントユーザ数が1000万人……世界最大のMMORPGで常に数十万人はプレイしているという話です。何故これほどまでに大成功を収めたのでしょうか。最大の要因は、とことんまでにこだわったディテールの細かさと、ゲーム構造の重厚感ではないでしょうか。そこまでやるには徹底したサポート態勢を取っているものと思われますし、有能な開発者を集めているのでしょう。

サーバ数もアメリカ向けだけで180以上あり、その内訳として、PKサーバ、非PKサーバ他、色々なバリエーションが用意されています。PKと聞いて心配する必要もありません。このWoWは単純な「二大勢力の抗争」という図式になっており、現実社会の人種や民族間の感情的紛争には発展しづらくなっているからです。

雄大な大地と、とめどないクエスト、多様なキャラクターと多様な世界観……これだけでも体験する価値はあります。英語に関しては問題ないでしょう……クエストも最小限の単純な文章で構成されていますし、カタコトの英語でも大抵仲間にしてもらえます。コミュニケーションが苦手でも、ソロとしての活動で充分楽しめます。解らない事があれば、日本のWORLD OF WORCRAFT wikiなど、多数の日本語解説ページが参考になります。
< http://ja.wow.wikia.com/wiki/ >

それにしても、このWoWはいくらもうけているのでしょうか……有料アカウントは月額$14.99(約1,500円)です。これに1000万ユーザを単純に掛けると、ひと月で150億円の売り上げです。年商1800億円……ほとんどのユーザがダウンロードで購入しているとすれば、原価はスタッフの人件費とサーバやシステムの管理費、新たなソフトの開発費のみ。ほとんど丸儲けではないですか! 世の中すごい商売もあるものです……。

ともあれ、一度「無料の10日間トライアル版」をダウンロードして、プレイしてみてはいかがでしょうか。現実とは全く違う、新しい世界を体現できるかもしれません(ゲームは子供のオモチャという概念はここにはありません)。

※2008年9月現在、何故か日本からのクレジットカード決済ができなくなっています。サポートに問い合わせたところ、WoW US版はいかなるカードであっても、北アメリカ(オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、チリ、アルゼンチン、シンガポール、マレーシアとタイを含む)以外の国からの決済を受け付けない、という返事が来ました。アジア版としては韓国・中国・台湾版があり、その地域の言語に対応したサービスを行っています。他にシンガポール、マレーシア、タイはUS版として存在しますので、東アジアのネット環境の整った国としては、日本だけが蚊帳の外に置かれた状況です。WoWサポートとしては、世界中のユーザがプレイできる環境を整えたいとの事ですが、ゲーム内容を正しく理解してもらうために、国の言語枠を越えたサーバでのプレイは推奨していないようです。しかし、日本語版の開発と日本サーバの設置がいつになるのか、まったく計画もない状況では、我々はカタコトでも通じる英語圏でプレイするしかなく、その辺は大目に見てほしいところです。

松林 あつし/イラストレーター・CGクリエーター
< http://www.atsushi-m.com/ >
pine4980@art.email.ne.jp

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■編集後記(9/18)

・ここ2日間、飼い犬のハニー号はひとり(一匹?)でいる時間が多かった。1日目は夕方から夜にかけて約6時間、2日目は日中約8時間。1日目は段ボールで書棚などを保護した仕事部屋に入れた。2日目はテラスに。問題は雷であった。もし留守中に雷が来たらえらいことになる。こればかりは心配してもしょうがない。なるようになれ。さいわい、雷は来なかった。昨日は、朝から一騒動。8時頃、突然テラスや庭を落ち着きなく動き回って、しきりに顔をテラスのマットにこすりつける。よだれダラダラ。顔や首がかゆいのかと思い、何度もブラシをかけてやるが、効果がない。片目が血走っている。あごの下が赤くなっている。15分くらい錯乱気味に動き回り、吼えたてるので家に入れたらしばらくしてやっと落ち着いた。ペット病院に連れて行ったら(元気に歩いて)、朝の散歩の時になにかアレルギーを起こすような物質に触れなかったか、いつもと違う物を食べなかったか、と聞かれたが思いあたらない。目は結膜炎を起こしているが、これが原因ではないだろうという。目薬と内服薬3日分をもらって5000円札が消えた。目薬がなんと2000円だよ! その後も家の中で寝かせていたら、床に嘔吐した。やった覚えのない鶏肉みたいな物体も混じっていた。これでわかった。うちのバカ犬は、拾い食いをしたのだ。恥ずかしい犬だ。教育がなっとらん。その現場をわたしが見落としたのだろう。毒物が含まれてなければいいが。その後はいつもよりおとなしくしているが、傷を舐めて治してしまうように、そのうち元に戻るだろう。妻はオロオロしているが。(柴田)

・水了軒の八角弁当が好き。改札の外でも売っているのでいつでも買いに行けるのに、これを食べるのは新幹線に乗る時だけと決めている。京都を出てから食べはじめ、のんびりと車窓を見ながら名古屋までに食べ終えるのだ。他のも食べてみたいと思うのに、新幹線にはたまにしか乗らないから、結局八角なのよね。/AIG救済。サブプライムローン問題、リーマン・ブラザーズ破綻、AIG経営危機……。これでAIGが破綻したら世界恐慌になると思っていたので、少しほっとした。アメリカ頼むよ、日本のバブル崩壊によるツケはまだ続いているんだよ……。救済報道の前、アリコの代理店から電話があって、資料を送りますので一度目を通してください、と言われたので、今はちょっと、と返事していたところであった。AIG系列の他のサイトはスムーズに繋がったが、アリコのサイトは繋がりにくくなっていた。ふとAIGに関係のないアフラックにアクセスしてみたら、繋がりにくくなっていたので、皆考えることは同じなのかしら、と。(hammer.mule)
< http://www.suiryoken.co.jp/catalog/catalog.html >  八角弁当