ライブハウスへいってきた。先週の水曜日、そして木曜日である。ウィークデーだというのに、代官山のライブスペースUNITは、異様な盛り上がりを見せていた。NYLON100%の三十周年記念のライブ。
これがおもしろかった。
いろんなところで、いろんな方が書かれているので、内容を改めて記すのも気がひけるが、いちおうざっと出演者を紹介しておこう。
九日は、
上野耕路&His Orchestra
ポータブルロック(+野宮真貴)
中西俊夫(exプラスティックス)
KERA
81/2
十日は、
サエキけんぞう
スペースポンチ
ヒカシュー
東京ブラボー(ゲスト近田春夫)
戸川純
これがおもしろかった。
いろんなところで、いろんな方が書かれているので、内容を改めて記すのも気がひけるが、いちおうざっと出演者を紹介しておこう。
九日は、
上野耕路&His Orchestra
ポータブルロック(+野宮真貴)
中西俊夫(exプラスティックス)
KERA
81/2
十日は、
サエキけんぞう
スペースポンチ
ヒカシュー
東京ブラボー(ゲスト近田春夫)
戸川純
以上、公開されていたメンバーを出演順に書き出してみたが、この他に東京ブラボーのゲストに、いといせいこう、前説に大貫憲章が参加したり、ポータブルロックに鈴木慶一、81/2の前説に私の弾き語りなどなど、二日とも客として楽しんだら最高、という感じの内容であり、客席にはパンタなども顔を見せており、両日ともに出演者が互いに顔を出し合うという奇妙な二日間、皆のパフォーマンスにも気合が入っていた。
私が九日、81/2の前説にギターの弾き語りを披露するよう求められたのは直前、前日の夜だった。実際のところ、ヴォーカリストのシンゴは幾日も前から私に連絡を入れてくれていたようだが、外部とのアクセスに相当ずぼらな私は、前夜になって、彼に能天気な電話をいれたのだった。「あしたさぁ、いくからさぁ」みたいに。そこでギターの弾き語りを提案され、あまり深く考えずに、いいよ、と言ってしまった次第。
弾き語りといってもエレキである。それもサイケデリックというか、プログレッシブというか、相当に特色あるギターと歌である。
「こんなんで前説ができるのか?」
当日リハから顔を出していた私だったが、みんなのリハを見ながら一人悩んでいた。
出番はラストの十時だから、それまでに内容を考えればいい。楽屋でアイデアを練ろう、そう思っていた。が、そうは問屋が卸さなかった。楽屋では中西のトシちゃんがいい具合に出来上がっていて、思わず、東京ロッカーズなんぞより相当前の、つまりパンクとかニューウェーブとか関係ない時代の話などに花を咲かせてしまったからだ。
私たちが初めてバンドマンとして出会ったのは、品川の大ホテルで開催された某ブティックのパーティだった。当時、プラスティックスは、テクノというより、初期ロキシーミュージックのようなファッション業界出身の、おしゃれなパーティーバンド。私はといえばバンドをあげてのアルバイト。ドールズ風アレンジでブティックから提供されたシャツを着て演奏する。バンド名はデストロイヤーズ。
思えばいいかげんな話であるが、そのとき提供されたシャツが有名なDestroyと大書されたガーゼシャツだったのを覚えている。そんな余人がついてこれそうもないナンチャッテパンクの話に花を咲かせた。他にも鈴木慶一さんはいるしパンタもいる。挨拶というか、馬鹿話をするには持って来いの環境で、当然、シンゴとも相当長い間話こむ。
時はあれよあれよという間に経ち、気がつけばトシちゃんの出番。それが終われば私が前説のためにステージに立たねばならない。で、トシちゃんのライブをステージ横で眺めつつ、あれこれ考えていたがなかなかまとまらない。
頭の中は完全にぐしゃぐしゃだったし、時々、トシちゃんのライブに反応する私がいる。もうどうにでもなれって感じと相成った次第。
で、本番。私の口をついて出たのは、1980年のある夏の日のNYLON100%での出来事だった。
そこからある事件へと発展するのだが、そのことさえなければ、私は私自身の手で81/2を世に出せたのである。以来、私は81/2のメンバーに対して多大な負債を負っている。そんな内容だった。
そして、サイバーパンクロッカー! 81/2と!
千葉シティから始まるサイバーパンク伝説は、世界のSF史に定着している。コンビナートを未来都市に見立てた私のアルバムに端を発してのことだが、その千葉シティから現れた不世出のバンドこそ81/2だったのである。そんな思いをこの一言にこめた。
彼らのライブは最高だった。
昔日に比べてテクはあがり、音に丸みがでてきたところは否めない。ごつごつした荒削りなところは、もはやない。が、彼らの個々の進化はそうした魅力の低減を他のところで補って余りある。1980年の彼らではなく、今を生きている彼らがそこにいた。イベントのバンドの面子を見て、八十年代同窓会といったお決まりの文句を並べたり連想する人もいようが、彼らの演奏は、そうした御託を吹き飛ばす力を持っていた。
ロックである。
次の日、十日は、一時期、マキガミさんたち、と名乗っていた巻上君のヒカシューとしての演奏(昔の曲をだいぶ多めにやってたみたいだ)や、いつ観ても楽しくなるブラボー、体調をくずしていた戸川純ちゃんの『いま』をそのまま客席に投げかけるパフォーマンスを堪能した。
純ちゃんは、私と同じ大学、同じ学部だから、同窓会といえば同窓会ではあるが、斜めに構えて批評する方々は少し控えたほうがよい。そう真摯に思わせる二日間であった。個人的には、まだまだロックが足りない、と思う。が、そう感じた私こそが、その欠落部分を補わなければならない、そう覚悟している。
楽しんだ果てに自らの道も見えた幸せな二日間だった。
Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>