[2200] 「マルレーネ・デュマス-ブロークン・ホワイト展」を見て

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<展示について。結論:最悪(泣>

■武&山根の展覧会レビュー
 なんつか、単なる野望系優等生、みたいな(笑
 「マルレーネ・デュマス-ブロークン・ホワイト展」を見て
 武 盾一郎&山根康弘

■デジクリトーク
 先生と上司は使ってナンボ 〜元非常勤講師の極私的ソーカツ・その1
 Rey.Hori


■武&山根の展覧会レビュー
なんつか、単なる野望系優等生、みたいな(笑
「マルレーネ・デュマス-ブロークン・ホワイト展」を見て

武 盾一郎&山根康弘
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山: どーも。いやいやお疲れ様でした!

武: しかし、呑み過ぎ。俺、死相出てる。。。。

山: そりゃたいへんだ(笑

武: 東京駅ガード下の生ビール屋さんで熱燗呑みすぎっ! ってどういうことよ! アルコールで脳細胞ちぎれてるよ俺、絶対。

山: 僕は全然大丈夫やったんやけどなあ。

武: 大体、途中から何も覚えてない。

山: ではお教えしましょう。なぜか電話かけまくってた。キュレーターとか社会学者とかに無理矢理(笑

武: しょーもなさ過ぎ。。。orz。俺たちと勝負出来るのは「はいからさん」の花村紅緒くらいだよ、「酒乱なんて、もう、しゅらんっ!」(笑

山: こんな我々に暖かいおたより待ってます!

武: 「ビアホール 熱燗のみで 呑みたおす」詠み人知らず。これで奥樣方のハートはわしづかみっ!「少尉ーっ!」

●マルレーネ・デュマス-ブロークン・ホワイト展/東京都現代美術館


山: 。。。さ、レビューいきましょう、レビュー。マルレーネ・デュマス。

武: い、行って来ました、清澄白河は東京都現代美術館!
  < http://www.mot-art-museum.jp/
>

山: マルレーネ・デュマス/Marlene Dumas。< http://dumas.jp/
>
  現代美術館はなんだかんだ言ってよく来てますな。

武: 前回、大竹伸朗さんも東京都現代美術館でしたね!
  < https://bn.dgcr.com/archives/20061122140200.html
>

山: 今回はまた全然違うタイプの作家やね。

武: 実は俺しらなかった。 >マルレーネ・デュマス。

山: 僕は一応知ってたけど、展示は初めて見た。

武: あんまり知らないので略歴。
  マルレーネ・デュマス(Marlene Dumas)
  1953年南アフリカ、ケープタウン生まれ。ケープタウン大学で美術を学ん
  だ後、アムステルダム大学で心理学を学び、70年代終わりからアムステル
  ダムに拠点を置き活動。
  で、特徴を3つ上げるとしたら、
  1.顔・人を描いてる
  2.南アフリカ共和国出身
  3.女性
  だと思うんですよね。

山: そうやね。

武: かなりシンボリックな特徴だな、と。

山: 南アフリカ出身の女性作家、ってほとんど聞かへんよな。

武: そうだねー。南アフリカと言えばすぐに思いつくのがアパルトヘイト。で、白人側で女性、と。ほとんどそこでこの作家のメタファーってのが読み取れてしまう。それを戦略にしてるのかも知れないけど。

山: なるほど。武器っちゃ武器やな。

●野望美人(笑

<人物を描く前>


武: 作品についていってみよか。人物・顔に特化して描く前の作品、「最後の晩餐」(1985)って油絵がある。

山: あれって展示されてた絵の中で、一番古いんやっけ?

武: いえ、1984年の作品もあるね、それは顔の油絵。

山: そっか。しかし、あの「最後の晩餐」、なんていうの、公募展かなんかを見に来たんかと思ったがな。

武: わはは! それは、趣味っぽいってことなんかな?

山: なんて言えばいいかよく分からんが、絵を見てすぐにそう思った。

武: よく見そうな油絵、って事か。強烈な自意識であるとか、苦悩であるとか、世界であるとか、そういう感じよりも、「油絵」描いてます。みたいな。

山: そうやね。ま、あまり驚く絵ではなかったんやな。なんかもうちょっと「へえ〜」とか思いたいしねえ。

武: 1980年代ポップアート全盛の中で、ちょっぴりアカデミックな油絵描きました、みたいな。ポップアートはもっと前か。ニューペインティングね。

山: 1953年生まれということは、、、32ですよ! 今の僕と同じくらいの年の時にあれ描いてたわけだ。うーむ、ひょっとしてその頃はまだ学生やったんか?

武: わはは! 確かに。絵、学生臭い。非常にフツーに画学生臭い(笑

山: そうなんよな。その頃はアムステルダムにいた事になっているが、アムステルダムってそういう感じやったかなあ。もうちょっと違うイメージがあるが。ま、イメージやけど。

武: 「最後の晩餐」は6年かかってるんですよ。91年に完成してるんね。で、90年代から憑きもんが落ちたみたいに、顔・人物を描きまくるワケだ。

山: ほう。なんかあったんやな。

武: だから、「最後の晩餐」っていう作品はそう云った意味ではキッカケとなったんじゃないのかな。こういう絵はホントに最後、って。

山: なるほど。それはそれで分かるような気もする。

<80年代から90年代>


武: 80年代は、例えば、「芸術とはヒキガエルの織りなす物語である」(1988)とか、「邪悪は凡庸である」(1984)とか、「白雪姫と折れた腕」(1988)とか、なんか哲学めいたタイトルつけてる。ちょっと試行錯誤的なところはあったのかもね。

山: ふむ。けど、あんまりそこに意味を感じないよな。

武: わはは! 意味深そうなタイトルを付けてみたかったとか。。。って学生かっ!

山: なんなんかね、なんやろ、繋がらへんねんなあ。

武: で、90年代に入って、油絵の作品から、紙の上に描く顔・人体の連作が多くなる。1992-93年に女性の顔の連作。

山: ふむ。

武: 若い男のたちの裸体、1996年ヤングボーイの連作。カッコ、後で作者がおいしくいただきました。カッコとじ、的な(笑

山: ドローイングは上手だった。実際ああいう一発決めの仕事は楽しいよな。クロッキー。

武: 楽しそうに描いてる感はあるよね。ただ、もの凄く特徴的なドローイングってワケでもないなあぁ。。。って思った。

山: そうなんよな。上手やねんけど、ヤバくはない。

武: そうそう! それです。なんつか、単なる野望系優等生、みたいな(笑

山: そうやそうや。ヤバくないんだ。

武: 破綻してない感は満載だよね。

山: ヤバさを感じると、下手であろうがなんであろうが、「お?」って思うからな。「うわ〜」、とか、「ひょぇ〜」とか。「げぇ〜」とか(笑。

武: ドローイング系画家って、特に「テーマが変らない」であるとか、「画風が一定不変」であるとかっていう所で勝負してると思うんだよ、テクニックとか画才より。で、なんにつけても「いかに成り上がって行くか」ってコトの方が重要だったりしてさ(苦笑)。デュマスに対する興味も、デュマスの絵そのものより、この女性は一体どうしてこんなに有名になったんだろう? ってそっちの方が知りたくなった(笑

山: デュマスが被写体の写真があったけど、なんかやたらマッチョに写してるよな。でもどうやら若い頃はめちゃめちゃ美人やったらしい。

武: 美人かー(笑。結局なんにつけても美人は得ってコトなんかねー。

山: でもちょっと怖いよなあ。美人の絵描きって。やだ(笑

武: 公式ホームページで出てる写真はそれこそ恐いけど、二階で流してたビデオ、ちらっとしか観なかったけど、とてもセクシーでチャーミングで魅力的な感じの女性だった。

山: あー、ちゃんと見なかった。

武: フリーダカーロみたいな、「俺、ちょっとムリ」的な凄さはあんまし感じなかったんだよな。

山: わはは!

武: 唯我独尊芸術人ってより立身出世な人だと思った。

山: やっぱりなあ、なんか落ち着かへんねんなー、絵が。いやね、納得いかないというか、なんかあんまり良くない。作品として。でもこれって日本人やから思うんかな? 例えば僕が南アフリカ人やったり、オランダ人やったらまた違う印象を持つんやろか。

<デュマスのテーマってホントはそんなに意味深い訳じゃないと思う>


武: デュマスのテーマが「エロス アンド タナトス」とかあるけどそれもイマイチ分からなかったな。

山: そうねえ。死とかエロスとか言われてもねえ、それはただそういうタッチやからやんか、と言うのか。確かにハッピーな感じの絵ではないけど、だからって死かよ、って。

武: だいたい小説でもなんでもいいけど芸術って「エロスとタナトス」がテーマにならないはずがないじゃん。そもそも。

山: わはは!

武: むしろ若さとか、そういうものにこだわってる気がする。「ヤングボーイ」だし(笑。

山: 「ただ顔描くの好きなんです」とか「若い男ってかわいいわよね」ぐらいの方がわかるねんけどな。

武: エロス表現にこだわってるんじゃなくて、デュマス自身がエロいんじゃないのかなあ。自分のエロが枯渇しないように気を付けてるとか。そういう女性って結構権威志向だし。

山: 紹介のテキストなんかで、皆さん「生々しい」って言ってますけど、武さんそう感じた?

武: うんにゃ。生々しくはないかなー。素材感が生々しいって事なんかねー。たらしこみみたいな画法って、ちょっと不思議なリアル感って出たりするじゃん。

山: そうだけどねえ。昔デュマスの画集を見た時はそこまで悪い印象はなかってんけどね。というのもその画集を見た当時、実は僕も顔ばっかり描いていて、あー、やっぱ顔っていいよなー、でもこの人顔ばっかり描いてて意味とか考えへんのかなあ、とは思った。それは覚えている。

武: ふむ。

山: そんとき日本の歴史上の人物の肖像写真集をみて、そっから輪郭をなくした顔を300枚ぐらい描いててんけど、それは自分が顔を描く上で、ある意味を持たせようとして行なった制作だったんですよ。でも結局、意味が自分であんまり見えてこなかったんだよなあ。まあでも、その作品でアーティストブック初めて作ったんやけどね。2002年ぐらいかな。

武: 顔描くことって楽しいじゃないですか。特に若い頃は顔はよく描くよね。

山: そうなんですよ。

武: 今顔描かないのは、顔より描きたいものがあるからなんだよな。

山: そういうことなんやろね。

武: デュマスの場合、40歳近くになってから顔に焦点をあて始めたんで、ずっと描き続けてられるんじゃないかな。既成の人物写真から絵を起こしてるようだし。生々しくないんはそのせいだよ、多分。

山: なんでそれをみんな「生々しい」って言ってんだ? なんか空々しくないか?

武: わりとどこの記事も同じ事いってるってるのよね。無理から意味付けしようとしてるっていうか、ね。紹介する側が。

山: そうそう。だからおかしい。無理矢理や。

武: 実は本人は「有名になりたかった!」が一番強いのかも知れないしね。だから有名人を引き合いに出して来てるんじゃないかなー? まあもちろん、そういうのは大事なんだけどさ。

山: うん。まあ、それはそれでいいとは思うけどね。

武: ウォーホールにしても、ステイタス(=芸術という権威)が欲しかったってのが最初だからねー。
(デュマス参照)
< http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/archive/news/2007/04/24/20070424dde014040011000c.html
>
< http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20070426ok02.htm
>
< http://artshore.exblog.jp/d2006-04-06
>

●展示について。結論:最悪(泣

<有名人出してどうするよ>


武: 例えば、アラーキーの写真にインスパイアされて「ブロークンホワイト」(2006)描いたとかいわれて作品見ても、その必然性がよく分からなかったりするよね。これは展示の仕方の問題だとも思うんだ。今回ね、何が悪いって展示だよ。

山: ほんま、展示方法がひどかった! いろいろ説明しなさすぎやねん!

武: 「説明しないのがコンセプト」とかなのかも知れないけど、それにしてもちょっと何もなさ過ぎ。作家にも肉薄出来ないし。

山: なんで月岡芳年の絵が出てくんねん! インスパイアってなんや! ふざけんな! 何が現代の感情やねん!

武: っつーか、芳年にインスパイアされたかどうかも分からない。。。意味ありげに展示するんならもうちっと説得力欲しいよな。

山: ほんまそうやで。あんなんやらん方がよっぽどましやん。

武: 芳年の絵は要らないよなぁ。。。それにアラーキーのオバちゃんの顔写真の連作も要らないよな。だって、デュマスの絵より、アラーキーの写真の方がインパクト強いじゃん。あれはよくないよ。

山: ほんまそれ問題(笑。あの展示で他人の作品一緒に展示する必要があるとは思えない。

武: ただ単に館の空間が空虚になっちゃうから、それを防ぐ為に場所を埋めてる感じ。

山: 確かにそんな感じにしか思われへん。なんであんな展示になってしもたんやろ。時間なかったのか?

武: 公式ホームページで芸能人のコメント出してるじゃん。それって「質が低いのかな?」って思っちゃうでしょ。

山: そんな事しない方がよっぽどいいのになー。なんかあるんとちゃうかこれは。

武: 結局、デュマスは何にこだわってるんだ? ってのを見せねーと、展覧会として成立しないだろうー!! というかこの展覧会自体、なんか無理矢理なんかなー? って勘ぐっちゃうよ。

山: 総じて、良くなかった。

<展示を考えてあげる>


武: じゃあ、どうすれば良かったか、ちょっと俺たちで考えてあげましょう!

山: うむ。まず、展示スペースを減らす。もっとちっちゃいところでやりなさい。(笑

武: コンパクトにするのね。あとさ、デュマスのポートレート写真があるといいんじゃないか? 産まれた時から、子供の頃、二十歳の美人だった頃、現在。とか。

山: わはは!

武: もう、俺だったらそれでググッとつかまれる(笑。

山: それだけでよかったりして(笑

武: 「作品はWEBで。」とかね(笑。ドローイング作品とそのエピソード「付き合ってる男と作品の変容」とかね。有名人出して俗っぽくさせるんなら、そういう方が合ってる気がする(笑。

山: 展示は「ヤングボーイ」、あれだけでええやろ。

武: わはは! だとするとギャラリーくらいの広さで、ヤングボーイの連作だけドーンと並んでる、と。で、デュマスのプロフィールが壁に展示してあって。

山: あー、ええんちゃう(笑。その方がエロティックだ。

武: 年ごとのデュマスのポートレート写真ファイルが置いてある。

山: なんなんだその展示は(笑

武: で、売れてた作品の横に赤丸シールが貼ってあって、値段表がメニューのように置いてある、と。絵を観てるとデュマス本人が南アフリカ産のワインを出して来てくれる。それなら、俺誘われても良い(笑

山: なんかそれこそ趣味の個展のノリやな(笑

武: わはは!

●「最後の熱燗」


山: なんだかんだ言ってすっきりした。酒も進むっちゅう話ですよ。

武: 飲み過ぎ。。マジ死にそう。

山: わはは!まあ確かに。

武: このままでは身体性を獲得する前に身体が崩壊してしまうっ!
(参照「ヘンリーダーガー幸福論」
< https://bn.dgcr.com/archives/20070501140100.html
>)

山: うーむ、それは問題やな。では、デュマスに習って僕らもそろそろ最後の晩餐を描きましょう、って言うか飲みましょう!

武: まだ飲むんかい!

山: 最後ですから(笑

武: それはそれでちと寂しいな。。では最後の熱燗とホッケを。。

山: 乾杯! うまい。これで最後か。

武: あー、意識が朦朧としてきた。

山: うん。このまま心地良く眠りにつけそうだ。。。ん、武さん?

武: あぅ、どした?

山: ユダが笑ってます(笑

マルレーネ・デュマス - ブロークン・ホワイト
会期:2007年4月14日(土)〜7月1日(日)10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日
会場:東京都現代美術館 企画展示室1階・3階
観覧料:一般1,300円、学生1,100円、中高校生・65歳以上600円
巡回展:2007年10月21日(日)〜2008年1月20日(日)丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/穀潰し】
< http://iddy.jp/profile/Take_J/
>
take.junichiro@gmail.com

【山根康弘(やまね やすひろ)/現代美術作家の皮を被ったトラキチ】
・SWAMP-PUBLICATION
< http://swamp-publication.com/
> yamane.yasuhiro@gmail.com

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■デジクリトーク
先生と上司は使ってナンボ 〜元非常勤講師の極私的ソーカツ・その1

Rey.Hori
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いきなりの私事ながら、今年はフリーランスで制作仕事を始めて10年目にあたる。そのフリーのフルシーズン初年度の1998年から縁あって某美術短大で非常勤講師を勤めた。講義内容は、最初の2年間が3DCGの基礎(必須科目)、残りは言わばPhotoshop初級編(選択科目)、どちらもハンズオン型講義で、電源の入れ方(!)から始めて最後の数週の作品制作&講評でシメる、という流れでやっていた。

その講師生活に今年の3月つまり2006年度一杯で訳あって(少なくとも一旦は)ピリオドを打ったのだが、お引き受けした時点では丸9年もやることになるとは思いもしなかった。ここではその9年分の経験に基づく雑感をごく大まかに且つ極めて私的に整理して書いてみたい。

極私的なのでお気に障る点があれば平にご容赦を。お読みの方々の中にも沢山おられるであろう「制作仕事と講師の二足ワラジ」の人や、講師仕事に少しでも興味のある人のご参考になるかどうか……。

◇筆者の講義のモットー

筆者が講義でモットーとして学生たちに課したのは次のような事柄。もちろん教室内の飲食禁止(*1)や禁煙、携帯着信音オフ(*2)などの一般的事項は当然の前提として。これから講師をやろうとしている人はお気に召したら、ロイヤリティフリーなのでどうぞお使いあれ。

・講義のモットー(1)
まず「先生と上司は使ってナンボ」。こっちは教えたいことだらけな状態なのだから、無礼にならない範囲でうまく講師を使え、ということを言った。この気持ちは講師や講演の経験のある方にはわかってもらえることと思う。学生にナメられては困るが、敬遠されすぎてもつまらないのである。授業料分ぐらいは何か盗んで帰れ(もちろん学校の備品ではなく、講師の技術や知識を!)、とも言ったっけ。

・講義のモットー(2)
次に「大学の講義なのだから、何をしても、内職してもサボっていても構わない。ただし他人には絶対に迷惑をかけるな」。異論もあるかもしれないが、寝てる奴は寝ていても講義を理解できて課題を提出できるならそれでヨシと公言した。ただし他人を巻き込むな、というのを絶対条件として。なので制作時間中など特に許可した時間以外の私語や携帯の着信音を(生来の関西弁で)怒鳴りつけることは多々あった。

・講義のモットー(3)
「コンピュータはまだ紙と鉛筆に勝てていない。アイデアスケッチは紙に鉛筆で描き、いきなりマシンに向かわない」。これには実は若干の自戒も込めている。ましてやアプリの操作もおぼつかない学生たちのこと、作りたいイメージが固まらないままマシンに向かうと強力なアプリの機能に面白いように完全に“使われて”しまう。モーツァルトじゃあるまいし、頭の中だけで作品を完璧に完成させられるはずがないだろう、というフレーズもよく使った。“鉛筆”は具体的に鉛筆に限定したわけではないので念のため(*3)。

・講義のモットー(4)
「質問に来た学生にはとことん答える」。後述するように学生たちはなかなか質問してくれなくて困ったのだが、それでもクラスに数人は講義前後に質問に来てくれることのある学生がいた。質問の中身は講義に関すること、自分のコンピュータのこと、他の講義での制作のこと、仕事のこと、など様々。こっちも人間なので、こういう学生がいるとやはり嬉しい。こちらの知識の及ぶ限りとことん答えることにしていた(でも講義や採点のひいきはしない。それとこれとはもちろん別)。

・講義のモットー(5)
「なるべく泥臭い話をする」。こっちは実際の制作の現場を本業としている非常勤講師。理論だの学術的なことだのは常勤の先生方に任せて(って、こっちにゃそんな内容の講義はそもそもできないんだけど)、できるだけ制作の実作業に基づいた泥臭い話をしてやろうと思った。なかなかそうした脱線をする時間がなかったのは残念(*4)だが、興味のある学生には少しはウケたかも。

*1:教室の入り口に張り紙があるのだが、守らないヤツ多し。ペットボトルを見つけたらカバンに入れさせるか、取り上げて講義終了まで預かった。マシンにこぼされてはたまらないからだが、これを講義終わりに取りに来ないヤツがまた多し……。

*2:余談だが、人前に立って喋っている側からすると、いきなり鳴りだす着信音はとてつもなく邪魔で迷惑で無礼で馬鹿で最低。おのおの方、くれぐれもお気をつけあれ。なお筆者自身は携帯不携帯の絶滅危惧人種。

*3:消しクズの害を考えると、コンピュータ教室での鉛筆はむしろ厄介。プラスティック消しゴムの消しクズはプラスティックを溶かすことがあるし、単に細かなゴミとしてキーボードやマシン内に落ちてもトラブルの元になるので、消しクズは持ち帰れ、とも話した。

*4:半期のクラスなので、13〜15回ぐらいで完結せねばならない。いつも時間(その期の残り講義回数)との戦いだった。

【Rey.Hori/イラストレータ】 reyhori@yk.rim.or.jp

冒頭に書いた通り、フリーになってもうすぐ丸々10年。どこまでやれるか実験人生進行中だが、ひとまず特に困ったことにもならず、仕事に恵まれて10年もったことについて関係各方面に大感謝。次の10年も引き続きご愛顧下さいませ。3DCGイラストとFlashオーサリングを中心にお仕事をお請けしてます。
サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori/
>

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■編集後記(5/16)

遺品整理屋は見た!・吉田太一「遺品整理屋は見た!」(扶桑社、2006)を読む。遺品整理屋(そういう職種があるとは知らなかった)の、日々の仕事で見聞きしたあれこれを書いたブログ「現実にある出来事」が書籍になったもので、元が日記だけに読みやすい。遺品の整理にまつわる、あさましくも笑える人間模様が描かれているのかと思ったが、そんな甘いものではなかった。46のエピソードが収録されており、いずれも短くさらっと読める。だが、淡々と書かれた内容はショッキングである。老人が孤独死、死後数か月で発見されたなんて報道がある。あら気の毒にと思う程度で、それから後のことはいままで考えたことがなかったが、想像を絶する現場の後始末が控えているのを知って驚く。遺品の整理では遺体が残していった痕跡の清掃から始まるのだが、死後何日かたった遺体は必ず腐敗して死臭を発し、部屋の中はそれはそれはものすごい状態になっているという。引用する勇気もないから、このへんは本を読んでもらうしかない。筆者の人徳がかんじられる抑制のきいた文章で救われるが、二度と読み返す気にもなれない重い内容だ。筆者がくりかえし述べているのは、孤独死の問題はけっして他人事ではないということ。少子高齢化が進み、年寄りの一人住まいは増える一方で、個人情報保護法という天下の悪法で社会は匿名化して、人間関係はどんどん希薄になっていく。人と会話する機会もなくなっている高齢者を、どうやって孤独死から守るかがこれからの社会でますます重要な課題だ。ところで、たとえ孤独死であっても、亡くなってから一両日中に発見されれば問題は半減するという。一人暮らしのアナタ、家族や知人には常々マメに連絡をとりましょうね。(柴田)
< http://blog.goo.ne.jp/keepers_real/
>
現実ブログ!!「現実にある出来事の紹介」

・家電量販店に行った。大型家電商品を購入すると、Wiiスポーツのボウリング挑戦権がもらえると書かれてあった。倒したピンの数だけ発泡酒がもらえるとのこと。こういう使い方もあるんだね。/新MacBook発売。/遅ればせながらGmail経由にした。アカウントだけはGmailができてすぐ、紹介がないと登録できない時に取ってはいたが、フリーメール関連を仕事に使うのはと躊躇していた。たとえ経由させるだけでも、アタックの標的になりそうなサーバに残すのは怖いなぁと。しかし、周りでトラブルの話は聞かないし、スパムフィルタが有効と聞き試してみた。まだまだとりこぼすことはあるものの優秀。POPFile経由でスパムタグをつけたにも関わらず、最近はそのタグ自体を本文にされちゃったりして振り分けできず、またPOPFileの教育が面倒になってきたので渡りに船。朝起きて全部のメールを受信させるのに小一時間かかっていたから、それがなくなっただけでも楽だ。もっと早くに移行しておけば良かった〜。(hammer.mule)