[2733] 講演、パネルディスカッション、その準備

投稿:  著者:


《関西では「質問がない=つまらなかった」ということです》

■電網悠語:日々の想い[136]
 講演、パネルディスカッション、その準備
 三井英樹

■ショート・ストーリーのKUNI[68]
 ふたつの耳
 ヤマシタクニコ

■ローマでMANGA[22]
 正面から向かう人、斜向きで向かう人
 midori

■イベント案内
 クリエイターに会いたい人・クライアントに会いたい人 総勢99人大集合
 「大プレゼン大会」その2


■電網悠語:日々の想い[136]
講演、パネルディスカッション、その準備

三井英樹
< https://bn.dgcr.com/archives/20091029140400.html
>
───────────────────────────────────
ただただ暑苦しいプレゼンをするしか能がないのだが、身に余る場に呼ばれて話してくれと言われることがたまにある。ここ数年、話す内容に余り変化がなく、それなりに資料は溜まっているので、準備は楽といえば楽。けれど、使っている絵にしても、挿入する情報にしても、微調整はかけている。

でも、伝えたいことに余り変化はない。現場の話。ただそれだけ。高邁な話をする訳でも、高尚な理論を披露する訳でもない。当たり前の開発者同士が、どんな風に疲弊して、どんなことを考えれば、何かを変えられるはず。そんな話をしている。

登壇している実時間分の練習はまずできない。申し訳ないが、3時間のコマを与えられても、練習に費やす時間は20分が限度か。目の前に人がいないと集中力がそれ以上持続しない。資料作成には相変わらず時間をかけるようにしているが、時々は過去分の「編集」だけで済ませられるようにもなってきた。蓄積も力なり。

資料作成の最初は、「外枠」作り。呼んでくれたカンファレンスやセミナーの名前やロゴを使って、パッと見でどこでやったプレゼンかが分かるようにする。この「形」作りがないと、没頭できない。まず形から入るのは、必ず右足から風呂に入るのに似ている。なんだかそこが決まらないと落ち着かない。

だから、カンファレンス名がしっかりしてなかったり(恒例だったりして、どこまでがメインでどこまでがサブか不明のものは結構多い)、セッションIDが残念なもの(例「パ01」とか無味無臭すぎなもの)だと、途端にテンションが堕ちる。で、1時間程うだうだして、気を取り直して作り出して、朝を迎えるのが通例。そして、更に行きの電車の中で1ページ位は足してしまう。

足してしまうのは、時間の読みが甘いからだが、参加者の情報が全くないか、沢山あるときに、色々と盛り込む傾向がある。情報があると色々とサービス精神がモゾモゾし、足りないと仮想敵国(敵ではないが)への攻略法をここかしこへと備えてしまう。

だから、来てくれる層の情報をくれるところとはやりやすい。会場の様子を事前に色々と教えてくれるのも嬉しい。広いところではどこまで歩き回れるのか、狭いところでは白板が使えるのか、プロジェクタはどこまで大きいか、拡大して見せるためにはどうすれば充分か。同じテーマで話すことが多いので、話したいことにブレがない分、環境や客層に気が向く。そうした配慮というか準備が不足しているイベント屋さんと組むと、結構不機嫌な顔をしているようだ。


ツールは、IllustratorでPDFを作成し、それをInDesignで組み上げる。PDFは単体で使い回せるし、Illustratorがない人にも配布できる。再構成する際にもリンクを変えるだけなので、比較的楽である。でも、PowerPointで同じようなものを作るのに比べ三倍ほどの時間をかけていると思う。その理由は、プレゼン中に拡大できるから。その一点に尽きる。ベクトルで作っている限り目一杯拡大してもぼけない。気持ちがいい。Flashに惹かれたのもここからだった。ビットマップ系の、拡大するほどピンボケ化する画像に感動を感じない。

PowerPoint2010がトランジションなどをApple Keynote風にできるようだけれど、実のところそんな表層系よりも、如何に内容を的確に伝えられるか、という役立つ機能をもっと充実させて欲しい。拡大縮小もそうだし、目次作成機能もそうだし、現場で使えるスライドマスタをデフォルト(標準状態)にするのもそうだろう。

物事を分かり易く伝えるには、俯瞰図を見せてそこから絞り込むという方法が気に入っている。通常倍率で一旦見せて、ドリルダウンして説明を加える。随所にキーとなる話題を隠し持っておき、客層やテーマによって文脈を切り替えられる点も、詳細に描き込んだものを一枚用意して拡大縮小を繰り返す方法の長所だろう。

拡大縮小を繰り返す以上、最大化してPDFを使うことができない。AdobeはPDFを紙の代わりと思っているようだけれど、そもそもの「紙」の概念が変わってきているように思う。そしてそうした用途の変遷を考えると、今のユーザーインターフェース(UI)はかなりミスマッチであり、操作性に欠ける。そもそもアイコンにセンスが感じられない。


まぁ口を開けばそんな文句ばかりなのだが、使い続けている。代替品がないのがその理由でもあるけれど、馬鹿な子ほど可愛いという面も否定できない。そんなツールを時によっては使い分け、講演の場に呼ばれたら、基本的にお断りすることなく日程調整する。そして毎回何かを学ばされる。

先日は、PowerPoint、PDF、Keynoteという三種のツール競演でのパネルディスカッション。実は、綿密な打ち合わせなしで演るのが一番難しいのが、パネル。誰かの独演会になっても駄目だし、三者三様でもイマイチ、筋書きありきも興を削ぐ。共通のテーマに登壇者全てが絡んでこそ、聴いている側にとっては面白い。実は東京でやったものの京都での「再演」という形ではあったが、出演者にとってはかなりのリターンマッチ感。東京場所が失敗とは言えないが、もう少し打つ手があった。そんな反省を各自が随所でしていて、しかも何が飛び出すかの事前打合せはかなり軽めで臨む。

別に相手を打ち負かすような内容のものではないのに、キチンと聴衆に届けたいという静かな闘志がひしひしと伝わってくる緊張感のある舞台(長テーブルだけだったが)。理論、現時点、少し未来。三人がそれぞれの軸足を定かにして、聴衆に語りかける。なんと三人が三人とも、お隣が話している間に、自作プレゼンにその場で何かを足して、話を進めた。

有線LANが一本しか与えられなかったが、私がAirMacを持って行っていたので、ネット上の情報も自由に差し込みながらのライブトーク。誰かが引用しているものを、誰かが検索して入手している。久々に楽しい時間でした。

最後の質問の時間でも、誰も手を挙げてくれないので刺激してみた。「スタッフから『東京では質問がないのは当たり前だが、関西では質問がない=つまらなかった、ということです』と言われてます、何かお願いします」。会場からクスクスと笑いが漏れ、一人が手を挙げてくれた。

でも発せられた言葉は質問ではなく、コメント。他のセッションではなく、ここを選んでよかったという賛辞。彼女が受け取った内容を要約し、今後の展望まで含まれていた。報われた感が込みあげてくる。やってよかった。いつもはアンケートという紙の形で批評に触れる。知人がいても遠慮して真実なんて語ってくれない。フェアな感想が紙ではなく、耳で聴けるなんてレアで幸せな体験なんだろう。

こういったライブ感がプレゼンへの意欲を刺激するのだろう。「スーパーエンジニアへの道」で、ワインバーグは「学びたければ教える立場に就け」と言っている。まさに語る側が多くを得た感が残る。精進精進。

▼mitmix@Amazon-スーパーエンジニアへの道─技術リーダーシップの人間学
< http://astore.amazon.co.jp/milkage-22/detail/4320025636
>

【みつい・ひでき】感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
・mitmix< http://www.mitmix.net/
>

文句ばかりつぶやいているけれど、PDFもPowerPointも普通の人よりも使い込んでいるとは思う。色々な人に効果的な使い方を教えているのも多いだろう。もっと大切にして欲しいもんだ......。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ショート・ストーリーのKUNI[68]
ふたつの耳

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20091029140300.html
>
───────────────────────────────────
「ほら、プレゼントだよ」
私が妻に小さな箱を差し出すと妻は黙ってそれを開け、軽く眉をひそめた。

「イヤリングなのね」
「似合うと思って」
「でも、これって二枚の耳につけるタイプでしょ」
「そうだよ」
「あたし、一枚にしたのよ、ほら」

驚くべきことに、妻が髪をかきあげると、昨日までは右側に耳が二枚あったのに一枚になっていた。私は一瞬、言葉をなくした。

妻は箱から出そうともせずイヤリングをテーブルに置いた。箱の中には、海の底の岩の上でしどけないポーズをとる人魚をかたどったイヤリングが入っていた。人魚のまわりには魚やゆらゆら揺れる海草、そして無数のあぶくまでもが精巧に表現され、全体は青みがかった銀色に輝いていた。それはきゃしゃな貝殻を二枚重ねたような妻の耳を美しく飾るはずだった。一枚の耳では支えられない。

「似合っていたのに。二枚の耳」
妻は黙ってしばらくガムをかんでいた。それから言った。
「あなただって、私がストラップをプレゼントしようと思って買ってきたら、ちょうどその日に携帯をなくしてきたじゃない」
「話がちがうさ」
「似たようなものだわ」

こんな小説があったなと思った。そうだ、賢者の贈り物。でも、似ているようで違う。そもそも耳は携帯と同じなのか。
「4年もしてたら飽きるわ。やっぱり耳なんてひとつずつでいいのよ」

翌日、私は街を歩いている。いつごろからか街には体のパーツの数を増やしたり減らしたり、あるいはかたちを変えている人間が珍しくなくなった。医療技術の美容への応用の一種というわけだ。背景には、原因不明で生まれつき体のある部分が欠けていたり、過剰であったりする人間が最近増えているという状況がある。職場や学校に一人は6本指や4本指の人間がいるし、それ用の手袋は普通に売られている。基準というものがあいまいになっているのだ。

昨夜の会話を思い出す。
「耳はどうしたんだ? 昨日まであった耳」
「耳屋に売ったわ。いまごろどこかのだれかが買ってるかもね」
「もう一度、耳を見せておくれ」

妻の髪をかきあげ、一枚になった右耳を見る。妻の耳はごくごく淡い桃色で、上の方の薄くはかなくなったところは繊細な飾り菓子のようである。ひとつでも十分美しい。だけど、二枚のほうが私は好きだった。これとそっくりのやつがもうひとつついていたのだ。私はあきらめきれない。

私はそれで、こうして歩いていると妻の耳に出会うのではないかと、何の確証もなく歩いている。注意深く見ていると、耳─正確には耳殻というべきか─が二枚ある女は髪をポニーテールにしている女を探すよりたやすく見つかった。だが、どれも、妻のものだった耳とは似ても似つかなかった。

夕方にはすっかり疲れ果て、私は耳のことはどうでもいいのかもしれないと思い始めた。女にとって、耳は装飾品に過ぎないようだ。私がこれほど執着するのはこっけいにみえるだろうか。

足取りもためらいがちになったころ、前を行く女が二枚の右耳を持つことに気づいた。なんとなく似ているような気がする。妻の耳に。私はそれで女の後をついて行く。女は長い髪を青く染め、砂色のコートに大きなバッグを肩から提げている。せかせかした足取りで歩き、バスに乗り、4つ目の停留所で降り、またせかせかと歩く。私は身を隠すこともせず女の後をついて行く。当然ながら女はアパートの入り口で振り返り、くっきりした陰影の濃い目でいぶかしげに私を見るが、拒絶するわけでもない。
「入る?」

アパートの中に入ると女はバッグを下ろすなり聞く。
「二枚の耳が珍しい? いまどき。こんな人間はたくさんいるわ」
「そうじゃない。私の妻の耳じゃないかと思って」
「私の耳が?」
「妻が耳屋に売ったというものでね。いまごろどこかのだれかがその耳をつけているかもしれない」
「私のは生まれつきよ。つけたものじゃないわ」
「そうなのか」
「時々いやらしい目をした男が聞くわ。二枚とも感じるのかって。イエスと答えることにしてるわ」

女は聞かれてもいないことを早口で言うと急に黙った。
それからコートを脱いだ。
「私はよく知らないんだけど、耳屋では実際には引き取りはあまりないらしいのよ。古い耳は」
「古い耳?」
「何年も一人の人といっしょにいた耳。なぜかというと、耳には記憶が残っているらしいの」
「記憶? 記憶は脳に残るのでは」
「私もそう思うけど、そういう耳をつけるとね。何か聞こえるんだって。何か。聞きとれそうで聞き取れない言葉のようなものが、耳鳴りみたいに時々聞こえるそうよ」
「もっともらしい話だ」
「ばかね。うそよ」
「うそなのか」
「それより、どう? きれいだと思わない?」

女が薄いセーターの首の横をずらすと、肩から二の腕にかけての部分がむき出しになった。そこには人工のうろこがびっしりと張り付けられていた。女が腕の角度を変えて見せると、それは紫から青、青から緑へと色を変えながらさらさらと光を放った。

私は翌日からも毎日、街を歩きながら妻の耳を探す。探しながら、いつのまにか私には二つの耳を持つ女より、顔や手に人工のうろこを張り付けた女ばかりが目につくようになっていることに気づく。

それで私の足はいつしかまたあの女のアパートに向かってしまう。女はまだ帰っておらず、ドアの前で私が待っていると、すっかり夜も更けたころ、女が帰ってくる。
「君はうそをついている。やっぱり君の耳はぼくの妻の耳なんだ」
「しつこいのね」
「よく見せておくれ」

私が髪をかきあげ、耳をまじまじ見つめると女は体の芯をどこかに置き忘れてきたようになってしまう。
「ごめんなさい。うそよ。私は耳を、耳屋で買ったの」
「やっぱりそうだったのか」
「あなたの探している耳かもしれないけど、でも、だったらどうするの」

確かに私はどうしようと思っているのだろう。

私は指先に人工うろこの感触を残したまま家に帰る。妻は寝室ですやすやと寝息をたてている。

妻を起こさないよう気をつけながらシャワーを使い、冷蔵庫からコーラの缶を取り出す。ぷしゅっと音をさせながらも頭の中ではあのイヤリングを思い浮かべている。愛らしい人魚とあぶく。ゆらゆら揺れる海草。あれはどこにしまったのだっけ、洗面所の戸棚だったかテレビ台の下の開き戸、それとも。あのイヤリングは久しぶりの高価な買い物だった。いや、値段がどうというよりも、造形的にとてもすぐれたものだ。名作といっていい。あれは、二つの耳を持つ女、そして、それは二つの耳ならどんな耳でもいいというわけでなく、あの耳に似合うものなのだ。

私はコーラをごくりと飲んではうなずき、また飲んではうなずき、まったくそうだ、と、もうちょっとで声に出して言いそうになる。缶を手にしたままそこらを探し回る。そうしているうち、いつもはあまり見ることのないキッチンの引き出しも開けてみた。すると、私は見つけたのだ。

引き出しの中にチャックつきのビニル袋に入った耳。私はぽかんと口を開けたまま見入った。

「耳屋に売ったわ」

あれもうそだったのか。私はわからなくなった。でも、耳はちっともすてきじゃなかった。引き出しの中では。


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
< http://midtan.net/
>

私も2作品を収録してもらっている「超短編の世界 vol.2」が出ました。
ネットで購入できます。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4434134841/
>
< http://www.bk1.jp/isbn/9784434134845/
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ローマでMANGA[22]
正面から向かう人、斜向きで向かう人

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20091029140200.html
>
───────────────────────────────────
相変わらず、デ・アゴスティーニの日々を送っています。ローマの漫画学校で受け持っている「Stage Manga」の講義はまだ始まっていないし。

●レッスンの作り方がようやくわかってきた

8ページのレッスンの記事を書きます。デ・アゴスティーニの方針で1ページにつき60%は画像にするので、文は簡潔に書き、そして掲載する画像を考えます。担当する絵描きさんへの依頼文は、テーマによってどのくらい詳しく書くか変わってきます。詳しく書く場合は、当然自分の中でかなり具体的に練り上げます。インターネットの画像検索をありがたく使ってます。

たいてい、まずテーマの切り口を考え、8ページの構成を考えます。この段階では、絶対にアナログで考えます。息子が中学生だった頃、おばあちゃんが大量に買ってきたノートのうち、表紙がどう見ても女の子向けのものがあり、それは使わなかったので私が貰い受けました。

そのノートの見開きに、見開きを現す長方形二つくっつけた図を四つ左ページに描き、それを眺めながら余白に思いつくまま、テーマの意味、「どう描く」に持って行くための疑問文を書いて行きます。疑問文にすると、答えが見つかるまでの時間が短くなることに気がついた今日この頃です。

今、構成中のテーマは「SFの世界」。「SF」漫画の描き方を8ページで解説するわけです。
< https://bn.dgcr.com/archives/2009/10/29/01 >

あるジャンルの描き方を解説するには、「そのジャンルの特徴は何か(他のジャンルとはどこが違うのか)」「そのジャンルで何を表現できるのか」をまず考える、という方法に、「少女」「ユーモア」をやってみてたどりつきました(言い方がヨーロッパ語の言い方に近くなってますね)。

SFが他のジャンルと違うのは「完璧にフィクション、日常から離れた世界、科学的要素を盛り込む、未来世界」、その「効用」として「現実を忘れて楽しい、同時に現実の社会的・人道的問題を別の方向から見ることができる」。

「どう描くか」は、「ロケットの描き方」なんてやってもあまり意味がないと思うので、さらに種類別にしてみました。見開きが四つあって、一つ目の見開きは導入なので「授業」は見開き三つで展開します。だから種類は三つに分ける。うまい具合に「ファンタジー(例・スターウォーズ)」「テクノロジー(例・A.I.)」「バイオロジー(例・EDEN/遠藤浩輝氏の漫画です)」という分け方を見つけ、今これをどうやって「描き方」に持って行くか悩んでいるところです。

●プロフェッショナルな人、そうでない人

このシリーズに関わっている絵描きさん(漫画家、イラストレーター)は9人います。満遍なく全員と仕事をするので、それぞれの仕事との関わり方が見えます。

昨年、「日本の新人賞に殴り込み!」コースをやった時に感じた「描ける人、描けない人」の分け方に通じるものがあります。つまり、正面から向かって行くか(こういう人は文句や言い訳をしない)、斜向きに向かうか(文句、言い訳多し)です。

この9人は30代後半の一人を除いてみな20代で、自分の漫画の本を出したことがある人が二人、自費出版一人、あとはちょこちょこあちこちで絵の仕事+それ以外の仕事をしています。

今月の初めに書き終えた8ページのテーマは「多人数の配置」でした。この絵を担当したマルコ君は、私により「斜め向きの人」のレベルを貼られました(これもヨーロッパ語文法風だね)。締め切りが近かったので、心配しながら8ページ全部書き終わる前に、できたものから依頼を出しました。反応がよく、すぐにラフを送ってくるので、気持ちよく仕事を開始しました。

コマの中の「多人数配置」ということで、パースをとった背景は必須です。さらに説明なので、読者にわかりやすくするために、消失点、アイレベル、基準になる人物の頭のてっぺんと足下に印を付け、点の名前も付けるように頼みました。それもフォトショップでレイヤーを別にしてくれるようにと。絵はすべてデジタルということでそれも安心でした。

送ってきたかなりおおざっぱなラフから起こしたものの、人物のプロポーションがおかしかったのと、もう一人の人物の位置をちょっとずらすよう依頼したあたりから、「斜めの人」の疑いが出てきました。

送って来た直しは、先の絵を画像ソフトで修正し、切り取って移動したものでした(描き直さないのか?)。もう一つの疑問は、あるコマの例として機能していなくて、ほんとに解説図、人物は無表情でただそこに突っ立っているだけ。

次の絵は高さが出てくるもので「階段」です。上から見た階段と、下から見た階段。確かに階段の絵は面倒くさい。でも、手前の階段が傾斜している、一段の高さが足から膝までに匹敵している(君はこれがおかしいと思わないのか?君の絵にもこのように描くのか?)
< https://bn.dgcr.com/archives/2009/10/29/02 >

それを指摘し、人物にもうちょっと表情をつけるように、そのコマの状況をもっと描きこんでとお願いする。『例えば歩くとか』歩く絵。『敵が来るかどうか見張ってるのだから、もうちょっと顔をあげるとか』もうちょっと顔を上げた絵。

もう一枚、幅のおかしな階段の絵を送ってきたのを見た時、私の中に野蛮な衝動が潜んでいるのを実感した。どこに住んでいるのかわからないのだから、殴り込みにはいかなかった。腕力なんか絶対に負けるに決まってるし。しばらく右手の人差し指と中指でマウスの背中をたたいて、気持ちを納め、中年と講師としての忍耐強さと愛情を持って諭すというおせっかいを実行することにしたのだった。

めんどくさい絵ばかりになってしまったことは認めるけれど、仕事で描く以上、相手がいる、読者がいる。どんな仕事であっても、自分の最高のものを出そうとするのが真のプロフェッショナルではないか。読者はそれをちゃんと受け取る。それは自分のためでもあるんじゃないか?

返事は、「この仕事は報酬のためにやっている。締め切りに間に合わないのではと、急いだ。」で、やっぱり斜めかな。でも、「また一緒に仕事ができるといいな」と結んでいて、うーむ、社交辞令かもしれないけれど、受けることにした。何か機会があった時に、喜んで声はかけないだろうけれど。

【みどり】midorigo@mac.com

先月、血液検査で中性脂肪値が高くてたまげた話をしました。その後、パンやパスタの炭水化物を減らし、チーズ、ハム、サラミ類は遠くから眺め、甘いものは見えないふりを一ヶ月続けた結果、111と普通水準になりました。490は、たぶん、夏の間、7本あるイチジクの木が供給してくれた実(花)をこれでもかっ! と食べたせいでしょう。

そのかわり、総合コレステロール値が240から300へアップ。医者に行って薬を指定してもらい、毎晩半錠づつ飲んでます。血圧や心臓の薬を常用する舅達の仲間に近づいた!

コレステロール値が高いのは、たぶん遺伝性とかいうやつです。遺伝子異常で必要なくても肝臓がせっせと脂肪を作り出してしまう。揚げたもの、ハムサラミ類、貝類、赤肉、火を通した油、甘いものを控える食事療法は一生続けること! と言われてしまった。甘いもの以外は、楽しみを奪われてしまった気がする。他家に呼ばれてフライが出たら食べないというわけにもいかないから、たまには食べることになるだろな。

貝類、イカタコ類もコレステロールを含有しているけど、摂取してコレステロール値を上げるとは限らないみたいな文を読んだ事がある。というのは、食べる言い訳を探してるんだろか。

イタリア語の単語を覚えられます!というメルマガ出してます。
< http://midoroma.hp.infoseek.co.jp/mm/menu.htm
>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■イベント案内
クリエイターに会いたい人・クライアントに会いたい人 総勢99人大集合
「大プレゼン大会」その2
< http://www.mebic.com/meeting/1370.html
>
< https://bn.dgcr.com/archives/20091029140100.html
>
───────────────────────────────────
〈主催者情報〉
クリエイターに会いたい企業・団体のみなさんと、クライアントに会いたいクリエイターのみなさんが一堂に集い、互いのニーズや課題を共有することで、コラボレーションが生まれることを願い、大プレゼンテーション大会を開催します。3会場同時にひとり8分間のショートプレゼンを行い、終了後、参加者全員でパーティを行います。興味のある話題満載ですので、ご関心ある方は、是非この機会にお越し頂き、互いにコミュニケーションを深めていただければと思います。前回は参加者150名でした。

日時:11月2日(月)18:30〜21:30(20:30〜交流会)
会場:メビック扇町2F(大阪市北区南扇町6-28 水道局扇町庁舎2F)
費用:無料 交流会費:1,500円
プログラム・申込・問い合わせ:サイト参照。メール、電話、FAXでも可。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■編集後記(10/29)

・昨日のデジクリで、海津ヨシノリさんのテキストの一部分(L・M・Sを正しく注文する方法)が、4か月前に吉井宏さんがデジクリの連載で書かれた内容とほぼ同じであることが判明しました。もちろん、これは偶然の一致なのですが、海津さんは恐縮しきっています。恥ずかしながら、編集部は吉井さんからご指摘を受けるまで気がつきませんでした。この事態はまさしく編集部に一切の責任があります。海津さんにご迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした。このごろ、時間に追われてデジクリの校正が甘くなっている、そういう自覚はたしかにあります。発行後に筆者から指摘を受けたり、Webサイトに掲載するためにテキストを整理しているときに間違いを見つけたりすることも少なからずあって、Webサイトの方はコッソリ修正していることを白状します。みなさんごめんなさい。これで説明責任を果たした、と思いますがどうでしょう(って、開き直っているのではなく、次へのつなぎですから)。資金管理団体の虚偽記載問題で、説明責任を果たしていないと野党から追及されても、しらっと「捜査に協力している。全容が解明されることを祈念している」と繰り返す鳩サンのタフな神経に感動すら覚える。鳩サンは今まで自民党の「政治とカネ」を鋭く追及し「金庫番の不祥事は議員本人も共同正犯だ。即刻議員辞職すべきだ」とか「疑惑を指摘された閣僚が、説明責任を果たすのは最低限の務めだ。それができない閣僚は、みずから職を辞すか、罷免すべきだ」などと正々堂々と発言していたのに、自分がその疑惑の中心人物になると他人事みたいな態度を貫く。政治生命のかかる絶体絶命のピンチだと思うが、果して切り抜けられるか。なにか手を隠しているのか。「カイジ」みたいに起死回生の大逆転があるのか。興味津々で見守っている。もちろん逃げ切りは許さん。(柴田)

・共感したので記憶に強く残ってはいました。同じ話を二度書かれているのだと勘違いしていました。ネタ被り、違う方同士でも結構あるので気にしてなかったのであります。すみません。/質問がない時は、高度過ぎてわからない、あるいは満足しているってこともあるんですが、煽りですもんね。どよめきや笑い(反応)があるかどうかですね。目に見えてノリがよくなってきます。/カツラやつけまつげがあるんだから、つけ耳のある未来があってもおかしくないなぁと話の流れから離れて考えてしまった。/園田健一さんが主宰されていた同人サークル誌で、参加者に誌上アドバイスされていたのを読んだことがある。背景にレンガの壁があるんだが、レンガのサイズは決まっているので、大きすぎますよ、というもの。ああいうのは適当に描いているもんだと思ってたので驚いた。その後、そのサークルから園田さんとCLAMPのメンバーがデビュー。記憶違いならすみませぬ。/無印のタオルが良いという情報あり。「自分もホテルタオル的なものを求めてたまたま辿り着いたのが、無印良品のタオルだったのです。」おお! ユニクロがへたったら使ってみようっと。Kさん、情報ありがとうございます。/書店の端末で漫画の試し読みができるようになるらしい。表紙買いして、絵は綺麗だけど…と後悔したことがあったので、こういうのは嬉しい。/あさりちゃんって現役だったんだ!(hammer.mule)
< http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102801000747.html
>書店の端末で漫画を試し読み 福島、広島など11店で実験
< http://netkun.com/asari/
>  あさりちゃん公式
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=28569841
>あさりちゃんの歴史
< https://bn.dgcr.com/archives/20091016140200.html
>いよいよ明日! お金も手間もかからずにカラマネ環境
< http://www.dtp-booster.com/vol09/
>制作者のための出力できるPDF