つはモノどもがユメのあと[08]mono07:終わらない道の始まり──「SONY RMO-S360」
── Rey.Hori ──

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夏休み明けのデジクリでは、何故かデータバックアップの話題が相次いだ。本連載も急遽(でもないが)当初予定を変更して、そのバックアップ話に乗っかることにする。話題の流れということもあるが、筆者のバックアップ環境や方法がそろそろ幾度目かの曲がり角に差し掛かっている気がするのもその理由だ。

筆者初のコンピュータには外部記憶などというシャレたものは、予感すらなかった。電源を入れる度、CPUにHALTをかけて、真っ白アタマに前面パネルのアドレススイッチを一つずつ進めながら、テンキーを動作させるブートプログラムを一語ずつ書き込むのだ。バーストモードDMAというヤツで、バックアップ、などという単語はそこにはカゲもカタチもまだない。1978年頃のことだ。



PC-8001の頃にカセットテープにデータを保存するようになって、バックアップに近い行為を行うようになる。かなりの前進と言えるが、今で言うバックアップではない。オリジナルあってのバックアップ。OSもHDDも不在、電源を入れるとROM内のBASICインタプリタは立ち上がっても、真っ白アタマなのは変わらないわけなので、そこからチマチマ入力する手間を省くためのもの、というのが正確だろう。表参道アドベンチャー、なんてな単語が思い浮かぶ。

キューハチことPC-9801に移ってようやく、メモリ&HDD&外部記憶ドライブ+メディア、の三役が揃う。HDD上に保存したデータを外部メディアに"バックアップする"、という言い方が成立するようになったわけだ。といってもメモリが640KB(若人よ、MBではないぞ)、HDDが40MB(若人よ、GBでもTBでもないぞ)という世界なので、外部記憶といっても1.2MBのフロッピーディスクだ。ようやく多くの読者諸氏もご存じの......でもないか......5インチ両面倍密度フロッピーディスク、というメディアにHDD上のデータを定期的にバックアップする、という作業が開始される。

筆者の場合、Macを導入してプロになる少し前辺りまでは基本的にこの状態がしばらく続く。バックアップすべきデータが日々どかんどかん生まれるわけで

はないので、それでも何とかなっていたわけだ。Macのフロッピーは3.5インチ1.4MB。5インチと違ってプラスチックケースに入っているぶん安心感はあったが、安価なノーブランド品をバルクで買うと一箱50枚に数枚不良品があったことを覚えている。ローカルな話だが、まだ秋葉原ラジオ会館の6Fだか7Fだかにあったメディア激安店のエフ商会には、以来長らくお世話になったものだ。

プロを意識し始めた辺りから、作る絵の解像度が上がったこともあり、バックアップと出力ショップへの入稿に使える記憶メディアが必要になった。やっとCD-ROMが出現した辺りでCD-Rの本格的登場まではまだ遠く、色々コンパクトな磁気系メディアが登場してきていた。90年代初頭辺りのことで、当時の特に印刷&出力方面をご存じの方には筆者の選択肢がほぼ一つしかないことがお判りのことと思う。3.5インチMO(Magneto Optical:光磁気)ディスクだ。

MOはメディア上の極小面積をレーザで加熱し、そこに磁気で情報を書き込む。温度が下がると記録層が安定するので、フロッピーと違って常温では磁石を近づけても情報は破壊されない。書き換え可能回数や記録の保存寿命が優れているというのもウレシイ。カートリッジ入りで何となく未来っぽいし、あの不必要なまでにカッコイイNeXT cubeが採用しているではないか、というアコガレがあった事も否定できない。あっちは5インチだけど。

というわけで、バックアップ及び入稿用に買った筆者初のMOドライブが今回のモノ、SONY RMO-S360だ。前面パネルの丸みを帯びたデザインが気に入って選択した覚えがある。多分93〜4年頃の購入だと思うが、値段を記憶していない。ヒト桁マン円後半だったか。当時3.5インチMOと言えば128MB一本槍。当然本機も128MB専用で、インタフェースはSCSIだ。今改めて見てもなかなか端正であまり古びた印象はないが、ちとデカい。ACアダプタ内蔵なのはエラいけど。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono07.html
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< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono07.html#p2
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後面を見ると、電源スイッチ、SCSIのIDと動作の設定を行うDIPスイッチ(ってのもそういえば見なくなったなー)とSCSIのハーフピッチコネクタがあるが、その隣にかなりかさばっているのが交換式のエアフィルタだ。レーザ光学系が内蔵されているのでホコリを嫌う。そこで冷却のための空気取り入れ口にフィルタを設け、これを定期交換せよ、とマニュアルに書いてあった気がする。面倒臭い話ではあるが、プロフェッショナルな香りも少し漂う、かも。

< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono07.html#p3
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< http://www.dgcr.com/kiji/RH/mono07.html#p4
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本機と128MBのMOを使ったバックアップ作業が、今に至りこれからも続く終わらない道の始まりだった。バックアップ履歴データを見ると、128MB MOでのバックアップは50枚が記録に残っている。その後の筆者のバックアップメディア遍歴は微妙にスキップを繰り返す。バックアップという作業の性質上、そう度々新しいメディアに乗り換えたくないのだ。128MB MOの後に出現した230MB MOはスキップし、97年頃新しいドライブを買って640MB MOへ移行した。

640MB MOは110枚のメディアが残っているが、最後のほうでは一つの仕事データが何枚にもまたがるどころか、どうかすると一つのPhotoshopファイルが640MBを越えたために、レイヤーで分割して数ファイルに分けた記憶がある。

ほぼ同容量のCD-Rはこの頃から劇的にメディア価格が下がったものの、再びスキップして2001年頃にDVD-RAMに乗り換えた。両面9.4GBの霊験はアラタカで、現在までに61枚で済んでいる。今も毎日、どころか作業の切れ目で作業中のデータをHDDからメディアにバックアップしつつ仕事をするスタイルを続けている。作業中に「今日はまだ一度もバックアップしてない」と気付くと居心地が悪くなる特異体質なのだが、といってTime machineなど機械任せにするつもりも(まだ)ない。

2001年の時点でDVD-RAMを選んだのは、やはり記録メディアとしての耐久性と容量、カートリッジに入っている安心感からなのだが、最近はDVD-R/RWに押されたこともあり、カートリッジ入り(いわゆる「殻付き」)のType4 DVD-RAMがメディア、対応ドライブ共に消えかかっている。冒頭に書いた曲がり角というのはこの事なのだ。殻ナシならメディアもドライブもまだ大丈夫なのだが、曲がり角を感じる理由は殻以外にもある。

願いましては、128MB×50枚+640MB×110枚+9.4GB×61枚、では?......答えは650.2GB。これが筆者が過去10数年で残して来たバックアップメディアの総容量なのだが、数TBのRAIDを組んでNASにでもすれば全部入ってオツリが来る。本棚の一角もスッキリするだろうし、その費用はいまや今回のモノSONY RMO-S360と大して変わらない金額で済んでしまう。うーん、と考え込まざるを得ないのだ。

元機械系エンジニアである筆者の信念としては、どんなに多重化しても精密機械であるHDDは必ずいつかトン死するわけで(RAIDだって誘導雷で全滅、があり得る。テキは経年劣化だけではない)、どんなにHDDの信頼性が向上したってタダの円板に過ぎないメディアに障害率的、MTBF的に追いつくわけはない!のだ。この考えで順当に進むなら次はBlu-rayなのだけれども、うーんうーん。

うなりつつウル目で「お前どう思う?」などと今回のモノを見つめていても答えは出ない。今後の悩みはさておき、それでも、あまり思い入れなくどこかへしまい込んだ640MB MOドライブには比べるべくもない思いが、なぜかこのRMO-S360には残っている。ちなみにDVD-RAMドライブはPowerMac G4(グラファイトのGigabit Ether)内蔵で、マシンごと現役だ。このマシンは640MB MOドライブも内蔵しているので、言わばバックアップ&レガシーメディア担当となっている。

現在のSONYのサイトを見たが、データストレージのページには何とUSB接続のフロッピーディスクドライブがラインナップされているのに、MOドライブは見当たらない。生産終了モデルの中にもない。もうすっかり過去のオハナシなのであろう。MOというメディア自体が黄昏れているから仕方ないか。バックアップ、この先も終わらないこの道はどこへ続いているのだろう。

【Rey.Hori/イラストレータ】 reyhori@yk.rim.or.jp

フロッピーと言えば、AドライブとBドライブ。WindowsってひょっとしてVistaや7になってもまだローカルディスクはCドライブから始まってるんでしょうか。だとするとそれはそれでスゴいかも。もはや由来を知らない人のほうが多いぞ、きっと。内部構造的に変えられないとしてもそろそろ一般ユーザからは見えなくすべきじゃね?>MS。Vista&7で見えなくなってたらゴメンナサイ。ウチにゃXPしかないんです。

お話変わってMac。Leopardは出た当初「レパード」と言い慣れなくて「レオパルト」と個人的には読んでました。ミリオタじゃないけど「ド」じゃなくて「ト」ね。といって、Pantherは「パンター」とは読まないし、Snow Leopardは最初から違和感なく「スノーレパード」で「レオパルトII」って呼ぶぞコノヤロー、などと言い張ったりはしません。筆者の制作環境は、Flash以外はCS3がまだ現役なので雪豹クンはしばらく様子見です。

一方ミリ方面。先日某所で友人と呑んだくれていたら、隣の席の若いカップルの女の子が男に「ゼロ戦って何でゼロ戦って言うの?」と意外な質問。例のTVCFの影響かと思いつつも男の回答はアヤフヤ。その男がトイレに立った隙に零式の由来を解説したくなるのを思いとどまるのに苦労しました。お嬢さん、そもそも十二試艦戦つってね......もう少しで超アヤしいオヤジになるとこでした。繰り返しますが筆者、ミリオタではありません決して。年代的に図画工作系男子の必須科目だったんですってば!(図画工作系男子、略して図工系男子。マルシーってことで)

3DCGイラストとFlashオーサリング/スクリプティングを中心にお仕事をお請けしてます。サイト:< http://www.yk.rim.or.jp/%7Ereyhori
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