音喰らう脳髄[56]粘り腰なら自信がある
── モモヨ ──

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これまで時にふれて、私が個人全集を制作中であることについて書いてきたが、数年にわたる作業も今や終盤にさしかかっている。リミックス、リマスタリングを終えてからはオリジナル画像の動画化を試みて、ちまちまとDIY風味たっぷりのPVじみたモノをつくっていた。

で、ここのところは最終工程。ブックレットの校正にかかっている。ところが、実にこの校正作業が私にとっては鬼門、大の苦手なのだ。このデジクリの原稿ですら、編集長の助けがなければ皆さんの目を汚すことすら躊躇われる状況。誤字満載である。このくらいの分量で喘いでいるのに、100ページを越える情報量だ。



むろん多くのスタッフが関わってくれている。私ひとりではない。私ひとりが、じたばたしてどうなる、というわけではないが、それでも責任というものがある。それでもボヤキは出る。やはり校正は苦手だ。精神衛生上よろしくない。

文章、刷り物だけじゃなく、おしなべて何事かを満足いく仕上がりにするためには手間がかかるものだ。その最後の段階で手間を惜しめばすべてが台無しだ。どんな仕事、技であろうと、最後まで気をぬかない、手抜きをしないことである。

今はむかしの話だが、ひとりの木登りの名人がいた。ある日、弟子の木登りを黙ってみていた彼が、もう飛び降りてもよさそうなところまで降りて来た弟子に対して「気をつけろ」と声をかけたという。今にも地に足がつく、もう大丈夫というところへ来てから怪我をすることが多い、そう名人は言うのである。

ご存知の方も多いだろう。徒然草に出てくる逸話であるが、これは情報が電子化されたいまにおいても忘れてはならぬ要訣だろう。木登りにおいてのみならず、大工、左官、とび職はもちろんのこと、私達のようなクリエイターにおいても、なお忘れてはならない要訣だ。

校正を繰り返せば、当然ながら手間も経費もかかってしまう。関係者各位には迷惑なこと、はなはだしい。

とは思うが、年老いてなお発達するのは粘り腰、その強さ、そして顔面の厚さくらいである。ご容赦願うしかない。と、いいながらも、昨夜、サイトにアップした記事中にも誤字があった。恥ずかしい間違いだ。読んでくだすった方から連絡をもらっている。この稿を送信したら直しておこうと思う。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>

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