音喰らう脳髄[55]問題解決の方法 パンク
── モモヨ ──

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ノーフューチャー プレミアムBOX夏の終りに、シネセゾン渋谷で「No Future」がレイトショー公開されていた。悪名高いセックスピストルズを主役にそえた、ドキュメンタリー映画である。

ピストルズといえば、若きファンにとっては、この夏のフェスティバルのために来日していた彼らが記憶に新しいだろう。ステージ上で、バッドマンの悪役、ジョーカーのような貫禄を見せていたロットンだったが、あのイメージは忘れて欲しい。この映画では、当然、まったく異なるたたずまいを見せている。なにしろ若くかっこいい。脂がのっている。

若き日の彼らを見る。それもいいだろう。それだけでも価値がある。が、今回のレイトショー公開、眼目は他のところにある。そう私は思っている。



この映画に続いて、レイトショー「The PUNKROCK MOVIE」が公開されている。それに続いて「ロッカーズ」の公開がある。

このシリーズを通じて言えるのは、この一連の公開が、過去の秀逸なロックムービーを若い人々に見てもらいたい、そんなありがちな動機で企画されたわけではない、ということである。

最後の作品「ロッカーズ」は、東京ロッカーズというムーブメントを日本のロックの映像化において先駆者と目される若き才能が、私財をなげうって、彼らなりの目線で記録したドキュメンタリーだ。これには、恥ずかしながら若き日の私も出演している。

そうした点で、先にロットンについて言った軽口、ジョーカーに似ている云々は私に返って来たりするので面白くない。が、当事者の私としては、青春の一ページをあらためて公開するという気分はさらさらなく、どちらかと言えば、遥か遠い星系の、とある惑星で、都市の中、もがきながらも表現活動を続けている若き生命体、そんな思いでスクリーン上の私を見ていたりするのである。

皆さんに観賞態度を強いるわけにはいかないが、各アーティストに対する思い入れ、嗜好などを忘れて画面を見ることを私としてはお薦めしたい。もちろん、ノスタルジーにひたることも可能だ。しかし、私は、未来のためにこの一連の映画を見ていただくことを願っている。

アーティストのPV集であったり、ライブ映画であったりにはそれなりの価値があると思う。だが、今回、連続して公開する作品群には、異なる接し方が求められている、と私は思う。

どんなジャンルであっても、受け手が彼なりに解釈し、他の何物かへと変容させる、こうしたアクションを通して受容が完成する作品というものがある。

デジクリで紹介したジョイ・ディビジョンのドキュメントについてもいえるが、例えば、都市計画に携わる人に、こうした映画を見てもらえば、彼は、そこに大きな都市再生のヒントを発見することだろう。もちろん、都市計画だけではない。音楽志望なら直截的な影響をこうむるのは当然。ほかでも何か志のある人なら無駄にはならない。

閉塞した時代、先が見えないといわれる最中に私たちにできることは何か、いま誰もが苦しんでいるこうした問題に解決の糸口を与えること。こうしたことが公開意図にあるように思われる。

こうしたドキュメントが内包する可能性、パワーを一部の音楽マニアのものにしておいて、いいわけがないのである。

関連記事のリンクを掲載しておくので、とにもかくにもチェックしてね。
< http://www.barks.jp/news/?id=1000042455
>
< http://www.punkmovie.net/
>

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>

photo
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