音喰らう脳髄[31]鎮魂と恐怖の夏
── モモヨ ──

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このところ、個人全集の編纂にかかっていて、それがひとつの山を迎えつつある。そのうえ、生活の煩雑さは従来のままなので、とんでもなく忙しい……気がしている。

気がしていると書いたのは、忙しさというのは、実に人間の情報処理能力だったり、時間管理能力に依存すると私が思っているからだ。スケジュールをきちんと管理していれば実は一つ一つ事案に向かい、対処していけばいいだけだ。


問題は、忙しさにかまけて時間管理から少し手を抜いたあたりから起きる。ある程度のトラブルであれば正常な状態に復することは可能だが、これが一線を越えると大問題。とりかえしがつかない事態を出来する。この事態が始まれば、あとは螺旋を描きつつ落ちて行くだけだ。

個人のスケジュール管理も世の中の大きな動きも似たようなもので、例えば、エコロジーの問題も膝下のこととして考えなければ似たような混乱に陥る。螺旋を描きつつ落下を開始した今、それをもとに戻すのは、そうとうに難しい。異常気象があらわになった今、そのうえに、とんでもない問題が頻出して、今の日本は、すでに螺旋のその最後の一周を落ちていく、そんな段階に来ていると思われる。

政府与党はわざわざ国会の会期を延長して、幾つかの法案を通そうとして参議院選挙の日程をずらしたものの、心急いたものか、結局、せっせと与党の単独採決を連発。こうなると、スケジュール管理を復旧しようとして混乱をさらに酷くする、私の状態に酷く似たものに見える。

「民主主義のルールにのっとってですね、適正に議論をつくしていただいて……」

強行採決のあとで決まって、そんな首相の様子がブラウン管の向こうに眺められる。毎度お決まりのセリフを、いつもの上品さで繰り返しているだけだ。その、いかにも品が良さそうな彼の様子が私には最近そうとうに恐いもの見えている。かつて日本の戦時においてもそんな上品な指導者がこの国を奈落の底に沈めた、そのことをつい思い出してしまうからだ。重要法案を彼のいつもの品のよさで単独採決する、そのこわさを思っているのは、私だけじゃないはずだ。

なにかがおかしい。

国民総背番号制だとか、住基ネットの問題にさまざまな意見が飛び交っていたのは、つい数年前のことである。慎重論が大勢を占めていたはずだ。それが今回の、どうしようもない年金の騒動を機に、どういうわけか待望論が囁かれつつある。こわい。

夏と言えば鎮魂と怪談、恐怖の季節と相場が決まっているが、今年の夏は少し違う、ようである。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
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