うちゅうじん通信[35]うちゅう人の魔法/高橋里季

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私も、いい歳なんですが、「もしも魔法が使えたら」っていうのを考えるのが、いまだに好きです。

もしも魔法が使えたら、まず、理想の身体(顔も含めて)になります。魔法はね、勉強して呪文を覚えるとかではなくて、チチンプイプイで、何でも叶うのがいいなぁ。それで、まずは理想の身体。

まず素敵な鏡を用意して、どんなのが理想の身体なのか、鏡の前で気が済むまでシミュレーションして遊ぶ。で、適当なところで良しとして、素敵なお部屋も用意しなくちゃね。


とりあえず、3メートルくらいのブロンズ象の「馬が前足を上げているところ」と、それに釣り合うような竜のブロンズ像が、お部屋にはある。床は、象牙マーブルな色の大理石でピカピカで、裸足で歩くとひんやりする感じ。

壁の片面は全部が鏡。もう片面はガラス張りで、そこから庭が見える。庭には、なんだかわからない、いろいろな草木があって、気持ちの良い香りの微風が流れている感じ。庭の右手に藤棚があって、いつも藤の花が舞っている。藤棚の下に椅子とテーブル。そこから川と滝が見えて、反射した光がキラキラしているの。

藤棚の左に噴水。噴水には白鳥と人魚がたわむれる彫刻。大きいの。藤棚と噴水の間を通り抜けていくと薔薇園。ちょっとかくれんぼできそうな感じに薔薇の垣根の迷路があって、迷路には孔雀たちが歩いている。孔雀の尾を捕まえようと、子猫たちが狙っている。孔雀や猫は、噴水で水浴びしたりするの。

なにがあっても虫とかはいないし、花は咲き続けるの。自然じゃなくていいの。私は庭で宙返りなんかをして身体を動かす。あんまり、空を飛んでみたいとは思わないわ。

ここで、お部屋に戻って、おおきなベッドは天蓋つき。天蓋は白くて透ける布で、たっぷりしていて、私の紋章が刺繍してあるの。で、あとで紋章は考えるとして、とにかく、そのベッドで好きなだけ読書。読書も、本を選ぶだけで、魔法で瞬時に内容が頭に入っちゃうの。ときどき手をのばせるテーブルにフルーツ。ベッドからは、さっき考えた庭が見えて、時々、孔雀と猫も見える。

照明は、私が眩しくない位置に、いつもひとりでに移動する小さめのシャンデリアがいくつも宙に浮かんでいる。庭からは明るい日差し。私は好きなだけ太陽を浴びて、紫外線対策は魔法で、お肌を何度でも作りなおすからいいんだわ。

読書に飽きたら、私は考えごとをします。一羽のカラスを魔法で出現させるの。このカラスが見たことは、私の部屋のパソコンに映し出されるの。パソコンもね、ちょっと水晶玉みたいなデザインがいいかな。魔法っぽくね。スイッチとかは、なくても、私が必要な時にいつも、必要なことができる感じで。

カラスに旅をしてもらう。それで、カラスからときどき、助けてあげたい情報が来る。「魔法でなんとかしてあげて。」って、カラスから連絡が来たら、魔法で誰かを助けてあげる。

あんまり、助けてあげるのが良いかどうかは考えない。私のカラスに見込まれたのが、運のツキかもしれないし、幸運かもしれない。私のカラスが、少し、世界の悲惨を見ていてくれれば、私は安心して読書ができる訳なの。

今日は、初恋の手助けをして、昨日は大きな火事を魔法で「なかったこと」にして、明日は戦争をひとつ終結させる。実った初恋の裏で失恋する子がいて、火事騒ぎがなかったせいで、近所では家庭内暴力で誰かが死んで、戦争が終わって死刑になる人もいる。そんなこともあるかもしれない。

カラスは、いろいろ見て、たまに私のところに帰ってくる。カラスは、また、旅に出てくれるかなぁ。カラスは、私に言うかもしれないわ。「自分だけ魔法で贅沢三昧でズルイ。」って。そうしたら、また、私は少し考えごとをしよう。

魔法でピカソや尊敬する偉人を呼び出して、いろいろ相談してみようかな。とりあえず、家族は欲しくないし、恋人もいらない。仕事もいらない。魔法が使えるのなら、完全自給自足だわ。

【たかはし・りき/イラストレーター】riki@tc4.so-net.ne.jp

・高橋里季ホームページ
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