[2395] 老人たちの終わらない悔い

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<早く歳をとり心穏やかに暮らしたい……>

■映画と夜と音楽と…[369]
 老人たちの終わらない悔い
 十河 進

■Otaku ワールドへようこそ![70]
 行きつけのメイドバー
 GrowHair


■映画と夜と音楽と…[369]
老人たちの終わらない悔い

十河 進
< https://bn.dgcr.com/archives/20080328140200.html
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●全員が負の要素を抱え込んだ一家

父親は「9段階プログラム」という人生で成功するためのノウハウを教えている。もっとも、彼のセミナーを聞いている聴衆はまばらだ。しかし、彼はそれを出版するためにエージェントに大金を払った。ノウハウ本が出版さえできれば、人生の勝ち組になれると信じているのだ。

ミスコン・マニアの娘は、地区予選で一位になった少女が辞退したためカリフォルニアで行われる「リトル・ミス・サンシャイン」という少女コンテストの本選に出ることになる。父親の「勝ち組になれ、負け犬になるな」という教えを受け「負け犬にはなりたくない」と彼女は言う。

15歳の息子は空軍のパイロットになるためにエリート校受験をめざし、誰とも口を利かない願掛けを続けている。彼らの祖父はヘロイン中毒で、ポルノ雑誌を読み耽るエロ老人である。彼は孫に「若いうちにファックしまくれ」と檄を飛ばす。彼は、たぶん若い頃に多くの女性と体験しなかったことを後悔している。

そんな家族を抱えて、まともそうに見えるのは母親だけだが、彼女もおそらく強いストレスに晒されている。喫煙という悪癖から逃れられない。ある日、彼女に兄が自殺未遂を図ったと知らせが入る。彼女は病院から兄を自宅に連れ帰り、息子と相部屋にする。

口を利かない甥に向かって、母親の兄は自殺の理由を話す。彼はゲイの教師で教え子の恋人がいたが、その恋人が同僚の教師のもとに去ったのだ。しかも、「アメリカで一番のプルースト研究家」と自負する自分をさしおいて、「アメリカで二番目のプルースト研究家」である恋敵の同僚が賞をとってしまったのである。

嫁の兄を祖父は「ホモ野郎」と呼び、妻の兄を父親は「負け犬だ」と罵る。だが、娘のコンテスト出場のため全員でボロ車に乗って出かけた旅の途中、様々なことが明らかになる。単純なゲームをしているときに息子が色弱だと判明する。妻の兄が「パイロットは無理だ」と言い、絶望した息子は初めて叫び声をあげる。

また、エージェントに連絡を取った父親は、出版の売り込みが失敗したことを知る。翌日、祖父がモーテルで突然死する。ヘロインの打ち過ぎかもしれない。今や、娘のコンテスト出場が家族の唯一の目標になってしまった。彼らは死亡手続きなどで時間がかかると聞いて、祖父の死骸を積んだままカリフォルニアをめざす。

自殺を図ったゲイの教師、挫折したセミナー講師、人生を悔いるヘロイン中毒の老人、夢を諦めなければならない少年、ミスコンに憧れているメガネでデブの少女、ストレスから悪癖が抜けない主婦…。よくもまあ、これだけ負の要素を付加したキャラクターばかりを出してきたものだ、と僕は感心した。

おまけに彼らが乗る古いワンボックスカーはクラッチが壊れ、全員で押しながらスタートさせなければならないし、一度走り出したらよほどのことがない限り止められない。さらに、クラクションが故障し鳴りっぱなしになる。周囲の車の顰蹙を買うのは当然だ。

●アラン・アーキンの長いキャリア

「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年)という映画を見たいと思ったのは、祖父の役を演じたアラン・アーキンが昨年のアカデミー助演男優賞をとったからだった。73歳のアラン・アーキンはしっかりした足取りで登壇し、「まず、この小さな映画を評価してくれたことを感謝したい」と語った。

アラン・アーキンは舞台で評価を得た後、「アメリカ上陸作戦」(1966年)で映画デビューし、いきなりアカデミー主演男優賞にノミネートされる。その後、オードリー・ヘップバーンの「暗くなるまで待って」(1967年)、「愛すれど心さびしく」(1968年)、「キャッチ22」(1970年)と印象的な役が多かった。

「愛すれど心さびしく」については、以前に「孤独な狩人のような心」(2005. 3.4)という回で書いているが、僕がアラン・アーキンという俳優を深く記憶に刻み込むことになったのは「暗くなるまで待って」だった。このサスペンス劇は実に切れ味がよく、アラン・アーキンの悪役がいなくては成立しない。
< https://bn.dgcr.com/archives/20050304000000.html
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このとき、オードリー・ヘップバーンは三十代後半、この映画に出演後、7年間、映画には出なかった。ヘップバーン・ファンの僕は、高校生のとき、仲間たちと一緒に見にいった。その中には今のカミサンもいた。彼女は、映画のハイライトシーンで叫び声をあげた。

もっとも、叫んだのは彼女だけではない。「暗くなるまで待って」のラスト10分ほど前で誰もが叫び声をあげた。盲目の人妻ヘップバーンの無事を観客全員が願った。あのときのアラン・アーキンは悪魔に見えた。あのショッキングなシーンだけで、アラン・アーキンという名前が刻み込まれたのだ。

その次にアラン・アーキンが演じたのは「愛すれど心さびしく」の聾唖者の青年である。彼は孤独な少女と魂を触れあわせる孤独で文字通り静かな青年を好演し、再びアカデミー主演男優賞にノミネートされた。だが、演技派ではあったけれど、彼はハリウッド映画のヒーローが演じられるような俳優ではない。いつの間にか渋い脇役に落ち着いたようだった。

だから、アラン・アーキンが「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー助演男優賞にノミネートされていると知ったとき、僕は数十年ぶりに名前を聞いたような気になった。しかし、ずっと彼のキャリアは続いていたのだ。日本公開された映画もかなりある。

しかし、「ガタカ」(1997年)や「ファイヤーウォール」(2006年)など、僕も見ているのに「どこに出ていたんだ?」というくらいだった。「暗くなるまで待って」のときの顔が鮮明に残っているから、普通に出てきてもわからなかったのだろう。

●老人たちは何かを悔い続けているのか

「リトル・ミス・サンシャイン」でアラン・アーキンが演じた祖父の役は、僕の想像を裏切った。僕は、もっと枯れた役だと思っていたのだ。七十代とはいえ、アラン・アーキンは若くエネルギッシュだった。彼は老人ホームは「男1に対して女4の割合だから、やりまくりだった」などと言う生臭いジジィなのである。

彼はトイレに隠れてヘロインを吸引し、孫娘にストリップティーズの踊りを振り付ける。ガソリンスタンドでは「ホモ野郎」にポルノ雑誌を買ってこさせる。孫に卑猥な言葉で「ファックしまくれ」とあおり、自らも多くの女と寝たことを自慢げに話す。

そんな老人を見て、僕は、20年近く昔の出来事を思い出した。まだ、徹夜で呑んでも平気だった頃の話だ。その日、僕はふたりの友人と新宿で飲み明かし、東口アルタの前で立っていた。そのとき、ひとりの老人が近づいてきた。酔っていたのかもしれない。

老人は「あんたらも……やってきたのか」と、いきなり卑猥な言葉を投げつけてきた。その後、彼はソープランドでどのようなことをしてきたか、逐一、詳細に話し出した。僕は戸惑っていた。いろんな老人がいると頭では理解していても、どんな老人も経験を重ねて何かを悟り、穏やかな人生を生きているのだという幻想が僕にはあったのだ。

彼は何かを呪っているように、汚い言葉を吐き散らした。罵り、喚いた。最後に「女とやれなくなったらオシマイだ」と言って去った。僕らは辟易していた。毒気に当てられた。何も言えなくなっていた。一体、彼は何を呪っていたのだろう。

アラン・アーキンが演じた祖父の姿が、あのときの老人に重なった。彼は何を悔いているのだろう。若い頃に真面目に暮らしたことだろうか。若い女たちを見ても妻への忠誠を誓って手を出さなかったことだろうか。子供を育てることに忠実だったことか。妻が死に解放されたとき、すでに老人になってしまっていたことか。取り返しのつかない時間を失ったことか。

早く歳をとり心穏やかに暮らしたい、という願望が僕にはある。リタイアのために辞めていく先輩たちを見て、心底から羨ましく思う。人はまだ先があると思えば何かを望む。期待する。夢に見る。後は死ぬだけだと悟れば、日々を焦らず、ただ過ぎていくだけで過ごせるのではないか。

それが僕が想像する老後だった。だから、僕は老人を見ると、誰もが枯れた穏やかな余生を送っているのではないかと思ってしまう。

だから、アラン・アーキンが演じる生臭い老人は、僕に居心地の悪さを感じさせる。彼は歳をとったことで、かえって居直ったように欲望を隠さず、何かを取り返そうと焦り、喘いでいるようにさえ見えた。偏見を隠さず、露骨な言葉を使う。モラルや規律に縛られてきた人生を取り返したいのだ。

もしかしたら、諦念を受け入れ悟ったように生きる老人より、彼のような老人の方が圧倒的に多いのではないか、そんなことを僕は思った。年老いてなお終わることのない悔いを抱えた老人…、それはひどく哀しい存在だ。

しかし、そんな彼が一瞬のやさしさを見せる。息子が電話でエージェントと話している姿を見て出版が挫折したことを見抜いた彼は、運転する息子の肩を抱いてこう言うのだ。

──結果はどうあれ、お前は精一杯やった。立派なものだ。脱帽するよ。
  チャンスに挑戦したお前を…誇りに思う。

そう、彼も人の親だったのだ。自分の人生を肯定できないでいても、息子を愛する気持ちに変わりはない。それは、間違いなく老人の真実だった。そんな感動的なアラン・アーキンの名演技を見ながら、僕も「お前を誇りに思う」という言葉を大切にしたいと胸に刻んだ。

いつか、僕も…子どもたちにそう言うことがあるだろうか。

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
「人生は一度きりなのに、あやまちは何度でも繰り返せるものなのね」とは、チャンドラー「待っている」のセリフですが、酔っ払った翌日、僕は毎回このセリフを繰り返しています。ミスは学習すれば防げるが、あやまちは何度でも繰り返してしまうのです。これは習性?

●305回までのコラムをまとめた二巻本「映画がなければ生きていけない1999-2002」「映画がなければ生きていけない2003-2006」が第25回日本冒険小説協会特別賞「最優秀映画コラム賞」を受賞しました。
< http://www.bookdom.net/shop/shop2.asp?act=prod&prodid=193&corpid=1
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■Otaku ワールドへようこそ![70]
行きつけのメイドバー

GrowHair
< https://bn.dgcr.com/archives/20080328140100.html
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今回は、行きつけのメイドバーのことをさらっと(?)書きます。

●スナック風のお店

店の名は「ヴィラージュ・レイ」。中野駅北口からサンモールを進み、中野ブロードウェイのすぐ手前を右に入り、42秒ほど行った左側にある。階段の下に、黒い光沢のあるボードが出ていて、メイドさんの絵が描いてある。階段を上り、左側にある分厚いドアを引いて入る。

「メイドバー」とうたっているが、店構えはスナック。カウンター7席にソファー席10席。カウンターの中には、からっと明るくて頼もしい感じのママさんがいる。メイドさんは、たいてい2人か3人いる。メイド服は黒を基調としているが、メイドさんが自分で決めるのだそうで、それぞれ特徴があり、よく似合っている。内装に萌え要素は特に見当たらない。

ソファー席に座ると、向かい側にメイドさんが座って、話の相手をしてくれる。ほぼつきっきりなので、いくらでも話ができて、けっこう仲良くなれちゃうとこがいい。メイドさんにも一杯おごるのが、暗黙のルール。カラオケもできる。

お客さんは、圧倒的にオタクが多い。だから、カラオケもアニソンが中心。戦隊ものを勇ましくがなる者あり、ホラー系を妖しく歌う者あり。メイドさんの中にはいわゆる地下アイドル(※)のコもいて、そのコが店に出る日は親衛隊も出てきて、見事なヲタ芸を見せてくれることもある。みんな、のびのびとオタクの本領を発揮している。

※TVや雑誌等のメジャーなメディアにあまり登場せず、ライブや撮影会等を中心に活動するアイドル。最近は、言葉の響きに配慮して「ライブアイドル」と呼ぶらしい。

ママさんは名前で呼んでくれるし、いつも頼むビールの銘柄を覚えていてくれたりする。話の内容も覚えていてくれて、次に来たときは、続きの話ができる。そのあたりは、スナックだ。値段もけっこうよくて、2時間ぐらいいて、瓶ビール2本につまみ1品頼めば、もう6,000〜7,000円 ぐらいになる。客層は、20代から40代まで幅広くいる。

●キャラの立ったメイドさんたち

店のメイドさんは全部で6人。私が行くとよく店に出ているのは、ちうちゃん、あいちゃん、kちゃんの3人。みんな個性が強くて、それぞれ熱狂的なファンや、ひそかに応援してると思しきファンがいる。

ちうちゃん。猫耳が似合う妹キャラ。以前この店にいたさらちゃんと「めいぷる☆シロップ」というユニットを組んで地下アイドル活動中。猫耳があまりにもしっくりきているので、一度などは店がひけてからもはずすのを忘れて、近くでラーメンを食べて、電車に乗って帰ったこともあるという。誰もなんとも言ってくれなかったらしい。なんか、すご〜く親近感のもてるキャラ。ほんっと、妹だったらいいなぁ、みたいな。

あいちゃん。髪が美しい。丸顔ぱっちり目に、黒のロングがめっちゃ合ってるのだ〜。儚(はかな)ちゃんという名前で髪フェチDVDに出演しちゃったりもしている。
< http://www.salasala.com/salacolle/ha13/ha13.htm
>

キャラは、本人いわく「唯我独尊、傲岸不遜。自他共に認めるナルシスト」。イケメンにしか興味がなさそうなので、みんなあきらめている。だけど、どんな話にもノリよくついてくるので、多分、誰にとっても話していて楽しいと思う。ヴィジュアル系の音楽が好みのようで。陰陽座とかPlastic Treeとか。

kちゃん。伏せ字ではなくて、これが店での名前。キャラは、本人いわく「お笑い担当」。場の空気をぱっと明るくしてくれる人。いつもたいへんにぎやか。声優の学校に通っている。ハスキーな少年声。何年かごとに進級オーディションがあり、ジュニア、準所属、というふうに等級が上がっていくのだそうで、たいへん厳しい世界らしい。歌がめきめき上達している。

ポケモンで同人誌書いて、コミケにサークル参加してたりもする。で、コスプレイヤーでもある。中華系のコスもするというので、5月10日(土)11日(日)に鳥取の中国庭園「燕趙園」で開かれるイベント「第4回中華コスプレプロジェクト」を薦めたら、行くという。もう参加申込みを済ませ、それに向けてコスチュームを鋭意製作中だそうで。「三国志大戦」の。コンテストにも出る気満々だし。非常に楽しみだ。
< http://www.pulse.vc/cos/
> 中華コスプレプロジェクト

●腕利きのママさん

ママさんは、その昔、銀座に店を構えていたという。そのあと、歌舞伎町の高級クラブに雇われママとして1年近くいて、それから中野に移ってきたそうだ。17年前のことだ。以前からのお客さんたちに贔屓にしてもらい、ふつうのスナックとして営業してきたが、つい2年くらい前からメイドさんを入れるようになったという。

「銀座の店って、うわさによく聞く『座っただけでン万円』みたいなとこ?」と冗談まじりに聞いてみると「そのくらい、すぐなっちゃうのよぉ」とシレッと答えられてしまった。チャージ料だか、サービス料だか、税金だか、足してくとあっという間なんだそうで。

銀座のお店には、有名な政治家やその取り巻きの面々も来ていたらしい。なんか、ものすごい豪遊っぷりを見せてくれたらしい。実は、今でも、そのころからのお客さんが中野の店に来るそうで。オタク連中の馬鹿騒ぎに混ざりたくない人は、あらかじめ電話を一本入れておいて、メイドを帰して閉店した23:00過ぎに来るという。どこかの社長さんは、中野通りにシルバーブルーのフェラーリを停めて来るという。で、たいてい我々の10倍くらいは払っていくのだそうで。電話で「お祝いだから」の一言が入ると、店はドン・ペリを2本ほど用意しておいて、1本5万円で出すという。

ママさんの手料理は、間違いなく美味い。素材はどこそこのを仕入れました、と口上つきで出てくる。メイドさんたちも、銀座方式(?)でよくしつけられていて、けっしてダレることなくよく気を回してくれるので、いつも心地よくご主人様気分を満喫できる。

メイドさんを入れるようになったのは、メイド喫茶「おぎメイド」から土日だけ場所を貸してくれと頼まれたのがきっかけだという。だけど、うっかり換気扇のスイッチを切るのを忘れて帰られて、過熱して焦げ臭かったとか、ゴミが出しっぱなしだったとか、トラブルがあって、結局追い出したという。ブロードウェイ(ショッピングセンター)の3階に移っていった。おぎメイドは残念ながら今月30日(日)をもって閉店だそうである。

そのころのヴィラージュ・レイは、フロアレディの募集をかけてもなかなか応募が来なくて、おぎメイドの手を使ってネットでメイドさんの募集をかけたら、あっという間にどっと応募がきたそうで。じゃ、メイドバーにしよう、と。当然の帰結ながら、客層ががらっと変わったそうで。

それまでは、2階にあるスナックとあっては入りづらく、新しい客さんがふらりと入ってくるなんてことは年にそう何回もなかったのが、メイドバーにしたら、どんどん来るようになったそうで。そりゃ、メイドさんのいる店が新たにできたなんて情報はあっという間にネットを駆け巡り、とりあえず一度は行ってみようという人はたくさんいるでしょう。

新しいお客さんたちは、マナーがよくて、トラブルもなく、いい人たちだという。オタク事情にはぜんぜん詳しくなく、萌えの概念をまったく理解してないママさんだが、オタクを歓迎してくれているあたりは実に心が広い。以前からの常連さんたちの中には、この空気に閉口して、来るのをやめた人もいるという。ま、去る者は追わず、だそうで。かくして、中野の店が一軒、ヲタ色に塗り替えられた。

メイドさんをあと3人ぐらいは入れたいと言っていた。あのママさんの下で働くとなると、そうとう厳しく指導されそうだけど、女磨きの修練と思えば、絶好のチャンスなのではないかな?

●「もったいビジネス」は好きではないのだが

5年ほど前だったか、人に連れられて、スナックという営業形態の店に行き、いや〜、こういうところはもう二度と行かなくていいや、と思った覚えがある。どうにもこうにも性分に合わないのである。皮肉を込めて「もったいビジネス」と呼ぶことにした。

第一に、若い女の子と雑談ができますってだけのことを、さも大層なことのように見せかけてるところに、まずなじめない。私の場合、モテるということは決してないにせよ、一介のカメコとしてコスプレイヤーを撮ってる以上、話す機会ぐらいなら掃いて捨てるほどある。いくら何でも話するぐらい、タダでしょ。そんなことにもったいつけらても、なんだかなぁ、って感じなのに、もったいに値段までつけられては、どうにもこうにもである。

第二に、女の子が、ガラスケースに入った高価な人形か、試合開始前のトロフィーかってぐらい、まったく手の届かない高〜いところに置いてあるかのような空気を放っているところが、またウソっぽくて。多分、足しげく通うと、距離がだんだんと縮まってくるのかもしれないけど。でも、それって(足しげく通ったことはないので知らないが)自然にうちとけてくるというより、向こうが巧みに距離をコントロールしているって感じじゃないのだろうか。払った金額に反比例して、距離が縮まっていくシステムになってます、みたいな。反比例の法則なら、距離をゼロにするまでに、無限大のお金を払わないとならない。

いつかはイイコトがありそうな思わせぶりでずるずると引っ張っておいて、いよいよヤバくなりそうになると、あっという間にトンヅラこいて、消息不明になっちゃったりするんじゃなかったっけ? 距離は一気に無限大、みたいな。スナックのねーちゃんって、そういうイメージないかな?

それと、お金と引き換えに、見栄を張らせてもらうってのもな〜。自慢話をすれば大げさに驚いてくれるかもしれないし、愚痴をこぼせば全面的に味方してくれるのかもしれない。だけど、それってお金と引き換えのサービスでしょ。帰ったあとで「やれやれ、あのお客の相手はしんどいわ」とか言ってそう。私は特にモテたいとかカッコつけたいという願望が強いわけでもなく、そういうサービスは必要としない。

あと、暗黙のルールってのが、いろいろあるみたいで、やだね。女の子が帰るのと時間をほぼ同じくして帰るのは、他のお客さんが勘ぐるのでご法度だとか。まあ、そういうのをしっかり身につけることで、きれいに遊べるようになっていくのかもしれないけど。しかし、垢抜けた遊び方のできる粋な人になるのは、私の目指すところではない。

……というぐあいに、スナックをついつい親の敵のように言ってしまう私であるが、じゃあなぜヴィラージュ・レイには心地よく収まっているのか。うーん、多分、オタクがのびのびと本領発揮しておバカになりきってる姿を見たり、自分が気がつくとなってたりするのが、楽しいんじゃないかな。

私がヴィラージュ・レイに最初に行ったのは、去年の5月のことである。すっかり忘れていたが、mixiの日記を読み返してみると、「あいちゃんのツインテールに張り飛ばされたい」とか書いてある。

●ミ・キュイという逸品

2月にはママさんからチョコをいただいた。さて、何をお返ししようかと悩み始めるころに、ちょうど甘糟りり子の小説「ミ・キュイ」を読んでいた。「ミ・キュイ」とは半生調理を意味するフランス語で、小説では牡蠣のミ・キュイとして出てきたが、ググってみるとトップにはチョコのミ・キュイが出てきた。山形県にある「清川屋」の。

薄くて丸いケーキ状の形で、外はサクサク、中はとろっとしているという。これだ。ネットで注文できて、指定日にクール宅急便で届けてくれる。そのまま食べてもよいが、レンジで5〜6秒チンすると、中がとろりと溶けて、またよいという。これなら、あの舌の肥えたママさんでも、うなっていただけるんじゃないかな〜、なんて。さっそく、注文。お店の対応も、迅速で丁寧でたいへんよかった。

結果、大成功。2〜3日後に行ったら、大変喜んでいただけた。この味は本物だ、と。ミ・キュイという言葉は知ってたけど、清川屋のチョコのミ・キュイは知らなかったそうで。よく知ってたねぇ、と感心された。メイドさんやお客さんにもふるまったそうだが、私の分も残しておいてくれた。どれどれ。うむ、これは美味い! よっしゃあ!

……などと、すっかり有頂天になってしまった。おいおい、カッコつけることに興味ないんじゃなかったっけ、俺。自分の中にある矛盾にあんまり深く悩まないお調子者である。

付記。ヴィラージュ・レイのホームページは現在休止中で、復活準備中。店はちゃんと営業してるので、電話で問い合わせるか、直接行きましょう。
営業時間は19:00〜23:00、日祭日は休み。TEL.03-5380-8577

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp

左手の薬指に「誓いの薔薇の指輪」をするようになって、まもなく3年、「ローゼンメイデン」連載再開にwktkしている45歳、カメコ。何があったか知らないが、幻冬舎「月刊コミックバーズ」で連載が打ち切られ、かなり経つ。集英社「週刊ヤングジャンプ」3/19発売号にPEACH-PITの「少女のつくり方」と題する作品がいきなり登場。そこには「真紅」が!! 「薔薇の香り芳しき至高の少女」とある。だけどオチは「次号にて重大発表!!」。で、3/26発売号には「ローゼンメイデン4/17発売号より新連載!!」。おおっ、ついに。高まる期待。これを機にアニメの第3期か、映画版か、実写ドラマ版か、人形浄瑠璃版か。次期総理は麻生か。薔薇香る 至高の少女は 俺の嫁

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■編集後記(3/28)

・妻に命じられて、毎日午後ひまな時間があると市内の桜の開花状況を見て回っている。今度の日曜日に、妻が友達と桜を見に行く予定なので、一番見頃のスポットを特定するのがわたしの役目だ。市内の水路沿いや公園などの桜は、ここ数日の暖かさでほぼ満開の状態だ。たいして広くもない市内だから、クロスバイクで走り回ればずいぶんたくさんのスポットをチェックできる。永年使っていたタウン車がとうとう壊れてしまったので、荷物のあるときは妻のママチャリを使い(シートを少し上げて乗る)、ディパックで済ませられるときはクロスバイクにしている。ようやく昔の勘が戻ったというか、クロスバイクでの走行が気持ちいい。いままでの変速ナシのタウン車に比べると、さすがに軽くて早くて楽チンだ。またちゃんと走りたくなった。大学のサイクリングクラブOB会のMLでは、長距離の走行イベント(銚子センチュリーラン160キロ、富士エコラン115キロ、ツールド千葉340キロなど)に参加して時間内完走したとか、参加するぞと声明を出したりとか、みんないい歳なのにとても活発だ。トライアスロンをやっている人も少なくない。たぶん65歳になる超人先輩は、年に2?3回は60キロ程度の林道ランをこなしているという。そんな怪物たちにちょっとは刺激されている。家の前の荒川の土手に、東京湾まで25キロと表示されたプレートがある。往復50キロ超か。行けそうな気もするし、やめといた方がいいような気もする。ところで市内の桜は、テレビドラマにもなった(主役がとんだ大根の)「レガッタ」の長堤に咲く桜が一番遅い。昨日夕方見にいったらほぼ七分咲き、ってのはいい加減な観測で、じつはよくわからない。日曜日は最高の見頃であろうことは確かだ。すごく混むんだよな、わたしは行かないけど。(柴田)

・甥二号が歌っていて気になった「ラッキーでハッピー」。歌詞で検索してきたらすぐに出てきた、ウエンツ瑛士とガチャピン・ムックの曲。YouTubeでビデオクリップを見た。どこかで聞いたことあるような、楽しい曲。サビの部分「ラッキー、ラッキー、ラッキー、キス。ハッピー、ハッピー、ハッピー、ピース」は一度で覚えた。甥らは、ふりつけに合わせて踊り、ジャンプするところがお気に入り。甥一号は最近ヤッターマンを見ているのだが、昔のオープニングをYouTubeで見せても違和感があるらしく、現在のオープニングを見せろと言う。そして甥一号が歌っていて、これまた一度で覚えた「炎神戦隊ゴーオンジャー」の主題歌。なつかしめの音楽で、ベンチャーズみたいなテケテケギターではじまる。「エンジン全開ゴーオンジャー いち、にー、さん、し、ゴーオンジャー スリー、ツー、ワン、レッツ、ゴーオンジャー ゴーオン!」オリコン4位だって。昨日の自分にオーバーテイクだ!(hammer.mule)
< http://www.universal-music.co.jp/wat/disco/UMCK-5165.html
>
ラッキーでハッピー
< http://columbia.jp/go-on/
>  ゴーオンジャーの主題歌
< http://mainichi.jp/enta/music/news/20080325mog00m200028000c.html
> 33年目の快挙
< http://shop.mu-mo.net/avx/sv/item1?jsiteid=mumo&seq_exhibit_id=11537
>
放送は終わったのに、キバ(3位)より売れている電王(2位)
< http://www.oricon.co.jp/rank/js/d/
> といっても3千枚差(3/25)
< http://www.avexmovie.jp/lineup/den-o/index.html
>
次の劇場版もDouble-Action! どれだけバリエーション作るのよ。
< http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/
>  およげ!たいやきくんがっ