<学生達のあまりにも漠然としたCG志向>
■伊豆高原へいらっしゃい[34]
学生にとってクリ職ってなんだ?
松林あつし
■わが逃走[41]
豊洲界隈散歩の巻
齋藤 浩
■気になる情報・記事CLIP
■伊豆高原へいらっしゃい[34]
学生にとってクリ職ってなんだ?
松林あつし
■わが逃走[41]
豊洲界隈散歩の巻
齋藤 浩
■気になる情報・記事CLIP
■伊豆高原へいらっしゃい[34]
学生にとってクリ職ってなんだ?
松林あつし
< https://bn.dgcr.com/archives/20090326140300.html
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長らくこのコーナーを担当して来ましたが、仕事の都合で今回をもちまして最終回とさせていただきます(ネタ切れという噂もありますが)。ご愛読いただきました方々に感謝申し上げます。
さて、最後の記事ですが、やはりCGやイラストを生業としている者らしく締められたらいいなとは思いますが、この歳になって今更クリエイターとはなんぞやと説いても、自分さえ軌道に乗せることが出来ない現状では、そんなやつが何をか言わんや、ということになりかねませんね。
しかし、よく考えれば、今の時代、クリ職ならとりあえず目指したいという若者も多いのが現状で、私の今までの経験が少しでも参考になればと思い、クリエイターを目指すってどういうことなんだろう、というテーマで書いてみたいと思います(「クリエイター」というくくりはあまりにも曖昧で、あまり多用したくはない言葉ですが、他の言い回しが見つからなかったので、今回はクリエイターを職業の一環として捉えさせていただきます)。
まずは、今の時代のクリ職がどんなものかを主観的にまとめてみたいと思います。IT革命と騒がれた時代はすでに過去のものとなり、Information Technolo-gyはすでに我々にとって、空気のように当たり前の存在となりました。情報通信を扱うメディアにおいては、CGは必要不可欠な存在なのです。そんな、右を見ても左を見てもCGだらけの中で育った若者が、それらを広義に捉えて、クリエイターになりたいと漠然と思うのも頷けます。
事実、CGソフトが安価になり、誰でも扱えるようになった時代を象徴するかのように、CGクリエイターに憧れる若者の裾野は広がっています。しかし、だからといってクリエイター志望の学生が、業界から引く手あまたかと言うとそうではありません。とくにこんな大不況の時代では、クリ職が有利という感覚はまったくないのです。
これだけCGが溢れかえっている世の中でありながら、何故CG系の就職が困難なのでしょうか。一つには、あまりにも多くの学生や若者がその分野を安易に目指してしまうことが上げられますが、他の理由として、職場のキャパシティ自体はあまり増えていないのではないか、ということがあるのです。
ここで、あまりにも漠然としている「クリエイター職」というものをまとめてみたいと思います(デザイン系志向の強いまとめ方になっています)。
1)世界的なメディアに取り上げられたり、世間からは「アーティスト」と呼ばれる、少数の突出した才能を持ったマルチクリエイター、芸術家。
2)著名な映像作品やゲーム制作において才能を発揮する、企業内またはフリーのクリエイター、デザイナー。
3)ある分野に限って、注目を集める著名なCGクリエイター、デザイナー。
4)ある分野に限って、独自の作品を仕事に生かす無名のCGクリエイター、イラストレーター。
5)企業内で商品のデザインやイラストを担当するサラリーマンデザイナー。
6)企業からの「外注」としての依頼を受ける、デザイン事務所や個人のデザイナー。
7)企業内でデザインやテキスト打ち込み、レイアウトなどを担当するオペレーター。
7項目に分けてはいますが、それぞれは大きく重なっており、厳密な違いがあるわけではありません。
こうやってまとめてみると、20年前に比べて、クリエイターの活躍する分野が広くなったという印象は受けません。例えば、新たに誕生したWebという分野も、以前はデザイン事務所として印刷系のデザインを担当していた会社が、Webデザインにまで仕事の範囲を広げた、というだけであって、まったく新しい仕事の分野が生まれた訳ではないのです。場合によっては、デザイン事務所が映像編集を行うこともあるでしょう。つまり、近年、クリ職と呼ばれているものの多くは、以前の業種から移行したり、活動範囲を広げただけの既存業種がシフトした結果だと思うのです。
しかし、学生達の多くはそんな業界を目指したい、と思っています。僕はここ5年ほど、CGを扱う専門学校の非常勤講師をしてきました。そんな中で感じたのは、学生達のあまりにも漠然としたCG志向なのです。
クリ職を目指したいという学生のモチベーションは様々です。何が何でもゲームクリエイターになりたくて、独自にプログラミングやCGソフトの研究をしたり、著名なアーチストの所属する事務所の門を叩いたりする者もいるでしょう。映画制作に参加したくて、単独アメリカに修行に出かける者もいるでしょう。何年もかけて一人でこだわりの作品を作り上げ、世間に発表する者もいるでしょう。とにかく、キャラクターデザイナーになりたくて、地方から出てきて、東京の有名専門学校で頑張る者もいるでしょう………しかし、それらは少数だろうと思います。その他の多くのCG志向の学生は目標を持てないまま、専門学校の2年、3年を終えてしまいます。
まあ、これはしかたのないことだと思います。僕の学生時代も別に目標があった訳ではありませんから………しかし、20年前と今とでは明らかに学生の「気質」の違いを感じてしまいます。もちろん、僕が見た一部の状況を日本全国の学生に当てはめることはできませんが、メデイアが発信する今の学生のモチベーションに関する情報を見ると、僕が感じた状況とかなり近いな、と思うこともあるのです。
ある番組で、不況下の就職活動を取り上げていました。その中で、企業の担当者は、今の新入社員は「これは学校で習っていないので、できない」と言う者が多い、と嘆いていました。これと同じ言葉を僕は何度も授業の中で聞きました。「だって、習ってないもん………」
学校は「習う場」ではなく「学ぶ場」なんですけど………学ぶ、とは自発的学習のことで、わからないことがあれば、調べるというのが「学ぶ」のスタンスです。「習ってないから、わからない」という理論では、我々の年代のクリエイターと呼ばれる人たちは、誰も仕事を遂行できなかったでしょう。何せ、学生時代〜就職後にかけても、パソコンなんてない時代で、パソコン登場後もソフトの使い方を教えてくれる人なんていませんでした………学ぶ、というスタンスが欠けていれば、今の我々はなかった訳です。
しかし、今のCGデザイン系の学校で学んでいる多くの学生に、この「学ぶ」という姿勢が乏しいと感じてしまいます(とくに地方の学校はそうですが、これは一極集中の社会にあっては当然かも知れません)。その結果、多くの学生が途中でやる気をなくしてしまい、ただ流されるだけの学生生活を送るようになります。得に、1年を経たあたりからモチベーションは大きく落ち始め、2年生の半ばに「クリエイターになんかなれないんだ」「別にクリ職でなくてもいいや」と感じるようになるのです。
これは何故でしょうか。僕が思うに、多くの子供達が物に興味を持てなくなっている結果ではないかと思うのです。CG系の学校に入学したということは、少なくともCGに興味があったからではないかと思いがちですが、実はそうでもありません。今の子供達は、コミック、アニメ、ゲームにどっぷり浸かった中で、自分の進む道を見つけようとします。その結果、これら以外に今まで興味を持った対象がないので「自分の興味を持てる分野=コミック、ゲーム」と捉えてしまいます。
その流れで、CGを学べばそういう方面の仕事ができるのではないかと、安直に考える傾向にあるのだと思います。事実、CGをやりたかったからその学校に入学した、というのではなく、他に進む道が見つからなかったので、しかたなくCG系の学校に入った、という学生が圧倒的に多いのが現状なのです。
そういう学生に作品を作らせると、決まって「美少女系」「ゲームヒーロー系」「トレンディコミック系」のキャラクターを描きます。しかし、彼らは今まで絵をほとんど描いたことがありません。ですのでそのクオリティは………。そして、「何故そのモチーフを選んだのか」という問いには、必ずこういう答えが返ってきます………「好きだからです」。
ここに、モチベーションが上がらない大きな要因があります。多くの学生にとって「好き」というのは、コミックを読む、ゲームをプレイすることが好きなのであって、決して「造る」のが好きではないのです。
CGが使われる分野は多岐に渡ります。そんな中、アニメ、ゲーム系キャラの分野はほんの一部なのです。しかし、彼らは「CG=アニメ、ゲーム系キャラ」と捉えてしまいます。他に興味が持てないからです。そして、見たり、読んだり、遊んだりするのと「造る」こととのギャップに気づいた時、モチベーションを落としてしまいます。
僕は、学生時代にそれほど高いCG技術の獲得は、必要ないと思っています。大事なのは「自由な発想と豊かな表現力」です。そのためにも、学生時代、多くの作品に触れ、色々な方向性を試してみることは非常に大事です。在学期間中に何かの結果を出す必要はまったくないのです(企業の人事担当者も、CG検定とか、使えるソフトは何かとか、作品の仕上がり度ばかりに目を奪われず、その学生が持つ感性を見抜く目を持ってほしいものですが)。
さらに、想像していたクリ職に就けなくても、気を落とす必要もなければ、あきらめる必要もありません。何故なら、本当に進みたい道を見つけるのは、就職後で良いからです。もちろん、そこに「学ぶ」の姿勢がなければなりませんが、学生時代に明確な目標を持って進む、というのはある意味無理があると思うのです。
そんな漠然とした目標を探すより、広大なCGの世界に触れ、造る楽しさ、おもしろさに目覚めることが最も重要だと思うのです。使い古された言葉ですが、「好きこそものの上手なれ」です。しかし、こればかりは、当人がそう思わなければどうしようもありません。画一的な義務教育にも問題はあるような気がしますが、学生達の視野を広げるためには、専門学校としての取り組みも必要だと感じています。
最後に我々の世代(自分)に向けての提言ですが、上記学生に対する考察はすべて、自分に対しても当てはまります。広い視野を持って物事に挑むのは何歳でも構わないのです。とくにフリーランスの場合は何でもできます………できるはずです。この不況で原稿料を抑えられたり、依頼が減ったりしていることと思いますが、こんな時代だからこそ、考え方を大きく広げて多くのものを吸収し、挑戦していきたいものです。チャレンジ精神は、健康の次に大事な要素だと思うのです。
【まつばやし・あつし】イラストレーター・CGクリエイター
< http://www.atsushi-m.com/
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■わが逃走[41]
豊洲界隈散歩の巻
齋藤 浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20090326140200.html
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いつか書かなきゃと思っているうちに、ずいぶん時間が経ってしまった。今回は2か月前の散歩のレポートです。
1月某日、晴れ。休日だというのにうっかり早起きしてしまった。極親しい間柄の年上の女性Aさん(年齢非公開)は、さんざん飲んで明け方に帰ってきたらしい。どうせ起きるのは夕方になると見込んだ私は、前から気になっていた豊洲近辺を散歩してみることにした。
以前、屋形船で酔っぱらった際、このあたりの昭和と近未来が同居しているような風景にグッときてしまい、それ以来いつか散歩せねば! と思い続けていたのだ。言うなれば「銀河鉄道999」など、松本零士作品に登場するようなギャップ感あふれる風景。昔ながらのラーメン屋の向こうに、近未来的デザインの高層ビルが立ち並ぶこれらの情景を、「大四畳半的風景」と呼称してみる。
10:30頃(だったと思う)、月島駅下車。近くのコンビニで水と食料を購入。周囲を見回すと高層マンションがそこら中で建設中だ。それらの麓には由緒正しい木造建築。軒先には防火用水と鉢植えがずらりと並んでいるといった、昭和な風景にどうにもテンションが上がる。が、やはり再開発進行中という感じで、いたる所に分断された長屋建築やコインパーキングが目立っていた。
ちなみに、今回の散歩のお供はSONYのα350。コストパフォーマンスに長けた、小さく軽いデジタル一眼レフだ。素敵な看板建築や風呂屋の煙突をパシャパシャと撮る。
しばらく歩くと相生橋に着いた。比較的新しい橋だが、落ち着きと趣きのある美しいトラス橋だ。上下線の間、中央分離帯に相当するところにもトラスの列があり、実に絵になる。
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さっそく渡ってみた。橋の真中あたりまで来て、ふと川面をながめると……なんとそこには宇宙船が! これが噂の「ヒミコ」か!! もう、バックの風景とベストマッチングじゃないかー!! つーか、ここホントに現代の東京?この散歩、のっけから完全なる「大四畳半」になってしまった。
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さて、ヒミコを見送ると、向こう岸に巨大なマストが見えてきた。おお、あれが「明治丸」だな。明治7年建造の鉄製の汽船で、現在は東京海洋大学(旧東京商船大学)のキャンパスに保存。ちなみに、喫水線から下は地面に埋まっている。
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この日は公開日ではなかったので見学はできなかったが、大学の門からでもその姿を見ることができる。ただし尻だけど。で、ちょこっと塀越しに校舎を見てみたのだが、煉瓦づくりの立派な建築だった。角のアールの造形が絶妙。そしてその先にはかわいい天文台らしき建物が。
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これもずいぶん古そうだ。おそらく明治期の建物。やはり大学など守られた敷地内の建築は、「スクラップ&ビルド」の餌食になりにくくて良いなあ。前も書いたけど、おじいさんやおばあさんと孫が、風景を共有するということはとても大切なことなのだ。エラい人はとにかく壊して建ててを繰り返さないと票が集まらなくなっちゃうと思っているらしいが、守るべき日本の風景を自らの手で壊していくという行為は、「愛国心を育てたい人達」の人達にとっても得策ではないと思うのだが、いかがか。
さて、再び相生橋を渡り、運河沿いを下流に向かう。道路脇の廃工場がイカすぜ。朝潮大橋にさしかかると、
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ミニマルアートのようなコンクリート堤防に続いて、
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ガンダムのような佃水門が現れた。おかしな色にペイントされているが、意外に似合っているから不思議だ。ちなみに、この写真をモノクロ変換してみると、水門本来の機能美が見えてくるように思えるのだがどうだろう。
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さて、朝潮大橋を渡りきると、進行方向にアーチ式の錆びた鉄橋が見えてくる。これこそが以前から気になっていた、東京都臨港線の晴海橋梁である。この付近、仕事や飲み会で何度も来てはいたものの、落ち着いて見に行ったことがない。早く行かないと取り壊されてしまうのではないか、という不安にかられていたのだ。それが今、こうしてオレの目の前に。光の当たり具合もイイ。
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名著『東京の痕跡』によれば、「仮面ライダーV3」のロケ地でもあるそうな。それにしても、この橋をはさんで東側と西側では全く風景が違う。首を左右に振るだけで、昭和と近未来とを行き来するような錯覚に陥るのだ。ちなみにこちらが東側。まさに大四畳半。
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そしてこちらが西側。古き良き晴海の風景。
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タワーマンションの建設ラッシュの中で、この辺りでは最後に残った由緒正しい晴海レミコンの工場。こんな風景もあと少しで見納めになってしまうかもしれない。さらに近づいて観察してみると、橋にはなんと線路が4本あるではないか。
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ああ、巻き尺持ってくるんだった。おそらく外側の線路の幅が日本における一般的な軌間1067mmで、内側のものが工場や専用線で使われた800mmのナローゲージでは? などと憶測してしまう。かつてここを小さな機関車が貨物列車を引いて渡っていたことを想像してみると、なんともシアワセな気持になるのである。
さて、晴海運河沿いをさらに下ると、21世紀的複合商業施設の象徴、ららぽーとにたどり着く。ここもちょっと前までは、造船所だとか工場とか倉庫だったんだろうなあ。
かろうじて保存され、モニュメントと化した荷揚げ用クレーンが場違いな感じで、ちょっとカワイソウな印象。このへんで軽く食事をとった後は、豊洲運河から平久川をさかのぼり、門前仲町方面へ向かうことにした。渋い倉庫街、古い小学校に並んで、タワーマンションの桁違いの巨大さたるや異常。
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途中、鴎橋を越えたあたりで広いというか長い土地を発見。
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おそらく貨物線の廃線跡ではないか、なんて思って反対側を見たら、おお、まだ撤去されていない線路を発見! やっぱりここは線路だったんだ!! とか一般人にとって全くどうでもいいことに感動する。
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地形とか土地の形に限らず、おそらくはすべてのものの形状にはその形になった理由があるのだ。その理由を探ったり読み解いたりすることで、その逆の流れ(≒デザイン)を知ることができる。こういうことこそ人生の喜びだと思うのだが、あまり熱く語りすぎると「キモい人」ということになってしまうので、ほどほどに語るのが肝要。
さらに歩く。このあたりは運河が縦横無尽に走っているので、ときどき河の五叉路があったり唐突に水門が出現するので楽しい。
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橋もさまざまな時代のさまざまな形状のものが次から次へと現れるので、歩いていてまったく飽きないのだ。こちらは白妙橋。シンプルな構造美。
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そして美しいトラス橋・平久橋(当時は改装作業中だった)を渡り、東富橋あたりで陽も落ちてきたので、ここを終点とした。この橋も改修されたばかりなのか、真新しい鉄橋然とした淡いグリーンのペイントと西日とのコントラストがとても美しかった。
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という訳で、門前仲町駅到着は16時過ぎだったかな。その後、神保町で伊藤孝著「東京の橋」を購入した後、素敵なカレー屋「エチオピア」にてチキンカリーを食し帰路についたのであった。
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://www.c-channel.com/c00563/
>
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
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■気になる情報・記事CLIP
< https://bn.dgcr.com/archives/20090326140100.html
>
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●フォトイメージングエキスポ2009 本日から
< http://www.photoimagingexpo.jp/index2.html
>
会期:3月26日(木)〜3月29日(日)10:00〜17:00
会場:東京ビッグサイト 東4・6ホールおよび会議棟
入場料:Webで事前登録すれば無料。当日一般1,000円、学生証・シルバーパス・障害者手帳を持参の人、および小学生以下無料
●歴史と伝統ある広告デザイン賞の作品展─「毎日広告デザイン賞入賞作品展(マイコミジャーナル)
4/22〜5/18 松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/16/058/index.html
>
●クリエイター必見のタイポグラフィ作品を100点展示─「09 TDC展」開催(マイコミジャーナル)
4/3〜4/25 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/17/059/index.html
>
●雑誌推薦の若手写真家15名による写真展「Editor's Choice」開催(マイコミジャーナル)
5/1〜6/1 RING CUBE ギャラリーゾーン
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/23/030/index.html
>
●1960年代から現在までの映像作品を約50点展示─「ヴィデオを待ちながら」(マイコミジャーナル)
3/31〜6/7 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/21/001/index.html
>
●赤瀬川原平、横尾忠則、宇野亜喜良らの作品を展示─「氾濫するイメージ」(マイコミジャーナル)
4/4〜5/17 八王子夢美術館
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/25/062/index.html
>
●デザインの原点を見つめるセミナーツアー「アドビ デザインサミット 2009(マイコミジャーナル)
4/23・5/20東京 4/24大阪 入場無料 要事前登録
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/25/013/index.html
>
●「描いた瞬間、“違うな”って思った」──漫画家の卵がワコム「Intuos4」を試す(ITmedia)
< http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0903/26/news010.html
>
●5年ぶりに登場のプロ向けペンタブレット Intuos4(ASCII.jp)
< http://ascii.jp/elem/000/000/405/405264/
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●Mac Fan ハードウェアレビュー ペンタブレット「Bamboo Fun」(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/column/macfanhard/008/index.html
>
●キヤノン、セキュリティ機能が強化されたSOHO向けインクジェット複合機(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/24/032/index.html
>
●パナソニック、フルHD動画記録が可能になった「DMC-GH1」〜専用レンズで動画記録中の“フルタイムAF"に対応(デジカメWatch)
< http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2009/03/25/10532.html
>
●キヤノン、フルHD録画に対応した「EOS Kiss X3」(デジカメWatch)
< http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2009/03/25/10525.html
>
●ソニー、高速連写とパノラマ撮影が可能なデジタルカメラ「DSC-HX1」を発表(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/25/035/
>
●【インタビュー】Flashアニメクリエイター・青池良輔が語る「Adobe Flash CS4」の可能性とは(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/03/25/aoikefl/
>
●フォトショ画像が1クリックでCSS+HTMLに!(ASCII.jp)
< http://ascii.jp/elem/000/000/404/404439/
>
●気になる新型Mac miniの進化具合を、むいて調べた(ITmedia)
< http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0903/23/news035.html
>
●国内最大規模の『第21回 CGアニメコンテスト』自主制作の作品を募集中(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/23/029/index.html
>
●第1回おばかアプリ選手権はこうして行われた(@IT)
< http://www.atmarkit.co.jp/fwcr/design/ux/d89clip07/01.html
>
●第14回 AMDアワード、「App Store」に大賞(ITmedia)
< http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/0903/25/news033.html
>
●[WSJ]ソニーとGoogle、電子書籍でAmazonに対抗(ITmedia)
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0903/23/news020.html
>
●08年イチオシのマンガは?ファンが選ぶ「マンガ大賞2009」(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090325/1024920/
>
●つくば発の最新ロボット技術! サイバーダイン「HAL」を体験にでかけよう(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090324/1024870/
>
●iPhoneとGmailがあれば手帳は要らない—吉越浩一郎の整理術(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090316/1024681/
>
●情報は整理せずGmailに──「超」整理法・野口悠紀雄インタビュー(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090311/1024524/
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■編集後記(3/26)
・影山明仁「名作マンガの間取り」(ソフトバンク クリエイティブ)を読んだ。13cm×14cm、112ページのコンパクトな本だ。筆者は不動産業・建築コンサルタントを営んでおり、仕事である設計に行き詰まると、マンガの間取りを作図して息抜きしているという。20年前にサザエさんの家の間取りを、同じ家族構成の客のためにシャレで作ったことがきっかけで、マンガで気になった家の間取りを次々に描き始めたという。この本で紹介されているのは、マンガ「ドラえもん」の野比のび助邸、「天才バカボン」の天才邸、「Dr.スランプ」の則巻千兵衛邸、「巨人の星」の星一徹邸、「ちびまる子ちゃん」のさくら友蔵邸などのほかに、アニメや映画、文学などに出てくる家の間取り50例である。もちろん、この間取り図が正確なものかというと、ほとんど空想で補っているという。それはそうでしょう。たぶんマンガ家だって、間取りまで考えて作品を描いているわけではないだろう。だから、作品を綿密にチェックすると矛盾だらけだという。正確ではなくてもいい、これは納得できる間取り図だ。とはいいつつ、わたしはマドラー(間取りマニア)ではないから、平面図から3次元空間をイメージするのは容易ではない。それぞれの間取り図に添えられたデータやコメントも楽しい。もっとも、知っているのは半分くらいしかないが。一番おもしろかったのは番外編8の「注文の多い料理店」の山猫軒だ。この怪しい洋館の間取りは完全に想像上のものだが、思わず絵本(スズキコージ絵/ミキハウス)を持って来て、各場面の部屋をいちいち確かめたのであった。こういう役に立たない一発芸の本はほんとうに楽しい。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797342293/dgcrcom-22/
>
アマゾンで見る(レビュー8件)
・松林さん、ありがとうございました!/「Web Designing」誌最新号、大賀葉子さんの新刊「毎日描きたい パソコンイラスト描きかた帳」のプレゼント応募受付中です。応募待ってます!/WBCで燃え尽き、ネタがない……。年度末ということで、ばたついているせいもある。進行中のものはまだここには書けない。うーん、うーん。 (hammer.mule)
< http://www.dgcr.com/present/list.html
> プレゼント
学生にとってクリ職ってなんだ?
松林あつし
< https://bn.dgcr.com/archives/20090326140300.html
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長らくこのコーナーを担当して来ましたが、仕事の都合で今回をもちまして最終回とさせていただきます(ネタ切れという噂もありますが)。ご愛読いただきました方々に感謝申し上げます。
さて、最後の記事ですが、やはりCGやイラストを生業としている者らしく締められたらいいなとは思いますが、この歳になって今更クリエイターとはなんぞやと説いても、自分さえ軌道に乗せることが出来ない現状では、そんなやつが何をか言わんや、ということになりかねませんね。
しかし、よく考えれば、今の時代、クリ職ならとりあえず目指したいという若者も多いのが現状で、私の今までの経験が少しでも参考になればと思い、クリエイターを目指すってどういうことなんだろう、というテーマで書いてみたいと思います(「クリエイター」というくくりはあまりにも曖昧で、あまり多用したくはない言葉ですが、他の言い回しが見つからなかったので、今回はクリエイターを職業の一環として捉えさせていただきます)。
まずは、今の時代のクリ職がどんなものかを主観的にまとめてみたいと思います。IT革命と騒がれた時代はすでに過去のものとなり、Information Technolo-gyはすでに我々にとって、空気のように当たり前の存在となりました。情報通信を扱うメディアにおいては、CGは必要不可欠な存在なのです。そんな、右を見ても左を見てもCGだらけの中で育った若者が、それらを広義に捉えて、クリエイターになりたいと漠然と思うのも頷けます。
事実、CGソフトが安価になり、誰でも扱えるようになった時代を象徴するかのように、CGクリエイターに憧れる若者の裾野は広がっています。しかし、だからといってクリエイター志望の学生が、業界から引く手あまたかと言うとそうではありません。とくにこんな大不況の時代では、クリ職が有利という感覚はまったくないのです。
これだけCGが溢れかえっている世の中でありながら、何故CG系の就職が困難なのでしょうか。一つには、あまりにも多くの学生や若者がその分野を安易に目指してしまうことが上げられますが、他の理由として、職場のキャパシティ自体はあまり増えていないのではないか、ということがあるのです。
ここで、あまりにも漠然としている「クリエイター職」というものをまとめてみたいと思います(デザイン系志向の強いまとめ方になっています)。
1)世界的なメディアに取り上げられたり、世間からは「アーティスト」と呼ばれる、少数の突出した才能を持ったマルチクリエイター、芸術家。
2)著名な映像作品やゲーム制作において才能を発揮する、企業内またはフリーのクリエイター、デザイナー。
3)ある分野に限って、注目を集める著名なCGクリエイター、デザイナー。
4)ある分野に限って、独自の作品を仕事に生かす無名のCGクリエイター、イラストレーター。
5)企業内で商品のデザインやイラストを担当するサラリーマンデザイナー。
6)企業からの「外注」としての依頼を受ける、デザイン事務所や個人のデザイナー。
7)企業内でデザインやテキスト打ち込み、レイアウトなどを担当するオペレーター。
7項目に分けてはいますが、それぞれは大きく重なっており、厳密な違いがあるわけではありません。
こうやってまとめてみると、20年前に比べて、クリエイターの活躍する分野が広くなったという印象は受けません。例えば、新たに誕生したWebという分野も、以前はデザイン事務所として印刷系のデザインを担当していた会社が、Webデザインにまで仕事の範囲を広げた、というだけであって、まったく新しい仕事の分野が生まれた訳ではないのです。場合によっては、デザイン事務所が映像編集を行うこともあるでしょう。つまり、近年、クリ職と呼ばれているものの多くは、以前の業種から移行したり、活動範囲を広げただけの既存業種がシフトした結果だと思うのです。
しかし、学生達の多くはそんな業界を目指したい、と思っています。僕はここ5年ほど、CGを扱う専門学校の非常勤講師をしてきました。そんな中で感じたのは、学生達のあまりにも漠然としたCG志向なのです。
クリ職を目指したいという学生のモチベーションは様々です。何が何でもゲームクリエイターになりたくて、独自にプログラミングやCGソフトの研究をしたり、著名なアーチストの所属する事務所の門を叩いたりする者もいるでしょう。映画制作に参加したくて、単独アメリカに修行に出かける者もいるでしょう。何年もかけて一人でこだわりの作品を作り上げ、世間に発表する者もいるでしょう。とにかく、キャラクターデザイナーになりたくて、地方から出てきて、東京の有名専門学校で頑張る者もいるでしょう………しかし、それらは少数だろうと思います。その他の多くのCG志向の学生は目標を持てないまま、専門学校の2年、3年を終えてしまいます。
まあ、これはしかたのないことだと思います。僕の学生時代も別に目標があった訳ではありませんから………しかし、20年前と今とでは明らかに学生の「気質」の違いを感じてしまいます。もちろん、僕が見た一部の状況を日本全国の学生に当てはめることはできませんが、メデイアが発信する今の学生のモチベーションに関する情報を見ると、僕が感じた状況とかなり近いな、と思うこともあるのです。
ある番組で、不況下の就職活動を取り上げていました。その中で、企業の担当者は、今の新入社員は「これは学校で習っていないので、できない」と言う者が多い、と嘆いていました。これと同じ言葉を僕は何度も授業の中で聞きました。「だって、習ってないもん………」
学校は「習う場」ではなく「学ぶ場」なんですけど………学ぶ、とは自発的学習のことで、わからないことがあれば、調べるというのが「学ぶ」のスタンスです。「習ってないから、わからない」という理論では、我々の年代のクリエイターと呼ばれる人たちは、誰も仕事を遂行できなかったでしょう。何せ、学生時代〜就職後にかけても、パソコンなんてない時代で、パソコン登場後もソフトの使い方を教えてくれる人なんていませんでした………学ぶ、というスタンスが欠けていれば、今の我々はなかった訳です。
しかし、今のCGデザイン系の学校で学んでいる多くの学生に、この「学ぶ」という姿勢が乏しいと感じてしまいます(とくに地方の学校はそうですが、これは一極集中の社会にあっては当然かも知れません)。その結果、多くの学生が途中でやる気をなくしてしまい、ただ流されるだけの学生生活を送るようになります。得に、1年を経たあたりからモチベーションは大きく落ち始め、2年生の半ばに「クリエイターになんかなれないんだ」「別にクリ職でなくてもいいや」と感じるようになるのです。
これは何故でしょうか。僕が思うに、多くの子供達が物に興味を持てなくなっている結果ではないかと思うのです。CG系の学校に入学したということは、少なくともCGに興味があったからではないかと思いがちですが、実はそうでもありません。今の子供達は、コミック、アニメ、ゲームにどっぷり浸かった中で、自分の進む道を見つけようとします。その結果、これら以外に今まで興味を持った対象がないので「自分の興味を持てる分野=コミック、ゲーム」と捉えてしまいます。
その流れで、CGを学べばそういう方面の仕事ができるのではないかと、安直に考える傾向にあるのだと思います。事実、CGをやりたかったからその学校に入学した、というのではなく、他に進む道が見つからなかったので、しかたなくCG系の学校に入った、という学生が圧倒的に多いのが現状なのです。
そういう学生に作品を作らせると、決まって「美少女系」「ゲームヒーロー系」「トレンディコミック系」のキャラクターを描きます。しかし、彼らは今まで絵をほとんど描いたことがありません。ですのでそのクオリティは………。そして、「何故そのモチーフを選んだのか」という問いには、必ずこういう答えが返ってきます………「好きだからです」。
ここに、モチベーションが上がらない大きな要因があります。多くの学生にとって「好き」というのは、コミックを読む、ゲームをプレイすることが好きなのであって、決して「造る」のが好きではないのです。
CGが使われる分野は多岐に渡ります。そんな中、アニメ、ゲーム系キャラの分野はほんの一部なのです。しかし、彼らは「CG=アニメ、ゲーム系キャラ」と捉えてしまいます。他に興味が持てないからです。そして、見たり、読んだり、遊んだりするのと「造る」こととのギャップに気づいた時、モチベーションを落としてしまいます。
僕は、学生時代にそれほど高いCG技術の獲得は、必要ないと思っています。大事なのは「自由な発想と豊かな表現力」です。そのためにも、学生時代、多くの作品に触れ、色々な方向性を試してみることは非常に大事です。在学期間中に何かの結果を出す必要はまったくないのです(企業の人事担当者も、CG検定とか、使えるソフトは何かとか、作品の仕上がり度ばかりに目を奪われず、その学生が持つ感性を見抜く目を持ってほしいものですが)。
さらに、想像していたクリ職に就けなくても、気を落とす必要もなければ、あきらめる必要もありません。何故なら、本当に進みたい道を見つけるのは、就職後で良いからです。もちろん、そこに「学ぶ」の姿勢がなければなりませんが、学生時代に明確な目標を持って進む、というのはある意味無理があると思うのです。
そんな漠然とした目標を探すより、広大なCGの世界に触れ、造る楽しさ、おもしろさに目覚めることが最も重要だと思うのです。使い古された言葉ですが、「好きこそものの上手なれ」です。しかし、こればかりは、当人がそう思わなければどうしようもありません。画一的な義務教育にも問題はあるような気がしますが、学生達の視野を広げるためには、専門学校としての取り組みも必要だと感じています。
最後に我々の世代(自分)に向けての提言ですが、上記学生に対する考察はすべて、自分に対しても当てはまります。広い視野を持って物事に挑むのは何歳でも構わないのです。とくにフリーランスの場合は何でもできます………できるはずです。この不況で原稿料を抑えられたり、依頼が減ったりしていることと思いますが、こんな時代だからこそ、考え方を大きく広げて多くのものを吸収し、挑戦していきたいものです。チャレンジ精神は、健康の次に大事な要素だと思うのです。
【まつばやし・あつし】イラストレーター・CGクリエイター
< http://www.atsushi-m.com/
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■わが逃走[41]
豊洲界隈散歩の巻
齋藤 浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20090326140200.html
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いつか書かなきゃと思っているうちに、ずいぶん時間が経ってしまった。今回は2か月前の散歩のレポートです。
1月某日、晴れ。休日だというのにうっかり早起きしてしまった。極親しい間柄の年上の女性Aさん(年齢非公開)は、さんざん飲んで明け方に帰ってきたらしい。どうせ起きるのは夕方になると見込んだ私は、前から気になっていた豊洲近辺を散歩してみることにした。
以前、屋形船で酔っぱらった際、このあたりの昭和と近未来が同居しているような風景にグッときてしまい、それ以来いつか散歩せねば! と思い続けていたのだ。言うなれば「銀河鉄道999」など、松本零士作品に登場するようなギャップ感あふれる風景。昔ながらのラーメン屋の向こうに、近未来的デザインの高層ビルが立ち並ぶこれらの情景を、「大四畳半的風景」と呼称してみる。
10:30頃(だったと思う)、月島駅下車。近くのコンビニで水と食料を購入。周囲を見回すと高層マンションがそこら中で建設中だ。それらの麓には由緒正しい木造建築。軒先には防火用水と鉢植えがずらりと並んでいるといった、昭和な風景にどうにもテンションが上がる。が、やはり再開発進行中という感じで、いたる所に分断された長屋建築やコインパーキングが目立っていた。
ちなみに、今回の散歩のお供はSONYのα350。コストパフォーマンスに長けた、小さく軽いデジタル一眼レフだ。素敵な看板建築や風呂屋の煙突をパシャパシャと撮る。
しばらく歩くと相生橋に着いた。比較的新しい橋だが、落ち着きと趣きのある美しいトラス橋だ。上下線の間、中央分離帯に相当するところにもトラスの列があり、実に絵になる。
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さっそく渡ってみた。橋の真中あたりまで来て、ふと川面をながめると……なんとそこには宇宙船が! これが噂の「ヒミコ」か!! もう、バックの風景とベストマッチングじゃないかー!! つーか、ここホントに現代の東京?この散歩、のっけから完全なる「大四畳半」になってしまった。
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さて、ヒミコを見送ると、向こう岸に巨大なマストが見えてきた。おお、あれが「明治丸」だな。明治7年建造の鉄製の汽船で、現在は東京海洋大学(旧東京商船大学)のキャンパスに保存。ちなみに、喫水線から下は地面に埋まっている。
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この日は公開日ではなかったので見学はできなかったが、大学の門からでもその姿を見ることができる。ただし尻だけど。で、ちょこっと塀越しに校舎を見てみたのだが、煉瓦づくりの立派な建築だった。角のアールの造形が絶妙。そしてその先にはかわいい天文台らしき建物が。
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これもずいぶん古そうだ。おそらく明治期の建物。やはり大学など守られた敷地内の建築は、「スクラップ&ビルド」の餌食になりにくくて良いなあ。前も書いたけど、おじいさんやおばあさんと孫が、風景を共有するということはとても大切なことなのだ。エラい人はとにかく壊して建ててを繰り返さないと票が集まらなくなっちゃうと思っているらしいが、守るべき日本の風景を自らの手で壊していくという行為は、「愛国心を育てたい人達」の人達にとっても得策ではないと思うのだが、いかがか。
さて、再び相生橋を渡り、運河沿いを下流に向かう。道路脇の廃工場がイカすぜ。朝潮大橋にさしかかると、
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ミニマルアートのようなコンクリート堤防に続いて、
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ガンダムのような佃水門が現れた。おかしな色にペイントされているが、意外に似合っているから不思議だ。ちなみに、この写真をモノクロ変換してみると、水門本来の機能美が見えてくるように思えるのだがどうだろう。
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さて、朝潮大橋を渡りきると、進行方向にアーチ式の錆びた鉄橋が見えてくる。これこそが以前から気になっていた、東京都臨港線の晴海橋梁である。この付近、仕事や飲み会で何度も来てはいたものの、落ち着いて見に行ったことがない。早く行かないと取り壊されてしまうのではないか、という不安にかられていたのだ。それが今、こうしてオレの目の前に。光の当たり具合もイイ。
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名著『東京の痕跡』によれば、「仮面ライダーV3」のロケ地でもあるそうな。それにしても、この橋をはさんで東側と西側では全く風景が違う。首を左右に振るだけで、昭和と近未来とを行き来するような錯覚に陥るのだ。ちなみにこちらが東側。まさに大四畳半。
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そしてこちらが西側。古き良き晴海の風景。
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タワーマンションの建設ラッシュの中で、この辺りでは最後に残った由緒正しい晴海レミコンの工場。こんな風景もあと少しで見納めになってしまうかもしれない。さらに近づいて観察してみると、橋にはなんと線路が4本あるではないか。
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ああ、巻き尺持ってくるんだった。おそらく外側の線路の幅が日本における一般的な軌間1067mmで、内側のものが工場や専用線で使われた800mmのナローゲージでは? などと憶測してしまう。かつてここを小さな機関車が貨物列車を引いて渡っていたことを想像してみると、なんともシアワセな気持になるのである。
さて、晴海運河沿いをさらに下ると、21世紀的複合商業施設の象徴、ららぽーとにたどり着く。ここもちょっと前までは、造船所だとか工場とか倉庫だったんだろうなあ。
かろうじて保存され、モニュメントと化した荷揚げ用クレーンが場違いな感じで、ちょっとカワイソウな印象。このへんで軽く食事をとった後は、豊洲運河から平久川をさかのぼり、門前仲町方面へ向かうことにした。渋い倉庫街、古い小学校に並んで、タワーマンションの桁違いの巨大さたるや異常。
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途中、鴎橋を越えたあたりで広いというか長い土地を発見。
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おそらく貨物線の廃線跡ではないか、なんて思って反対側を見たら、おお、まだ撤去されていない線路を発見! やっぱりここは線路だったんだ!! とか一般人にとって全くどうでもいいことに感動する。
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地形とか土地の形に限らず、おそらくはすべてのものの形状にはその形になった理由があるのだ。その理由を探ったり読み解いたりすることで、その逆の流れ(≒デザイン)を知ることができる。こういうことこそ人生の喜びだと思うのだが、あまり熱く語りすぎると「キモい人」ということになってしまうので、ほどほどに語るのが肝要。
さらに歩く。このあたりは運河が縦横無尽に走っているので、ときどき河の五叉路があったり唐突に水門が出現するので楽しい。
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橋もさまざまな時代のさまざまな形状のものが次から次へと現れるので、歩いていてまったく飽きないのだ。こちらは白妙橋。シンプルな構造美。
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そして美しいトラス橋・平久橋(当時は改装作業中だった)を渡り、東富橋あたりで陽も落ちてきたので、ここを終点とした。この橋も改修されたばかりなのか、真新しい鉄橋然とした淡いグリーンのペイントと西日とのコントラストがとても美しかった。
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という訳で、門前仲町駅到着は16時過ぎだったかな。その後、神保町で伊藤孝著「東京の橋」を購入した後、素敵なカレー屋「エチオピア」にてチキンカリーを食し帰路についたのであった。
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://www.c-channel.com/c00563/
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
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■気になる情報・記事CLIP
< https://bn.dgcr.com/archives/20090326140100.html
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●フォトイメージングエキスポ2009 本日から
< http://www.photoimagingexpo.jp/index2.html
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会期:3月26日(木)〜3月29日(日)10:00〜17:00
会場:東京ビッグサイト 東4・6ホールおよび会議棟
入場料:Webで事前登録すれば無料。当日一般1,000円、学生証・シルバーパス・障害者手帳を持参の人、および小学生以下無料
●歴史と伝統ある広告デザイン賞の作品展─「毎日広告デザイン賞入賞作品展(マイコミジャーナル)
4/22〜5/18 松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/16/058/index.html
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●クリエイター必見のタイポグラフィ作品を100点展示─「09 TDC展」開催(マイコミジャーナル)
4/3〜4/25 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/17/059/index.html
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●雑誌推薦の若手写真家15名による写真展「Editor's Choice」開催(マイコミジャーナル)
5/1〜6/1 RING CUBE ギャラリーゾーン
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/23/030/index.html
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●1960年代から現在までの映像作品を約50点展示─「ヴィデオを待ちながら」(マイコミジャーナル)
3/31〜6/7 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/21/001/index.html
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●赤瀬川原平、横尾忠則、宇野亜喜良らの作品を展示─「氾濫するイメージ」(マイコミジャーナル)
4/4〜5/17 八王子夢美術館
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/25/062/index.html
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●デザインの原点を見つめるセミナーツアー「アドビ デザインサミット 2009(マイコミジャーナル)
4/23・5/20東京 4/24大阪 入場無料 要事前登録
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/25/013/index.html
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●「描いた瞬間、“違うな”って思った」──漫画家の卵がワコム「Intuos4」を試す(ITmedia)
< http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0903/26/news010.html
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●5年ぶりに登場のプロ向けペンタブレット Intuos4(ASCII.jp)
< http://ascii.jp/elem/000/000/405/405264/
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●Mac Fan ハードウェアレビュー ペンタブレット「Bamboo Fun」(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/column/macfanhard/008/index.html
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●キヤノン、セキュリティ機能が強化されたSOHO向けインクジェット複合機(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/24/032/index.html
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●パナソニック、フルHD動画記録が可能になった「DMC-GH1」〜専用レンズで動画記録中の“フルタイムAF"に対応(デジカメWatch)
< http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2009/03/25/10532.html
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●キヤノン、フルHD録画に対応した「EOS Kiss X3」(デジカメWatch)
< http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2009/03/25/10525.html
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●ソニー、高速連写とパノラマ撮影が可能なデジタルカメラ「DSC-HX1」を発表(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/25/035/
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●【インタビュー】Flashアニメクリエイター・青池良輔が語る「Adobe Flash CS4」の可能性とは(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/03/25/aoikefl/
>
●フォトショ画像が1クリックでCSS+HTMLに!(ASCII.jp)
< http://ascii.jp/elem/000/000/404/404439/
>
●気になる新型Mac miniの進化具合を、むいて調べた(ITmedia)
< http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0903/23/news035.html
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●国内最大規模の『第21回 CGアニメコンテスト』自主制作の作品を募集中(マイコミジャーナル)
< http://journal.mycom.co.jp/news/2009/03/23/029/index.html
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●第1回おばかアプリ選手権はこうして行われた(@IT)
< http://www.atmarkit.co.jp/fwcr/design/ux/d89clip07/01.html
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●第14回 AMDアワード、「App Store」に大賞(ITmedia)
< http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/0903/25/news033.html
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●[WSJ]ソニーとGoogle、電子書籍でAmazonに対抗(ITmedia)
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0903/23/news020.html
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●08年イチオシのマンガは?ファンが選ぶ「マンガ大賞2009」(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090325/1024920/
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●つくば発の最新ロボット技術! サイバーダイン「HAL」を体験にでかけよう(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090324/1024870/
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●iPhoneとGmailがあれば手帳は要らない—吉越浩一郎の整理術(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090316/1024681/
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●情報は整理せずGmailに──「超」整理法・野口悠紀雄インタビュー(nikkei TRENDY net)
< http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090311/1024524/
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■編集後記(3/26)
・影山明仁「名作マンガの間取り」(ソフトバンク クリエイティブ)を読んだ。13cm×14cm、112ページのコンパクトな本だ。筆者は不動産業・建築コンサルタントを営んでおり、仕事である設計に行き詰まると、マンガの間取りを作図して息抜きしているという。20年前にサザエさんの家の間取りを、同じ家族構成の客のためにシャレで作ったことがきっかけで、マンガで気になった家の間取りを次々に描き始めたという。この本で紹介されているのは、マンガ「ドラえもん」の野比のび助邸、「天才バカボン」の天才邸、「Dr.スランプ」の則巻千兵衛邸、「巨人の星」の星一徹邸、「ちびまる子ちゃん」のさくら友蔵邸などのほかに、アニメや映画、文学などに出てくる家の間取り50例である。もちろん、この間取り図が正確なものかというと、ほとんど空想で補っているという。それはそうでしょう。たぶんマンガ家だって、間取りまで考えて作品を描いているわけではないだろう。だから、作品を綿密にチェックすると矛盾だらけだという。正確ではなくてもいい、これは納得できる間取り図だ。とはいいつつ、わたしはマドラー(間取りマニア)ではないから、平面図から3次元空間をイメージするのは容易ではない。それぞれの間取り図に添えられたデータやコメントも楽しい。もっとも、知っているのは半分くらいしかないが。一番おもしろかったのは番外編8の「注文の多い料理店」の山猫軒だ。この怪しい洋館の間取りは完全に想像上のものだが、思わず絵本(スズキコージ絵/ミキハウス)を持って来て、各場面の部屋をいちいち確かめたのであった。こういう役に立たない一発芸の本はほんとうに楽しい。(柴田)
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・松林さん、ありがとうございました!/「Web Designing」誌最新号、大賀葉子さんの新刊「毎日描きたい パソコンイラスト描きかた帳」のプレゼント応募受付中です。応募待ってます!/WBCで燃え尽き、ネタがない……。年度末ということで、ばたついているせいもある。進行中のものはまだここには書けない。うーん、うーん。 (hammer.mule)
< http://www.dgcr.com/present/list.html
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