[1939] 確かなことは何もない

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1939    2006/03/17.Fri.14:00発行
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   1998/04/13創刊   前号の発行部数 17887部
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<何だオマエラ、中に小さい人間入ってるのか>

■映画と夜と音楽と…[284]
 確かなことは何もない
 十河 進

■Otaku ワールドへようこそ![24]
 賢いヤツは人間並み? 文鳥のこと
 GrowHair


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■映画と夜と音楽と…[284]
確かなことは何もない

十河 進
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●吉祥寺のテントで「ツィゴイネルワイゼン」を見た

ひと月ほど前、一年前に退職したHさんの妹さんから会社に電話をもらった。用件は、Hさんが入院したので健康保険の手続き関係の確認が必要になったということだった。その一か月ほど前にHさんからは、優雅なリタイア生活を送っているというメールをもらっていたので驚いた。

そのとき、電話口で妹さんに「初めまして」と言われ、一瞬迷ったが「はい」と挨拶し余計なことは言わず、そのまま用件に入った。兄の突然の入院で頭がいっぱいになっている人に「実は、初めてじゃないんですよ」と昔話をしても仕方がない。迷惑に思われるだけだろう。

あれは1980年の五月のことだったと思う。僕はHさんと夜遅くまで呑み、彼の実家に泊めてもらったことがある。翌朝、僕はお産で実家に帰っていたHさんの妹さんに会った。生まれたばかりの赤ん坊を抱いた姿がとてもきれいだった印象が今も残っている。

「兄がお世話になりまして…」とにこやかに挨拶されたが、酔っ払って深夜に勝手に付いてきた、二日酔いの頭を抱えた身としては肩身が狭かった。洋服も着たまま寝たのでしわくちゃだったし、頭もぼうっとしていた。書物とレコードが溢れかえったHさんの部屋の隅に身を隠したい気分だった。

もちろん、四半世紀も前のそんなことを憶えている方がおかしい。しかし、僕は鮮やかにその場面を浮かべられるのだ。その日、僕は朝食をご馳走になり、そのままHさんとふたりでバスで吉祥寺へ出て、パルコの屋上に設置されたテントで「ツィゴイネルワイゼン」という映画を見た。

もしかしたら、それが目的で僕はHさんのうちに泊まったのかもしれない。若い頃、Hさんとはよく呑んだが、実家に泊まったのは一回だけだ。どちらかと言えば彼の方が我が家に泊まることが多かった。阿佐ヶ谷の頃もよく泊まったし、綾瀬に引っ越しするときには手伝いにきて初日から泊まった。

それからも何度か我が家には泊まったから、うちのカミサンは未だに会社の中でよく知っているのはHさんだと言う。しかし、その後、僕もあまり一緒に呑まなくなり、Hさんは一年前に定年まで何年か残して退職してしまった。

辞めてから数か月たって会社に現れたHさんは「国立劇場で歌舞伎を見てきた」と言って僕にパンフレットを見せてくれた。歌舞伎にはずっと通っていた人だが、最近は文楽にまで守備範囲を広げたらしい。

音楽はオペラを含めてクラシック・コンサートやジャズもよく聴きにいっていたが、「ジャズ・ライブはもう躯がついていかなくて…」と、歳だから…という顔をしてつぶやいた。相変わらず、本と音楽と演劇と映画で生きている人だった。

そんなことを思い出すと、やはりあの日は呑んでいて「清順の『ツィゴイネルワイゼン』を見にいこう」と盛り上がったに違いない。ふたりとも熱心な鈴木清順ファンだったし、日活をクビになり70年代にはほとんど映画が撮れなかった清順さんが何年ものブランクの後に撮った作品だったからだ。

●テントの中で異世界を垣間見た

後に「ツィゴイネルワイゼン」は各種の日本映画ベストテンで軒並み一位になり、それまでは熱心な一部のファンにしか知られていなかった鈴木清順の名を一躍、有名にした。しかし、最初の公開はテントであり、そこでしか見られなかったのだ。

その日、僕は初めてテントで映画を見た。テントといってもかなり立派なもので、映写室もきちんと作られスクリーンの状態もよかった。映写機の音が聞こえないように配慮されている感じだった。ただし、外からの音も聞こえてくるし、映画の音はテントの外に漏れていた。

吉祥寺パルコの屋上で見たのは間違いないのだが、最初は東京タワーの下でテントを張っていたような記憶がある。何かの事情で移ったのだろうか。「ツィゴイネルワイゼン」のヒットで、翌年、清順さんは「陽炎座」を作り、同じように代々木公園に設置されたテントで公開する。

「陽炎座」も僕はテントで見たが、何となく「ツィゴイネルワイゼン」を見たときのテントより大きくなっていたような気がする。「ツィゴイネルワイゼン」を見たテントは座席数も少なかったように思えるのだ。

あのとき、僕はHさんと並んで椅子に腰を降ろし、妙にワクワクしていた。久しぶりに見られる清順映画への期待が大きかったのはもちろんだが、テントという異質な空間にいることが作用していたに違いない。そして、異世界に入っていく感覚は映画の始まりと共に深まった。

真っ暗な背景に桜吹雪が舞うタイトルバックからサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」がかかる。雑音が混じる古い盤のようだ。画面はそのまま蓄音機にかけられたレコードのアップになる。奇妙な人の声のようなものが聞こえる。

──きみ、何か言ったかね。
──いいや。
──変だな、君には聞こえなかったね。どっかで人の声がしたんだが…

そう会話する藤田敏八と原田芳雄の声がスクリーンの外からかぶさる。そこから、まさに清順さんのワンダーランドが始まるのだ。異世界としか言いようのない、不思議で、不可思議な世界が展開されていくのだった。

「ツィゴイネルワイゼン」は、登場人物たちが生きているのか死んでいるのか、次第にわからなくなってくるような映画だ。確かなことは何もない…、見終わるとそんな感慨だけが心を占める。

サラサーテが何か喋ったのがそのまま録音されたレコード、しかし何を言っているのかはわからない。そのことが何かを象徴しているような、思わせぶりな会話ばかりが飛び交う。この世のことに確かなものは何もない。

●すべてが曖昧なままで何も完結しない世界

スペイン風邪が大流行した頃だから大正時代だろう。陸軍士官学校の独逸語教授である青地(藤田敏八)は、旅先で同僚の中砂(原田芳雄)が漁師の妻を殺した容疑で警官に逮捕されようとするところを救い出す。中砂は漁師の妻とねんごろになったが、女がついてくるのを「邪魔だ」と邪険にしたら、女が勝手に海に飛び込んで死んだのだという。

このエピソードでは、中砂(原田芳雄)が女を海に突き落としたのか、女が自分から飛び込んだのかわからない。「でも、半分はきみが殺したようなもんだね」と落ち着いた低い声で語る青地の言葉が耳に残る。響く。染み込んでくる。

その後、毒を服んで自殺した弟の葬式を出した芸者(大谷直子)を「弔い帰りの芸者か。面白いじゃないの」と座敷に呼び、青地と中砂は酒を呑む。そこへ聞こえてくる三味線。目の見えない年寄りの男、若い男と若い女の三人が門付けをしているのだ。

「男がふたりに女がひとり、考えてみると危なっかしい関係だな」と中砂が言うと、「親子だよ。父親と息子と娘だ」と青地が答える。芸者が「夫婦ですよ」と割って入る。「年寄りと若い女が夫婦、若い男は弟子なんです」と言うが、結局、その三人の関係はわからない。はっきりした関係なんてわかるわけがない、とでも言いたげに曖昧なままにされる。

「ツィゴイネルワイゼン」のメインストーリーはこの後から始まるのだが、すべてが曖昧なままに進んでいく。青地の妻(大楠道代)の妹は死の床に就いているのだけれど、もしかしたらすべては彼女の幻想なのではあるまいか、という気分が途中からし始める。

妹の病室に中砂と連れだってやってきた青地の妻は、中砂の目に入ったゴミを舌でなめて取り除く。「私の意識がなくて、見えていないと思ったから、お姉さまはあんなことをなさったのだわ」と妹からそのことを聞かされた青地には、それが事実なのか妄想なのかわからない。

青地は妻が中砂と寝ているのではないかと疑うが、青地自身、中砂が旅行で留守の時に中砂の妻(大谷直子の二役)に誘われるまま座敷に上がり酒を呑む。その後、彼女と肉体関係を持ったのかもしれないのだ。それは曖昧に観客に提示され、思わせぶりな映像とセリフが奇妙に深い世界に見る者を導く。

何もかも確かなものなんてない、とニヒリスト鈴木清順は言っているのだ。清順さんの「無思想の思想」には、どこか山田風太郎に通じるものがあり、山田風太郎が自身の死さえ達観していたように、死生を超えた視点を感じる。結局、人は無に帰ってしまうのだという無常観が漂うのである。

──そうか、あの映画はそういうことを描いていたのか。

Hさんの妹さんの電話で甦った思い出は「ツィゴイネルワイゼン」につながり、改めてその作品の本質を理解したように僕は思った。見た当時の僕はまだ二十代の若造で、耽美的な映像に惑わされてしまったけれど、あれから何度か見直す機会もあり、長い時間を経た後にようやく霧が晴れたような気がした。

Hさんも、あの日、一緒に「ツィゴイネルワイゼン」を見たことを憶えているだろうか。「三歩あるいたらすべて忘れてしまう。鶏の頭ほどの脳みそしかないから」と酔うとよく言っていたHさんは、自ら「鶏頭斎」と名乗った。その号を朱印にし、蔵書に押印していた。

それにしても、あの時、Hさんの妹さんが抱いていた赤ん坊は、もう二十五歳を過ぎたのか、という想いが不意に浮かんだ。昔、Hさんが、よく姪自慢をしていたことを思い出す。五十代の後半までずっと独身を通したHさんは子供もなく、入院すると面倒を見るのは妹さんだけなのかもしれない。

再び赤ん坊を抱いた妹さんの姿が浮かんだ。同時に、恐縮する若き僕自身の姿も…。やがて、長い長い時間が過ぎ去ってしまったのだ、と思い知らされた。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
最近、推敲が足りない。時間がない、という言い訳はあるが、そんなものは通用しない。先週も文章的におかしいところがあった。配信されてから気付いたから後の祭りだ。それに「シネマ・ヴェリテ」が「シネマ・ヴゥリテ」になっていた。気を付けねばと、反省しきり。

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賢いヤツは人間並み? 文鳥のこと

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●手抜きします……

今回は、ライターのプライド捨てて、人の文章を丸ごと拝借する。提供して下さったのは、札幌在住の乱子さん。去年の6月、人形の話を書いたとき、共感を表明するメールを送ってくれた、デジクリの読者である。

乱子さんは20体以上の人形を所有しており、それぞれにまつわる物語を創作してウェブサイトに載せている。王宮に住む人形たちということで、魔法世界のしくみ、国の地理、町の人々やモンスターの生活、城の構造、各人形の職業や性格に至るまで、こと細かに設定がなされている。

人形のほかにも、香水や文鳥など、興味は広い。しかも、深い。一般にオタクというのは、自分の好きなことについて語り出すと止まらなくなるという特性があるけど、乱子さんも例外ではなく、mixiの日記でも語る、語る、語る。これがまた面白い。

特に文鳥の話は、その方面にとんと縁のない私でも引き込まれた。できれば全文紹介したいところではある。分割して掲載すれば、4回分ぐらいは手抜きできるし。だけどそれでは連載タイトルを「文鳥ワールドへようこそ」にしなくてはなるまい。大なた振るって、1回分にまとめた。

では、どうぞ~。

●おでんの香り

文鳥を5羽飼っています。桜文鳥をひとつがい飼っていたら、2羽繁殖し、さらに白文鳥も加わり。文鳥飼い歴は20年くらいになるのでそれなりに知識も蓄えてきたつもりなのですが、ひとつ解せぬことがありました。

今いる白文鳥…白さん(アダ名。本名はバニラ=ジン=ラヴィアンローズという/アホか)は、匂いが「変」なのです。洗いたてのシーツのようなイイ匂いがするのです。さらに時々、メイプルシロップのような香りが。

普通、文鳥はおでんに似た「だし汁の匂い」がします。冬場のコンビニで「あ、文鳥のにおい…」と思うのは文鳥飼いのサガだと思います(多分)が、これが、文鳥の通常の体臭なのです。

後日、ふとん売り場で判明しました。それは「高級羽毛ふとんの匂い」だったのだと。(笑)「お湯でよく洗われた羽毛」の匂い。白さんは潔癖症なのか粘着なのか、浄水機通した水を張ったガラスびんで日に5回も6回も7回も水浴びします。それで、清潔な「高級羽毛ふとん」の匂いになっていたのです。

しかし…時々メイプルシロップの匂いがする謎がまだ解けません…。メイプルの木材を使った雑貨でもあるのか…。蜜をどこかで舐めてるんじゃないと信じたいが…。(汗

●素質と育て方でべた慣れにもクールにも

鳥を飼ったことのない人に文鳥を飼っている、と言うと、何故かほとんど「死なない?」と聞かれます。(笑)

生き物だから死にますよ…って話じゃなく、「すぐ死んじゃわない?」って意味だと思いますが、…ハイ。最初に脅しておきますけど、下手な飼い方をすると死にますよ。野鳥はつかんだだけでショック死することもあるといいます。小鳥やネズミのような捕食対象になるイキモノは、「捕食者に捕まるとあまり苦しまず死ぬようになっている」のだと思います。私はこれを自然の摂理、神のプレゼントだと思っているわけですが。

文鳥は歴史的に人間につかまれ慣れてるので、つかんだだけでビックリして死ぬ、ということはほとんどありません。また、理想的な飼い方であれば7~8年、長ければ10年以上も生きます。

文鳥にとって理想的と思われる環境は「温かく風通し良く、日の光はレースカーテン越しに1~2時間当たる位、清潔なカゴ、飲み水と別の浴び水、充分かつ毎日替えられ補充されるエサと青菜」が基本です。さらに、文鳥は群れで生活する生き物なので、ひとりじゃ寂しいのです。手乗りにした場合には良く構ってあげます。あまり構ってあげられない場合には友達の鳥を近くにおいてやります。見える所に鳥や人がいると安心するようです。

男の子には、将来のため、綺麗な音楽を聞かせましょう。ピアノを聞かせて育てた子はソナチネの一部を覚えて繰り返し歌うようになり、タイムボカンのテーマソングを聞かせたヤツラは低くて可愛くない歌声になったので。白さんには平井堅で、見事、素晴らしい声になりました。(笑)

ヒナは成鳥になる1か月~数か月くらいの間手の中に抱っこされたがるので、暖かい室内で何時間も手の中に入れたまま撫でながら本を読んだりゲームしたりしていると、「べた馴れ手乗り」になります。これが不充分だと「クールな手乗り」になります。もっとも、性格もあります。あまり構わなくてもベタベタした子もいるし、構いまくってもクールな子もいます。これは個体差×育て方の相性もあるので、人間同様、思い通りにはなりません。(笑)

●おバカ文鳥

文鳥の知性についてです。

まず始めに文鳥はバカでしょうか? …それはNOともYESとも言えます。クルミ半分より小さい脳ですから、人間並みというわけにはいきません。犬猫にも負けるでしょう。しかし、そこはそれ、見方をミクロの世界に下ろしてみてください。逆にミジンコかゾウリムシくらいのもんかと思って眺めてみると、頭良すぎて驚くかもしれません。

さて。まずは対極から紹介します。私が知っている鳥の中で一番「おバカだった」のは、学生の時に妹が飼っていた鳥です。この子は「ベタ馴れ文鳥」でありました。

妹が家に居る時はとにかくべたべた。本を読んでてもテレビ見てても常に手の中肩の上。居なければ母にベタベタ。母もいなければ私にベタベタ。私が特に撫でたくなくても、手に勝手に入りこんで来て、グイグイ押してせがみ立てます。つかまれても全く動じず、何も怖れず、全ての体重を預けてだらんと力を抜き、ふくらむ姿はまるでヌイグルミのごとし。車で移動する家庭だったので車も一緒、お風呂も一緒、寝るのも一緒…。

何を考えているのか…!? って何も考えてない!! オスなのにメスにはまるで興味なし。とにかく手の中に居ればそれがしあわせ。筋金入りの「おバカ文鳥」でした。…悲しいことに、それが災いして初老のころに、怪我して保護されていたカラスにつつかれお亡くなりに…。彼は、危険を全く知らず、カラスの入っていたカゴの前をちょろちょろしたのです。

世話する人が気をつけて、朝から晩まで目を離さないようにしなければ生きていくことすら出来ない鳥、言うなれば一生赤ちゃんから幼児。この子を妹は物凄く愛していました。

●賢い文鳥

やっと言いたかったことにたどり着けました。賢い文鳥についてです。実は私は小学生の時に、最初の文鳥を踏んで亡くしています。(涙/またヘヴィな話題)かなりトラウマになりました。しかし二度とこのような惨劇が起きないように幼い私は考えました。

ベタ馴れ文鳥は手の中、服の中、はては布団の中にまで入り込みます。これではカゴから出してる間、気が気ではありません。かと言って、一日中神経を張り詰めておく事もまた出来ないのです。…そうだ。馴れてなきゃいいんだ。しかし、手乗りなのにあまりにも懐いていないのは淋しい。危ないところには行かず、たまに来て甘えるけれども他はそれほどでもない、そんな都合のいい文鳥がいいと考えました。(笑)

クール手乗り。住居環境を理解し、危険は察知して避け、考えて行動する自立型ペット。そんな付き合いを望むなら、文鳥も人間の言う意味で「頭良く」なければならないのです。

文鳥の頭の良さには生まれつきの開きがかなりあります。同じように育てても、なかなか頭良くならないのも居れば、たった1か月やそこらで基本的環境やルールを覚え、人間に主張ができるようになるのも居ます。だから、ヒナの時点で賢い子を見分けることがまず肝要です。

ヒナ毛が生えそろった子を注意して観察します。ポイントは「視線」です。ヒナ毛が生えそろう頃、というのは物心つく頃。エサやり器具を向けたとき、あるいは指を向けたとき、お腹がすいている雛は「ジャージャー」と言って口を開けるものですが、目の動きには明らかな違いがあります。この頃にすでに人間の言葉や行動を、「ただ漫然と見ている」のではなく、「何を言っているのだろう? 何をしてるんだろう?」と視線で伺って来る個体はほぼ例外なく賢いです。「対象を分析しようという気がある」からです。

次に、育て方です。クール文鳥に育てるためには、それなりのしつけを施さなくてはなりません。買って来て15日~20日はベタ馴れ同様甘やかして育てます。羽がキッチリ生えそろい、おとなっぽくなってくる頃までです。

この頃、ヒナは目につく色々なものに興味を示し、家の中を探検します。人間の幼児と同じ、一番危ない時期です。特に人間が良く歩く床、危ないものが多いキッチン、玄関や寝室には行かないようしつけたいものです。

行って欲しくない所や、やって欲しくない事をした時、すかさず「ダメッ」などと、普段より「ほんの少しだけ鋭く」叱りましょう。あまり大きな声だと怯えます。頭のいい子ほど変化に敏感で「ど、どうしたの?」というような戸惑った様子を見せるので、すかさず「あっちは危ないから行かないで」などと冷静にさとします。一回で「うんわかった」という事はほとんどないですが、聞きわけのいい子なら5~10回でやらなくなります。

「説明してもわかるわけないじゃん」と思う方もいるかもしれませんね。 でも、ここが大切なんです。「ダメ!」で終わらせると文鳥のとまどいに答えていないので、結局鳥は意味がわからずにまたやります。そこでまた「ダメッ」が続くと、文鳥は人間が自分の事をあまり好きじゃなくなったのだと思います。そして人間の言うこと聞かない鳥になります。説明すれば文鳥は内容が解らなくとも「よかった、今は怒ってない」と人間に対し安心し、次第に怒ったことはしないようになっていくのです。これが「コミュニケーションできると相手に思わせる」ということです。…なんか育児書みたいになって来ました。

人間を意思疎通できる相手だと知ると、次第に文鳥のほうからも意思を伝えてくるようになります。「あのー、好きなエサなくなったんですけど?」とアピールしてみたり、「水替えれや。今水浴びしたいし」とか主張してみたりする、「何だオマエラ、中に小さい人間入ってるのか」ってツッコミたくなる文鳥に育ったりするのです。

今日もホラ、水浴び器の手前でダルマに似た文鳥がこっちを見てます。じっとりと。はいはい、今、水替えますって。

(ここから再び GrowHair)
いかがでしたでしょうか? え? こっちの方が面白い? そうですか。まだまだあるので、またいつか。オスたちによるメス争奪戦のこととか。

乱子さんのサイト:
< http://mariarose.fc2web.com/
>

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
カメコ。9月と11月に旭川出張があり、経路をごまかして乱子さんと会ってきた。札幌に2軒あるメイド喫茶(うち1軒は2月に閉店)に行ったり、カラオケでアニソン歌ったり。典型的な観光と言えば、旧北海道庁庁舎に行ったが、古い洋館は人形やコスプレの撮影にいいだろうなーという観点から眺めてた。やだな~、オタクって。
< http://www.geocities.jp/layerphotos/
>


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■編集後記(3/17)
・昨日の読売新聞に「茨木のり子さん『生前の死亡通知』」という記事があった。生前に自らしたため、印刷しておいたものを遺族が交流のあった人々に送ったという全文が掲載されていた。あっけないくらい短文であるが、だれもが評するように、ぴんと背筋を伸ばした詩人の生き方が見えてくる。すばらしいお別れの言葉である。歴史に残るだろう。嗚呼、こういう文をわたしも用意しておきたいものだ。この人の詩は断片的にしか知らないが、凛とした表現とはこういうものなのだろう。詩集は買わなかったが、エッセイ集を求めたことがある。ちょうど20年前の「ハングルへの旅」という本だ。茨木さんが、50歳になってハングルを学び始めて10年目に出版したもので、その当時わたしはハングルに興味があったので買ったものだ。本棚を探ったら出てきていま机の上にある。菊地信義装幀の上品な本だ。彼女が50歳から学び始めてマスターしたということを知って、それなら40歳の自分でも、という気分だったと思い出す。NHKの語学講座も数か月続け(講師の韓国女性の薄情そうな風情が好きで)、そのうち録画がたまってしまい放棄したのであった。思えば、若い頃から変わっていない。やる気は満々あるのだが、参考書を揃えると安心してしまい、そのうち勉強しなくなってしまうの。InDesignやPhotoshopの分厚い本は本棚にささったまま、長いこと手も触れていないのである。思わず引用したくなる「自分の感受性くらい」など、茨木のり子さんの詩はネットで検索すればいくつも出てくる。読んでみることをおすすめする。(柴田)

・編集長の紹介で人と会った。一通りの話を終え、雑談兼プチビジネスモードに入る。最近、脳が老化しているんじゃないかと思っている私。この日も一般人と言うところで「えーと、あー、民間の人たちには浸透していないかもしれないですけど。」と言ってしまった。面白い人たちで「軍の人間としてはですね。」と冗談で続けられてしまう。言い直そうとしたが、その後も「彼は特に軍の人間なんですよ。」「や、それを知っているのは相当ですよ。貴方も軍側の人間じゃないですか。」とか(絶対違う)。濃い話をいっぱい教えてもらい、気がついたら3時間半。次の予定があったのでタイムアップを告げたのだが、あの人やこの人にも紹介できたら、何だか面白くなりそうだなぁと。/Mebicの山納氏と増田氏が3月いっぱいと聞いて頭の中が真っ白に。ショックだー!つい最近もそういう話を聞いたばかり(迷惑かもしれないので詳しくは書かないが)。おめでとうございます、と言わなきゃいけないんだけど、ショックが先に……。(hammer.mule)

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