《クライアント担当者を出世(昇進)させよう》
■アナログステージ[59]
あなたが居なくても、テレビがあれば生きていける
べちおサマンサ
■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[11]
電子書籍共同ブランドづくりに取組む
沢辺 均
■Webディレクター養成ギブス[13]最終回
クライアントとグルになる/クライアントをグルにさせる
蓮井慎也
■アナログステージ[59]
あなたが居なくても、テレビがあれば生きていける
べちおサマンサ
■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[11]
電子書籍共同ブランドづくりに取組む
沢辺 均
■Webディレクター養成ギブス[13]最終回
クライアントとグルになる/クライアントをグルにさせる
蓮井慎也
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■アナログステージ[59]
あなたが居なくても、テレビがあれば生きていける
べちおサマンサ
< https://bn.dgcr.com/archives/20110726140300.html
>
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「こんにちはー!今日もゲッソリと暑いですね、こんな日は仕事なんてしてないで、海水浴にでも行って、ちゃぷちゃぷ浮いてるのが一番ですNE!」
「あのー、またデジクリに呼びだしですか、ほかにネタないんですか」
「な、なにを言ってるんですか、中里さん。ネタコラムを書きたくても、なかなか書けないというか、書けなくなってきてしまっているんですよ。なので、タイミングを計ってネタコラムを放つのです」
「べつに編集長に規制されているわけじゃないんですから、好きに書けばいいじゃないですか」
「いや、マジメなコラムを書いた後って、ネタ書きし難いんですよ、ホント。『ついに、べちおも題材が無くなったか』って思われるのもイヤだし」
「べちおさん、ネタだけは豊富ですもんね......」
「豊富ってことは全然ないんですけど、方向性を統一しているわけでもないし、的を絞っていないので、ある意味、なんでもコラムのネタにはなるんです。たぶん、デジクリで他の執筆者さんたちより自由度は高いのは確か」
「いいんですか、そんなんで。飽きられちゃいますよ」
「飽きるもなにも、ワタクシにWEBデザインの話を書け! って云われたところで、三話も書けないですよ。かといって、本職の分析系の話を書いたところで、『あんた、ほかのところで書きなさいな、ジャンルが全然違うでっしゃろ』って怒られちゃいますし」
「で、なんでボクが引っぱり出されるんですかいな?」
「チャット形式って面白いじゃん。まつむらさん&笠井さんや、武さん&ヤマーネみたいな、チャットでお届け!が、デジクリに寄稿する前からの夢だったし」
「ちゃ、チャットって、あんさんの場合、チャットじゃないじゃん! もう一人の自分と脳内で談話しているだけじゃん! チャットってのは、誰か相手がいて成立するんでっせ」
「いいの、いいの、気にしないで」
「なんでいいんですか。ダメでしょ、普通に」
「だって、チャットする友達がいないんだもーん」
「終了ぉーw」
●いい大人が店の中で涙ポロポロ
「こらこら、終わらない、終わらない、これから本番だってば」
「もうイヤです。ネタに付き合ってられません」
「先日、やっとテレビ買ってきたんですよ。アナログ放送終了の2日前w」
「知ってますよ」
「なんで知ってんの?」
「.........。 で、テレビ買ったんですね、それで?」
「ホントに買う気なかったんですよ、テレビ。で、カミさんが放送終了の3日前になって、目に涙を浮かべながら『わたし、あんたが居なくても生きていけるけど、テレビがないと生きていけない』って、泣き落としにきたんですわ」
「へーへー」
「で、ベッドの上でiPhone弄りながらTwitterやってニヤニヤしていたら、ムスメが『おとん、おかんが可哀想すぎるから買ってきなよ』と、根回しにやってきてですね、追加でムスコが『テレビないとやっぱり不便』と追い討ちにきたので、買いにいったんですよ』」
「はいはい、で、リビングとムスコの部屋と寝室のテレビを買いにいったんでしょ」
「なんで知ってんの?」
「もう、ぶちますよ、テーブルの角まで頭持っていって、ガチーん☆ってぶつけますよ」
「まぁまぁまぁ。それで翌日に某家電販売店に買いに行ったはいいけど、欲しい大きさのテレビが売り切れ。心の中で、『うっっひゃー☆ラッキー!』って喜んでいたんですけど、『他の店を見る気はないのかね』って、瞳孔が開いた瞳で見つめられたんで、こりゃ行かないとご飯に毒でも盛られるかな...... ということで、テレビ購入の旅へ出発したんですよ」
「かなりマジ顔してましたもんね。えー、めんどっちー! って云おうものなら、買うまで口ききません!!!オーラをまとってましたしね」
「まさか、テレビ買うのにこんなに苦労するとは思わなかった」
「ボクも頭の片隅で、べちおさん、どうするのかなぁ、大変だなぁ、って心配してましたよ。次行ったお店でまた大変だったんですよね! もう、ハラハラしてました」
「そうそう。で、次の店でリビング用とムスコ部屋用の二台をとりあえず買ってきました。めでたし、めでたし、おわり」
「へ? あのー、その店でのハラハラなやりとりを書かないんですか? 一番面白いところを書かないんですか? せっかく話しのお膳立てしたのに『二台買ってきました、おわり』ってなんですか?」
「ん? だって、そんなウチのテレビ購入話を書いても誰も読まないし、興味ないだろうに。『オマエんちのテレビのことなんか知るか、ボケェェ!』って怒られちゃうよ、アッハーハー」
「もう、このチャットから抜けていいですか......」
「わかった、わかったから、霞かかりながら頭の中から消えないで。それで、もう普通の家電販売店だと、売り切れている確率が高いだろうから、パソコン屋に行ったのですよ」
「なぜにパソコン屋?」
「パソコン屋っても、PCデポというショップで、前々から、OZZIOブランドやメーカ品のテレビも売っているのは知っていたんで。ここで売っていなければ、本当に、買えるまで連れ回されそうだったのよ」
「ほうほう」
「案の定、40インチでLAN付きで諸々...というのは売り切れていたので、明日また見て回ろうよ。と、諭したときに!」
「諭したときに!」
「『ぜっっっったいヤダ、今日買わないと、あんたは絶対に買わない!! 何年一緒にいると思ってんだ。売り切れていても、展示品でいいから売って貰えるまで交渉してこい!』と」
「うわ、すごいですね......」
「で、そんなに欲しいなら自分で交渉してこいよ...... と言いかけたんだけど、結婚してから初めてみせる形相で睨まれたので、これはマズい、と」
「あの普段はおとなしい奥さんが、そんなに......」
「テレビコーナーに店員さんが居なかったので、探しにいったんですけど、途中でD7000のデモ機が展示してあったので、お! って少し弄り始めたら...」
「弄り始めたら!」
「後ろから付いてきていたようで、D7000を手に取った瞬間に、ケツを思いっきり蹴り飛ばされまして、ええ。もう少しでD7000を落としそうになりながら、カミさんの顔をチラっとみたら、目に涙溜めて、泣き出す手前」
「あららららら......」
「それで、『もう、テレビが映ればなんでもいいから買って』って、店の中でポロポロ泣き始めちゃったんですよ......。」
「そんなにテレビが.........。って、なんかイジらしくて可愛いですね」
「可愛いいもんか! テレビが映らなくなるのはあんたが原因。みたいに責められて、逆ギレもいいとこだわ...。結局、SONY製で32インチのLAN付きが一台残っていたので、それをリビング用にして、Panasonic製の26インチも辛うじて一台残っていたので、その二台を購入したですヨ」
「おつかれさまでしたね、ほんと」
「でもさ、テレビをデジタルに変えたっていっても、番組の内容が変わるわけでもないから、見ることはないかなぁ」
「そうですよね、番組が一新されるわけでもないし、大物芸人司会者と若手芸人のネタ披露場と、番宣のコンボが、いまの民放スタイルですし」
「でしょ? 芸人さんは、たまーに気休めで見るから面白いし、面白くおもうわけで、毎日のように見るもんでもない」
「本当にその芸人さんのネタが観たいなら、劇場へ足を運ぶのがいいですよね。テレビで制限されるネタも、ライブでやっていたりするし」
「なんでもそうですけど、生の臨場感には勝てないです」
●簪よりも裏のシャッターに心を奪われる
「それで、一昨日は、カミさんと二人で、代官山に行って武さんのグループ展に寄って、渋谷に行ってマリアの心臓で中川多理さんのお人形を観て、浅草に簪(かんざし)を買いにいってきた」
「武さんの作品がすでに売れてて、すごく嬉しかったですよね」
「うん。展示作品はハガキサイズと名刺サイズだったけど、綺麗に展示されてて、額もまたいい味でてたなぁ」
「造形作家の能野裕子さん < http://goblin2010.web.fc2.com/
> の作品、初めて観たんですけど、独特な空気を放っていて惹かれましたね。軽石から削り出しているのかと思ったら、違うんですね」
「素材、なんだろうね、紙を溶かしたようにも感じるし......」
「クラフトの作品も出されてて、バランスがすごく良かったですー」
・アートラッシュ企画展Vol.151:『 妖 し 』展
会期:7月20日(水)〜8月1日(月)11:30〜20:00(月曜日17:00まで)火休
入場無料
< http://www.artsrush.jp/
>
「そういえば、いまさら浅草で気になったことが」
「なんでしょ?」
「仲見世の店舗裏あるでしょ」
「小路地のところですか? それがどうしたんですか?」
「店舗の裏にシャッターがあるじゃん」
「ありますね」
「あのシャッターって、なんじゃろ。全部見て回ったんだけど、裏のシャッターが開いている店は、一軒もなかったんだよね」
「ぐぐ先生で調べればいいじゃないですか」
「調べた。でも誰も触れてないんだよ」
「なんでしょうね、地下仲見世通りの入り口で、新吉原の世界が、地下で広がっているとかw」
「よ、吉原ー! 番外編の続きを書き始めてたはいいけど、区切りがつかなくて、文才のなさを改めて感じて落ち込んでいるですヨ」
「いや、いいんじゃないですか、評判良かったですよ、番外編。今まで連載している中で、読者さまからの反応が一番多かったですし」
「そぉ? ってことは、こんなネタコラムを書いてないで、マジメな正当コラムを綴るのが良いってことじゃないか」
「まぁまぁw」
「どなたか、仲見世の裏シャッターをご存知のかたがいっしゃいましたら教えてください」
【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋
< http://bachio.posterous.com/
> ←更新したのです
< http://twitter.com/bachiosamansa
> ←フォローしても役に立ちません
< http://gplus.to/bachio
> ←Google+ お気軽にドゾー
○本文中にも書いたように、リビングとムスコ部屋にテレビを設置/デジタルへの切り替えは、もともと近くのマンションからケーブルを引っぱってあるので、テレビに繋げて設定するだけで終了/ムスメはMACがあるから要らん。ということで、欲しくなったら自分で買うらしい。まぁ、つべ(YOU TUBE)とニコがあればいいみたいだし/しかし、LAN付きのテレビにしたので、テレビでつべやニコが見れると知ると、急に欲しくなったご様子/昨日、やっと蝉の声が聞こえたと思ったらまた聞こえなくなった
○記憶に残っている2週間の出来事→16日の土曜日に、Twitterでお知り合いになったデジクリの古くからの読者さまと二人で呑んだ→話題は尽きることなく、あっという間に帰りの時間→「読んでもらえる」ということを今までは意識していなかったが、これからは意識してみようと→でも、意識すると、元々おかしい文章が、さらにおかしくなりそうなので、いまのスタイルでw
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■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[11]
電子書籍共同ブランドづくりに取組む
沢辺 均
< https://bn.dgcr.com/archives/20110726140200.html
>
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前回のここで、この連載を「ポットの日誌」という自社サイトと、「マガジン航」というサイトにも転載しているって書いた。理由は、「できるだけ多くの人が読む可能性を増やしたい」ってこと。読んでもいいかな? って思ってくれる人にまだまだ届いていないと思うからだ。
このことは本も同じだと思うようになってきた。「太宰治の『人間失格』に、イケメンの写真かなにかのカバーをつけ直して注目を集めていたこともある」みたいな化粧直しをしないと、読んでくれるだろう人にとどかないまま、本は忘れ去られて行く。
で、電子書籍の話として続きを書きます。
この化粧直しは太宰治の『人間失格』のカバー替えのほか、復刊・増補改訂版・文庫化などという方法が考えられる。ところが、もともと少部数のわがポット出版の本はこれらをやりづらい。カバー替えでも増補改訂版でも、やはり初版のときより売上げは大きく落ちると思う。もとが少部数なのだから、そうした化粧直しで売れるだろう部数はさらに少なくなるわけだ。
ポット出版では、時々復刊をやる。今も石ノ森章太郎の『ジュン』という名作の完全復刊を準備中。これはもともと初版や最初の発表時の評価も高く、その後も評価は落ちてない(という判断)ので、少部数での復刊でも採算がとれるだろうと考えたのだ。ポット出版の復刊は、それなりに売れた本をターゲットにしている。
余談だけど、紀伊國屋のパブラインという出版社向けのサービス(有料で月額10万!)があって、店頭の実売を一日遅れでみることができる。さらに、他社の本・雑誌の情報も見ることができるのだ。1990年代の後半あたりからのデータが蓄積されている。これが他社の本の復刊を考えるときに役に立つのだ。
さて、この『ジュン』は他社の販売成績の良い(そしてその後忘れられたり、大手出版社の基準では復刊するほど販売が見込めなさそうな)本の例。ポット出版の本では、千、二千部という販売成績の本もゴロゴロしている。こうした本は文庫にされることもない。
文庫は、昔は初版三万部などというふうに言われていたけど、今は一万チョットくらい。それでも一万! いくら文庫にしても、それほどは見込めないものばかりだということだ。
さらに、ポット出版は文庫を出すには困難な課題がヤマ積み。文庫の初版部数が多いということは、売れなかったときの赤字がスゴいことになる。取次からは毎月定期的に複数タイトルを出すことも求められるようだから、イッパイ出さなきゃならない。
また、書店店頭に、もうあらたな文庫のスペースを確保してもらうことがそもそも絶望的にむずかしい。まあ、ポット出版が文庫を出したいといっても、取次の相手にしてもらえないだろうけどね。
つまり、化粧直しして、まだまだ読んでくれるだろう人に、もう一度届ける機会をつくるのは、今考えられるパターンではとても難しいのだ。そこで考えたのが、電子書籍の利用だ。電子書籍化を化粧直しの「もうひとつの機会」として利用しようということなのだ。
これを、われわれのやっている版元ドットコムという出版社団体の会員出版社で、共同のブランドとして取組んでみよう、と考えたのだ。正しくは、このアイデアは版元ドットコムの仲間である、高島利行さん(語研)が言い出したことなんだけどね。
版元ドットコム共同の独自ブランドを電子書籍でつくるのは、化粧直しをするってこと以外にもいくつかの理由がある。
実はこれまでも、中小出版社のタイトルも時々文庫になっている。この場合は、ほとんど「持って行かれた」って感じなのだ。最初にリスクや知恵を著者と一緒に出して本にして、多くのシッパイのなかからそれなりのアタリをだす。やっとあたったタイトルを、今度は大手出版社が文庫にしてしまうっていうイジケタ感じを持ってしまうのが、中小出版社にとっての文庫のイメージ。
もちろんタイトルにとっては、もう一度化粧直しして世に出て行くのだからいいことではある、ってのはわかっているんですよ。で、この「持って行かれる」ってことに、電子書籍化で対抗できる。
投資コストも少なくてすむ。文庫を万単位で制作すれば、印刷・製本費だけでも一冊あたりン百万の単位の初期投資が必要。紙の本をスキャンしてOCR(校正しない)の透明テキスト付きの「スキャン電子書籍」であれば、ものすごい低コストでできるから、リスクを少なくすることができる。
書店の棚を営業してとってくることも必要ない。取次に「文庫出したいんですよ」って言う必要がない(つまり、断られることもない)。版元ドットコムの数十社でも、共同の独自ブランドをつくれば販売促進活動もそれなりにできる。電子書籍化のノウハウも数十社で生かせる。
ただし、マイナスなこともある。イマイマ、電子書籍がたくさん売れる環境にないってこと。でも、だからこそ今から取組めば、ブランドを浸透させる可能性も大きくなる。大手も含めて、電子書籍の制作や販売促進などのノウハウは「ない」といっても過言ではないんだから、充分競争について行けると考えているのだ。
◇ポット出版7月の新刊は2冊
『日本発! 世界を変えるエコ技術』(著・山路達也)
< http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-7808-0161-3.html
>
『正しい貧乏青年の食卓』(著・ライノ曽木)
< http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-7808-0162-0.html
>
◇ポットの日誌
< http://bit.ly/qZj4Op
>
【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/
>(問合せフォームあります)
ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。
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■Webディレクター養成ギブス[13]最終回
クライアントとグルになる/クライアントをグルにさせる
蓮井慎也
< https://bn.dgcr.com/archives/20110726140100.html
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優秀と言われるビジネスパーソンは、優秀なブレーンを持つと言われています。分業化が進むWEB制作でも同じで、WEBディレクターにとってのブレーンとは、自身の脳みそではなく、素晴らしいWEBデザインをするデザイナーだったり、小気味よいプログラムを書くプログラマーなど、自分以外の"人"のことを指します。
WEB制作現場よりひとつ高いところから見てみると、クライアントにも同じことが言え、斬新な発想やデザイン・機能性溢れた、誰もが驚くWEBサイトを自社サイトに持つような企業は、自社でWEBに精通した人材を抱えることなく(抱える場合もあるでしょうが)、WEB制作を外部リソースに頼る場合がほとんどでしょう。
すなわち、優れたWEBサイトを自社に持つクライアントのWEB担当者には、必ず優れたWEBディレクターがついていて、そのWEBディレクターにも優秀なデザイナーやプログラマーがついています。
クライアントには、これまで自社サイトを何本も担当してきた百戦錬磨なWEB担当者がいれば、新卒で入社したてのちょっとパソコンに詳しいだけのWEB担当者もいます。百戦錬磨のWEB担当者にはすでに優秀なブレーンはついていたとしても、より優秀なブレーンを探そうとWEB関連のセミナーなどには頻繁に顔を出していたり、未熟なWEB担当者も人づてで優秀と言われるブレーンを紹介してもらったり、実際の案件で見極めていたり...。彼らは常に優秀なブレーンを探していることは共通しています。
クライアントのWEB担当者に、すでに優秀なWEBディレクターがついてるから...と、あまり悲観することもありません。自身のWEBディレクションが優秀とされるWEBディレクターの上をいけばいいわけで、クライアント担当者にとっての優秀なブレーンになる努力を怠らず、来るチャンスに向けて日々努力をすればよいのです。
では、一体なにをもって優秀とするのか? 知識なのか? 経験なのか? スキルなのか? テクニックなのか? WEBディレクターの職務内容は広範すぎて、これらをすべて押さえようとすると考えただけでも気が遠くなってきます。
また、企業が必要とするものは様々で、タイミングによっては求められるものが自分が持ち合わせていなければ、自分が用なしになるかもしれません。求められるものに自分が合わせるのもしんどい話ですし、合せることがしんどいなら、合わせてもらえるような動きをしていきましょう。
合わせてもらうといっても、ひとつだけクライアントの担当者に合わせなければならないことがあります。それはクライアントの利益です。同じ目的を共有し、同じ目的に向かう姿勢がなによりも重要で、クライアントの担当者は、自分の会社のことを一番に考えてくれる外部ブレーンの存在が一番嬉しく、さらにクライアント社内での担当者の立場や人間関係までを熟知し、他の担当者や上長とも上手くやりながら、円滑にモノゴトを進めていける能力が、実はWEBの知識や経験、スキルやテクニックよりも必要です。
ここで危険なことは、担当者の話を鵜呑みにし、目的と手段をはき違えてしまうことです。担当者と一緒になって手段を目的にし、間違った方向に進んでしまうと、担当者とともに上長に大目玉を食らうことになりますから、常にクライアント企業が目的にすることの本質を捉え、ときには担当者を制止することも必要になってきます。
クライアント企業の人間になったつもりではなく、同じ会社の人間になってしまったと、クライアント企業の担当者や上司に驚かれるくらいがちょうどいいです。すると、WEB制作では見えなかったもの(例えばエンドユーザなど)が見えるようになり、教えてもらえたり、裏事情にまで精通するようになり、1言われれば10わかる、ツーカーの関係になれます。
クライアント企業の担当者からは、可能なことに関しては次第に遠慮のないオーダーがくるようになり、逆に不可能なことには遠慮が入り、不思議と無理難題も言われなくなります。
困難には共に考え、ひとつひとつクリアしたり失敗したりを繰り返しながら、苦楽を共にしていくうちに、クライアントとWEB制作メンバーとの板挟みに遭っていないことに気づく瞬間があると思います。
もっといえば、開かれるミーティングにときどきWEB制作メンバーを連れて行き(本業はWEB制作なので、常ではなく感情移入するまでがポイント)クライアント担当者を含めた、WEBディレクターである自分と、WEB制作メンバーがひとつのチームになれば成功です。
もっと言えば、WEB制作を通じてそのWEBサイトを成功に導き、クライアント企業の担当者を出世させる(昇進してもらう)ことも考え、その担当者の上長にも打合せや飲み会などの場で自分のことはさておき担当者のことをアピールし、クライアント企業内での評価を上げる動きもします。
やり過ぎはよくありませんが、やらないよりやったほうがよく、担当者にせよ上長にせよ、自分や自分の部下が、ここまでやってもらっていることは誰も悪い気はしません。
自分(WEBディレクター)が、クライアント企業の担当者と同じ目線でで立ち回っていると、いつのまにか担当者が(その上長までもが?)WEB制作プロダクションの従業員の営業マンのようになってくれているときがあります。
少し懐疑的に聞こえるかもしれませんが、この一体感の醸成が、WEB制作の成功の一番の要因となります。クライアントが本気になってくれなければ、大抵のWEB制作は失敗に終わりますが、本気にさせるのもWEBディレクターです。
こうした動き方を、クライアントとグルになる/クライアントをグルにさせる、と言います。まずは自分がグルになると、相手もグルになってくれ、WEB制作メンバーをもグルにすると、会社の枠を超えたひとつのチームになって、真面目な業務から悪だくみまでできるようになり面白い展開になります。
傍から見ると悪ふざけをしているような行為も、同じ目的に向かって共に喜び、泣き、笑い、楽しむ制作現場の雰囲気は、WEBサイトを通じてお客さん(ユーザ)に不思議とに伝わります。
なぜ制作現場の雰囲気がユーザに伝わってしまうのか未だに謎ですが、一手間二手間が加わったり、常にユーザのことを意識した先回りができるからでしょう。効果の高いWEBサイトはこうして生まれます。
ここで注意したいことは、すべてクライアントのためにするわけではないということです。予算がないこともしばしばで「安くしてくれ」と言われることもありますが、いくらグルになったからとはいえ、それでも会社対会社の取引です。その1点は弁えつつ、人間関係はできていますし、言いにくいことは言いやすくなっているはずですので、なにができてなにができないか、どこまでできてどこからできないのか、を、しっかりと仕切っておく必要はあります。(第9回参照)
では、クライアント企業の担当者とグルになって面白かったエピソードをご紹介します。
◎トップページハイジャック
とあるクリスマス前の打ち合わせの席で、「トップページに華がないよね?」という話になりました。一日に数万件のアクセスのあるWEBサイトで、お堅い企業のため、トップページをクリスマスバージョンにすることは、暗黙の了解でご法度とされてきました。それでも担当者と私、WEB制作メンバーで、トップページのハイジャックを企てました。
雪をFLASHで降らせ、マウスカーソルに合わせて雪が降る方向が変わり...今の技術で考えれば大したレベルではありませんし、そもそもトップページに雪を降らせるなど、考えただけでバカバカしい話ですが、当時としては制作に係わった人間全員は本気でバカをやっていました。
お互い上長からは大目玉を食らうか...と決死の覚悟で臨んだトップページハイジャックでしたが、上長からは「なかなかいいじゃないか?」の意外な反応。ユーザの声も好評で、後日別件で実施したユーザビリティテストにドサクサ紛れに質問を加えたところ、「親しみがあってよい」の回答が多数を占めました。それが本当の効果に繋がったかどうかは微妙ですが...。
WEB制作技術は日進月歩で進んでいきます。WEBサイトにとってなにが理想で...なんてものは、なにかをきっかけに代わってしまうかもしれません。技術的に実現できる/できないで終わってしまうような関係ではなく、一緒にクライアントのライバル企業と戦う姿勢で実現可否を共に考えればそう簡単に取引を解消されませんし、むしろ太くて長い関係を構築できるようになると思います。
本メルマガ読者の皆様が、クライアント企業の担当者と目的や思いを共有し、1を言えば10が分かるくらいのツーカーの仲を構築し、グルになって、クライアント担当者を出世(昇進)させる優秀なブレーンとして活躍される日を心から願っております。
最後に。約一年間、13回に渡って連載してまいりました『WEBディレクター養成ギブス』を諸事情により今号で終了いたします。WEBディレクションについての本や記事が増えてきたこともあり、なるべくそういった類の本に書かれていないような気構え・心構え的な部分で書いてきたつもりでしたが、いかがでしたでしょうか?
一度、WEBの業界から離れ、違った角度からWEB業界を眺めようと思った次第です。またいつの日かパワーアップして、デジクリに再寄稿できる日がくればいいなぁと思っています。しばらくは疲れた身体を癒すために、全国の温泉旅館を巡る、湯治の旅に出たいと計画中です。
約一年間、ありがとうございました。
【蓮井慎也 / Shinya Hasui】湯治の旅(準備中)
< http://twitter.com/hasui
>
< http://ja-jp.facebook.com/hasui
>
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■編集後記(7/26)
・集合住宅高層階の通路でけっこう昆虫が捕れる(拾える)と書いたが、わたしのお好み巡回サイトのひとつ「Daily Portal Z」にナルホドと思う記事「コンビニで昆虫採集」が掲載されていた。コンビニの前に夜通し陣取って、落ちている虫を拾い集めれば立派な昆虫採集になるのではないか、という発想を実践した記録だ。その結果、甲虫類を中心に、クワガタムシなどメジャーどころから、キイロゲンセイなどマイナーなものまでバラエティ豊かな昆虫が、コンビニの玄関から殆ど動かずに採集できてしまったのだ。雑木林に立ち入るのではないから、服装もいい加減でいいし、蚊にも刺されないので安全・快適で、しかも驚くべき効率のよさだ。もちろんコンビニの立地が重要で、山や林、田んぼなどが近くにあるちょっと田舎が最適だ。舞台は茨城県小美玉市のローソンだった。高校生物部の頃、夏休みになると校舎の屋上で白い布に照明をあて、見沼たんぼや雑木林から飛来する昆虫を捕獲する、夜間採集というプチ合宿を何度もやった。荒川の雑木林にテントを張り、カーバイトランプで虫を呼ぶ夜間採集も行った。レアな昆虫が得られたことはなかったが、男子高校生の真夏の夜の忘れ難いイベントであった。「これはまさに新時代の昆虫採集の形ではないだろうか」というコンビニ昆虫採集、わたしも単独でやってみたいが、怪しい人物と思われるのは間違いないだろう。(柴田)
< http://portal.nifty.com/kiji/110722146101_1.htm
>
コンビニで昆虫採集(Daily Portal Z)
・蓮井さん、ありがとうございました。実体験から来るお話ばかりで、心に刺さっています。またこの業界に戻ってきてください。お待ちしております。/続き。行くまで不規則な寝不足生活が続いていた。前夜は、三時間の仮眠をとって新幹線。会場では30分ほどのオリエンテーション後、すぐに開発開始。眠い。普段のハッカソンでは、追加された新しいAPIをテーマにして企画出しをするそうなのだが、今回はテーマなし。なので余計に企画がまとまらない。早いところはすぐにホワイトボードや、テーブルに紙を広げての企画出しがはじまるのだが、うちのグループだけはまったく出ない。赤外線リモコンを作ろうという話にいったんなったのだが、そうすると今回初めての試み、デザイナーとのコラボの意味がなくなるよねぇと気を遣ってくださるチーム。私のことはいいからそれで行こうよ、面白いアプリを作りたいと説明するものの、やはりまとまらず。最初騒々しかった会場が、だんだんと静かになっていき、会話しているのはうちのグループだけになった。他のグループは黙々と開発中。焦りはじめる。新幹線での移動中は、欲しかった実用アプリ(ToDoやカレンダー、買い物メモなど)が作りたいなぁ、でもプログラマーさんの考えもあるしなぁ、私はAndroidの知識がないから、プログラマーさんの作るアプリのUIデザインをし、見た目もきれいにしたらいいだろうと思っていた。タイポグラフィのかっこいい、クールなデザインにしようと半ば心に決めていた。が、企画が決まらないため、頭のリミッターをはずす。つい口から出たのは、キャラクターが変化する歩数計アプリ。ただの歩数計じゃないよ、ソーシャルと節電も実現するんだよ。ええ、昨日書いた通り、キャラは描けません。可愛い系もすぐには作れない。続く。(hammer.mule)
< http://319ring.net/blog/archives/1756
>
うちとは逆パターン。企画先行型
< http://akibahideki.com/blog/cat5/sharp.html
>
なるほど。有料でも買いたくなるアイコンとスタートアップ
< http://d.hatena.ne.jp/gabuchan/20110724/1311521550
>
マーケットにあげてほしいなぁ。ほしいなぁ。
< http://www.hakusensha.co.jp/glass/
> 当たった。応募しとけば良かった。