ニュース&解説 無駄な印刷物を作らない「フレッシュプリント」の3つのメリット
── 大野義貴 ──

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◎デジクリのサイトを支援してくださっている新潟県五泉市の株式会社吉田印刷所は、環境に対する取り組みとして、以前よりフレッシュプリント(鮮度保持印刷)を提案してきた。この度、これまでの取り組みを、国際的環境印刷大賞である「ハイデルベルグ・エコ・プリンティング・アワード2008」に応募したところ、全世界で2社選ばれる大賞のうちの1社として、革新的ソリューション部門(Innovative Solution)での大賞を受賞した。「フレッシュプリント」とはなにか、同社の大野義貴さんに説明していただいた。しかし、印刷会社が印刷物を減らす提案をするとは……。(柴田)
< https://www.ddc.co.jp/news/archives/20090203-150000.html
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吉田印刷所では、無駄なものを作らない「フレッシュプリント」の提案で、第一回・ハイデルベルグ・エコ・プリンティングアワード(国際環境印刷大賞)において、革新的ソリューション部門の大賞を受賞しました。

ハイデル・エコ・プリンティングアワード 2008開催(英語)
< http://www.heidelberg.com/www/html/en/content/articles/press_lounge/drupa_information/080528_eco_printing_award
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ハイデル・エコ・プリンティングアワード2008受賞発表
< http://www.jp.heidelberg.com/www/html/ja/content/articles/recent_news/news2009/090129_ecoprintaward
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印刷物を作るのに、「無駄なものを作ろう」と思っている人はいないはずです。「無駄なものを作らない」という言葉は、最終的に不本意ながら無駄になってしまう印刷物のことを指します。

印刷会社が、印刷物を減らす提案をするなんて、印刷会社の存在意義を否定しているのでは? と思う方もいるかもしれません。しかし、印刷業は、他の業界と比較すると環境問題への取り組みが遅れていると言われており、自社の利益のみを追求するのではなく、他業界との調和や、環境との調和が求められているのです。

●「フレッシュプリント」って、なんだろう?

連続稼働が前提となっているオフセット印刷機の生産システムにおいて、コスト面のみを追求すると行き着く「大量一括印刷」に対し、フレッシュプリントの仕組みは、「年間契約で料金を定め、複数回で分割印刷を行う」というものです。これにより、次の3つのメリットが生じます。

1──情報鮮度の維持

印刷物の鮮度といえば、掲載されている情報の鮮度のことになります。情報の鮮度は、印刷物が完成したときから時間が経てば経つほど陳腐化しますので、従来の大量一括印刷では情報更新が追いつかずに、結果的には印刷物が廃棄されていました。
「フレッシュプリント」では、分割印刷時に改訂をかけることにより、常にフレッシュな情報を提供する印刷物が生産できます。

2──在庫管理が改善

印刷物を生産すると、生産した印刷物の置き場所が必要になります。従来の大量一括印刷を行うと、大量の在庫保管スペースが必要でした。また在庫管理も煩雑になります。
「フレッシュプリント」では、分割印刷数を適正にすることで、保管場所が少なく済みます。

3──資源の消費を抑えられる

大量印刷を前提に印刷をすると、印刷した分を長期間にわたり使用することになります。印刷の段階では、需要の見通しが不明瞭なままだったりしませんか?そして、大量印刷のコストメリットから、多めに印刷しておけば間違いはないとして印刷することになります。その結果、実際の使用量が予想を下回り、未使用の印刷物の廃棄につながることが多々ありました。印刷物の廃棄、それは、「経費を捨てて、かつ資源も捨てている」ということに他なりません。
「フレッシュプリント」の分割印刷を前提にした発注形態では、分割生産の間隔となる短い期間での需要予測に応じて発注を行うことにより、最終的に廃棄することになる印刷物が最小限に抑えられます。

このように、従来の印刷物生産の常識「大量に作ると安くなるから、大量に作ってしまいましょう」を改め、「適正な量を分けて作る」ということで、今までの問題が解決する点が、環境大賞受賞につながりました。これは、2000年より行ってきた「小ロットオフセット印刷」から始まる、吉田印刷所にとってはあたりまえのサービスが認められたということでもあります。

他の環境対応につきましては、以下のページで掲載しています。
・乾燥促進印刷・パウダー削減
< http://www.ddc.co.jp/eco/powder.html
>
・現像液不要CTP刷版
< http://www.ddc.co.jp/furnishing/processless-plate.html
>
・温室効果ガス対策
< http://www.ddc.co.jp/eco/environment-report.html
>

印刷業では、いままで大量生産・大量消費に基づいて企業活動をしていた面は否めません。しかし「無駄な印刷物を作らせない」地球環境に配慮した企業活動をすることで、印刷業が今後も社会に必要とされる産業となるよう、これからも環境問題に真摯に取り組んでまいります。

【大野義貴】yositaka@ddc.co.jp < http://www.ddc.co.jp/
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吉田印刷所の中で、よそとはひと味違ったサービスを開発・提供しています。
エコ関係以外では、PDFフォント○×チェッカー< http://pdf.printjapan.com/
>が皆様のお役に立てると思います。Mac Internet Explorer 5でも使える親切設計(?)です。