[2952] 56歳のオヤジがランキング9位アプリを開発する物語

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《AudienceからPlayerになろう》

■音喰らう脳髄[98]
 流出と公開
 モモヨ

■アナログステージ[45]
 「どれも一緒」というわけではないタブレットPC
 べちおサマンサ

■デジクリトーク
 56歳のオヤジがランキング9位アプリを開発する物語
 中内淑文



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■音喰らう脳髄[98]
流出と公開

モモヨ
< https://bn.dgcr.com/archives/20101109140300.html
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尖閣諸島で起きた騒動、その有様を収録したビデオが過日Youtubeに何者かの手によってアップされた件で、世間はてんやわんやの大騒ぎになっている。

俗に流出ビデオと呼ばれているが、その流出ビデオ、どういうわけか、アップされた(流出した)翌日から、テレビなどでオンエアされ国民の目にさらされることになった。これが私の目には不可思議だった。政府は、現在、その流出ビデオをアップさせた犯人探しにやっきになっているが、そのすでに流出した分についての扱いを、まず明確に宣するべきだと思ったからだ。

後追いで「海上保安庁が撮影したものの一部分である」などと海保高官の口から語らせるだけでは充分ではない。少なくとも、本ビデオについては今後公開するものとする、後追いかつ形骸化した行為であっても、そう宣したうえでなければ、地上波での放送はあってはならなかったように思えるのだが、現実は、政府の対応のあいまいさによって、流出がそのまま事実上の公開になってしまった。

しかし、ビデオの内容を見るにつけ、政府の対応の思考停止にちかい曖昧さが気になってならない。あのビデオも(他の全てのビデオも)、私見であるが、事実を知らせるうえでも、事件後ただちに公開すべきだったと考える。

中国政府も、そして私たち日本国民も、事件の正体、事件の有様を知る機会を一度として与えられてこなかった。思えば、そうした中での今回の摩擦だ。中国政府だけではない。国際社会全体に対しても、日本が何らかの主張をする以上、まず第一に公開すべきものだったのではないか。私はそう考える。

思考停止内閣であれば、あるがままを世の中に提示して判断を仰げばよいのである。そこを何を考えたか、自分達で情報をコントロールしようとした。そのうえで国を危うくするのだから、どうしようもない。情報公開に流れる世の中の本流からみると何という反動だろう。

こうした情報を交渉相手に与えずに交渉すれば、相手はトンチンカンな反応をするに決まっている。情報を秘匿して相手に恥をかかせるつもりであれば、それもいい。しかし、恥をかかされた相手は、後に情報開示が行われたとしても、当初主張した意見を簡単に翻すはずもなく、いよいよ態度を固くするだろうことは想像にかたくない。

なんでこんな簡単なことが、わかんないんだろう?

さては政府内部にいる人々、子供の頃、友達と遊んだりしなかったのか。

Momoyo The LIZARD 管原保雄
< http://www.babylonic.com/
>

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■アナログステージ[45]
「どれも一緒」というわけではないタブレットPC

べちおサマンサ
< https://bn.dgcr.com/archives/20101109140200.html
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携帯電話、各キャリアもゾロゾロとスマートフォンをリリースする背後で、打倒(?)iPad勢も頑張っていたり。Chrome OSで11月に発売するぞー! といっていたHTC製タブレットは霧の中に隠れてしまった観がありますけど、ほかメーカも頑張っていたり。

海外ではすでにWindowsベースのタブレットが発売されているようですが、見たことも触ったこともないのでスルー。欲しいとも思わないし。個人的には、iPadはタブレットPCというカテゴリではないと思っているんですが、一般的にはタブレットPCという認知が広がっているので、今回は同じカテゴリにおいてみます。

HPから「Slate 500」がプレスリリースされてました。記事中(下記リンク参照)にもありますが、ワコムのデジタイザペン入力にも対応するらしいので、便利かも。OSがWin7らしいので、ペン入力は必須というより、必需品となるはず。

・Engadget Japanese:
< http://japanese.engadget.com/2010/10/22/hp-slate-500/
>

もともと『キーボードあればマウスなんて要らね派』だったはずのマイクロソフトが、いまはキーボードよりマウスがないと不便なOSになってしまったので、iPadのように指でササーっと操作するタッチパネルでの使い難さは想像がつく。絶対にイライラするはずだ。

ここ最近は、会議や各種打ち合わせなどで、iPadが活躍していることは以前に書きましたが、外見の仕様など、下図を描いて説明するケースが増えているので、市販されているタッチペンを購入してみたのだが......。

iPadでペン入力、というよりペンでの操作が非常にやり難い。これはワタクシだけかもしれないが、市販されているタッチペンがこの上なく使い難かった。たかがタッチペンに3,000円も投資したのだが、30秒で3番目の引出し(不要物収納スペースへ直行。

なにか良い方法はないかなぁ...と考えているとき、「グラフィック薄氷大魔王」でお馴染みの吉井宏さんのBLOGで、「指をカーソルにする」という記事を思い出した。これはかなり便利! というか、吉井さんならではのアイデアに脱帽。とても重宝しております。

・Yoshii - Blog:iPad、指にカーソルを描く!
< http://yoshii-blog.blogspot.com/2010/07/ipad.html
>

話を戻して、ソーテックを完全に喰ってしまったオンキヨーからは、「TW317」「TW217」「TW117」の3機種がすでに発売されているようで、実際に店頭でデモ機を触ってきた人の話を聞くと......「やっぱりWinでタブレットはなしですな、いや、使いにくいです、右クリック欲しいです」と仰っていた。その気持ちは触ってなくてもよく分かる。しかし、仕事でバリバリに使いたいなら、iPadよりTW317のほうが良さそうな気もするのは正直。

・ONKYO製品情報:
< http://www.jp.onkyo.com/pc/personalmobile/index.htm
>

と、ここで、続々と発表・発売される個人的に一番触手が動いたのが、マウスから発売された「LuvPad AD100」。さんきゅっぱ(¥39,800)という価格設定も魅力だが、知り合いで購入した人がいて実際に弄らせてもらい、動作のサクサクっぷりを目の当たりにしたからだ。

Androidの恩恵なのか、NVIDIAのTegra 250のパワーなのかは分からないが、オペレートストレスは感じない。買ったばかりで、無垢な状態だとしても良い感じ。なによりネーミングセンスがいい。ラブパッドですよ、ラヴ。

・MOUSE COMPUTER:LuvPad AD100
< http://www.mouse-jp.co.jp/luvpad/
>

ほぇー、知らない間にいろいろと発売されているんだなぁ...と興味津々でWEB徘徊していると、AMAZONでこんなものが引っかかった。うーん、どっかで見たことがあるような......

・Amazon.co.jp: iRobot / iPad風 タッチパネル搭載 7inch
< http://t.co/zMela7p
> ←短縮URLを使ってます

おお、確かにiPad!風だ。どこで製造しているんだ? と思ったら、やっぱり。モニョモニョ。OSもAndroidと記載されてはいるが、実はAndromedaとか「どっかで間違っちゃいました」的なものが...と思いきや、実際に使っているかたのBLOGを読んでみると、カップケーキ(Android 1.5)ではあるが、カスタムすることで向上するようだ。¥15,000くらいなら買ってみたい気もするけど...。

NTT docomoが「GALAXY」、auもゾロゾロとスマートフォンをリリースしていくようだが、結局は、スマートフォンもタブレットPCも、OS依存ということは殆どなく、オペレートストレスがどれだけ少ないか、マンインターフェイスがどこまで簡潔に仕上がっているかが、着火のポイントになるはず。

とくにマンインターフェイスは、こういった端末に限らず、「誰がどのように使っても迷子にならない」操作性が必須となる。ただ漠然とメニューアイコンを並べたものがシンプルな操作性というわけではなく、今後は、肥大した贅肉を削り落とし、そこから広がる入口としてのシンプルさを期待。もちろん、コンテンツやアプリの内容も大切なのは変わりない。

2011年の各デバイスは、とても面白くなっていきそう。価格も、もっと安く、買いやすくなっていくだろうし。と同時に、プライベート(遊び)用、ビジネス用と色分けがはっきりしていくだろう。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋
< http://bachio.posterous.com/
> ←マメに更新中
< http://twitter.com/bachiosamansa
> ←フォローしても役に立ちません
< http://www.retaggr.com/page/bachiosamansa
> ←べちおまとめ

○とりあえずは仕事がひと段落するも、新しい開発(順番待ちされてた)案件が入り込んできた。終わりが見えない/ってことは、今年もまた正月ないのか/D90がやっと手に馴染んできた感触。日夜問わず、フラッシュを使って撮るのが嫌いなので、必死にホワイトバランスとISO、シャッタースピードを調整しながら撮ってたり。でも、まだまだ把握しきれていないので、無駄なものがたくさん。早く上手になりたーい/夜景ばかり撮っている気が.../

○記憶に残っている2週間の出来事→先日、ひょこん! と時間が空いたので、Twitterで昼から飲める人を探す→SWAMP(武さん・山根さん)絡みで知り合ったテトリンくんと渋谷で真昼間から呑み始める→武さんに電話する→来ない→再度電話する→電話に出なくなる→山根さんに電話する→すぐ来る→男3人で昼から大盛り上がり→ハロウィン色で染まる六本木の街を、男3人で腕を組んで歩く。酒は愛だ(変な意味じゃないヨ)。

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■デジクリトーク
56歳のオヤジがランキング9位アプリを開発する物語

中内淑文
< https://bn.dgcr.com/archives/20101109140100.html
>
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はじめまして。中内淑文と申します。
iPadアプリを開発し、その後、眼前の景色が夢のように変わってしまいました。開発のきっかけや経緯をお話しします。

そのアプリ、「RecFinger」は、簡単に言えば、録音と手書きメモをシンクロさせたアプリです。メモをタップすれば録音データの頭出しが一発で出来ます。
< http://www.unix-d.co.jp/recfinger
>

●ソフトランディングの中止

55歳を過ぎた私は、家のローンも終わりが見え、子供も大きくなり、この小市民的な生活も、そろそろソフトランディング(御隠居化)かなと思っていました。老後への備えというヤツです。多くの友人が、その計画や夢を酒の肴に語ります。年金の話をする連中もいます。彼らと一緒に酒を飲みながら、私も残りの年数を数えるようになっていました。

そんな4月のある日、友人にTwitterを勧められました。試しにツイート開始。数日後、「なんだ、結局Twitterってみんな、暑い、寒い、眠いとしか言ってないじゃない! 意味ないからもう辞める。」と別の友人に言いました。その友人曰く「そんな事ない。意味のあるツイートをしている人も居る。例えば川崎和男さんだけどね。」

言われるままに、川崎先生のツイートとブログを見ました。衝撃を覚えました。鳥肌が立ちました。物語はここから始まります。

先生のブログを見て鳥肌を立てた私はその後、「先端統合デザイン特論(PiD)」を受けはじめました。週に一度、川崎先生のナマの講義が聴けます。講義を聴いた私は更なる衝撃を受けます。打ちのめされます。聴けば聴く程、自らの自堕落さを思い知らされました。自分が恥ずかしくなったのです。

なんと川崎先生は今も全力疾走しておられるのです! 世界トップレベルの方が、日本の100人に選ばれた方が、今も休まず全力疾走しているのです。ひたすら走り続けておられるのです。大した事も成し遂げずに自己満足していた自分がちっぽけに思えました。ソフトランディング? 老後? 年金? お前はバカか!

で、決意しました。人生の無駄遣いは止めよう。必死で生きようと。手を抜いて生きるという事は、実は自分を見捨てる事ではないか? それは御褒美ではなく、匙を投げたのだと思います。

< http://www.design.frc.eng.osaka-u.ac.jp/
>
大阪大学大学院工学研究科 先端統合デザイン特論(PiD)
< http://www.ustream.tv/channel/pid-on-ustream
>
大阪大学大学院工学研究科川崎和男先端デザイン研究室 公式USTREAM

●オーディエンスからプレイヤーへ

私の仕事は、GUIです。仕事柄、iPodやiPadは発売、即、購入です。デジタルなガジェットは個人的にも好きです。カスタマイズもします。でも、何かツマラナイのです。このつまらなさは何だ? 踊らされてる感はなんだ? 私はAppleの(猿回しの)猿か? ジョブズの掌か?

そうか! これは客席に居るからツマランのだ。グラウンドに降りてゲームに参加しよう! AudienceからPlayerになろう。マウンドから見える景色は、きっと面白いだろう。Playerの楽しさは、学生時代にやっていたブルースバンドで経験的に知っています。よし! あのグルーブ感をもう一度、味わうぞ!

川崎先生は高度なデザイン論を咀嚼して語られます。それでも私には理解出来ない箇所があります。ノートを書く事に集中すると、リアルタイムでの理解が出来なくなります。眼を見ないで人の話を聴くのは失礼です。よって、講義を録音します。ノートはあくまで補助です。その後、データをiPodに移して通勤電車で聴きます。ノートを見ながら聴きます。わからない箇所は、繰り返し聴きます。

さぁー、頭出しが出来ません。聴きたい箇所をピンポイントで選べません。30秒のパートを聴くための頭出しに、5分かかったりします。イライラがつのります。

●メディアインテグレーション

iPodとの格闘が続いていた5月末にiPadが発売されました。手書きメモアプリをいくつかインストールして使ってみました(私はタイピングが遅いので手書きでないとダメなのです)。しかし当然、頭出しの問題は未解決のままです。

そんなある日、川崎先生が講義中に偶然、おっしゃったのです。「マルチメディアでは駄目だ。メディアインテグレーションなんだ!」その言葉をiPadにメモっていると、頭の中でカシャーン、カシャーンとパズルのピースがつながっていく音が聞こえます。

そうだ! 録音とメモをインテグレートすれば良いのだ!

ソフトランディング中止の決意、Playerへの願望、メディアインテグレーション、眼前には疾走を続ける超一流のデザイナー。これだけの条件が揃って何も事を起こさなければバカです。よし、iPadアプリを作ろう! と決意し、Appleのデベロッパーズ何とかに登録。猿でもわかる的なiPhoneプログラム入門本を購入。

......そして自分は猿以下である事が判明。さぁ、困った。開発パートナーを探さねば! なんとまぁー、相談したひとつ目の会社社長が快諾、しかも成功報酬で。利益を折半の約束で着手(持つべきものは人脈である)。良かった!

●クライアントは自分。制約なし、言い訳なし、締切なし

ここから先は、やりたい放題。クライアントは自分。制約なし、言い訳なし、締切なし。これ程、やり甲斐のある案件はあり得ない。制限は唯一、自分の能力のみ。自分で考えては、自分でダメ出し。無駄な機能を削ぎ落とす。当然、マニュアルレスでなければいけない。こうして楽しい試行錯誤を繰り返す事、一ヶ月。基本レイアウト完成!(ほぼ最終版と同じモノです。)

自信たっぷりの画面案を元に、開発パートナーと打ち合わせ。この会社はとても優秀(宣伝、宣伝。社名はSECUREGRAPH、電話は06-6312-6566)。操作フローの矛盾があれば、容赦なく指摘してくれます。プログラムだけではなく、インターフェイスに関しても深い造詣を持っています。頼りになります。彼らは手書きメモの容量がデカくならないように、ビットマップではなく、ベジエ曲線で保存するプログラムを作ってくれました。その後のワガママな機能追加も快く、引き受けてくれました。お陰で、7月初旬にはプロトタイプが完成!

開発中に突然、気が付きました。あれっ! このアプリ、言語に関係ない? だって、録音も手書き入力も言語に関係ない! オッー。これは多言語対応にしよう! すべき事は、インターフェイスに出来るだけ言葉をいれない事。可能な限りピクト化する事。かくしてRecFingerの世界同時発売は決定したのです(ラクチン、ラクチン)。ラッキー!

出来上がったプロトタイプのフィールドテストを開始。打ち合わせや、講義にて使用。先生がプロジェクターを使用する時は部屋が暗くなります。

 私の手許のiPadだけが明るい→ 一発で暗くする機能を追加。
 先生は、図解を多用されます→ 入力窓を大きくする機能を追加。
 大事な箇所を赤くしたい→ 色えんぴつを追加。
 書き間違えた→ undoを追加。

私が使いやすいように、どんどん改良していきます。なにしろ私がクライアントなのですから。「......これ以上機能を盛り込むと、何処かの国の携帯電話みたいになるぞ!」と開発パートナーに叱られました(その通りです)。ということで、機能追加はここで終了。

●リリース! そして......

そんなこんなで、9月後半に最終版が完成! さっそく、App Storeにエントリー。心配していた審査も一発で通り、10月1日にめでたくリリース! さあ、マウンドからは何が見えるのだろう? どんな景色が拡がっているのだろう。興味津々です。

とは言え、冷静に考えれば実績も看板も宣伝力もない状態でのリリース。リリースされた事を知るのは、友人とTwitterのフォロワーの方々のみ。当分の間は何も起きないだろうと思っていました。ところが、予想は見事に外れ、夢のような事が次々に起きたのです。

リリースから一夜明けた翌日、寝ぼけ眼で日本のAppStoreを見ました。えっ? レビューが入っている。嘘! 購入日当日に実戦投入とあります。プロのインタビュアーさんのようです。購入日どころか、それは発売日なのです。この職種は、想定していたのですが、いきなりプロの使用評価をいただく事となりました。結果は五つ星!

まあ、日本のレビューは出来過ぎた話だなぁ、と思いながらアメリカのStore
を見ると、えっ? 英文でのレビューあり! しかも95点。
「Get it NOW! Don't think twice!」とあります。似たようなアプリは他にもあるが、このアプリの足元にも及ばないとも書いてくれています。感激です!!!!(もう、ほとんど涙目です)

Twitterを見ると「こんなアプリを待っていた!」のツイートあり。御礼と使用後の感想リクエストを伝えると、DMにて返事あり。決して悪評ではなく、御希望を書いておられるのに気をつかっていただいたのです(なんて良い人なんだ)。その後、この方とはTwitterを通じて更に親しくなりました。後日、長文の絶賛レビューをAppStoreに書いていただきました。

しばらくすると英文のメールが到着。イギリスからです。大学教授、専攻は化学。出力可能なデータ形式に関する質問。残念ながら現バージョンでは出力はできませんと返事をする。この方のウエブサイトを見ると、化学式だらけ、化学式はキーボードではタイピング出来ない。なるほど!

●ゾクゾクする光景

10月になり、川崎先生の後期の講義が始まりました。研究室の学生の何人かが、自主的にRecFingerを使ってくれています。600円とは言え、自費で買ってくれました。彼らは、私の前の席でRecFingerを使って先生の講義をRecordしています。ゾクゾクする光景です。自分のデザインしたモノが使われている光景を見るのは久しぶりです。

新入社員の頃、私のデザインした魔法瓶を持った小学生を見た事を思い出しました。彼はそれを自慢げに友人に見せていました。自分の欲しいモノをデザインして人に薦められる......これはデザインの原点です。

●世界中でダウンロード

アップルの開発者用サイトには、アプリの日々のダウンロード数が見られるページがあります。リリース後、二日程してから発見しました。これは世界中の売行きもわかります。ビックリしました。

日本、アメリカ、EUは想定範囲内ですが、チリ、メキシコ、ニュージーランド、コロンビア、イスラエル、アラブ、エクアドルなどからダウンロードされているのです。現在30ヶ国近くに及びます。

アップルはすごいインフラを発明したものです。自分のアイデア、工夫が国境を超えて評価される。世界のどこかで今も誰かが使っている。自分が世界とつながっている気さえしてきます。

●Top10入り!

リリースから三週間後、かねてから申請していたアプリ紹介記事がAppBankに掲載されました。ご存知、日本最大のiPhone/iPadアプリ紹介サイトです。さすが、AppBankです。まず、ツイートが、一日で50件ほど発生しました。そしてその晩のダウンロード数がなんと、前日の15倍になりました(元々が少なかったのかも?)。そしてなんと翌日、iPad仕事効率化で9位に躍り出ました。総合で42位です。

自分のアプリがランキングから探せるというのは夢のようです。改めてネットの伝搬力のすさまじさを思い知らされました。文字通り、光速です。

●たった一つのツイートから

半年前、ソフトランディングを模索していた事を考えると、眼前の景色は夢のようです。たった一つのツイートから始まった、川崎先生との出会い(先生! 有難うございます!)。そしてRecFingerまでの道、その後の景色。マウンドからの景色は、こんなにも楽しいモノでした。

リリース後の4週間で起きた事は、私の人生の中でも格別なモノです。更に凄い事は、この物語は今もリアルタイムで進行中である事です。こうしてデジクリ用に原稿を書いている事も、あの一歩がなかったらあり得なかったのです。さぁ、これから何が起こるのでしょう? ワクワクします。

【中内淑文 / Yoshifumi Nakauchi】
< http://www.unix-d.co.jp
>
mail:nak@unix-d.co.jp twitter:@nak_bun

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■編集後記(11/9)

・貴志祐介「悪の教典」上巻をようやく読む(文藝春秋、2010.7)。上下巻セットで3,600円となると、かつての手当たり次第図書購入可能の頃とは違い、今ではさすがに手が出せないから図書館のお世話になる。そんな人がすごく多いから、申し込んでもなかなか回って来ない。新聞広告の「学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は、高いIQと好青年の貌を持っていた。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー」というコピー以外、事前に関連情報は一切読まなかった。だから理想的な教師に思える主人公蓮実が、悪魔的な新任の教師か編入生と対決し生徒を守る話かなと平凡な予想をしていた。しかし、130ページを超えたあたりで「大半の教師と生徒は将棋の駒でしかなかった」とか「新2年生の担任となることが決まったときは、これで自分の王国を作れるという思いで胸が高鳴ったものである」という記述が現れてあれれ? と思った。それから次第に、両親をはじめ多数の殺人を犯してきたサイコパス・蓮実聖司の真実が明らかになる。殺人鬼は主人公かい。この巻では新たに何人かを平然と殺しているが、下巻では生徒の大殺戮が展開するという。特設サイトでいくつかの情報を得て(筆者インタビューは読了してから読む)、下巻が回ってくるのを待つ。それにしても、こういう娯楽本を上下巻合わせて30冊も在庫する図書館って、まさに無料貸本屋である。なんだか変だが、その恩恵をうけているわけで......。わたしのお気に入りの、感が鋭い片桐怜花ちゃんはどうなるか。心配だな。/中内淑文さん、素敵な話でした。ありがとうございます。(柴田)
< http://bunshun.jp/pick-up/akunokyouten/
>
悪の教典特設サイト
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163293809/dgcrcom-22/
>
→アマゾンで見る(レビュー23件)

・以前にも後記に書いたけれど、中内さんとは川崎先生の授業で知り合いました。私はなかなか参加できない悪い生徒でしたが、中内さんはとても熱心。フィールドテスト中のアプリ(その時は名無しさん)に興味を持ち、説明を受けた。よく似たアプリを知ってはいたが、使い勝手が全然違うように思い、完成したら教えてくださーい、と伝えていて、リリース後すぐに購入。というかレビューを書かれた方と同じく、当日に実戦投入。直感で使えてしまう優れものであった。実はこのコラムの前に、中内さんから直接開発秘話を聞いた。私と一人は「ソフトランディング」のあたりに感動し、他の人たちは「オーディエンスからプレイヤーに」のところが印象的だったようだ。このコラムって占いみたい。「世界」のところに引っかかる人もいそう。中内さんは月に一度、JIDAのイベントの司会をされていたりもするんだよ〜。/いまはアメリカよりドイツで売れているんだって。/開発秘話コラム初出はデジクリ! 今後は、JIDAや川崎先生関連のサイトにも掲載されるよ〜。(hammer.mule)
< http://www.jida.or.jp/
>  JIDA