音喰らう脳髄[87]Something Better Change再説
── モモヨ ──

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リザードIVアイスランドの火山噴火だとか、史上一番遅い雪だとか、パニック映画の序章もかくやとばかりの異変続きだが、日々を生きている私達にとっては気温の激変が辛い。寒かったり暑かったりが交互に繰り返す毎日が一番応える。体に直接、影響が出る。

Black and Whiteこの春、全国各地を転戦したイベント、PUNKSPRINGのメインアクトとして来日していたストラングラーズのベーシスト、ジャンジャック・バーネルはロンドンに自分の道場を持つ空手の師範であり、屈強の士として知られる。そんな彼も、この異変には勝てなかった。

イベントでのライブを重ねるにつれて喉に異常を訴えるようになり、最終日には、たいへんな惨状を呈していた。PUNKSPRING終了後、彼は、バンドと別行動で日本に残り、4月5日、月曜日に新宿ロフトで開催される我々(リザード)のギグに参加することになっていたが、その参加すらも危ぶまれるほどだった。声が嗄れている、というか、まったく声が出せなくなっていたのだ。



そして新宿ロフトの当日、月曜日。リハにあらわれた彼は喋るのもつらそうな様子だった。「ストラングラーズを長年やってきて、ライブで声が出なくなったなんてはじめてさ」と軽くいなして弾き語りのリハを始めた彼は、アニメ『岩窟王』のテーマをややかすれた声で歌ったが、たしかに辛そうだった。

そして、バンドをバックにアンコール用に『Something Better Change』のリハ──。

「リザードをバックにこんな風に歌うとまるでルー・リードだね」なんて軽口を言って私達を安心させようとしてくれた彼だったが、キーが高い曲はやはり諦めねばならなかった。

そして、本番──。

私達、リザードの演奏の合間に、彼は、ゲストとして弾き語りを披露してくれた。ハスキーすぎる声ではあったが、彼自身の主張をファンに対し見事に表明して見せてくれた。「音楽はツールなのだ」と、私はそんな彼の姿にあらためて思った。

バンドは人々の媒介に過ぎない。問題は、ギグの後で、客が何をどう考え、行動してくれるか、なのだ。いまさらにして、そう思った。

そして、またリザードの演奏があり、その最後にジャンがベースを持って登場。バンドと一緒に『Something Better Change』を披露してくれた。このとき、ジャンの声を心配して駆けつけてくれた元アレルギー/デラックス、LOOPUSの宙也くん、ユキノくん(現オート・モッド)もコーラスで参加。そのうえツイン・ベースという爆裂大所帯だったから、ステージ上はエネルギー渦まくアナーキー状態。最後にジャンが「Change!」と叫んで一夜の幕が下りた。

イギリスに帰ってからもジャンは喉の調子が悪く、いまだに抗生物質を服用しているという。そんな状態で私達との約束を果たしてくれた彼には頭が下がるばかりだ。いつか彼に恩返しがしたい、そう思うばかりで生きてきた私だが、今回もまた彼に借りをつくってしまった。そう思う。

生きているうちに返せる借りならいいが.........。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>

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by G-Tools , 2010/04/20