音喰らう脳髄[35]牛の歩み
── モモヨ ──

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政界のくだらなさを思い知らされるようなことばかりが真夏から続いているが、季節はそれでもめぐる。涼しい風が吹き始め、『風の盆』のやさしく懐かしい映像がテレビに映し出される。

とはいえ、地球温暖化の進み具合は、そうとう深刻であることはかわらない。

この夏休みの間に、北極の氷のとけ具合が、予想されていたよりもはるかに速いスピードですすんでいることが報じられた。従来どおりなら科学者が2040年にとけるであろう、そう考えられていた氷がとけだしているというのである。


なんだかな、な話しである。

デジクリに私がものを書き始めてからだから、そんなに昔のことではないが、地球温暖化については、科学的な仮説のひとつ程度に考える人々が多いおり、つい数年前までは、

「あるいは、世に言う地球温暖化のせい、なのでしょうかねぇ」

この程度の言及でしか公の前では語られなかった。それが、いまや誰の目にも明らかな公然の事実として語られる。このことに、私は、妙な違和感を感じている。年金問題をつい想起してしまうからである。

年金関連の問題も似たような経緯をたどっている。本来は、とっくの昔にどうにもならない問題が発生していたことを政府、あるいは関係各者は知っていた。そのことがやっと今、追認されているではないか。もちろん、まだ全てを私たちは知らされていない。

例えば、社会保険事務所は、いまだに政府の命令どおりに年金問題にとりくんではいないとのことだが、これも、実は、調査してもどうにもならないほどにデータの喪失が深刻なのかもしれない。また、年金運用の杜撰さも、ある程度まで、すでに逝った世代の間では既知の事実であったかもしれないのである。

もちろん、こうしたことは推測の域を出ない。いや、私の想定、それも悪いほうの予測である。

この年金にしても、温暖化にしても、早く対応できていれば、それは当然、悪いことではないが、実際に起きている現状がある。また、それによって引き起こされる諸々の問題に翻弄されている私たちである。いずれにしても、目の前の課題を少しずつでも解決しなければ、どうにもならないのだ。

問題は、私達が、前後を見誤らないことだ。そして、どんなに進捗が少なかろうと、とにかく、前を見定めて一歩を進めることである、そう思う。

最近、ある若者から人生問題について相談をうけたが、その時の答えも、前がどちらか明晰につかんでおくこと、だった。

牛のようなスローモーな動きしかできないかもしれない。それでも、前に進んでいれば、いつか未来は開けるもの、そう思っている。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
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