[3103] ソーシャルスパムに気をつけろ

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《僕的にどうしても「英雄」に見えちゃう人》

■Dの憂鬱[04]
 ソーシャルスパムに気をつけろ
 笠居トシヒロ

■グラフィック薄氷大魔王[268]
 初期テレビアニメのドッグイヤー
 吉井 宏


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■Dの憂鬱[04]
ソーシャルスパムに気をつけろ

笠居トシヒロ
< https://bn.dgcr.com/archives/20110831140200.html
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毎度、笠居です。いやーもう8月も終わりやというのに、まだまだ毎日暑いですねえ。ちょっと外を歩いただけで、汗がとめどなく流れ出てくる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

先月末は、もっと暑いところへ旅行して、もっと大量に汗をかいてきたんですが、これだけ汗をかいてもちっとも痩せないのはなぜでしょうね。あ、それ以上にビール飲んでるからかw エエ加減酒量減らさないと、後々えらいことになりそうですねー。気をつけよう。

さて、最近の僕のお仕事としまして、とかくTwitterやFacebookなどのSNSと連動した広告系サイトの制作が増えております。mixiは、バジェットが跳ね上がってしまうので、今のところ手をつけてませんが、mixiページのリリース後は、こちらも増えてくるかもですね。

で、ディレクターとして関わりのあった仕事を軽くあげてみると、なでしこジャパンを(予選から!)応援していた「ツイート・スタジアム(終了)」とか、消臭機能付きの空気清浄機の広告サイト「Quiz de デオ(終了)」とか、某旅行社のハワイ旅行が当たるキャンペーン「We Love Hawaii(終了)」とかですかね。

これらはどれもTwitter連動で、ユーザーのツイートによってバズを拡散していく手法を用いたものです。Twitterは、APIを開放しているので、こういったバイラル効果を狙った広告コンテンツには、非常に利用しやすいですね。

Twitterがすごいのはソーシャルグラフの量的ボリュームです。Twitterでは、フォローする際に相手の承認は不要。いわゆる片思いフォローというやつですが、このシステムのおかげで、一人あたりの人間関係数は他のSNSを大きく上回っていて、これがTwitterの驚異的なクチコミバワーを生みだす結果となっているわけです。

ちなみに、さきごろスタートしたGoogle+も、片方向のフォローが可能です。開始1週間で2500万人ものユーザーを獲得したそうですし、中にはすでに数千件のフォローを登録したなんてユーザーもいるみたいです。

が、ユーザーの80%が休眠ユーザーだという報告もあり、Google+がこのような広告手法のプラットホームとして台頭してくるかどうかは、いまのところ微妙な感じではあります。
< http://web-tan.forum.impressrd.jp/u/2011/08/23/10947
>

一方、Facebookはどうなのかというと、今のところリリースにまで至った案件はありませんが、企画自体はイロイロありまっせという感じ。去る2月末に、電通がFacebookと業務提携したことによって、クライアント企業の関心が高まったことも関係してると思います。

とはいえ、提携の内容自体は、プレミア広告枠(ログイン時に表示される広告)の独占販売以外は、「Facebookの企画を各種企業や広告主にコンサルする」「ソーシャルプラグインやFacebookタブアプリを使ったキャンペーンを実施」「既存のメディアと組み合わせたプロモーション展開」といった、ごくごく当たり前の内容で、他の代理店や制作会社でもできることばっかりなんですけどねw

ただ、昨年末にFacebook上で展開する広告プロモーションに関する規約が変更になり、【プロモーションにはアプリを使うこと】【「いいね!」や「チェックイン」をユーザーがプロモーションに参加するためのトリガーにしちゃダメ】というシバリができたので、「いいね!」でバズの拡散を狙うためには、「いいね!」をクリックした上で(応募条件)、さらにアプリを使ってコンテストに参加してください(応募の実行)、というような2段階の手順をユーザーに踏ませる必要があり、制作者にとってもユーザーにとっても、若干敷居が高くなった感はあります。

ところで、Facebookでユーザーがアプリを使う前に「認証」という手続きがあるわけですが、この認証さえ通してもらえれば、アプリは結構なんでもできちゃいます。

友達の情報を引っ張ってきて、アプリ自身を紹介するメッセージを出すこともできるし、本人に成り代わってウォールに書き込みしたり、自動で写真にタグ付けしたりなんてこともできるわけです(もちろん、認証の際には「こんなことをアプリに許可することになりますよ〜いいですか〜?」というアラートは表示されますんで、嫌なら認証しないという選択肢もアリです)。

敷居が高くなった分、一旦そこを乗り越えると、できることがグッと増えるというかんじでしょうかね。

ここで問題となるのが、広告を打つ側の「モラル(良心)」であります。このような仕組みは、一歩間違うと強力な「スパムアプリ」を作り出すことも可能だからですね。

最近の有名な例で言うと、「Top Connected Friends」というスパムアプリがありました(まだある?)。Facebook上の友だち相関図を作成するよー、と言って認証を促すんですが、OKすると、ユーザーの名前やプロフィール写真など「基本データ」へのアクセスと、メール送信、ウォールへの投稿、投稿した写真と動画へのアクセスなどをアプリに許可することになります。

で、ユーザーの友だち関係に基づく相関図だという画像を作成して、ユーザーのウォールに投稿するんですが、これは適当な顔写真を使ってそれらしく作られた紛い物で、この画像を勝手に友だちにタグ付けし、「□□さんが○○さんのアルバムにタグ付けされました」と、アプリへのリンクとともに友だちに通知します。

このタグ付けと通知によって、次々にアプリ自身を拡散していくわけですが、実は、この相関図(偽)の作成中・作成後に表示される、いかにもなバナー広告をクリックさせるのが本当の目的らしいんですね。

この他にも、自動的に「いいね!」を集めて、その量によって検索エンジンやSNSでのサイトの露出度を向上させるという、SEO的なスパムで「Like Farm(いいね!ファーム)」と呼ばれる手法のものもあります。

MSの検索エンジン「Bing」が、Facebookと提携してソーシャル検索の強化をしていることもあり、Facebookで露出が高まれば、検索エンジンでも露出が高まるというわけ。

こういうのはもう完全に「詐欺」なわけですが、アプリ自身が広まるのも速いかわりに、スパムだという情報が広まるのも速いので「Top Connected Friends」などは、ITリテラシーが比較的高いと思われる僕の友達関係では、数日のうちになりを潜めてしまいました(英語が読めないから怖くて認証できなかったという話もありw)。が、一般的にはどのくらい蔓延ったのか(蔓延ってないのか)は、ちょっと把握できてません。

ひょっとすると、一旦認証してしまったアプリを削除したり、ブロックしたりする方法を知らない人も多いのではなかろうかと思われますので、老婆心ながら、いちおうサラっと書いておきますね。

まず削除の方法ですが、
1)自分のプロフィール画面に行き、右上にあるアカウントから「プライバシー設定」を選択。
2)開いた画面右下のアプリとウェブサイトから「設定を編集」のテキストリンクをクリック。
3)画面中央に利用しているアプリの一覧があるので、その右側にある「設定を編集」をクリック。
4)削除したいアプリを見つけ、そのアプリの欄の右端にある「設定を編集」をクリック。
5)アプリの詳細が網かけの画面になって開くので、その右上にある「アプリを削除」をクリック。
これで該当アプリを削除することができます。

で、二度とこのアプリからの通知を受け取らないために、嫌だけどそのスパムアプリのページに行って、左ペインの下方にある「アプリをブロック」リンクをクリックしておきましょう。

このような「ソーシャルスパム」と呼ばれるアプリやページは、結局のところ(悪質ではありますが)広告です。製品オーナーは宣伝したいがため、スパマーに対して支払いを行い、そのスパムはSNSの仕組みを利用して拡散します。

この文章、「スパマー」を「広告代理店」に、「スパム」を「広告」に置き換えても全然成立しちゃいますよね。どちらも「フロー」は同じなわけです。違うのはそこに「良心」があるかないか、ということだと思います。

われわれ制作者は、スパマーに堕ちてしまわないよう、いつも自分を戒める必要があるみたいですね。

あー、そうそう、前回の濱村デスクの編集後記に「勝手に」「亀」リプライwIE6にクライアント企業がこだわるのは、多分その企業が「当時導入してしまったイントラ(社内)システム(XP+IE6準拠)を、最新のOSやブラウザに対応させることが(おそらく予算的に)できないから」IE6を使い続けてるんだとおもわれますよ。

いくらコンテンツのターゲット層がWin7+IE8の環境であっても、クライアント企業(の上層部)やトップの代理店で動作確認できないコンテンツは納品させてもらえないですからねー。いくら「切り捨て提案」しても無駄なことが多い。クライアントや代理店がでかければでかいほど融通きかないです(^_^;)

【笠居 トシヒロ/WEBディレクター、デジハリ大学院客員教授、京都嵯峨芸術大学講師】
< http://www.mad-c.com/
> < kasai@mad-c.com >

なんとなく書き出しを「です・ます」調にしたら、そのまま「です・ます」で全文書ききっちゃったよ。前回は「だ・である」で書いたのに、早くもバランバランですわな(^_^;)

先月、タイはバンコクに行ってきました。初日腹こわして寝てたり、スコールで2回ずぶ濡れになったり(現在タイは雨季)、象に乗ったら背もたれにクッションがなくてめっちゃ腰が痛かったり、同行者が急性腸炎で入院したりとイロイロありましたが、楽しかったです(← いや、楽しそうじゃないからw)。

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■グラフィック薄氷大魔王[268]
初期テレビアニメのドッグイヤー

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20110831140100.html
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●初期テレビアニメのドッグイヤー

Twitterで誰かが書いてた昔のアニメ「戦え! オスパー」、まったく知らないや。同時代で似たような雰囲気の「宇宙少年ソラン」や「遊星仮面」は知ってるけど。Wikipediaによれば「オスパー」は65〜67年に放映されたテレビアニメ。

僕は小学校時代にマンガ・アニメを禁止されていた時期があり、みんなが普通に知ってるアニメでも見てないものが多いのです。でも小学校入学前は比較的自由に見てた気もするし再放送も多かったから、その頃のテレビアニメはほとんど見覚えがあるはずなんだけど、まったく知らない。

そのへんどうなってるのかと、Wikipediaでテレビアニメの歴史を確認してたら、すごいですね〜。63年が「鉄腕アトム」放送開始で、74年には「アルプスの少女ハイジ」や「宇宙戦艦ヤマト」をやってるわけでしょ? たった10年でものすごい進化。現在から10年前がついこの間の2001年って考えると、昔の時間のほうがぜんぜんドッグイヤー。

で、「エヴァンゲリヲン(1995年)」がすでに16年前なのに、テレビアニメの歴史が始まってたった16年で「機動戦士ガンダム(1979年)」に到達してるって、驚異的! 3DCGアニメの歴史と比べても、びっくりするくらいの進化。

あ、ヤマトもガンダムも、虫プロ出身の西崎義展と富野由悠季で、直系だ。虫プロやスタジオ・ゼロなどは若い世代だったわけだし。それ考えると今は確かに若い世代には閉塞感あるのかもしれない。

「ヤマトやハイジまで11年」を例に出したのは、今放送できるレベルの「こなれた」名作アニメとしてであって、60年代後半にはすでに子供向けアニメ文化は今と同じように爛熟していた。お菓子や日用品はアニメのキャラクターだらけだったし、僕のリュックサックは「妖怪人間ベム」だった。市の祝新入学イベントでは「ウメ星デンカ」がフィーチャーされてた(1969年4月1日が放送第一回だったようで、放送開始直前。小学館の「小学一年生」のプロモーションだった模様)。

70年代半ばまでの初期のテレビアニメが幸運だったのは、今みたいに娯楽が分散してなくて、テレビの存在は大きかった。再放送するアニメも絶対数が少ないから何度も同じものを見ることになり、思い入れが深まる。その頃に子供だった世代は、一生、テレビアニメの影響下に置かれるんだろう。

考えてみると、テレビアニメに子供が単純に群がらなくなって、もっと上の世代をターゲットにする動きが定着するまでに10数年しかかかってないってこと。初代ルパンとかのわざと狙った作品は別として。結局、最初のアニメ世代しかアニメ好きの定着はなかったのかも?

ところで、技術の進歩という点で言えば、昔は人海戦術しかなかったけど、今は個人や少人数である程度のアニメが作れる時代になり、その意味では新しい流れができないとおかしいんだけど、やはり収益の問題か〜。

●ジョブズCEO退任!

「スティーブ・ジョブズ氏、AppleのCEOを辞任〜後任はティム・クック氏、ジョブズ氏は会長に」。......順当と言えるのかな。ジョナサン・アイブは次かな?

ビル・ゲイツがマイクロソフトのCEOから会長になったのが2000年だから、ジョブズはかなり遅かったとも言える。それ考えたら動揺はなくなった。ジョブズの目の黒いうちは、ティム・クックだろうが誰だろうがブチ切れつつこき使うんだろうから、そんなに変わらないでしょ。むしろ、面倒な仕事から解放された分だけパワーアップするかも。そっか。今まで「会長」の椅子があいていたわけで。

物語の英雄って、どん底というか象徴的な「死」まで落ちてから輝かしく復活するものだけど、ジョブズが完全にそれだからやっぱ「神話」になるんだろうなあ。宮崎駿も同じくどん底まで行って復活してから誰もたどり着けなかった頂点を極めたから、僕的にどうしても「英雄」に見えちゃう。すごい才能でデビュー以来ずっと安定してやってきた人は神話っぽくならないですね。

やっぱ究極はビーチボーイズのブライアン・ウィルソンだろうな。60年代半ばから80年代後半までほとんど廃人同然だったのに復活した人って他にいないんじゃない?

○東北復興支援「赤べこプロジェクト」展に参加します

「福島県の縁起物・郷土玩具の「赤べこ」をクリエイターたちが自由にペイント。展覧会を定期的に日本各地で開催することで、様々な人々が「東北」に触れ、震災と原発の問題を自分の事として意識するきっかけをつくることで、問題の風化を少しでも防ぎたいと思っています。」──という趣旨です。すごい豪華メンバーが参加しています。
会期:2011年9月2日(金)〜9月25日(日)
会場:@btf 3A
< http://www.shopbtf.com/at/tenran_akabeko.html
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【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
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Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
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「潜入!リアルスコープ」のピクサー潜入のまぎらわしい予告で怒りまくってたのは7月2日。放送されたのは翌週ではなく翌々週の7月16日だけど気づいたときは遅く、終わりかけの部分しか見れなかった。で、先週土曜の昼間に再放送してたのをたまたま見れた! 1ヶ月以上ぶりにようやく見れたよ〜。って、期待するほどの潜入でもなかったけど。

・iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」販売中
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV
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・「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb
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■編集後記(8/31)

・もうテレビはいらないと言ったものの、世界陸上の間だけは撤回したい。陸上競技がこれほどおもしろく、美しかったのかと強く感じたのは、地デジとハイビジョンモニター(フルスペックではないが)のおかげだ。世界の美人アスリートをくっきりはっきり見られるのがうれしい。中でも女子棒高跳びはカメラ映えする競技で、スローモーションの映像は美しく、そしてセクシーだ。イシンバエワのお尻露出度高し。やっぱりロシア美人は最高です。トラックの選手を一人一人、カメラが舐めるように撮る。困惑気味に愛想をふりまく女子選手たちがいい。男子の対応は様々だが、その見かけから一人ずつ勝手な職業を割り振ってやるとおもしろいぞ。教師、軍人、猟師、哲学者、不良、ゴリラとか。それにしても織田裕二の「やっとですね」はないだろう、金メダルをとった室伏広治への第一声。なんという無神経なヤツ。中井美穂との息の合わないやりとりも見苦しい。相変わらず黒い人が強いスポーツだが、名前しか知らない国の選手も多く、世界地図で確認する作業は楽しい。あれま、開催国の精彩のなさはどうしたことだ。陸上(おか)に上がった河童か。地デジではっきり見るのはスポーツだけでいい。日教組のドンとかいう、これ以上なく貧相な老人が民主党のナンバー2になったというニュースを見てしまった。前首相のときと同様、この老人が出たときは目をそむける。見たくない。(柴田)

・Google+の80%のうちの一人です。/笠居さん、後記読んではったんや! ガクブル。笠居さんの文章でIE6のことを見ると、まだまだまだまだ先になりそうな気がしてきた。ですよね、不景気なのが一番の原因ですよね。使えないこともない設備への投資やイントラなんて最後になりそうですもんね......。大手のお仕事が多いと逆にその傾向が高そう。笠居さんのところは予算とれるからいいですやん(笑)! 某行政のお仕事ではIE6切り捨てにしましたよ〜。情報入手自体には問題はないだろうとのことで。/名前の出せる仕事ばかりでいいなぁ。なでしこジャパンは予選から応援されてたのか〜。Facebookは使いにくい。やりたいこと、見たいことを期待したリンクからは見つからず迷子になる。ようやく見つけた後に、こんな辿らせ方だとわかるわけないだろうと憤る。日本人の作るサイトが親切すぎるのか? 携帯電話のように、日本のサイトは独自発展していてそれに慣れてしまい、私の感覚が世界基準から離れてしまったのか?/ピクサー潜入の放送を吉井さんのプロフィール欄で見かけるたびに、毎回見たかったと書いている気がする。まさか再放送まであったとは。/「おしおきだべ〜」の滝口順平さんが亡くなられた。もうあの声は聞けないのね。(hammer.mule)
< https://bn.dgcr.com/archives/20110713140000.html
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これへのお返事。