[3212] イタリアで唯一のMANGA構築法解説者

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《早起きは三日間たたる》

■買物王子の家づくり[23]
 広くなったのに収納できない!?
 石原 強

■ショート・ストーリーのKUNI[112]
 感動体験
 ヤマシタクニコ

■ローマでMANGA[49]
 イタリアで唯一のMANGA構築法解説者
 midori




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■買物王子の家づくり[23]
広くなったのに収納できない!?

石原 強
< https://bn.dgcr.com/archives/20120223140300.html
>
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お正月をフルに使って荷解きをしたので、なんとか生活できるようになりました。でも、まだまだ空いていないダンボールがいくつも積まれています。入居後に残っている工事も済ませる必要があります。それらを、ひとつづつ片付けていかなければなりません。

●一向に減らないダンボールの山

前に住んでいたマンションは押し入れが二つに納戸と、狭いながらも収納が豊富にありました。新居は一階と二階に納戸を設けているので、収納スペースは広がったはずです。しかし、床にモノが置かれて、思ったように収納ができません。棚を設置するなど、収納の事前準備が十分にできていませんでした。

二階の納戸の奥には、三階に上げられなかった本棚があります。けれども本はすべて三階に運び上げてしまいました。重たいダンボールをひと箱ずつ二階に下ろして並べます。引っ越し前に、ずいぶん処分したつもりだったけど、やっぱり入りきらない本が床に積まれてしまいました。

キッチンは、最後まで迷ったあげく、食器棚や吊戸棚を設置しませんでした。オープンなシンク下には引き出しを設置して、普段使う調理器具は収まりました。それ以外にも、たまにしか使わない器具や食器類が、ダンボール箱4箱分以上あることがわかりました。今はそのままになっていますが、その中には大事にしていたワイングラスも入っていて、飲みたい時、すぐに取り出せないのが残念です。

一階の寝室は服で一杯になっています。壁一面のハンガーポールは、十分なスペースを確保したつもりだったけど、既にパツパツで取り出しにくい。そのためよく着ているコートは、別の場所に引っ掛けています。これでは春になったら収まらないのは確実です。

三階の子供部屋は、なにも準備していなかったので、引越しのダンボールを二段に重ねて簡易の棚としています。格好悪いけど大きさも揃っているし丈夫。なにより壊れても惜しくない。ぴったりしたものが見つかるまで、しばらくそのままになりそうです。

家全体では、表に見える収納が少ないほど、部屋がすっきり見えるのは間違いない。ここはぐっと我慢して、収納を増やさずにモノを収めたい。必然的に使わないものは処分対象です。しかし、それぞれに愛着があって決心がつかず、一向にダンボールが減っていかないのです。

●入居後の「ダメ工事」

引渡し直前やに施主や設計者がチェックして、未完成部分や不具合部分などを指摘して手直してもらうことを「ダメ工事」と言います。うちも入居前にチェックして気になるところには、マスキングテープで印をつけてあります。

引渡し直前の突貫工事になった壁紙は、階段の壁に凸凹したところがあって気になります。階段片側は壁全面を張り替えてもらいます。ほかにも工事中にキズがついたり、破れたところ、建具の不具合で把手が壁紙を削ってしまったところもあります。これは部分的に補修をしてもらいました。

家の前の道路を渋谷区が直す工事にあわせて、駐車場のコンクリートも厚く打ち直しました。しかし、うまく固まっていなくて、端のほうは足で削れてしまうところがありました。確認してもらったら「乾燥中に寒くて凍ったらしい」とのことで、再度、薄くコンクリートを塗って補修しました。

玄関のスイッチは、センサーがついていて、人が近づくと自動的にライトが光ります。明るい昼間は点かない設定になっているのですが、気づかずにスイッチを消してしまうことがありました。そうなると、夜は階段が真っ暗になってしまうので足下がおぼつかない。点灯状態がわかるように、スイッチをパイロットランプ付きのものに変更してもらいました。

一階の水周りのタイルにひびが入ってしまった。原因は不明だけど一枚だけなので交換してもらいました。選んだサーモタイルは、表面がざらっとしているので汚れやすいらいしい。掃除しても「なかなかきれいにならない」と不評です。サイズの合わなかったミラーボックスも、きちんと収まるものに交換して設置してもらいました。

準備不足で玄関に表札をつけていませんでした。迷った郵便屋さん、宅配便さんが「家はどこですか?」と電話してきます。急いで取り付けなければならないから、ネットで探してみた。なんだか装飾的なものが多くて、気に入ったものが見つからない。そうしているうちに慣れてきて、郵便や荷物が普通に届くようになったので、今でも表札がないままになってます。でも、このままではまずい。

入居後なので、工事が入るたびにモノを移動したり片付けたりで面倒です。一通り気がつくところは指摘して良くなったけれど、まだ最初の一年間は、不具合が出ることがあるらしいです。

●住み心地は快適

二階のリビングは明るくて暖かい。冬暖かいということで、夏の暑さが若干心配です。そこで、カーテンは無印良品の遮光カーテンと「熱を通しにくいレース」をオーダーしました。どの程度効果があるのかわかりませんが、少しでも夏の暑さを和らげてくれることを期待しています。

ダイニングは、入居直後、西側に家がなくて昼間はまぶしいくらいでした。年明けて工事が始まると、西側の窓が塞がれたために少し暗くなりました。予定されてたとはいえ残念に思いました。しばらくして慣れてくると、これくらいでちょうど良いと感じるようになりました。

特に天窓の光が良い。一日の変化がダイレクトに感じられます。朝は、部屋の明るさで天気がすぐにわかります。天気がよいと窓は青色です。白いと曇り、雨が降っていると雨粒が流れていくので、どのくらい激しく降っているのかわかります。夕方は、刻一刻と暗くなっていく様子が見て取れます。
< https://bn.dgcr.com/archives/2012/02/23/images/01 >

ダイニングテーブルの上に取り付けたシーリングライトは、テーブルのセンターから微妙にずれてしまいました。テーブルを入れてみたら納まりが悪かったので、設計時の想定から90度向きを変えたからです。天井にフックをつけて位置を微調整できそうです。

金額に怯みつついれた床暖房が、今は大活躍。エアコンはほとんど使っていません。風もあたらないし乾燥もなくて快適です。そのかわり無垢フローリングには大きく隙間ができました。いろんな所で話を聞いていたので予想はしていましたが、3mm近く空いているところもあってびっくり。
< https://bn.dgcr.com/archives/2012/02/23/images/02 >

そのせいで「ゴミが隙間に入ってとれない、気になる」と妻が嘆くので、掃除機を買うことにしました。最初はロボット掃除機「ルンバ」が欲しいと思っていたけど、床にモノが散乱しがちな我が家には向かないと断念。大きなものは出し入れが面倒で使わなくなると判断して、口コミで評価の高い「マキタ」のハンディークリーナーを選びました。コンパクトでコードレスなので、マメに掃除することができます。これは正解でした。

慣れない家ではアクシデントもあります。次男は三階から階段を落ちました。寝ていると思って目を離した隙でした。二階ゲートをつけて階段に入れないようにしたけれど、三階は未対策でした。そのことをFacebookで報告したら、同僚が追加でゲートを譲ってくれました。一安心と思っていたら、今度は妻が滑り落ちて、一週間以上お尻が痛いと言っています。

入居後のドタバタも最初のひと月で落ち着いてきました。収納のために棚はどこにどのくらいつけようとか、どこにどんな家具を置こうとか、もっと住みやすくするためにどうしたら良いかと考えているとワクワクしてきます。

今は思い通りに片付かないので落ち着かない。でも、少しずつ変えていけば、いつか馴染んでくるだろうと、おおらかに考えることにしました。

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加古里子の絵本「あなたのいえわたしのいえ」では、家の役割とか必要な要素について、順を追ってわかりやすく説明されています。子供に読んで聞かせていましたが、家づくりを考え直すきっかけにもなる絵本です。悩んでいる時に読むと、家をシンプルに捉えてみれば、本来必要ないことにこだわっているのではないか? と思えてくるのです。

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■ショート・ストーリーのKUNI[112]
感動体験

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20120223140200.html
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電車を降り、ホームから改札に向かう階段を上っていた彼はふと、親子連れに気づいた。母親とまだ3〜4歳くらいと思える女の子の2人。母親は身の回りのものを詰めたらしいショルダーバッグのほかに、ボストンバッグと布製のトートバッグをひとつずつ両手に持っていて、どちらにもぎっしりとものが詰まっているようだ。

女の子も、少しでも母親を手伝おうと思ってレジ袋をひとつ下げているが、たいした助けにはなっていない。そもそも、母親の足取りが、どんな事情からかさんざんあちこちをまわってきた人のそれで、階段一段あがるのもつらそうに見える。

彼は2、3段を早足で駆け上がり「持ちますよ」と言って母親の手から荷物を取った。母親は驚いて振り返ったが、すぐ弱々しくほほえんで「すみません」と言った。

荷物は彼にとっても相当な重さで、結局改札を抜けて、タクシー乗り場まで持っていくことになった。だが、口数こそ少ないが本当に安心したように穏やかな表情になった母親を見ると、彼も持った甲斐があると感じた。

タクシーの順番が回ってきて、いざ乗り込む直前、女の子がふと、自分のポケットをまさぐり、もじもじしながら彼に何かを差し出した。「あげる」それは電車に乗る前にどこかで摘んできたらしい紫の小さな花だった。すみれ、だろうか? すっかりしおれたすみれ。お礼のつもりなのだ。

彼は女の子にむかってにっこりほほえんだ。タクシーはすぐ走り去ったが、彼の心の中にあたたかいものがゆっくりとひろがっていった。

その夜、彼がパソコンを立ち上げると一通のメールが届いていた。

───今日の駅での体験はいかがでした?
ささやかではありますが、感動を味わっていただけましたでしょうか?

あ。と彼は思った。

何日か前、道を歩いていると偶然、学生時代のクラスメイトに会った。クラスメイトはなかば強引に彼を喫茶店に誘い、簡単な説明を終えると書類を取りだした。

「ここにサインすればいいんだ。あ、メールアドレスも忘れずに。連絡がくるから」
「うさんくさいなあ。何なんだよ、感動体験って」
「おれもよく知らないんだ。知り合いの紹介なんで。でも、感動っていいことだろ」
「まあな」

「みんな退屈してるだろ。おもしろくないことばかりで疲れてるし。そんなぎすぎすした毎日にささやかな感動をお届けします、てことだそうだ。心のリフレッシュってやつ?」
「ふうん」
「心配すんなよ。別に入会金も会費もいらないんだ。少なくともおれは払ってない」
「おまえも会員なのか」
「もちろんさ。はやってるんだ」

それがこれなのか。だが、するとあの親子は雇われて演技していたのだろうか? とてもそんなふうには見えなかったが。それに、いつも乗る電車ならともかく、今朝は寝過ごして、どうせならと思って歯医者に寄ってから出勤した。尾行でもしない限り、駅での出会いを仕組むことは不可能だろう。まあ、深く考えないでおこうか。

その日はそれで終わった。

数日後、休憩時間に人気のない廊下を歩いていると、どこからか話し声が聞こえた。なんだろうと思って、一瞬聞き耳を立てるとそれはふだんは使わない階段の踊り場から聞こえるのだ。盗み聞きをするつもりはなかったが、彼はつい近づいてみた。

ものかげで携帯を片手に話しているのは、隣の課の女子社員だった。化粧が派手で、だれにでもため口をきく。夜な夜な遊び歩いてるらしいとか、ろくなうわさのない女だったが、いま聞こえてくるのは同一人物とは思えない神妙な口調だ。

「...うん、おとうさんも体、気をつけないとだめだよ...あたし、心配してるし...うん...うん...いまね。セーター編んでるんだ。先輩で編み物得意なひとがいてね。こっそり通って教えてもらってるんだよ...うん、仕事終わってから...だいぶ進んだから、完成したら送るよ...」

彼はなんだかうれしくなった。化粧が濃いからというだけで、何か決めつけてるところがあったかもしれない。ほんとは父親思いのふつうの女の子だったのか。盗み聞きはほめられたことではないだろうが、いいことを聞いた。セーター、うまく仕上がるといいなあ。

すると、その夜もメールが届いた。

───本日はいかがでしたか?
心がほっとする体験をしていただけたのではと思っています。

彼はしばらくモニタを見つめてぽかんとした。

その一週間後にはいつも通勤途上で出会うが、話をしたこともなかった高齢の女性から突然話しかけられた。聞けば、女性の亡くなった息子に彼がどことなく似ているので以前から気にかけていたという。それが、近々遠方の老人ホームに入居することになり、息子と別れるようでさびしいのでつい、声をかけたという。

思いがけない話ではあったが、息子の思い出を語る口調に、彼はつい目頭をおさえた。記念にと、高価そうなマフラーまで手渡された。予測してはいたが、夜、パソコンを立ち上げると、メールが届いていた。

───いかがでしょう。本日も感動していただけたでしょうか。

彼はもう、驚かなかった。
数日後に、またメールが届いた。

───そろそろ、もっと大きな感動をお望みではないでしょうか?
ご希望ならご用意できます。新たなお申し込みは必要ありません。
このメールに何も書かず、そのまま返信してください。

大きな感動、か。確かに、「ささやかな感動」では満足を得られなくなっていた、かもしれない。彼は少し迷ったが、「返信」ボタンをクリックした。

3日後。彼が翌日の会議の資料を整えていると、同僚の一人が沈痛な面持ちでドアを開けて入ってきた。緊張した様子に、まわりの人間も思わず表情をこわばらせた。

「主任が死んだ」
え、と彼は息をのんだ。ざわめきがひろがる。うそ。なんで。どういうこと?
「くわしいことはわからない。まったくの急死としか」
「うそ! 信じられない」
「昨日も元気に帰っていったし...まったくふつうだった」

「そんな...いまわれわれがやってるプロジェクト、主任が中心になって進めていたのに」
「持病があったとは聞いていたけど...」
「私たち、どうすればいいの」
「心配しなくていい。主任はおれたちのためにすっかり用意してくれていた。奥さんがこれをわれわれに、と」

同僚の手にはプロジェクト名が記された一冊の分厚いファイルがあった。駆け寄ったみんながページを繰ると、そこにはプロジェクトを進めるにあたって必要な工程、予算やイメージ、だれに何を頼めばいいか、外部に委託するにはどことどこがいいか、細かな企画を通すときに注意するべきポイントなど、部下たちが何より知りたいことがすべて書かれていた。

「主任は予測していたんだ」
「何も言わずに、でもあたしたちのこと心配してくれてたんだ!」
「これさえあればなんとかなりそうな気がするよ、な!」

みんな涙ぐみながらうなずいた。彼も涙をおさえられなかった。彼はその主任が好きだった。えらそうなことは言わず、黙々と自分にできることをやり遂げていく姿勢に共感していた。尊敬できる人だった。

彼ははっとした。そうだ。だからこそ、これが「大きな感動」なのか? ほかの誰かではなく、主任が死んだのは偶然なのか?

予想通り、メールが来ていた。

───本日は感動を味わっていただけたでしょうか?
われわれはもっともっと大きな感動を

彼は全部読まないうちにノートパソコンを閉じた。

喫茶店で隣のテーブルの女の子たちがおしゃべりしている。
「...それでね。彼ったら、時間を間違えてた私のこと、全然怒りもしなくて。それどころか私のためにお弁当作って持ってきてくれたんだよねー」
「えー!」
「かんどー!」

本屋で立ち読みをしていると背後の客の会話が聞こえる。
「もう枯れたと思っていた桜の木につぼみがついたんだよ」
「え、そうなんですか」
「桜に励まされているような気がしてね。もういちどがんばってみるかと...」

以前からそうだったろうか? 意識するから、街中が感動体験でいっぱいのように思えるのか。すべて偶然か。それとも、ひょっとしたらみんな、自分と同じように入会しているのではないだろうか? そうかもしれない。

自分に紹介してくれた友人も、知り合いの紹介だと言ってた。はやってる、とも言ってた。いったい、だれが何の目的でしていることなのかわからないまま、友人から友人へ、知り合いのそのまた知り合いから知り合いへ、事態はひろがっているのだ。

またメールが届いた。

───われわれはもっと大きな感動をお届けできます。
あなたに早く、それを味わっていただきたくて仕方ありません。

ものすごく晴れた日だった。真っ青な空。ハイコントラストの世界。光が多すぎる、と彼は思った。彼は広い交差点にいて、大勢の人々とともに信号が青に変わるのを待っていた。向かい側にも大勢のひとがいる。

付近ははなやかなショッピングビルやオフィスが建ち並び、けばけばしい看板が重なり合い、街路樹の根元にはくしゃくしゃのチラシが捨てられ、さまざまな方向から人が出てきてはまたどこかに行く。自転車がきいっとブレーキ音を立てて止まったと思うと昼間から酔客のグループが人混みを横切る。ありふれた繁華街の光景。

でも、ただならぬ雰囲気があった。何とはわからないが、大勢の人が、信号が替わるのを待つように何かを待っていた。やがて車用の信号も赤になり、交差点の中がしんと静まった。

すると、一人の男が飛び出した。そして
「もうたくさんだ!」と叫んだ。
「おれたちはほんものの感動がほしい!」
彼はどきりとした。言い当てられた気がした。
たちまち何人もが男の言葉を繰り返した。

「そうだそうだ!」
「つまらない感動体験はたくさんだ!」

大勢のひとが交差点内になだれこんだ。彼は後ろから押され、横からこずかれ、寄りかかった看板ごと倒れた。倒れた彼の上を何人もが踏みつけていった。交差点内はあっというまに群衆であふれた。みんな口々に叫んでいた。それはよく聞き取れなかったが、たぶん、こう言っていた。もっと大きな感動を!

その興奮は彼にも伝わった。そうだ。まさしくそうだ。彼は痛みをこらえながら立ち上がり、交差点の中に入っていった。久しく忘れていた高揚した気分だ。体があつい。自分と同じ気分のひとがこんなにいて、いっせいに声を上げている。何かが起こる。起こるにちがいない。ああ、いまここでこうして感じていること、これこそが感動なのではないか。

そう思った瞬間、疑念が生まれる。これもまた仕組まれているのか? そうなのか? それを振り切ろうとしたとき、ぱん、という音がして、悲鳴がそれに続いた。人々はあとずさり、交差点の中にぽかりとあいた空間ができた。その中心で男が血を流して倒れていた。ぴくりともしない。血だまりがゆっくり広がる。

静まりかえった交差点に、きーんという音、それに続いて調整の悪いマイクを通した声が、耳を聾するばかりのボリュウムで聞こえた。

   さあ、感動のときがやってきた!
   君たちにはもっともっと、大きな感動が必要だ!

交差点内のすべての目という目がきょろきょろと音源を探し、耳は必死で何か聞き逃しているかもしれないことを聞こうとした。だが何の手がかりも得られないまま、交差点内にさらに銃声が響いた。それは抜けるような青空の向こうから降ってくるようだった。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
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< http://yamashitakuniko.posterous.com/
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あるイベントに参加するために6時半に起きた。私にしてはむちゃくちゃ早い。早起きすればそれだけ時間を有効に使える、早起きは三文の得とはよく言ったもんだな...というのが世間の常識らしいですが、私にはあんまりあてはまりません。その日一日眠くて何をやっても能率悪いし、影響は翌日や翌々日におよぶこともあります。早起きは三日間たたる、が正解なのですが、そんな体質なんとかしろ、ですか。すいません。

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■ローマでMANGA[49]
イタリアで唯一のMANGA構築法解説者

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20120223140100.html
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1月になってやっと始まったMANGA・セミナー。6回あったはずが、交通機関の24時間ストライキと、金曜日になると降る雪が2週続いて、実質3回の実施という結果になっている。

まぁ、いいですけどね。そういうこともあろうかと、ブログを立ち上げ、毎週の授業をアップしている。これから春になると頻発する交通機関のストライキは、何故かいつも金曜日なのだ。
< http://manganosensei2012.blogspot.com/
>

今までも、毎年セミナーのブログを立ち上げたが、昨年までと違うのは、私の意気込み。授業に来られない人にも内容が伝わるように、親切に書いている。さらには、オープンにして、更新するたびにFaceBookでお知らせしている。

少なくとも、MANGAはグラフィックスタイルのみではない、ということをもっとたくさんの人に知ってもらう手始めだ。イタリアの巷には、MANGAの描き方の本やワークショップが多々あるけれど、構築法の解説はない。ほんとに、私がイタリアで唯一のMANGA構築法解説者なのだ。

さて、MANGAセミナー。毎回7名が参加する。他のコースが忙しかったりして、出入りがあるせいで潜在的には9名。今年は、MANGA家が作品のアイデアを出してネームにするまでを、順を追って授業にすることにした。まぁ、作家によって、その時によってやり方は色々だろうけれど。

MANGAは読者がキャラに感情移入して、ストーリーを生きるという重要な性格があるので、主人公の重要度がヨーロッパコミックスとちょっと違う。

そこで、このストーリー作りをキャラから始めることにした。まずラフでなんでもいいから人物を描かせ、そのラフから受ける印象を基に性格付けをしてもらった。性格付けが終わったら、5W+1H(Who, When, Where, What, Why+How)を書きだして、ストーリーの基礎とした。

先週は、そのストーリーの基礎を起承転結に発展させ、簡単に4ページに配分してもらった。そして一人一人の仕事を見て、配分が妥当かどうかをサジェスチョンしていった。この作業は、ペラペラのアイデア用紙に鉛筆で、小さな長方形を描いて見開きとし、そこに小さく文字かアイデアスケッチで進めさせた。

あくまでも、先に文字でストーリーを書き上げないように、キャラも細かいところまで決めてしまわないように指示した。

MANGA作りに慣れてない人が先に文字でストーリーを作ると、どうでもよい細かな設定や、絵にするのがとても難しい抽象的な表現が出てくるので後で困る。文字でしか表現できなくて、やたらト書きやセリフが多くなってしまう。

また、キャラの容姿や服装を先に細かく決めてしまうと、そこから外れるのが難しくなる。全部を少しづつ少しづつ育て上げていくのが、こうした罠に落ちなくて済む方法なのだ。

皆、言われたとおりにA4のペラペラの紙に小さな見開きを書き、小さなラフな絵や文字で記入している。お直しをサジェスチョンすると、中にはもっと大きなサイズで本格的にネームに入ってもよい生徒もいた。うふふ。授業がうまくいっている。

7人の内、まったく勝手に制作を進めている一人がいた。ふさふさの金髪が可愛い女生徒で、私が解説している時から、何やら手を動かしていた。実技に移行した時も、A4一枚を原稿用紙に見立ててコマ割りをして原稿を描いている。時々、私のセミナーを受けながら課題をやる生徒もいるので、それなんだろうと思っていた。

金髪さんのサジェスチョンは最後になってしまった。他の課題をやってるから、どうせ進んでないだろうと思っていた。近くに寄ってみると、いわゆるMANGA式の絵柄で丁寧に描いている。私の授業実技を進めていたのだ。終業ベルが鳴ってしまったので、来週、一番に見るねと言ってお開きにした。

はい、ここで私の間違いが二つ。多分に私の性癖から来ている。

つまり、相手の行動の理由を先回りして考えて、それなら仕方がないねと許してしまう。だから、他の課題をやっているのだろうと考えて、まずそれをそのままにしてしまった。注意しなかった。確かめもしなかった。

私の授業を進めているのだとわかって、それがまったく指示に従ってないことがわかった時点でも、それを受け入れようとしてしまった。教師じゃないじゃんか!! 来週は、授業が始まる前に、金髪さんの間違いをただし、私の支持通りにやり直してもらおう。

先週の授業中、校長のディーノが(校長と雇われ教師の間柄でも名前呼び捨て、"TU"で呼び合うのが普通)私の教室を覗いて、話があるから休憩時間に校長室に来るように、とのお達し。

行ってみたら、マンガブックを普通の書店さんで販売できることになった、とニコニコしている。イタリアでは、マンガはマンガ専門書店で売るのが普通だ。当然、マンガに興味のある人しか来ない。最近、大手の書店で美術コーナーの近くにマンガを置くところが増えてきた。一般書店に配本するということは、もっと多くの人に見て貰える可能性があるということ。

ディーノ、すっかり気を良くして、判型も当初の予定より大きくする、と鼻息が荒い。企画者・執筆者としては嬉しい鼻息だ。

2月1日に配信になったNo.3196でまつむらまきおさんが「マンガが生き残る唯一の方法」で面白い提案をなさっていた。
< https://bn.dgcr.com/archives/20120201140200.html
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MANGAを横書きにすればいいじゃないか! という話。海外で売れているMANGA、マニアだけではなく、「普通の子どもや女子高生やオッサンやオバサンが読まなければ、産業にならない」。底力はあるのに。

マンガ学校で私のセミナーに来る生徒の中には、何も言わないと日本式の右開きでネームを描き始める生徒もいる。もちろん、セリフはイタリア語書きだからテキストの読みは左から右。字を読む方向と物語の進む方向がぶつかる状態になる。彼らは全く抵抗がないという。人間は何にでも慣れるとはいえ、そうかなぁと思う。制作側の立場として。

一昔前までは、イタリアの出版社が日本の出版社に頭を下げて、出版権を購入するばかりだったけど、昨今では日本の出版の方から「こういうのあるけど、どう?」ということも起こっているそうだ。つまり、発行部数が日本市場に比べてとても少ないイタリア(ヨーロッパ)の市場も当てにするようになってるということではないだろうか。

50年も縦書き日本語MANGAを読んできた身には、若干の抵抗もあるけれど、ネットではすべて横書きが当たり前で抵抗なく読んでいるのだから、すぐに慣れるかもしれない(右から読むので日本では右側を上手として扱う。横書きでは左が上手になる。その辺の変換が日本人の脳みそになにか影響があるのか、という指摘は興味深い)。

MANGAがもっと外国のマンガ家にも身近になって、MANGA言語がもっと浸透していくと、面白いことになるかもしれない。20年くらい経ったら。。。

【みどり】midorigo@mac.com

日本の国政の状態をネットで知るたびに、胸のうちがグズグズ煮崩れて行くような痛みを感じます。

新潟で小学校跡を中国領事館に売却を約束してしまった?
< http://ameblo.jp/japangard/theme-10023150990.html
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年金補償? その負担は誰がする?
西田昌司【誰が負担するのか全く見えない無責任施策】
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日本が資源大国になれるメタンハイドレードという天然資源について。結晶として海底から顔を出していて、低コストで切削しやすい日本海側の研究費が出ず、莫大な予算を砂に混ざって採掘しにくい太平洋側につけているのはなぜか...
<
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国防のイロハを知らない国防大臣 国会中継(2012.02.17)石破茂(自由民主党)〜衆議院予算委員会
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「政治なんか知らないよ〜」と、のほほんとしていた頃に戻りたい。。。いやいや、これは、痛みを感じ、どこに病巣があるのかを見定め、治療方法を見つけるための過程なんだ...

私の日常生活のブログです。食べ物の話が多い。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
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■編集後記(02/23)

・近所のヨークマートにほとんど毎日「クリアウォーター水」(変な名称だ)を汲みに行く。その設備の隣に、コピーマシンや電子レンジなどセルフサービスのキカイが並んでいる。昨日ふと気がついたのだが、いつの間にかコピー機が進化していた。もはや単なるコピー機ではない。カラー液晶パネルには、コピー、スキャン、USBメモリプリントというメニューがあった(ファクシミリ通信、PCプリントも可能な機種もあるらしい)。コピーでは、単純なコピー以外に、両面コピー、4面連写、1枚の用紙に複数配置など多彩な機能がある。スキャンはまさしくコピー感覚で、手持ちのUSBメモリに保存(JPEG、PDF、TIFF)できる。解像度は200×200dpiと400×400dpi、原稿の下地を薄くする機能もある。1スキャン20円だ。また、USBメモリ内のデータもそのままプリントアウト、これもコピー感覚だ。プリント代はA3カラーで80円、B4・B5・A4カラーが50円、モノクロは10円だ。......ということをメモしてきたが、いつからこうなっていたのか。わたしが知らなかっただけか。
ついでに酒類の売り場に行くと、ビール風ノンアルコール飲料の新商品「アサヒ ドライゼロ」があった。「スーパードライ」に酷似していることから、「誤飲による未成年の飲酒や飲酒運転につながりかねない」と業界内で批判されたやつだ。でも、赤で大きくノンアルコールと書かれているし、Alc.0.00%の赤帯もあるので間違いようがないと思う。既存のビールテイスト飲料と異なり、麦汁を一切使用せずにビール成分を再現したという。期待をこめて飲んだ......やっぱりこの味か。いりません。(柴田)

・感動体験か。3本のうち2本が枯れてしまい、無理だろうと思っていた胡蝶蘭につぼみ。小さなことで喜べる自分が好きだ。/昨日書いた「まにフェス」の詳細ページがオープン。5大ブラウザベンダーさんや、そうそうたるスピーカー陣のお話が聞けるチャンス。入場無料の展示会場でも、オープンステージがあって、ここでもお話が聞ける。展示物を見たり、ゲームで遊んだり。期末と期末のフォローで疲れているだろうこの時期、このイベントで新しいガソリン入れて、推進力を加速してみてください〜!/最近買って良かったと思ったiPhoneアプリ。「Launch Center」。よく使うアプリを登録しておける。一覧にないアプリや設定画面でも、URLスキームさえわかれば登録可能。まずは設定の「Wi-Fi」を入れてみた。夜中に思い出して、明日かけようと思った電話(これが結構ストレス。忘れそうだし、いますぐにかけて解決したいしで。)も入れるようにしている。「Speed Dial」で、かける先を電話帳から選び、時間も登録。一定間隔(一時間、一日、一週間、一ヶ月、一年)でのリピート表示もできる。予定時間になるとバナー通知され、通知センター(どの画面からでも出せるシャッターみたいなやつ)にも表示。この通知をクリックするだけで、電話がかけられる。機能を選んでから必要事項のみを登録するので、ToDoに登録するより早くて良い。雑排水管清掃の作業日通知が来たのだが、その日は忙しいので日曜日に振り替えてもらいたい。電話でしか変更できず、受付時間も限定される。仕事ではないため、こういうのは忘れたり、後回しにしがち。Launch Centerのおかげで無事変更できたよ。(hammer.mule)
< http://m2.cap-ut.co.jp/fes/
>  まにまにフェスティバル
< http://itunes.apple.com/jp/app/id488626436?mt=8
>  Launch Center
< http://den2den2.blog45.fc2.com/blog-entry-216.html
>
設定ショートカットのURLスキーム一覧
< http://www18.atwiki.jp/iphone-urlscheme/
>
iPhoneアプリのURLスキーム@ウィキ
< http://web.mac.com/micono/ipaBacklist/ipaBacklist.html
>
URLスキームを調べられる「ipaBacklist」。買おうかな......