[4555] セーラー服おじさんが指数関数(ねずみ算)をやさしく解説◇シンギュラリティの泣き所

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《日本語でしかものを読まない蛙(かわず)、大海を知らず。》

■Otaku ワールドへようこそ![278]
 ねずみ算のひざが笑う
 GrowHair




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■Otaku ワールドへようこそ![278]
ねずみ算のひざが笑う

GrowHair
https://bn.dgcr.com/archives/20180420110100.html

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曽呂利新左衛門の「一文の倍増し」の話をご存知だろうか。新左衛門は豊臣秀吉の側近だった。元はといえば刀の鞘師だったが、刀がそろりそろりと抜けるもんだから、このあだ名になったんだとか。

あるとき、秀吉が病に臥せり、日に日に悪くなっていく。折悪しく、盆栽の松の木が枯れてしまう。「俺ももうおしまいだ」と弱気になる秀吉。

そこで、新左衛門が歌を詠む。「御秘蔵の常磐の松は枯れにけり 千代の齢(よわい)を君にゆずりて」。俺の身代わりになってくれたのか、と気をよくした秀吉は回復する。

お礼を取らせたいので、望むものはないか、と秀吉。答えて新左衛門が言ったのが、一文の倍増しである。一日目は一文をもらう。二日目は二文をもらう。三日目は四文をもらう。前の日の二倍、二倍ともらって、これを一か月間よろしく、と。

欲がないな、と最初は笑っていた秀吉。ところが、これがどうなるかというと……。10日目には512文になる。20日目には524,288文になる。30日目には、なんと、536,870,912文になる。約5億文。それまでにもらった分と合わせれば、約10億文である。

詳しくはこのへんで読んでみてください。
http://www.t-bunkyo.jp/library/minwa/archives/heraherabanashi/text/30.html


指数関数には油断禁物ですよ、って教訓。複利で借金したら、なかなか返せないでいるうちに雪だるま式に膨れ上がっていくのも、やはり指数関数の仕業である。

イメージでいえば、しょぼしょぼしょぼしょぼぶわぁあああ、みたいな感じ。この「しょぼしょぼ」が「ぶわぁ」に転ずるポイントは「指数関数のひざ」と言われている。英語でいえば、"the knee of an exponential function" である。

……まあ、嘘は言っていない。新左衛門の屁理屈じゃないけど、「言われている」の用法が、「月にうさぎがいると言われている」とか「雷サンがへそを取りにくると言われている」と同じです、ってだけのことで。はい、そんなものはありません。

●しょぼしょぼぶわぁの錯覚

「指数関数」という呼び名が難解そうな響きを帯びているならば、「ねずみ算」と呼び替えてもいいのですが。その概念自体は、上で見たように、秀吉の時代からある古典的なものです。

それほど日常的に取り扱うものではないにせよ、現代においても多くの人々が、多少なりとも知っているのではないでしょうか。油断してると雪だるま式に膨れ上がっていく、あの恐ろしいヤツでしょ、みたいな感じで。

で、イメージとして「しょぼしょぼぶわっ」な感じを思い浮かべるのはごもっともです。「しょぼしょぼ」で油断させておいて、気がついたら「ぶわっ」と膨れ上がっている魔物。

なにごとも用心するに越したことはないので、そんなイメージで捉えておくこと自体は悪いとは言いません。

しかし、たとえて言えば「夕立が来ると急激に気温が下がるので、うっかり薄着してお腹を冷やさないようにしましょう」とストレートに言うよりも、「雷サンにおへそを取られないように隠しとけ」と言い換えたほうがロマンがあっていいよね、くらいの話です。

科学的な視点から冷静に客観的に鑑みると、指数関数は「しょぼしょぼぶわっ」ではないし、「しょぼしょぼ」から「ぶわっ」に転ずるひざなんてもんはありません。それらは多分に感覚的なものにすぎません。

1円ははした金です。2円もはした金です。4円もはした金です。8円もはした金です。この調子でどこまで行ってもはした金なのかと思いきや、30日目には5億円に化けています。5億円ははした金ではなく大金です。

どこかの時点で、はした金が大金に化けたのではないかと思いたくなります。けど、それは感覚的なものであって、実際にはそんなポイントはありません。

毎日毎日2倍、2倍と着実に増えていっているだけで、どこかでドカンと10倍や100 倍になったわけではありません。試しに並べて見てみましょうか。

1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256, 512, 1024, 2048, 4096, 8192, 16384,32768, 65536, 131072, 262144, 524288, 1048576, 2097152, 4194304, 8388608, 16777216, 33554432, 67108864, 1342117728, 268435456,536870912, 1073741824,...

たしかに最初ははした金で、最後は大金ですけど、どこで潮目が変わったかと言われると、「ここ」と示すのが難しいのではないでしょうか。

では、グラフを描いて、視覚的に捉えてみるとどうなるでしょう。

Google のサイトへ行って、検索窓に y=2^x from 0 to 30 と打ち込むと、一文の倍増しのグラフが描画されます。便利な世の中になりました。

これをキャプチャした画像を下記のところに置きました。
http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR180420/Graph2x_from_0_to_30

見ると、xがゼロから18あたりまではグラフがX軸にへばりついていて、xが18のあたりで上昇し始め、xが24のあたりで、ギュイーーーンと急上昇に転じているようにみえるかもしれません。では、この24という数字は、倍増しのグラフにとって、なにか特別の意味をもったものなのでしょうか。

このグラフを眺めるとき、気に留めておくべきことがあります。それは、y軸がものすごーく縮めてあるということです。

このグラフでは、xが27の手前ぐらいでyが表示枠の上部を突き抜けて、見えないところへ去ってしまっています。

それは、yが0から10億までの間を表示しているからなのです。xが27のときにはyは1342117728で、10億を超えているので、表示範囲外に出てしまっているわけです。

それでも、xの範囲が0から30までであるのに比べれば、yの範囲は0から10億までなので、ものすごーくがんばって縮めてあります。

もしがんばらずに、xのスケールと同じようにyのスケールを設定したら、どうなるでしょうか。

xの0から30までの幅が、仮に10cmぐらいに表示されているとすると、yの0から10億までの高さは、3333kmぐらいになります。富士山を882個積み重ねた高さ分ぐらいですね。

そんなの表示してみることもできないし、仮に表示できたとしても上のほうは遠すぎて見えないでしょう。

では、まったく同じグラフについて、Y軸のスケールの縮め方を緩和してみたらどうなるでしょう。これならできない話ではありません。

先ほどGoogleで表示したグラフは、ありがたいことに、左上に小さな拡大・縮小ボタンがついていて、表示範囲が変えられるようになっています。そのままプラス、マイナスを押すと、X軸もY軸も同時に拡大・縮小されてしまいます。

Y軸についてだけ、すでにギュギュっと縮めてあるのを湯戻しするには、まず、右脇にあるボタンを押し、上下矢印を選択した上で、マイナスを押します。

これをキャプチャした画像を下記のところに置きました。
http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR180420/Graph2x_from_0_to_30_02

これを眺めてみると、現実にはY軸の縮め具合を緩和したのに、見かけ上はグラフが左方向にスライドしたようにみえます。つまり、xがゼロから13あたりまではグラフがX軸にへばりついていて、xが13のあたりで上昇し始め、xが19のあたりで、ギュイーーンと急上昇に転じているようにみえるかもしれません。

Y軸の縮め具合をもっと緩和すれば、グラフが急上昇に転じる位置は、もっと左にずれていくに違いありません。

結局のところ、グラフを眺めてみることによって、どこで急上昇に転じるのか、そのポイントを視覚的に見つけ出そうとしても、それはY軸のスケールをどれほど縮めて表示するかに依存して変化してしまうので、特定することができない、ということになります。

先ほど考察したように、X軸、Y軸とも同じスケールでグラフを表示しようとするのであれば、xが27のちょい手前ぐらいまで見えるようにするだけでも、横幅10cmに対して、縦の高さが3333kmにも及ぶものになります。

このスケールで表示したとき、このグラフはおそらく「しょぼしょぼしょぼしょぼぶわぁあああ」という感じにはなっていないと思います。

xが右へ1進むごとにyが2倍になっていく、という不変な関係性がどこでも成り立っていることが見え、「しょぼしょぼ」が「ぶわぁ」に転じるような特別な点はどこにもないのが分かるのではないでしょうか。

我々は、頭の中で一文の倍増しのグラフを想像するにしても、高さが3333kmにも及ぶものを思い浮かべるのは難しいので、自動的にY軸を縮めて考えるようになっているようです。

そうすると「しょぼしょぼぶわぁ」になっているような気がしてくるのであって、言わば、錯覚です。

指数関数にまつわるこの錯覚について、ことさらに取り上げようと思ったのは、話がシンギュラリティに絡んでくるからです。

●シンギュラリティの泣き所

例のアレです。技術的特異点(Technological Singularity)。コンピュータの知能が人間のそれを追い越す時点を指して言います。

言い出しっぺはレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏です。もし彼がインドの山奥で修行してきた霊媒師か愛の戦士のようなものであれば、真面目に話を聞く必要はないのかもしれません。しかし、意外にも、と言っちゃ失礼ですけど、ちゃんとした人です。

人工知能研究の世界的権威です。発明家としては、OCRソフト、フラットベッド・スキャナー、シンセサイザー、文章音声読み上げマシンなどを開発しています。マサチューセッツ工科大学を出ています。2012年にGoogleに入社しています。

二流三流四流五流の社会評論家かなんかが、「何をくだらないこと」と笑い飛ばそうとしているようですが、その手の評論家よりもカーツワイル氏のほうがよほど頭がいいので、ちっとも響きません。

1999年、著書『The Age of Spiritual Machines: When Computers Exceed Human Intelligence』で「収穫加速の法則」を提唱しています。

ひとつの重要な発明は他の発明と結びつき、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速することにより、科学技術は直線グラフ的ではなく指数関数的に進歩するというものです。来ましたね、指数関数。

「ムーアの法則」というのがあります。大雑把に言えば、コンピュータの性能は、1年半ごとに2倍になるというものです。テクノロジーが指数関数的に進歩している実例です。今に終わる終わると言われながらも案外続いています。量子コンピュータの登場により、ムーアの法則が上側に崩れる可能性さえ出てきています。

人工知能だって、そんな進歩のしかたをしていくに違いありません。今現在の人工知能は、はっきり言って、まだまだショボいです。確かに、「深層学習(Deep Learning)」は非常に大きなブレイクスルーで、これにより、機械による画像認識の精度に革命がもたらされました。自動車の自動運転が実用レベルに近づきつつあるのも、これのおかげです。

しかし、それでもまだ、掃除や炊事や買い物を代行してくれる、ツンデレ美少女メイドロボットは実現していません。もう二つ三つブレイクスルーがないと、だめなのかもしれません。

ただ、一方、今現在の人工知能がまだまだショボいのを見て、人工知能ってしょせんこんなもんなんだね、と結論づけてしまうのは、非常に危険です。指数関数の「しょぼしょぼ」のところだけを見てナメていると、後で「ぶわぁ」が来るぞ、ってわけです。

20年くらい前、コンピュータ将棋が出始めたころ、まだまだたいへん弱っちょろいものでした。内藤國雄九段はこれを「コン君」と呼び、馬鹿にして笑い飛ばす記事を将棋雑誌に書いてました。残念でしたね。20年後にどんなことになるか、あの時点では、まったく予見できていなかったようです。

いまや、トップクラスのプロ棋士といえども、「Ponanza」や「elmo」や「Google Alpha Zero」にまったく歯が立ちません。時代の大転換が起きる小さな兆候を目の前にしているのに、その先の先が予見できていないのがたいへん恥かしい。先を読むのが将棋指しでしょうに。

かく言う私もやらかしています。30年くらい前のことですが。大学生のパソコンオタクが2台のパソコンを用意して、RS-232Cというケーブルで両者をつなぎました。一方のパソコンのキーボードから打った文字列が、もう一方のパソコンのモニタに表示されました。

私は横から眺めていたのですが。正直、「それがどうした」と思っちゃいました。あのときあれを見てインターネット時代の幕開けを予見できていたなら、私もフューチャリストとしての素質を自慢できるネタになったものを。いま、それをものすごーく反省しています。

とてつもない変化が起きるには、まずきわめて小さな予兆があるはずで、その予兆自体が大したことないからといって笑い飛ばしてはいけません。今回、言いたかったことは、これに尽きます。特に指数関数をナメてはいけません。

カーツワイル氏の収穫加速の法則も、そこを言っているわけです。ところが、カーツワイル氏は、たった一点だけ、ちょっとつんのめりすぎました。指数関数にはひざがあると言ってしまっているのです。

シンギュラリティなんて起きるわけがないと、否定したがっている輩が世の中にわんさかいる中で、カーツワイル氏ともあろう切れ者が、わざわざ論敵にツッコミどころを提供しなくたってよかろうにとたいへん残念です。

シンギュラリティ論の防衛戦において、指数関数のひざは、弁慶のすねみたいなことになっている気がします。

2008年、カーツワイル氏は、ピーター・ディアマンディス氏とともに、「シンギュラリティ大学」を立ち上げました。名称に大学とついてはいても、独自の校舎もなければ、学位の授与もありません。エリート起業家や経営者向けの教育プログラムを提供する公益企業です。

2017年12月8日(金)、京都西陣にある「Impact Hub Kyoto」にて、『Singularity U EXPONENTIAL TALKS @ Kyoto』が開催されました。私は特にエリートではなく、ただの変態ですけど、興味があったので聴講してきました。なにしろカーツワイル氏が立ち上げた組織のイベントで、タイトルに「指数関数的」とあるので、これは聞いてみたくなります。

もちろん、本人が出てきてしゃべったわけではありませんが、技術の進歩が指数関数的であることが話されました。この中で、指数関数のひざについて、いまだに言及していたのです。いやぁ、さすがにそろそろ取り下げるか、そうしないにせよ、感覚的な比喩であって、客観的に定義できるものではないことを一言断ってくれればよかったのに、と思いました。

まとめると、こういうことになります。シンギュラリティ自体は、起きるかもしれないし、起きないかもしれません。そこには議論の余地が大いにあります。そう簡単に否定しきれるものではなく、笑い飛ばして済ますことのできる問題ではなさそうです。

特に、人工知能の現状だけを見て、起きるはずがないと即断するのは、指数関数の「しょぼしょぼ」の部分だけを見て「ぶわぁ」が来るのが見えていないようなものだという可能性があり、あぶなっかしい感じがします。どっち側の立場につくにせよ、真面目に、慎重に議論する必要があると思います。

指数関数のひざについては、感覚的なものにすぎず、客観的に定義できるものではないということを押さえておいたほうがよろしいかと思います。ただし、指数関数におけるひざの存在を否定したからといって、シンギュラリティが起きる可能性を否定したことにはならない点に注意が要ります。

●ひざはありまーす!

STAP細胞の話みたくなってアレなんですけど。まともな学術界では存在しないのが定説とされてきた指数関数のひざなんですけど、なんと私が見つけちゃいました。ひざは、ありまーす!

私が見つけた、と言っても、自力で考えて見つけたというだけの話であって、人類初のことだと主張しているわけではありません。これに限らず、何かおもしろいことを思いついたと思ったら、とりあえず検索をかけてみるに限ります。たいていのことは、誰かが先に思いついています。

あと、日本語で検索かけてひとつもヒットしなかったとしても、安心してはいけません。英語でも検索かけてみましょう。

話はちょっと脱線しますけど。これ、チョー恥ずかしいんで、内緒にしといてください。

すごくいいことを思いついたので、特許を出願しました。出願するときは、もちろん、同じアイデアに関する先行文献がないか調査します。無事に審査を通過し、特許が成立しました。

後になってたまたま見つけたのですが、Wikipediaに書いてありました。英語の。マジで変な声、出ましたよ。

でも、これ、通した審査官も同罪ですね。一度成立した特許に不服を申し立てるには「特許無効審判」というのを起こさなくてはならず、手続きや証拠集めがたいへん面倒です。お願いだから起こさないでね。

こういう目に遭ったとき、気づくことがあります。えっと、言っちゃっていいですかね? 日本語でしかものを読まない蛙(かわず)、大海を知らず。世界に流通する情報のうち、どれだけの割合が我々日本人の耳に届いているか。事実上、日本は情報鎖国状態です。

気になったので、新聞記者の人に聞いてみました。ホントは若い記者たちをどんどん海外に出して、取材してきてもらいたいんだけど、お金がなくてできないんでしょ? 図星でした。

世界の潮流からたった一か国だけぽつんと取り残され、沈没していくニッポン。極貧国への街道をまっしぐら。あわれですね。

話を戻して、「指数関数のひざ」について、日本語で検索をかけたのではひとつもヒットしません。身体のひざに関わるものが出てくるだけです。

ところが、英語にして "knee of exponential" ぐらいで検索かけると、ちょろっちょろっとヒットします。例えば、これとか。
http://www.kazabyte.com/2011/12/we-dont-understand-exponential-functions.html


この稿に私が書いたのと同じようなことが述べられています。グラフを眺めることでひざの位置を視覚的に特定しようと思っても、Y軸のスケールの取り方によって、急上昇に転じるポイントは違って見えますよー、と言っています。

あるいは、こことか。
https://www.reddit.com/r/singularity/comments/1zly8d/we_have_approached_the_knee_of_the_exponential/


シンギュラリティにまつわる「我々は指数関数的成長曲線のひざに到達しているのか?」という質問に対し、みんなで寄ってたかって意見を述べています。

指数関数のひざは主観的なものであって、客観的に特定できるものではない、だからカーツワイル氏は間違っている、したがって、シンギュラリティなんて来やしないんだ、と述べている人がいます。

指数関数のひざについて、カーツワイル氏がうかつなことを言ってしまったのは私も同意見ですけど、それを指摘したことをもって、シンギュラリティの到来可能性そのものを否定したことにはならない点には注意が要ると思います。

さてさて。いちばん肝心なのは、これです。
https://math.stackexchange.com/questions/690677/is-there-a-name-for-the-point-of-a-exponential-curve-where-the-y-axis-significan/690682


「指数関数において、yの値が急上昇するポイントに呼び名はありますか?」という質問に対し、みんなで寄ってたかって答えています。

それの呼び名は「ひざ」と呼ばれているけれども、主観的なものであって、数学とは関係ない概念である、と述べている人がいます。

別のある人は、大雑把な経験則ではあるけれど、と控えめな断りを入れつつ、指数関数のひざとして数学的に定義可能な非常によい指標があると言っています。私のとまったく同案で、ひざとして特定された位置の計算値も一致していました。

その値は、これです(※)。

  x = - (1/2) log(2)

※ 指数関数の底は、自然対数の底eの場合です。一文の倍増しのときのように、底が2のときは、ここに書き出したら柴田さんが発狂するくらい、グロテスクな式になります。対数関数の中にまた対数関数なんて形、初めて見ましたよ。

これ、負の値になっていることには注意が要ります。つまり、Y軸のスケールを縮めない状態でみるならば、指数関数のひざはY軸の左側、つまりxの負値側にあるってことです。正値側だけをみるのであれば、ひざはどこにもないという従来の定説とも矛盾しません。

Y軸を縮めると、ひざが右に寄っていく現象も、数式的に説明がついています。対数関数の中身が1を超えるとき、符合が反転し、ひざがY軸の右側に出ていきます。

投稿日時は2016年4月9日(土)1:38am でした。ううむ、負けた。2年ほど遅かったか。

どこに目をつけたかというと、曲率半径の最小値です。これを説明し始めると長くなりそうなので、割愛しますけど。

結論。曲率半径を最小化する地点をもって「ひざ」と定義するのであれば、指数関数にひざはあります。いちおう自力で発見しましたけど、私よりも2年ほど早く見つけてる人がいました。日本語ではまったく情報が出てきません。

●定額計算よりも人間的な定率計算

余談ですが。雪だるま式に増えるばかりが指数関数ではありません。じりじりと減っていく指数関数もあります。増える指数関数をY軸のまわりに鏡像反転しただけのものですけど。

10万円の月給をもらったとしましょう。次の給料日まで30日間、これをもたせなくてはなりません。均等に日割りするとすると、1日あたりに使えるのは、3.3333...%であって、金額にすると、3,333円です。

これって、つまらなくないですか。なんか、機械的な感じがします。人情としては、もらった直後はついつい気が大きくなって、ぱーっと使いたくなります。後で切り詰めりゃいいや、と。

さきほどの3.3333...%よりもちょいと大きめの率を設定します。勇気ある人は10%でもいいですけど、だいたい5%ぐらいがよろしいかと思います。給料をもらったその日は、5%を使っちゃいます。それは5,000円に相当するので、残りは、95,000円になります。

翌日は、それの5%を使います。4,750円です。残りは、90,250円です。翌日は、それの5%を使います。この調子で、1日に使える金額を徐々に徐々に減らしていくのです。表にまとめてみました。
http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR180420/Table180420

グラフにすると、こうなります。
http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR180420/Graph180420

これ、すごくないですか? 初日に多めに使っているにもかかわらず、後で倹約することにより挽回していき、月末には21,464円も残っています! まあ、最終日に使えるのは、たったの1,130円になっちゃいますけど。

ついでなので、Excel表も置いておきますね。
http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR180420/Budget180420.xlsx


定率計算のパーセンテージを変えたりして、遊んでみてください。10%に設定するとどうなるでしょう。最終日に使えるのが471円しかない上に、4,239円しか残りません。

20%に設定すると、初日に使える2万円と最終日の31円とのギャップがたまらないですね。

逆に、3.3333....%に設定すると、月末に36,166円も残ります。ご自身の性分に合ったプランを設計するのがよろしいのではないでしょうか。

給料日の後にうんと倹約しておいて、貯金できた分を次の給料日の直前にぱーっと使っちゃう、なんて人はあんまりいないようですかね。給料日前は居酒屋とか空いてていいんですけどね。

新左衛門の頓知話に比べるとやけにみみっちい話になりましたが。


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/



《中国の経済誌のウェブ版にインタビュー記事掲載》

中国の経済情報メディア『第一財経』からインタビューを受け、4月18日(水)、ウェブサイトに記事が掲載された。中国語だ。
https://mp.weixin.qq.com/s/G4GlHxGIXHwM9HsbhxuDcw


日本人あるいは日本に関わりが深い人で、個性的な考えの持ち主100人をピックアップしてインタビューする企画らしい。私はその6人目ということ。

私は中国語が読めないのだけど、Google翻訳にコピペしたら、そうとう不完全ながらも、大まかな意味ぐらいなら取れる。経済誌なので、人工知能研究のことなど、硬めの話もしてみたのだが、その話題もちゃんと掲載されていてうれしい。

経緯は、2015年に遡る。11月27日(金)配信分のこの欄に書いている。
『フォトジャーナリズム専攻の中国人留学生、セーラー服おじさんを撮る』。
https://bn.dgcr.com/archives/20151127140100.html


11月1日(日)に張 徽慶(きけい)氏からメールをもらっている。張氏は当時、早稲田大学大学院政治学研究科の修士課程一年で、フォトジャーナリズムを学ぶ学生であった。授業の課題として、写真を撮らせてくださいという依頼であった。指導教官は、ドキュメンタリー写真家の会田法行先生。

会田先生のゼミ生は3人いて、うちもう一人も中国人だった。王◎(いく:日の下に立)さん。張氏が私を撮るとき、何回か王さんもついてきて、撮ってくれていた。

2017年3月に二人とも修了し、その後のことは知らなかったのだが、王さんが第一財経に就職していた。今年の4月2日(月)に久々に王さんからメールが来て、用件は取材の依頼であった。

4月8日(日)に行きつけの喫茶店でインタビューを受けた。それから近所の公園に場所を移して写真を撮ってもらった。桜の時期が過ぎていたのが、ちょっと残念だったが。

記事では、B面の写真も使われている。以前に王さんに撮ってもらったものである。撮りっぱなしで終わるのかと思いきや、有効活用できたのはお互いにとってラッキーだった。

これまでオタク系のイベントに呼ばれて、中国に行くことはよくあった。けど、ステージ上であいさつ程度のトークをしたり、お客さんたちと一緒にゲームをしたりするのが役目で、硬い話題でじっくりとしゃべる機会は全然なかった。

今回の記事で、がらっと違う側面が表れているのが、どのように受け止められるのか、ちょっと楽しみだ。イベントの来場者と経済誌の読み手じゃ、層もぜんぜん違うだろうし。今までのとぜんぜん毛色の違うイベントに呼んでもらえるようになったりしないかなぁ。


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編集後記(04/20)

●算数が苦手だ。数学がわからない。GrowHairさんの原稿は、セーラー服おじさんのときは楽しみながら整理しているのだが♪ 数学者のときはかなりつらい。正直言って、ほとんど理解できないのだ。いかにも楽しげに書かれているが、わたしには悪魔の所業のように見えてしまうである。いや、ホントに。

小中学校の時は、体育と音楽以外はよくできるお利口さんであった。本人が言うのだから間違いない。半世紀以上前だが、当時都内の難関進学校二つにあっさり合格していた。ところが、お気楽浦和西高校に行ってからは数学で挫折した。梨元勝が同級生(彼は一年留年したから年上)、後輩に武盾一郎がいる。

ここで何度も書いているが、二年、三年への進級時に数学の追試を受けた。男はいつもの二人組で、女子はたくさんいた。たぶん全員進級できたと思う。事前に数学の先生から、この問題を出すから答えを覚えろ(とは露骨に言わなかったが)というような特訓を受けたからだ。さすがに二年連続は恥辱だった。

だから数学は不倶戴天の敵であった。それを作ったのは自分自身である。数学の授業中はつらかった。予習復習もしていなかったし、せっかく入手したアンチョコも有効に活用できない。サッパリ理解できない。だから、なるようになってしまった。自業自得である。いったいその頃は何を考えていたのだろう。

今年1月、わたしも所属する市の条例推進委員会で、主に高校生を集めて「若者が、まちについて思っていることを発表」するイベントを開いた。わたしは昨年末の委員会で、この企画に大反対していた。「高校生はそんな退屈なものに関心はない。わたしは漫画とエロい本に夢中だった」と言って顰蹙をかった。

わたしは(さいわい)用事があって、そのイベントに参加しなかったが、やっぱり残念な集客だったようだ。わたしは「セーラー服おじさん、戸田市役所で講演するってよ」という対案を出したが、その時点では遅すぎた。GrowHairさんにOKをもらい、自信満々のプレゼンだったが逆転勝利はできなかった。

というか、委員会でセーラー服おじさんを知っているのは、若い市役所職員一人だけだった(唖然)。わたしがプロデュースするから、日本のどこかの市町村で「セーラー服おじさん、○○で講演するってよ」若い人向けのイベントやりませんかねえ。集客に自信あり。申し込みはデジクリまで。って、GrowHairさんの承諾をとらずに、勝手に言っているだけなんですが……。 (柴田)


●「一文の倍増し」という話だったのか。子供の時に雑誌で読んで、今でも覚えている。紙を何回折れるか(月までの距離)という話とセットで。/5%すごい! 最終日に苦しむ分、初日が楽しくなりそう。

/マユ子ハナ子続き。他のことをしている時、一週間ぐらい経ってから、いきなりふと「あの時、こう返事すれば良かった」などと思うこともある。なぜ急に思い出すのがわからないのだが、脳は一週間処理していたのだろうか。

美容室も大の苦手。ついつい先延ばしにしてしまう。何を話すか考えると苦しくなる。当たり障りのない会話なんて、天気ぐらいしか思いつかない。

ある時、「サンタさんは来ましたか?」と聞かれた。世代ギャップなのか、私がこの手の会話を知らなさすぎたのか。たぶん全員に聞いている枕詞のようなトークなのだろうけど、私には理解できなかった。

どうしのいだのか覚えていない。でもきっとトンチンカンな回答をし、甥らの話になったように思う。その日の夜に、あれは「恋人はサンタクロース」なことなのではと頭をよぎり、レベル低いのに気づいてよ〜と。気の利く会話なんて無理だよ〜。マユ子ハナ子ならわかってくれるはずだ。 (hammer.mule)

第10回 空堀ワークショップフェス 4/21〜29
https://karahori-ws.jimdo.com/workshop/

「ものづくり」「食・健康・美容」「体験」