[4894] 大型台風の前◇チュンジくん失踪のこと◇Mobility as a Service

投稿:  著者:  読了時間:21分(本文:約10,200文字)



《MaaSって知ってますか》
 
 ■装飾山イバラ道[256]
 大型台風の前
 武田瑛夢

 ■Scenes Around Me[61]
 オブスキュアのメンバー、チュンジくん失踪のこと
 関根正幸

■crossroads[75]
 和歌山で大雨に降られてMaaSのことを考えた
 若林健一



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■装飾山イバラ道[256]
大型台風の前

武田瑛夢
http://bn.dgcr.com/archives/20191105110300.html
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台風の前の夕方、私はまだ雨もさほど降っていない時間帯から、東京の渋谷にいた。今日は、都内在住の私のあの日前夜について、ほぼ記録に近い内容。

ランタンを買いに渋谷の大型電器店に行くと、既に売り切れのようだ。空っぽのワゴンが悲しい。乾電池式のスマホ充電器が少量入荷したとの売り場の人の大きな声で、一つを手に取って乾電池と共に買う列に並ぶ。このタイプの充電器は、周囲のお店ではほぼ売り切れだという。

ランタン代わりに、サイズ違いのLEDライトも幾つか購入した。一人づつ持てるようなミニタイプも移動時に役立ちそうだ。

3.11の後に購入したランタンは、既に劣化していたので処分した。代わりのランタンを買うのを忘れていたのは、ノド元過ぎればなんとやらで反省している。新しいものを買ってから捨てるべきだった。

なぜそんなに焦っていたかというと、その日に英会話で話したニュージーランド人の情報によるものだ。日本で暮らす外国出身者にとって、あの日の台風の大きさは驚異だったようだ。彼からいつもの明るさを奪っていた。

渋谷の駅前、風が強い。スクランブル交差点に立っていると、ビルに付けられた看板などが大丈夫か心配だった。広告用の色々な板があちこちにくっつけられた街だということを、この日再確認する。グレー色の空の下、普段気づかない場所までじっくりと見渡す。

●グルメだけではないデパ地下

デパ地下では、パン屋に長蛇の列ができていた。私も実はパンを目指して寄ったのだ。「忘れずにパンを買わねば」もしも停電になったら、電気やガスを使わずに食べることができるパンは助かる。

SNSでは、近所のスーパーやコンビニの、パンの売り切れ情報が出回っていた。全国どこでもパンの棚が空っぽの写真。

不思議なことに、まだ駅ビルのデパ地下のパン類には在庫があった。列が長いということは、買うものがあるということだ。商品棚にも色々なパンが、けっこうある。すると、店の奥でパンを作っている人々が見えた。ギリギリまで焼きながら出していたようだ。ありがとうございます。

スーパーやコンビニは工場で作ったパンを車で運ぶので、品不足になるのが早かった。事前に決めた量しか出荷されていないからだ。規模は小さいけれど、作る量を増やして対応できる点で、デパ地下も頑張っていた。

今後に備えて、明日以降のパンを多めに買っている人もいたけれど、中には一人分のサンドイッチだけという人も。危機意識や備えは人それぞれなのだ。長蛇の列にいると、つい観察眼と想像が巡ってしまう。少し長く保存できそうな、フランスパン系も人気だった。

焼きたてのパンは良い香りで、すぐにでも食べたい気分になる。その時のためにとっておくべきだと自分に言い聞かせて、今晩の夕食の弁当を買う。なんだか今晩は、ガスで調理する気分がすっかりとなくなっていたのだ。

●無駄だとは思わない

家に帰って、買ってきたものをテーブルに並べる。充電器にロングケーブルに、乾電池とライト。夫に、これらのほとんどは既に家にあると言われた。気持ちが慌てていたようだ。食べ物だけは嬉しそう。夫は私と違って、危機に無頓着なのがかえって助かる。

私は何かしておかないと足りなくなりそうな不安で、買い物が多くなりがちだ。しかし、私もこれについてはそう反省はしていない。まったく使えないものはないし、イザという時にどれがどう役に立つかは、実際のところよくわからないものだからだ。

その後、台風をリアルタイムに可視化できる天気系のアプリを沢山iPhoneに入れて、雲の動きを見ていた。嘘のように大きな渦に、日本列島が飲み込まれていくような映像。風の向きの矢印や、雨の量の色分けがすごい。

天気系のアプリはどれがいいのかわからないので、とりあえず入れていたら、アラートがうるさくてまいった。こういうものは、必要最小限の方がいいようである。

「東京防災」のアプリも入れた。黄色が華やかでサイのマスコットが可愛い。しかし、演出が多すぎて緊急時の気分には、少々合わない気もした。おそらく余裕のある時に使うものなのだろう。

いや、もしや、本当に困った時でも、このくらいの可愛いアプリの方が気分が紛れる効果があるのかもしれない。

実際の台風が上空を通り過ぎる時には、風の音が今まで聞いた中で一番強かった。可視化アプリでは一番濃い色ではなかったものの、あの時だろうというのが後でわかった。うちの周辺は停電はなかった。

朝になってテレビの情報で被害の大きさが明らかになっていく。情報収集と判断のタイミング。情報発信する番組も少ない、夜の間に来る台風は本当に恐怖だった。

【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/

その後、ランタンをネットで注文。ソーラータイプで人気のものだ。電池で点くものとダブルで用意しておけば、安心だ。かなり周囲を照らせる明るさで、ものすごく軽いし、パワーの残量も見える。普段も使えそう。

・キャリー・ザ・サン-CARRY-THE-SUN
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07RN1C9F1/dgcrcom-22/


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■Scenes Around Me[61]
オブスキュアのメンバー、チュンジくん失踪のこと

関根正幸
http://bn.dgcr.com/archives/20191105110200.html
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私は、2008年頃からオブスキュアに行かなくなりました。

というのは、コーキくんと安彦さん以外の初期メンバー(鷹野くん、ハッチ、チュンジ)は、この頃までにオブスキュアを去っていたからでした。

https://live.staticflickr.com/65535/49008521741_9e181da0fd_c.jpg

写真は、2001年の元日、山梨県に日帰りで温泉旅行をした際の集合写真。後列中央に写っているテニスコーツの2人が住んでいた家の庭で撮影しました。後列右から二番目に後述するチュンジくんが写っています。



特に、鷹野くんがいなくなってからは、オブスキュアに出向くことはなくなりました。

とはいえ、後からオブスキュアに参加したエルエムさんたちとは交流があったため、鷹野くんがいなくなってからも、私はしばらくオブスキュアに出入りしていました。

しかし、知らないメンバーが増えていくにつれ、私はオブスキュアに遊びに行くのに気を使うようになったのだと思います。

オブスキュアに顔を出す回数は次第に少なくなっていきました。



豪徳寺の時もそうでしたが、都立大学(目黒区中根)の時も、オブスキュアは二階建ての一軒家を借りて共同生活を送っていました。

一階は共有スペース兼応接間、二階は住人の個室になっていました。また、2004年1月にフレハブ小屋が離れとして庭に設置されました。

https://live.staticflickr.com/65535/49007990538_42ba863423_c.jpg

写真はプレハブ小屋の基礎を作っているところで、青いツナギを着ているシンヤくんが、不要になったプレハブ小屋をもらい受けた、と記憶しています。後に、離れにも人が住むようになりました。



オブスキュアは、しばらく顔を出さない間にメンバーが入れ替わっているという印象があり、私は、鷹野くんやハッチがいつオブスキュアを出たのか覚えていません。

しかし、チュンジくんがいなくなったことは、私も当事者になってしまったこともあり、よく覚えています。

チュンジくんがオブスキュアから居なくなったのは、2001年2月でした。同じ日に知人の結婚披露宴を兼ねたライブイベントがありました。

私は前の日の晩、オブスキュアで行われたパーティーに顔を出し、そのままオブスキュアに泊まりました。

翌日の昼頃、散歩に付き合うことになり、コーキくん、安彦さん、鷹野くん、チュンジくんと出かけました。

その時どういう道を歩いたか詳しくは思い出せませんが、環七から三間通りに入り、荏原駅近くの寺にお詣りし、そこから立会道路を円融寺方面まで歩いたようです。

円融寺から環七に出た時、チュンジくんは沿道にあるトイレに入りました。

その時、チュンジくんは少し思い悩んでいる様子でしたが、コーキくんは気にせず、「こういう時のチュンジはすぐに出てこないから」と言って、そのままオブスキュアに戻ろうとしました。

私は、ライブイベントの会場に直接行っても良い時間だったので、コーキくんたちとそのまま別れました。

チュンジくんを見たのはその時が最後でした。



ライブイベントは、江古田のライブハウスで行われました。会場は地下だったのですが、当時の私の唯一の連絡手段だったポケベルの電波は、地下には届きませんでした。

翌朝になって、ポケベルにオブスキュアの電話番号が入っていることに気付いて、オブスキュアに電話しました。

電話には鷹野くんが出ましたが、鷹野くんから、その時間にはポケベルに電話していないこと、そしてチュンジくんがオブスキュアからいなくなっていることを聞きました。

おそらく、ポケベルに連絡したのはチュンジくんで、私にお金の相談をしようとしたとのことでした。

チュンジくんはオブスキュアにほとんど居候状態で、払っている家賃も僅かだったと聞いています。

しかし、下北沢で看板持ちのバイトをする以外、仕事らしい仕事をいていなかったため、チュンジくんはお金に困っていたようでした。

最後に相談した私に連絡がつかなかったため、絶望してオブスキュアからいなくなったのかもしれません。



オブスキュアでは、チュンジくんは自分の命を絶った、と思われていました。

遺体らしきものはありませんでしたが、チュンジくんは自分の遺体が絶対に発見されないような方法を知っていて、それを実行した、という話でした。

チュンジくんには、それができてもおかしくないと思われるくらい、ミステリアスな部分がありました。

以前に書いたかもしれませんが、1998年9月に駒場寮でアリテンの更新が認められなかった際、面接で寮委員から「チュンジって何者?」と質問があったことを覚えています。

私の印象では、チュンジくんは飄々としていましたが、やる時はやりそうだと他人に思わせるところがあったのかもしれません。



そんな訳だったので、10年くらい後に、チュンジくんが沖縄で元気に暮らしているとわかり、個人的にはホッとしました。

あの時、もし私に連絡が付けられたとしても、貸せるお金はわずかだったと思うし、チュンジくんがいなくなるのは時間の問題だったかもしれません。

しかし、自分のせいでチュンジくんがいなくなったとなると、あまりに後味が悪いからでした。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://sekinema.com/photos

1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔


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■crossroads[75]
和歌山で大雨に降られてMaaSのことを考えた

若林健一
http://bn.dgcr.com/archives/20191105110100.html
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こんにちは、若林です。

前回、和歌山の串本で開催された NASA Space Apps Challenge の話題に触れましたが、その串本までの道のりで大雨になり、乗っていた電車が途中で運行中止になってしまうという経験をしました。

私は奈良に住んでいますので、串本へ行く場合は一度大阪へ出て、天王寺から串本へ向かう経路になるのですが、特急を利用するかしないかで、料金と所用時間が次のように変わります。

特急利用あり 運賃:約6,000円 所要時間:約3時間半
特急利用なし 運賃:約4,000円 所要時間:約5時間以上

特急利用なしの所要時間時間を5時間以上としているのは、乗り継ぎの関係で時間帯によっては7時間以上かかることがあるためです。

差額の2,000円が特急料金というわけですが、2,000円で少なくとも1時間半は節約できるということになります。

私はこの1時間半を節約したくて特急を利用しましたが、この日和歌山南部は台風並みの大雨で、電車は白浜駅で止まってしまったのです。

雨量計が基準を超えたため、列車の運行を中止する。再開はいつになるかわからないという状況でした。

白浜駅で降りた私たちは、振替輸送のバスに乗り換えて串本を目指し、特急で行った場合の到着時間の30分遅れで串本に到着、特急料金は全額払い戻しとなりました。

つまり、私たちは30分の時間と1時間弱の特急旅行の利便性を失い、鉄道会社は白浜以降までいくはずだった乗客の特急料金全額と、バスの手配にかかる費用を失ったと考えられます。

乗客の私たちは30分余計にかかりはしましたが、特急料金の払い戻しを受けた上で、特急を利用しなかった場合よりも1時間早く着くことができたわけですから、逆に得したという考え方もあります。

一方で、鉄道会社の方は受け取れるはずの特急料金を返上したうえに、振替輸送のためのバスまで手配しなければならないので、単純に考えると損をしたように見えます。

ただし、鉄道会社はこういった事態を織り込んだ上で事業設計をしており、料金設計をしているはずなので、丸々損をしてはいないはず。こういったケースも想定して、私たちが通常通り利用する時の料金にリスク分が加算されているはずです。

これは鉄道会社に限ったことでなく、企業は自社サービスや商品の価格にリスク分を上乗せしているのが普通です。

もちろん大雨がなければ、そのリスク分を使うことはなかったのですから、まったく損をしていないわけではありません。

とはいえ、鉄道会社がまるまる持ち出しているということでもなく、鉄道会社と利用者(該当路線以外の利用者も含む)でリスクを分担して背負っていると考えられます。

■ MaaS(Mobility as a Service)とは

暇だったこともあって、振替輸送のバスの中でそんなことを考えていたら、ふと "MaaS" という言葉が頭に浮かんできました。

"MaaS"とは "Mobility as a Service" の頭文字で、複数の交通を利用する移動をひとつのサービスとして提供するというものです。

たとえば、奈良在住の人が自宅から東京ディズニーランドへ行くことを考えた場合、以下の交通手段を利用することになります。

自宅からもより駅までバスもしくはタクシー
もより駅から京都駅まで近鉄
京都駅から東京駅まで新幹線
東京駅から舞浜駅までJR在来線

今は、これらの料金をバスもしくはタクシーなら降車時、近鉄とJRはそれぞれの乗車時に支払います。

MaaSの世界では、すべての移動がひとつの移動として扱われ、ルートを決めた時点で、トータルの料金を一括で事前に支払います。

スマートフォンの乗り換え案内アプリで、自宅から目的地のまでの経路を検索し、選択した経路にかかる費用をその時に、スマートフォンから支払えるみたいなイメージです。

この時に支払う金額は各交通機関の料金の合計ではなく、あくまでも出発から到着までのひとつの料金という考え方になります。

旅行代理店が提供するパック旅行みたいなものですね、自分だけのパック旅行をスマートフォンアプリで作ることができるという形になります。

つまり、利用者はバスがいくら、近鉄がいくら、新幹線がいくらということを意識する必要はありませんし、知ることもできません。

MaaSをざっくり説明すると、スマートフォンアプリで自分だけのパック旅行を作って利用できるサービス、そんな感じになります。

MaaSになれば、利用する日時によって料金を決めることができるので、パック旅行が季節によって料金が変動するように、同じ区間でも季節や時間によって料金を変動させることができるようになります。

最近認可されたタクシーの事前確定運賃サービスも、これに近い考え方のサービスです。

タクシーの事前確定運賃サービスがスタートします~タクシーを使いやすく、安心して利用できるようになります~
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000312.html

今までのタクシー運賃は、降りるまで料金が確定しませんでしたが、事前確定運賃サービスだと乗る前に料金がわかるので、安心して乗ることができるというものです。

タクシー料金は単純に距離だけでは決まらないので、事前確定運賃の金額も利用する日や時間帯によって変動するのだそうです。利用者が多い時間帯や、道路が混んでいる時間帯は高く、利用者が少ない時間帯、道路が空いている時間は安くなるのかもしれません。

鉄道は時間帯に関係なく、同じ区間なら料金は一定ですが、MaaSが導入されれば利用者が少ない時間帯は安くなり、利用者の多い時間は高くなるといった料金設定が行われるようになるでしょう。

MaaSのようなサービスが導入されて移動の考え方が変わると、今回のようなケースの対応についても変わるのだろうなぁと、暇なバスの中でぼんやりと考えていました。

■ MaaSで交通が変わる

現在の交通網における、リスク分散の方法は限られています。

しかし、MaaSのシステムと天気予報のデータを組み合わせれば、電車の止まる可能性が高い日は料金を思い切り安く設定し、その代わり振替輸送などの手段に切り替わっても返金はありません、といったサービスの組み立てができるようになります。そんなリスク分散の方法も取れるようになるでしょう。

安くなくてもいいから快適に移動したいという方向けには、振替輸送もバスじゃなくてタクシーとか、優先的に案内されるといったサービスの組み合わせも可能になります。

お金のない若い人は前者を、比較的お金があってゆったり旅行を楽しみたい年配の方は後者を、それぞれ選ぶようになるかもしれませんね。

フィンランドがMaaS先進国として知られているのですが、フィンランドでMaaSを展開するMaaS Global社が日本への参入を決めていて、日本でも急速に普及することが期待されています。

災難ではありましたが、ゆっくりと考えごとをする時間になり、思いがけなくMaaSに対する理解が深まったように思います。

普段の生活が大きく変わる予感のするMaaS、なんだかとても楽しみになっていました。

Whim 日本上陸決定!
https://whimapp.com/jp/package/coming-to-japan/


【若林健一 / kwaka1208】
https://crssrds.jp/aboutme/
子供のためのプログラミングコミュニティ「CoderDojo」
https://crssrds.jp/CoderDojo/

mBotをただの車型ロボットで終わらせない本
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編集後記(11/05)

●偏屈BOOK案内:高山正之「変見自在 習近平と朝日、どっちが本当の反日か」

2015年の「習近平よ、『反日』』は朝日を見習え」を4年後に改題した文庫本。反日の先生は朝日だったが、どっちもどっちになった。今でも朝日の捏造や誤報は枚挙に暇がなく、まさにお家芸。産経の高山正之は、若手記者にあまり手本にしてほしくない、と一部上層部が思うほどの「平成最後の無頼派記者」だが、多くの朝日新聞現役記者に読んで欲しい、と後輩の福島香織が解説で書く。

「英語を話す人たちの程度を知ろう」が痛快。終戦後に日本に来たニューズウィーク」記者某が、日本人が1万の漢字とひらがな、カタカナ各50文字を使って読み書きしていると聞き驚く。アルファベットの400倍もの分量だ。26文字しかないアメリカの識字率が60%だから、日本の識字率はコンマ以下だろう、日本の文盲はGHQの進めるローマ字化で新聞が読める日が来る、と書いた。

GHQの32歳の教育局員は、ローマ字化で馬鹿な日本人を救えると思った。文部省は日本人が文盲かどうか、まず漢字テストをやってくれと頼んだ。48年8月、無差別抽出の17,000人がテストを受け、結果、識字率98%、アメリカ人のそれを35%以上も凌ぎ、担当者は馘首。戦後日本は、アルファベットまで包摂した。

むしろ仮名をもたず、漢字だけの中国人の方が困っている。民主主義という言葉を「徳莫克拉西(デモクラシー)」と書いたが、意味が分からない。日本が「民主主義」と表記するのを待ってそれを取り入れた。適応力のある戦後の日本人は「ページ」「ID」などを、英語のまま使い出した。困った中国は「日本人は優れた漢字表記に立ち戻れ」と、朝日新聞をつかって宣撫工作を続けた。

国際法規では降伏するとき、白旗を掲げたうえ、この艦の持ち主は貴方ですという意味で「船尾に降伏した相手国の海軍旗を掲げる」のが形とされている。先の戦争で日本と戦ってもいない韓国が、「侵略の象徴」とかいって、旭日旗をやたら毛嫌いし、因縁をつける。それは勝手だが、いつか日本との海戦のとき、旭日旗を掲げないと降伏とみなされず沈められてしまう、ンですよ。

「日本軍はこの世の現実とは思えないほど強かった」とヘンリー・ストークス『英国人記者が見た 連合国戦勝史観の虚妄』にある。「プリンス・オブ・ウエールズ」は英国の誇る無敵の超々弩級の戦艦である。それを日本は、予想もしない航空機攻撃で沈めてしまった。英国は香港・九龍の奥やマレーに堅固な要塞を築き、軍事常識では3カ月は持つ堅塁だったが、日本軍は1日で落とした。

白人世界ではそんな強い敵と過去に戦ったことはなかった。英国の国立陸軍博物館が歴史上の陸戦のうち、何が歴史的、政治的に重要だったかアンケート調査を行った。110人の投票者は、ノルマンディ上陸(27票)、ワーテルローの戦い(24票)に大差をつけた54票で、日本軍相手のインパールの戦いを選んだ。理由は「どの白人国も勝てなかった日本軍を英軍が破った」から、だった。

福島香織が外信部の先輩記者から、外信でどんな仕事をしたい? と聞かれたとき、ずっと憧れ意識し続けてきた高山正之の名前を出して、「取材もできてコラムも書ける、あんなオールマイティの特派員になりたい」と言いかけると、「おっと、その名は不吉だ! 入社面接で口にしたらぜったいに落ちる」と口をふさがれた……というのは半分冗談だというが、さもありなん。(柴田)

高山正之 変見自在 習近平と朝日、どっちが本当の反日か 2015 新潮文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101346003/dgcrcom-22/
最後のページに小さく「改題した」と記すのは姑息だ〜 別の本かと思った


●ランタン、想像しているのと違った。/チュンジくん。最後まで読んで良かった。/Whimのニュースレターに登録した。

/「れもん、よむもん!」続き。今のママさんたち、おしゃれだよね。ネイルやまつげなんて昔は気にしなくても良かったんだよ〜。サザエさん方式の同居がいいよ〜。保育所なんてなくても、会社に保育施設があるとか、仕事しながら横で子供の面倒が見られるようにするとか……。

ネットだと、選んだ情報が届きがちで、友人や知りあいは近い価値観だろう。違う価値観をぽぉーんと放り込むのって、意識しないと難しいよ。いい出会いがあるといいね。

とは書いているものの、新しい世代は新しい解決策、方向に進むんだろう。仕事バリバリ、家庭ほっこり、子育てを楽しめるような。退職しても簡単に戻れるようになったり、保育支援が進んだり、血の繋がっていない人同士でコミュニティを作ったり? 仕事の仕方自体が変わるかもしれないし。続く。
(hammer.mule)

れもん、よむもん!
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07GZR273K/dgcrcom-22/
老眼の方にはKindle版をおすすめします……