[3283] 他者の未来を殺すシステム生かすシステム

投稿:  著者:


《ああ、もう、神様信じる! 仏様も信じる!》

■まにまにころころ[3]
 この気持ちどうすればいいの
 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

■クリエイター手抜きプロジェクト[321]Illustrator CS3〜6編
 画像を1ラインずつ分解して保存
 古籏一浩

■データ・デザインの地平[19]
 他者の未来を殺すシステム、生かすシステム
 薬師寺 聖

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■まにまにころころ[3]
この気持ちどうすればいいの

川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito
< https://bn.dgcr.com/archives/20120618140300.html
>
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ども、コロこと川合です。前回のまにころが掲載されたデジクリ編集後記にて、「濱村ことhammer.muleです」ってありましたけど、「〜こと○○です」って前に異名を持ってくるのが正しい用法ですよ、と本人に言えないままに2週間が経ってしまいました。時が経つのは早いですね......。

──スカイツリー見てきたよ!

人に会いに錦糸町に行ったら見えました。......話が終わってしまった。いやいや、負けるな自分、ここから上手く違う話題に持っていくんだ! 書ける話に持っていくんだ! スカイツリーに負けないくらい、大きく話を逸らすんだ!

個人的には色や形は、先輩格の東京タワーの方が好き。その東京タワーは、六本木ヒルズの喫煙スペースから眺めました。今回の東京遠征で、ヒルズには二回足を運んだんですが、本当はもう一回行きたかった。というか、中に入居している、とある会社に行ってみたかった。とある会社というか、GREEさんに。あと、渋谷のDeNAさんにも行ってみたかった。伝手ないけど。

──ソーシャルゲームを知りたい

本業とはちょっと外れた勉強会で、今度ソーシャルゲームについてお話しすることになって、そのネタを仕入れに行きたかったんです。でも、コンプガチャの件で何かと忙しいだろうなということで断念。ダメ元で突撃するにしても、予備知識が貧弱すぎて、失礼になるだけだろうと諦めました。

で、仕方ないので、書籍やネットで色々と調べていたんですが、アンテナ張ってると、思いがけないネタが不思議とどこからかやってくるもので。実に偶然に、ソーシャルゲームに大金突っ込んでる人との出会いが! 出会いも何も、たまたま知り合いをご飯に誘ったら、ハマってる近況について語り出してくれたという。ありがとうB社のSさん! 今度ごちそうします、スタドリを!

──必然のような偶然

コンプガチャの一件を待つまでもなく、ソーシャルゲームについては、何かと問題視されてきた。主に課金について、概ね否定的に。今回色々と調べるに当たって、ひとまずその是非は横に置いておいて、「ハマる」仕組みについて、ヒントを探してみた。

ネタ探しにかこつけて、本好きの憩いの場である大型書店をうろうろしつつ、これは趣味でなく資料だからと自分にいいわけしながら、ゲーム関連の本を中心に買いこんだりもした。そんな中、そんなつもりでもなく、たまたま手に取った本に「これだ!」というものがあった。

さっきの話もそうですけど、必然のような偶然って意外と世の中に溢れてますよね。これは運命? 奇跡? ああ、もう、神様信じる! 仏様も信じる!

その本があったのは心理学の棚。テーマは、依存症。偶然も何も、そのまんまじゃんって言われそうだし、実際その周辺の本を見てみると、そのものずばり、ゲームへの依存症についても書かれていたりしたけれど、出会いは偶然だったんだよう。

探すのをやめた時、見つかることもよくある話というか、単に興味惹かれて手に取った本に書いてあったという。時間軸でいうと、依存症ってキーワードに出会ったのが先、Sさんに会ったのが後。

あ、誤解のないように言っておくと、「依存症」をネガティブな面だけで取り上げるつもりはないですし、Sさんがソーシャルゲームやってるのは、半分以上、職務上の研究って意味合いが強いです。本人はただの趣味って言うかも知れませんけど、だとしたらそれは、仕事への依存症に冒されてるんじゃないかと思われます。

──Addicted To You

依存症、って書くと完全に病気っぽいので、ちょっとぼかしてアディクションとカタカナにしてみます。意味的には何もぼけてないけど、日本人には「症」って文字のインパクトがちょっと大きいので。

アディクションは大きく分けると、「化学物質」によるものと「行動」によるものがあります。前者は麻薬やニコチン、アルコールなど、後者はパチンコとか買い物とか過食とか。どちらも簡単に言えば、「満たされたい」という気持ちによるもので、薬を打つのも行動といえば行動だし、満たされた気持ちになるのは脳内でドーパミンが分泌されるからといえば、どちらも化学物質が元であるともいえます。

先に依存症=アディクションを、ネガティブな面だけで取り上げるつもりはない、って書きましたが、私は広く「満たされたいという気持ちから何かにハマる状態」をアディクションと解釈していて、そのハマり方と上手くつきあえていない状態を、いわゆる病としてのアディクション、と捉えています。

専門家に言わせれば、上手くつきあえてる時点でそれはアディクションじゃないんだから、そんな勝手な解釈するなよ、って言われそうですけどね。

例を挙げれば、ゲームにハマる状態と上手くつきあえていないと社会問題になりますが、上手く付き合って、むしろその心理を逆手にとって活用すると、ゲーミフィケーションなんて呼ばれてもてはやされたり、ね。

ようするに、意識的にちゃんとコントロールできるか、できないか、が大事で、ソーシャルゲームが課金問題でやり玉に挙げられてるのは、未成熟でコントロールが下手であろう子どもが巻き込まれてるから、ですよね。射幸心を煽るだのなんだのって仕組みでいえば、パチンコも同じ、というかよっぽど問題。ま、この機にいっそパチンコもさらに規制しちゃえばいいのに。

横道にそれてるうちに長くなってきたんで、ここで切っちゃいます。(笑)今度こそ次回に続く感じで、次回もう少しだけソーシャルゲームの話を。

今回、アディクションってキーワードに出会ってからも、ソーシャルゲームと結びつけてどの程度の話ができるものかなと、自分の中でまだテーマとして固まりきってなかったんですが、方向性として間違ってはないなと思ったのはSさんの言葉でした。

「いつの間にか結構な金額突っ込んじゃったけど、最初はほんの軽い気持ちだったんだー」って。Sさん、その言葉、よく薬物依存のドキュメンタリーなんかで聞く言葉とまるっきり同じですよ、と。(笑)

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< http://cap-ut.co.jp/
>
今週土曜、東京の第30回WebSig会議を大阪に中継します!
< http://kokucheese.com/event/index/40801/
>
Sさんに招待してもらったデレマス、今朝Lv.16になりました。

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■クリエイター手抜きプロジェクト[321]Illustrator CS3〜6編
画像を1ラインずつ分解して保存

古籏一浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20120618140200.html
>
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今回は、Illustratorのドキュメント上に描かれた画像を、1ラインずつ分解してPNG形式で保存するスクリプトです。何のために作ったかというと、画像をWebブラウザ上でアニメーションさせるためです。どんなアニメーションをやりたいのかというと、ゲームセンターにあるゲームで演出として使われていたラスタースクロールです。

・ラスタースクロール
< http://ja.wikipedia.org/wiki/ラスタースクロール
>

・ラスタースクロール
<
>

・ゲームでのラスタースクロール(映像/コナミXEXEX)
<
>

ラスタースクロールをWebブラウザで実現するには、画像を1ラインずつ分解します。分解した画像をページ上に表示したら、定期的にX座標をずらして表示します。この時にサインカーブを利用すると上記の映像のように、うねうねとした動きになります。

今回はCS3/CS4とCS5用の2つがあります。というのも、CS5からはY座標の値が上下逆になっているためです(CS5では新規にドキュメントを作成する左上。それ以前は左下)。もし、CS5でうまく処理されない場合は、CS3/CS4用を使ってください。

●Illustrator CS3/CS4用

// 横1ピクセル(横線)に分割してPNG形式で保存
(function(){
  var folderName = Folder.selectDialog("保存フォルダを選択してください");
  if (!folderName){ return; }
  var w = app.activeDocument.width;
  var h = app.activeDocument.height;
  var opt = new ImageCaptureOptions();
  opt.antiAliasing = true;
  opt.matte = false;
  opt.resolution = 72;
  opt.transparency = false;
  var count = 0;
  for(var y=0; y< h; y++){
    var fileObj = new File(folderName+"/"+count+".png");
    var rect = [0, h-y+1, w, h-y]; // left, top, right, bottom
    app.activeDocument.imageCapture(fileObj, rect, opt);
    count++;
  }
})();

●Illustrator CS5用

// 横1ピクセル(横線)に分割してPNG形式で保存(CS5)
(function(){
  var folderName = Folder.selectDialog("保存フォルダを選択してください");
  if (!folderName){ return; }
  var w = app.activeDocument.width;
  var h = app.activeDocument.height;
  var opt = new ImageCaptureOptions();
  opt.antiAliasing = true;
  opt.matte = false;
  opt.resolution = 72;
  opt.transparency = false;
  var count = 0;
  for(var y=0; y< h; y++){
    var fileObj = new File(folderName+"/"+count+".png");
    var rect = [0, h-h-y+1, w, h-h-y]; // left, top, right, bottom★変更箇所
    app.activeDocument.imageCapture(fileObj, rect, opt);
    count++;
  }
})();

分解した画像をWebブラウザで表示し、さらにうねうねと動く(ラスターアニメーション)ようにするには、以下のスクリプトを使います(画像はimagesフォルダ内)。なお、横幅は500、縦幅も500としてあります。

< !DOCTYPE html >
< html >
< head >
< title >Raster Image< /title >
< style >
div { width: 500px; height:1px; margon:0; padding:0; background-color:red; }
< /style >
< /head >
< body >
< script >
var rasterCount = 500; // 500本の画像線(★縦幅)
for(var i=0; i< rasterCount; i++){
var tag = '< div style="position:absolute;left:0px;top:'+i+'px;background-image:url(images/'+i+'.png)" >< /div >';
document.write(tag);
}
var count = 0;
var divs = document.getElementsByTagName("div");
window.onload = function(){
setInterval(function(){
count = count + 0.1;
for(var i=0; i< rasterCount; i++){
var offsetX = Math.sin((count+i/rasterCount)*Math.PI*2);
divs[i].style.position = "absolue";
divs[i].style.left = offsetX*50+"px"; // ★50は振幅ですので好きな値にどうぞ
}
}, 50);
}
< /script >
< /body >
< /html >


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

オウム真理教の逃亡犯が逮捕される前日から、Ustreamで中継されているところが現代っぽいところ。HTML5のWebRTC(リアルタイム映像処理)とCanvasを使って顔認識するプログラムを作れば、懸賞金がかかっている犯人捜しに使えるかも。

・毎度おなじみアスキーの連載
 「File system APIでブラウザーで動くファイラーを作る」
< http://ascii.jp/elem/000/000/696/696368/
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・PDF構造解説
< http://www.amazon.co.jp/dp/4873115493
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・10日で覚えるHTML5入門教室
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・AndroidのためのHTML5本格アプリ開発
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・新標準HTML5 & CSS3辞典
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844331752/
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・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4774148199
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・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/
>
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■データ・デザインの地平[19]
他者の未来を殺すシステム、生かすシステム

薬師寺 聖
< https://bn.dgcr.com/archives/20120618140100.html
>
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●支援を阻む、リアルの「壁」

この数年、我が国では連日いたましい事件が発生しています。助けを呼ぶ声が誰にも届かないまま訪れる「死」に対して、我々はあまりにも無力です。

多くの人が、驚き、怒り、悲しみ、乳幼児や独居高齢者の置かれている地域社会の人間関係を見直せば、事態は好転するかもしれないと考えています。が、はたして、それだけで不幸を未然に防ぐことができるでしょうか。

こういった事件は、昭和30年代〜40年代までの住環境では、起こりにくいものでした。なぜなら、通行人でさえ、室内の危険を察知できたからです。

土と板の壁、一重のガラスの木造家屋では、家内の音は通りに筒抜けです。有事には、雨戸も金属のねじ鍵も外から開けることができ、木とガラスでできた玄関の引き戸も外すことができます。

また、エアコンがなく、夏場など窓は開け放しで、内と外を隔てるものすらありませんでした。昨今の、何か異変が起きているような気がするけれども、事実を確認できないために踏みこむことができない、という状況にはならなかったのです。

さらに、乳幼児がネグレクトされた場合であっても、飲み水すらないという状況は考えられませんでした。地下水やポンプ式の井戸がありましたし、大型冷蔵庫と違って幼児の力でも扉を開けられる「みずや」があり、冷や飯や乾物や常備菜などが置かれていました。塩分濃度や湿度も違っていたのでしょう、食品の傷み具合もゆるやかでした。

ところが、今ではそのような住居は激減しています。希薄な人間関係を改善してコミュニティづくりを推進しても、家屋の構造は変わりません。ドアが、壁が、手を差し伸べようとする人々を阻みます。

皮肉なことに、我々には、その昔には考えられなかった、物理的な家屋の境界を打破する方法を獲得しました。室内の情報を取得して、外から働きかけられる手段があります。それは「IT」です。

●SOSを検知する技術

もっとも、手段があるということと、その手段を有効に活用できることとは別問題です。外から支援を行うには、まず、室内の情報を適切に取得できなければなりませんが、これが容易ではありません。

たとえば携帯デバイスの落下をセンサーで検知し、ソーシャルメディアにSOSを自動発信することはできます。が、手が滑ってデバイスを落としただけなのか、デバイスが暴力的に叩き落されたのか、備品が部屋の中を飛び交っている状況なのかは判別できません。

室内の物音が一定の音量を超えたとき、自動的にカメラを起動して映像を発信する方法では、カメラが被写体側を向いていなければ意味をなしません。また、栄養失調で物音すら立てられないケースは無視されます。

リスクが認められる乳幼児や高齢者に緊急連絡専用のデバイスを持たせる方法では、家族がデバイスを取り上げる恐れがあります。また、一歳未満の乳児がデバイスを操作することは不可能です。

病院、児童相談所、教育機関が、いずれかに対して一度以上相談のあった家庭について、個人を特定しない「(何丁目、程度の)おおよその」位置情報のみを共有するシステムを構築し、近隣住民や親族からの投稿を随時受け付けて、情報を集約する方法も考えられます。が、これも、プライバシーを問題視する声の前には、実現は厳しいでしょう。

そうなると、考えられる解決策は、次の3つです。

(1)Webカメラ利用の面談

ひとつは、一度でも相談のあった家庭に対し、毎日カメラを使っての抜き打ち面談を義務付けるシステムです。面談が相談になり、具体的な支援に結びつく可能性がありますし、面接内容の動画ファイルを保存すれば、その存在は抑止力として機能するかもしれません。

(2)生体モニタリング装置からの情報取得

もうひとつは、リストバンド式や埋め込み型の生体モニタリング装置を開発する方法です。乳幼児や高齢者に装着を義務付け、心拍数や血圧が低下した時に、医療機関へ自動的に通報するシステムです。もし生命に危機が及んだ場合に特有の脳波を検出することが可能になれば、情報の精度は向上するでしょう。

(3)家庭内監視ロボットの派遣

家庭内を定期的に巡回しながら、音声認識とAIにより助けをもとめる声を判別して自動通報する、「かわいいペット型の」ロボットを開発して、地方自治体からレンタルする方法です。ロボットを室内と外をつなぐノードとして位置付けます。ただし、単に子どもがわがままで泣いているのか、危険な状況にあるのかを、解析して判別する技術開発が必要になります。

そして、これらのシステムの設置と運用は、保証人不要でなければなりません。孤独死の何割かは、警備保障会社の緊急通報システムを利用していれば、未然に防ぐことができますが、広く普及しているものでもないようです。その理由のひとつは、自治体が費用を補助するサービスでは、緊急時に駆け付けられる保証人が必要とされることです(自治体によって異なります)。

少子化が進むと、基本的な生活をおくるだけでも保証人が必要とされる社会システムも、同時に変える必要があるでしょう。

●「IT」という見守りの目

このようにして室内の異常を検知したら、それに応じた反応を返さなければなりません。

明らかな緊急事態であれば警察や救急が、それにはいたらない場合は、行政機関の担当者がすみやかに訪問する仕組み作りが必要になります。

しかし、人が駆け付ける方式では、一刻を争う状況にもかかわらず渋滞に巻き込まれて到着が遅れるなどの事態が起こりえます。

もっとも有効なのは、加害者の脳や神経系に直接働きかけて、手足の動きを強制的に停止させる方法ですが、これはあきらかにプライバシーの侵害ですから、技術的に可能になった暁でも、実施は不可能でしょう。

そこで重要になるのは、視覚的に、あたかも家庭内に第三者がいるかのように見せる処理です。

私が何を言いたいかは、Windows Phone のユーザーなら、すぐに想像できるでしょう。なにしろ、実機を身近に置いている限り、外にいる誰かと常につながっているのですから(*1)。その画面には、facebook の友人たちの顔写真が表示され、あたかも友人たちが画面の向こうから話しかけてくるかのようです。

この、Windows Phone の、ヒトを核とする UI のコンセプトは、6月1日に発表された、Windows 8 RP(*2)にも見られます。

それらの写真が3次元になり、あたかも自分の傍にリアルに人がいるように感じられ、合成音声で語りかけてくるようになったとき、それは「見守り」の目になりはしないでしょうか。

それは、友人でなくてもかまいません。バーチャルな警察官や、萌えキャラであってもかまいません(*3)。

●「心」を語るな。「脳」を見よ。

このように可能性を持つ「IT」ですが、解決策の第一選択肢肢はあくまで「ヒト」であり、地域コミュニティの復活や宅配業者の声かけ、行政担当者の訪問といったマンパワーに委ねられているのが現状です。

これは高齢者の介護でも同様です。いまなお、現場では、人がおむつを換えています。直接取り付けて排せつできる快適な装置がありません。この、生物学とロボット工学が発展している時代にです。

そして、管理する側は、効率化と人材確保に躍起になっています。3人の介護者で10人を担当するところを1人で10人になるように工夫したところで、外国人有資格者に頼ったところで、作業内容が変わるわけではありません。

マンパワーに委ねるだけでは、作業者を減らしたり交代させることはできても、根本的な解決にはいたりません。

熱意と善意がすべての問題を解決できるという理想は、長続きしません。「睡眠不足」と「精神的負担」が長期間のしかかれば、健康に自信のある人材であっても、判断力も効率も低下します。人的資源頼みでは、「資源」となった「人材」が疲弊したら、それで終わりです。

それにしても、なぜ、これほどまでにマンパワーが重視されるかといえば、それは問題の原因を、「心」にもとめる傾向があるからでしょう。心の問題だから、心ある人が努力すれば、心を変えることができる、と考えてしまうのです。

ところが残念ながら、その「心」とは何ぞや?と問えば、共通する概念のない曖昧模糊としたものでしかありません。

もし「自分が」親の立場なら? と考えたのでは、不完全です。なぜなら「自分」が、だからです。自分の脳は他者の脳ではありません。自分の脳を用いて、自分の脳を基準に考えても、的外れな答えしかえられないでしょう。

他者と分子レベルで寸分違わぬ(脳を含む)身体を持って生まれ、そのヒトの境遇で育ち、同じ出会いをし、同じものを食べ、同じように働き眠ってきたら? と想像してようやく、おぼろげながら他者の立場が分かり始める程度でしょう。

自らの幸福だけでメモリが占有されている状態のとき、子供に注意を向けにくい機能をもつ脳もあるでしょう。また、自らの幸福と子供の存在を、互いに参照せず別モノとして処理する脳もあるでしょう。

理由なく行動を命令する脳もあるでしょう。もっとも、あらゆる行動には意図などないのかもしれません。意識にのぼる前に、行動が出現するのであれば。

どのような心理的な葛藤があったかを探ることも重要ですが、脳内で物理的にどのような現象が起きたのか、それを再現して、fMRIやSPECTで現象を追跡し、解析することも重要ではないでしょうか。

原因を「心」に、解決策の第一選択肢を「マンパワー」にもとめるのではなく、原因を「脳の働き」に、解決策の第一選択肢を「IT」にもとめる方が有効だと思われます。マンパワーよりマシンパワーなのです。

予算面においても、マンパワーの場合の教育費・人件費・管理費と、IT利用の場合の研究開発費とシステム構築費と運用管理費を比較すれば、長期的には、IT利用の方が低予算で済むと思われます。また、IT利用の場合は、そのシステムやノウハウを輸出すれば費用を回収できるはずです(筆者は、経済の専門家ではないので、これ以上の言及は差し控えますが)。

●日常生活に、科学×技術×医学を。

我が国では、ロボット工学も、物理学も、精神医学も、脳科学も、生物学も、遺伝子工学も、栄養学も、じつに多くの分野の学問が発展しているにもかかわらず、それぞれの分野の間には、なにか壁があるような気がしてなりません。まるで、自らの専門分野に張りめぐらせた意識の壁が、顕在化しているかのようです。

ITエンジニアは、科学と技術と医学に関心を持ち、日常生活の中に、その三つの要素を、思考の武器として取り込みましょう。

そして、科学者による倫理と制御に関わる脳機能の解明、第三者からの視点と気付きを与えて脳を社会に適応可能な状態にはぐくむ方法論の確立を、ITにより支援していければよいのではないでしょうか。

これから先、コミュニティでの見守りを強化するなら、そのコミュニティとは地域社会に限定されない、ネットを含むコミュです。そして、異常に気付く手段は、人の五感よりも、センサーです。

「IT」は、生命を維持するに足る最低限の衣食住を提供することはできません。しかし、次世代の未来を生かす力は持っているのです。


*1 本連載第9回「Windows Phone 7.5に見る「ヒトとコミュニケーションの形」参照。
< https://bn.dgcr.com/archives/20110829140100.html
>

*2 「Windows 8 Release Preview」
< http://windows.microsoft.com/ja-JP/windows-8/release-preview
>

*3 "初音ミク"ならぬ...米軍が開発する「バーチャル・セラピスト」
< http://sankei.jp.msn.com/wired/news/120424/wir12042414000003-n1.htm
>

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○Windows Phone のセンサー4種類を試せる無料アプリ

「センサー計測セット Ver.0.8」6月2日より公開中。加速度センサー、ジャイロスコープセンサー、コンパスセンサー、複合モーションの各種データを取得して確認できるアプリです。
< http://www.windowsphone.com/ja-JP/search?q=SeiSeindesign
>

○「Community Open Day 2012 四国会場」録画配信

6月9日(土)の2つのセッションの録画を USTREAM で配信しています。セッション2「Windows Phone センサーアプリ開発入門(01:27頃〜)」では、スライドとアプリ「センサー計測セット」のプログラムをダウンロードできます。
< http://www.ustream.tv/channel/community-open-day-2012-in-shikoku-session-2#
>

○オンライン連載中! インプレス Think IT

「Marketplaceのアプリから解説する実践サンプルコード集」全10回。9回目までを薬師寺国安が、10回目を私が執筆します。6月25日(月)掲載予定です。
< http://thinkit.co.jp/book/2012/05/24/3553
>

【薬師寺聖/個人事業所セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/
>
ブログ < http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/
>
PROJECT KySS < http://www.projectkyss.net/
>
< infosei@seindesign.net >

絵・音・詩・文・コードを扱うフリーのクリエイター、思索家。エンジニアリング会社を経てデザイン事務所に勤務後、XML1.0勧告翌月に退職して開業。科学技術や医療・福祉分野のXML案件を手がけながら、書籍や記事を多数執筆(PROJECT KySS名義)。四国在住。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)

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編集後記(06/18)

●新聞の楽しみといえば広告、とくに単行本や文庫本の新刊案内。また、週刊新潮と文春の広告が掲載される木曜日(放射能が怖くて東京から逃げ出そうとしたと書かれたあの人の記事はすぐに読みましたとも)と、週刊ポストと現代の月曜日の朝もいい。いま、毎週土曜日の掲載が待ち遠しいくらい楽しみなのが、新聞連載小説スタイルの金長・虫コナーズの広告だ。「金長小説 夢不来(むしこなーず)」は、虫コナーズのCMオーディションに挑む主婦・近藤幸恵の物語、全10回である。ツボにはまった。何度読んでも笑える。

主婦・近藤幸恵(51歳)は、ある日CMの中で歌って踊っている幼なじみのカズちゃん、池田和子を発見する。さりげなさを装ってランチの話題にすると、仲間の主婦、夏子、マリも知っていて、話題のCMのあの人というワイドショーにも出ていたという。オーディションで100人の中から選ばれていて、ほかのCMも2、3本出ているという。カズちゃんは引っ込み思案の冴えない子で、自分より格下だと思っていたのに、いつの間にかテレビで活躍していると知って幸恵は動揺する。許せないと思う。自分もCMに出る! と決意する。ネットでキャスティングプロダクションを探し当て、妄想一直線の大暴走が始まる。

能力をひた隠しに普通の主婦をやってきたが、いまやっとわかった。女優になりドラマに出て、莫大なお金を得るのだ。この極端な短絡ぶりに大笑い。意気込んでオーディション会場に行くと、「29番! じゃこれかぶって」と渡されたのが便器形の物体で、ちょうど便座から顔だけが出る仕様。......こんなことだと思っていたよ。悲劇的な結末はお約束、かどうかは分からないが、続きの第7話は今週土曜日だ。新聞を切り抜いて束ねて読んでいたが、金長サイトにも掲載されていた。幸恵の顔どアップがなかなかの迫力だ。(柴田)

< http://www.kincho.co.jp/cm/novel/index.html
>
金長小説 夢不来(むしこなーず)

●こっちではhammer.muleが本名さ。「パズル&ドラゴンズ」にははまっている。ガチャしてる。お金は使っていないけれど、使えば強いキャラをゲットできる機会は増えるんだよなぁとは思う。ランダムで選出される助っ人制度があるので、強いキャラはもっぱら助っ人頼み。手持ちキャラの進化スピードと、ダンジョンの敵キャラとの強さが合っておらず、急に前に進めなくなるから、お金をつぎ込んでしまう気持ちはわかる。他の仕組みも含め、よくできているゲームだと思う。/誤認とはいえ、Ustream中継があったのか。/義母がくも膜下出血で倒れた後、二つ折りのかんたんケータイをプレゼントした。電話やメールアドレスを登録して、ボタンひとつで発信可能。本体を開くと、元気だよメールがこちらに届くようにもしてある。一日一度なので緊急事態には備えられないが、気持ちだけでも。

カブトムシが羽化した。コイン程度の大きさの隙間から、暗い土の中を覗いてもほとんど何も見えない。しかし前蛹、蛹の間は茶色だったのでなんとなく経過がわかった。茶色が黒くなっていき縮んだ。脱皮した皮だろう。先日、その隙間が壊れて広がり、黒い姿が見えた。動いた。生きてる! ああ良かった、生きてる。幼虫の間は毎日姿を見ていた。前蛹・蛹の間は絶対安静という話だったので、一日一度ちらっと見る程度にしていたが、動かないものだから生きているのかどうかわからなかったのだ。喜びもつかの間。ツノが折れている。羽化後のまだ身体の柔らかい時に、プラケースにぶつかったんじゃないだろうか。蛹化時かもしれない。人工蛹室を作るか迷ったのだが、素人が触って死なすよりはと思ったのだ。湿度調整に自信がなかったのだ。かわいそうなことをした。長生きできないかもしれない。ツノは戦うためにあるそうで、個飼いでは戦う必要はないため、普通に生きているという話も見つけた。この子もたくましく生きて欲しい。新しいケース、昆虫ゼリー、止まり木などを買って入れ替え。しばらく食事はしないらしい。ツノが口をふさいでいないことを祈る。はじめて羽化させるならメスの方がいいことを学んだ。(hammer.mule)
< http://www.toshiba.co.jp/product/etsg/cmt/softbank/832t/832t_02.htm
>
毎日連絡メール。この機種ではないが
< http://masahidesakuma.net/2012/06/post-5.html
>
音楽家が音楽を諦める時
< http://japan.internet.com/wmnews/20120615/7.html
>
日本のSNS人口、前年比143%「Facebook」約3倍、「mixi」微減
< http://taisyo.seesaa.net/article/275443368.html
>
第4四半期に「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」の13インチ版発売?