[3318] 「アマチュア(仮称)」を楽しむ

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《iPhoneという機種名がガラリと変わるんではないかと!》

■アナログステージ[81]
 あいほん5(仮称)の戯れ
 べちおサマンサ

■デジタルちゃいろ[20]
 「アマチュア(仮称)」を楽しむ
 browneyes

■ローマでMANGA[55]
 アモーレのその後
 midori


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■アナログステージ[81]
あいほん5(仮称)の戯れ

べちおサマンサ
< https://bn.dgcr.com/archives/20120828140300.html
>
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「今年の夏も終わりました。楽しい夏の思い出...... おもいで?」
「思い出? 残念ですけど、なにもないですヨ」
「うぉ! 中里さん! 急に出てきてビックリするじゃないですか」
「ビックリもなにも、またアンタが勝手に召喚したんでしょうが」

「こうやって、脳内にいる『もうひとりのボク』を自由自在に操れるようになるってことは、そろそろ召喚士としてのスキルが熟してきたのかな」
「召喚士ってwww 自分のアタマの中のことでしょうw」

「それより、前回のデジクリは申し訳なかったです」
「!? そうですよ、後記だけ出すなんて、あんなの、前代未聞ですよ!」
「しかたなかったんだ。 本当にいきなり名古屋行きになってしまってねぇ。どうにもこうにも時間都合がつかなかったので、編集長に『ごめんなさい、ごめんさない、今回休載させてください』って連絡したんだけど、デジクリ夏休み前だったし、原稿落とすのもイヤだったし」
「だからって、あれはないでしょう......」

「さてさて。今回のお題は『あいほん5(仮称)』でーす」
「iPhone5(仮称)ですか。Apple全社員のお休み返上計画を火種に、今年の秋ころリリースされるとか、Docomoからついにリリースされるとか、いろいろ話が飛び交っていますよね」
「ワタクシが期待しているのはそこじゃないのだ!」
「は? 会話終了じゃないですか。お疲れさまでした」

「終わらない。勝手にチャットを終わらせないの」
「で? べちおさんはなにを期待しているんです?」
「iPhoneという機種名がガラリと変わるんではないかと!」
「はぁ。例えば?」

「それを予測するのが今回の目的であり楽しみなのに、なにそのやる気のなさ。ワクワクしないの?」
「機種名より、中身の予測のほうが面白いかと存じますがいかがでしょう」

「中身なんかいいんだよ。足りなきゃどんどんアップデートくるんだし、ハードだって、いま現実的に可能なところまで作りこんでくるだろうし。それより、機種名が変わるってことは、iPhoneとしての意識を変えることだと思わない?」
「意味がよく分からないんですけど」

「たとえば、フェラーリが最新テクノロジー満載のテスタロッサ後継車をリリースする! ってプレスリリースされたとするじゃん?」
「はぁ」

「すでに車種名は決まっているけれど、プレスにはいっさい公表されていないわけだ。オフィシャルサイトには、『新しいフェラーリ』としか書かれていない。そうすると、メディアは『テスタロッサ2』とか『テスタロッサ2013』とか、好き勝手な呼称をつけて盛り上がる」
「はぁ」

「そして、いよいよ車が発売されて、車種名が公になりました!」
「なりました!」
「その名称は、なんと! 『アウトモービレ(automobile)』だったとか」
「そのまんま車じゃないですかwww」
「直球すぎてビックリしない?」
「そりゃビックリしますわな」

「でしょ? でしょでしょ? それでね、車にあまり興味ない人だと、車種名まで詳しく知らないでしょ? 車を見かけたら『あ、フェラーリだ』という認識くらいでしかない。iPhoneも同じで、iPhoneを使っている人は、見れば3GSやら4Sやら区別がつくけど、使っていない人には分からない。けれど、iPhoneという機種名は知っている」
「ほうほう、なるほど。ただiPhoneの場合は機種名で、フェラーリの場合は、社名を指していますよね」

「そこで、アップルがわざわざ4Sと、『S』をつけてリリースした意味を考えると、4SのSは、『SAIGO(最後)』のSじゃないかと!!!」
「あんたバカですか?」
「なんで? すごい推理じゃない?」
「最後って、アップルがわざわざ日本語に直して、さらにローマ字に置き換えるって、そんなことするわけないでしょ、アホ」

「なんだよ、そんなにムキになるなよ、仮想の話でしょ」
「仮想にしてもアホすぎてまったく面白くないです。それで? そのまま『Apple』とか『Applephone』とかになるんじゃないかとか、メチャクチャつまらないオチで終わろうとしているじゃないの」
「ムフフ、それが違うんだな、iPhoneとかiがついたりPhoneとか、電話臭するようなものではなく、もっと画期的な名前になるような気がするのよ」
「なんなのよ、いいから早く言いなさいよ」

「MAC OSが動物というか獣系の名称できているじゃん?」
「だいたいオチが見えてきたw チーターとかですかw」
「......。なんだろうね。もうなんでもいいや。それを予測して楽しむはずだったのにさ。キミがつまらないことを言い出すからさ、ぜーんぜん盛り上がらないんだよね」
「えええええーっ! ボクのせいですかいな」

「もうつまらないから『新しいiPhone』とか『iPhone(第5世代)でいい」
「うわ、逆キレしてるよw すみませんでしたね」
「もう少ししたらTwitterで遊べるから、そのとき皆さんと遊ぶからいいの」

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
某ナノテク業界の技術開発屋。NDA拘束員。
< http://start.io/bachio
> ←まとめ

○記憶に残っている夏休み中の出来事→いまの勤め先で、大変お世話というよりも、恩師に近い存在だったかたが癌で亡くなった。最後に逢ったのが、6月中旬で、その日はたまたま調子が良かったので、久しぶりに会社に寄ったとのこと。その姿は、治療のために長期休養するときの姿はなく、骨と皮だけになっており、歩くのがやっとの状態だった。

仕事帰りによく2人で酒を呑みにいった。愚痴もたくさん聞いていただいた。氏にはとても可愛がっていただき、本当にたくさんのことを教わった。『細かい気配りができてからの意思疎通』という、日本人が忘れかけている心を、とても大切にしていた氏。その心は、きちんと引き継いでいきますので、安心して休んでください。お疲れさまでした。

朝起きたら、ギックリ腰なのか分からないけど、もの凄い痛みで起き上がれない。仕事よりも2日後(8/23)のLIVEに行けるか心配になるも、痛みを堪えて行ってきました、NAPALM DEATH!!!/開演と同時にできていくモッシュピット(押し競饅頭)を横目に、ムスメと左サイドで大人しくしていたら、カミさんがモッシュの中に入って頭振ってたw ムスコは逆サイドで大人しく見てたらしい/オイラは昨年のBRUTAL TRUTH以来だったので、久しぶりの音圧でおなかいっぱいになりました。満腹。

・ Napalm Death - Suffer the children
<
>

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■デジタルちゃいろ[20]
「アマチュア(仮称)」を楽しむ

browneyes
< https://bn.dgcr.com/archives/20120828140200.html
>
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夏もそろそろ後半戦でしょうか。今年はなんとなーく体感的に、延々と梅雨の延長線が続いてたかのような、いつにもまして気温よりも湿度がまとわりついてくるような夏でしたが、大半を引きこもって過ごしていたのでよくわからないうちに終盤、というのが実際のところです。

最近もやもやと「好きなことを楽しむ」とは何ぞや的な事を脳内でこねくり回しています。平たく一般的に言うと趣味全般なのでしょうかね。なんとなく趣味ってライトな感じがしちゃうのですが、強いて言えばWikipedia先生の示す「アマチュア」が近いのかな。対価を得る前提で、ではないけど、ものによっては趣味が高じて...も含むイメージ。そういう層、以前より増えてるんじゃないかな。

□アマチュア - Wikipedia
└< http://j.mp/RPk3Qu
>

という訳でアマチュア(仮称)です。逆に(仮称)を付けないアマチュアだとそれはそれで語弊がある気がするので。いつか仮称ではないしっくりする名詞が見つかりますように......。

●入り口

義務教育時代のワタシの黒歴史の一端だと、漫画家に憧れて羽ぼうきとGペン買ってみたり、チョイ悪かっこいいじゃーん程度の動機でバンドに混じってみたり。この辺りはワタシにとっては一過性の麻疹みたいな趣味としてすら終焉を迎えています。現在進行形でワタシの日常...というか精神に常につき纏っている「楽しい」ものは主に写真と南亜細亜(の主に音楽)。

写真についてはある時、自分のナニカにカチリとハマるものを感じて「やってみなくちゃ!」となった。お金はないので熟考の上、デジカメを購入。フィルムとかデジタルとか、その違いについての頓着はあまりなかった。

実はここ暫く、写真を始めた理由なりきっかけなりを思い出そうとすると、なんとも曖昧で、ある意味こんなに重要なことが曖昧であること自体が気持ち悪かったんだけど、最近ひょっこり思い出した。始めるに至る数年前に、写真の面白さを教えてくれた人がいたのだった。

南亜細亜も入り口がどこだったのか、よくわからない。きっかけは確かに、知り合ったパキスタン人たちのお陰。でも当時は、受動的に「聴かされる」ばかりで、10年近く間を空けてからの能動的再燃。その理由は覚えてない。

●楽しむための素地・教養?

南亜細亜の音楽が好きという話をすると、よく「あぁ、90年代これこれがブームになりましたよね、それからああなってこうなって...」という話題をされるのだが、実はあまりそういう日本での(? いや、世界での? それすら不明)体系的なトレンドすらよくわかっていない。今現在のトレンドも然り。

ワールドミュージックに限らずだけど、言葉やその国の歴史が解らないとその音楽を解り切れないだろう、みたいな話も時折ある。だから聴くな、とまで言われた記憶はないものの、言外に、(そんな知識で)聴いてどうなの? 的なニュアンスが含まれてる事はたまにある、気がする。言語や歴史や、そういう知識すべてを知った上なら確かに深まる。それは否定しないのですが、そこに重きを置くのには抵抗があります。

ワタシの場合、巷にどういうトレンドが横たわっているのかすらよく解らず、それなりに増えている(であろう)印度本を読むこともせず、目に入ったものを妙に純粋に聴きかじる。

妙に純粋に、というのは、気に入ったら聴く。ただただ聴く。そうやって幾つか聴いてるうちに何かが浮かび上がる。あ、同じ声、これは誰だ。あ、この曲とこの曲に共通する、これは何だ。で、やっと音楽以外の付帯情報に目を向ける。赤子がひとつひとつ口に物を入れて学んでくのに似てるかもしれない。自分なりのディスカバリー自体も楽しんでいるのかもしれない。

気に入って聴き倒して、ぽつりぽつりと曲によく出てくる単語も浮かび上がる。浮かび上がったものは探求しはじめる。それが高じてくれば自ずと歌われている内容も輪郭を現しはじめる、こともある。内容次第でその国の文化や社会を感じ出す、こともある。はじめから意味が解からなくても楽しむことの先に「聴いてどうな」ったかはあり得る。

●技術と知識

写真も長らく赤子の口状態ではあった。赤子が幼児になるよりもゆっくり時間をかけて、やっと最近、精神年齢が、知識は幼児並み、技術は児童並み程度には育った...かもしれない。

シャッターを押すだけ、フレーミングを楽しむだけ、をバカの一つ覚えの如く、かなりの枚数と期間に費やした。例えて言うならここまではカメラとの単純なボディ・ランゲージ。

これを気の済むまでやった上である時、これ以上本気で納得行くもの撮りたいなら技術と知識を学んでかなくちゃな、に行き当たった。引き続きさっきの例えで言うと、ここでやっとカメラ語を学んで、「さぁ、もっと深い大人の話をしようじゃないか」というフェーズが今なのかな。ここは楽しいばかりじゃなかったり、まだまだ長丁場になりそうな予感もあったりですが、それでも続いたらずっと続くんでしょうね。

南亜細亜方面も、もう少し時間が経ってもう少し気持ちにゆとりが出来て、もう少し知りたい欲が増したらきっと、長いことやるやる詐欺状態の言語習得に真剣になったりするコトがあるのかもしれないと思ってます。欲は既にある。けど、まだ満ちてない。

●出口

南亜細亜は出口って、特にわからない。あまり向上心的なものと関係がないからかな。無理やり高尚な出口を捻り出してみると、主にパキスタンについては、根底には、「言われてる程酷い面ばっかりじゃないんだよ」を音楽やその他を通して伝えられたらよいなぁ、みたいな気持ちは薄っすらと常にある。

でも決してそれが主体ではないし、本筋は「うわこの曲いいわー」という、毎回の「どこかの音楽」そのまんま、それ以上でもそれ以下でもない。出口自体無理やり見つけなくてもいいんだろうな。

写真は何度か微々たる対価を戴いたコトもあるが、かと言ってまだ、プロという認識をワタシに持ってる人は自分も含めいないだろう。プロ・アマの境目難しい......。

そもそもプロと呼ばれるようになるコトが出口か自体まだわからない。そうあるべき、とも思ってない。それ以外の道があってもいいような気もしている。ただ、まずは自分の納得できる作品は増やしていきたいし、もっとそれらを見てもらえたら嬉しいだろう。

上手いとか下手とかは一生自己評価出来る気がしないし、カチリときた「自分のナニカ」のナニカが「表現」なのか「記録」なのか、要するに出口が何なのかもまだわかってない。

ワタシにとっての一過性の麻疹と同時期に、同様な動機程度で始めちゃったけど成功しちゃったよ、という人もいればそうでない人もいるだろう。成功とか関係なくおやじバンドを続けて楽しんでる人もいる。自分の作品が市場に出ようが出まいが真の自己は小説家である、と、自分に課して小説を書き続けている人もいる。

こうやって改めて書いてみると出口なんてわかりませんね。でも「楽しそう」さえあればどんな形で入り込んだっていいし、楽しみ続けてる限りは、その楽しみの澱になったものが出口...というか着地点かもしれない。

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■今回のどこかの国の音楽

□Nooran Sisters "Tung Tung"
└<
>

これはまた久しぶりに、はじめて聴いた時にウヒョーってなったくらいにはかっちょいいですよ。MTV IndiaのSouond Trippingという、音楽ディレクターであるSneha Khanwalkarさんが印度各所を旅して、その土地の「音」を求めて集めて作って紹介していく、という番組。

4月に始まった第1回が、パンジャブ州でのこのTung Tungなのですが、農機具音を始めとする土地の音リミックスも映像の編集もめちゃめちゃかっこいい!

実際に音を収集してる所から音作り、映像作りまで気になる方はこちらの番組動画もどうぞ。

□MTV Sound Trippin
└< http://j.mp/OlM92h
>

【browneyes】 dc@browneyes.in
日常スナップ撮り続けてます。アパレル屋→本屋→キャスティング屋→ウェブ屋(←いまここ)しつつなんでも屋。
□立ち寄り先一覧 < http://start.io/browneyes
>
□デジタルちゃいろ:今回のどこかの国の音楽プレイリストまとめ
└< http://j.mp/xA0gHF
>

先月頭から劔岳上の山小屋で住み込みバイトをしている年若き友人からひょっこりメールが来た。この夏も既に滑落者数名を出している険しい山。彼女の働く山小屋内は電波が届かない。こつこつとメールを書いては、外に働きに出る同僚の男の子にiPhoneを託すと、不安定な電波を捕まえたタイミングで送信されるとのこと。

文章量によっては中身が空で送受信されたりもあるらしい。メールの文末に敢えて書き終わった日付を入れてくれていたが、ワタシの受信箱に届いたのはどうやら、彼女が送信ボタンを押してから3日後。風まかせならぬ電波まかせなメール、一昔前の文通みたいでちょっといい。

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■ローマでMANGA[55]
アモーレのその後

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20120828140100.html
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前回、〈イタリアの漫画家、イゴルトが講談社へ売り込みに行って、「アモーレ」というタイトルのマフィアのファミリーに育った若者を主人公にした物語を、モーニング誌に掲載すべく制作が始まった」ということを書いた。

担当編集者とイタリア人作家のやり取りの間に私がいて、日本の(講談社モーニング誌の)MANGA制作をそばで見ていたというわけだ。そばで、というのはバーチャルだけども。

双方とも今までのやり方と勝手が違うので大いに戸惑った。手元に残っている通信の一番古いのが1991年8月21日のイゴルトからの手紙。1994年の1月11日のイゴルトからのFAXに「第5話のネームを送りました」と書いてある。

全編300ページの話で、1話30ページ。1991年の8月に掲載の話が始まって、2年5ヶ月経って5話目の話をしている。日本のマンガ家さんと新作の企画を立てて、掲載までこんなに長い時間をかけるものだろうか。

新人だったらありうるかもしれない。例えば、新人賞などでその存在を知られ、編集部からこれは、と見込まれて担当編集者がつく。双方ともやる気充分で熱心なやり取りが続くも、決定打にたどり着かなくて月日が流れる...というような場合。

新人で連載を持っていないから、雑誌の構成に影響はないからいくらでも時間がかけられる。イゴルトの場合もこれに似ている。担当編集者の堤さんはイゴルトを買っていたし、イゴルトは熱心に応えていた。

海外作家の作品を掲載する、というのは当時のモーニング編集部の命題の一つだったから、編集部も編集長も「イタリアの大御所の長編物語」を待っていた。担当編集者もイゴルトも「良い作品を作る」というプロ意識を持っているから、とことん話し合い、やり直しも辞さなかった。

そのやる気のせいで時間がかかった、といえる。日本とイタリアの時差と、いちいち通訳翻訳を介すことと、ワープロで打ってプリントアウトしてFAX、という手間暇も無関係とは言えないのだが。

関係あるのかないのかわからなくなってきたけど、日本に住んで、電話ででも直接やり取りが出来る環境と比べて、どうしても二枚クッション(時差と通訳)が入ると、少し遠くなり、ツーカーにならなくなるのは否めない。

これを打破するために、堤さんは何度かヨーロッパに来てヨーロッパの作家と直接会うように努めたし、イゴルトも事情が許せば日本に飛んだ。チャットが出来る今ならば、ずいぶん事情が違っていただろう。

●ヨーロッパの作家と日本の編集者が驚き合う

ヨーロッパのマンガ家は孤独な作業をする。イゴルトのように、ストーリーも作画も自分でやる人はよけいにそうだ。あ、ヨーロッパでは作画とストーリーが別々というのは普通で、作画にいたっては「鉛筆下書き係」、「ペン入れ係」、「彩色係」と担当がわかれているのも普通だ。担当が分かれている場合は、ストーリーを作る人がボス的役割。

「自作自演」の場合、出版社と作家が作品の内容についてあれこれミーティングをすることはない。雑誌形式ではなく、単行本で、出版社は作家が売り込んできた作品を出版するかしないかだけを決める。後は、作家の力量のみが問われる。だから、マンガ家は出版社と契約を交わした後は孤独に作業を進める。

日本の場合は事情が違う。大御所でも担当編集者がつくし、連載の企画から編集者と一緒に考えたりする。新人の場合は、作品企画ばかりでなくネーム(ストーリーボード)の不具合まで編集の口が入る。

「担当編集者はその作品の最初の読者」であり、まずは、作者の言いたいことが伝わるかどうかを念願においてネームを読む。編集者がその作家のことをよく知っていればいるほど、編集者と作家の相性が良ければ良いほど、ネーム段階での話し合いで作品が良くなる。

ヨーロッパの作家は孤独な作業が普通だから、「ネームを見せてくれ」でたまげ、そのネームでああだこうだ言われてさらにぶったまげる。否定的な意見に対して、たいてい「これはラフだから...」と言い訳し、編集者はその言い訳にたまげながらも「そんなことはわかっている」と言う。

これには二つの事実が隠れている。一つはヨーロッパの作家、というかヨーロッパのマンガは絵の完成度が重要視されること。だから、編集者がラフを見てあれこれ言うのは、完成された絵を見ていないために良さを見抜けないのでは、と考えるのだ。

一方、日本のMANGAも絵が完成されて美しい作品の方がいいに決まっているけれど、テーマの切り口、語り口、キャラの面白さの方が重要視される。だから編集者はラフなネームで、物語のリズムや、キャラの感情が描かれているかどうかを見る。絵が完成されていなくてもそれは読み取れる。だから「これはラフだから」というヨーロッパ作家の言い訳にたまげるのだ。

この「絵が先か物語が先か」はMANGAの本質に関わるものであり、欧米マンガとの違いに関する話になる。このことは過去に書いているので興味のある方はこちら。
< https://bn.dgcr.com/archives/20080513140100.html
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もう一つの事実は、雑誌形態。ヨーロッパには漫画雑誌がない。イタリアとフランスとスペインに、70年代の後半から80年代にかけてあったけれど消えてしまった。マンガは単行本、主に絵本のような大判で発行される。だから、ヨーロッパの作家は単行本の頭で作品構成をする。

日本の週刊誌、月刊誌にも短編読み切りはあるけれど、今回、イゴルトの作品は週刊連載として企画された。それはどういうことかというと、毎回の掲載時にその回の話のテーマと、次回へつなげる終わり方が要求されるということ。

そして、何度も書いているけれど、掲載できるページ数が決まっているということ。片起こし(見開きページで始めない)、その回の表紙にあたるページも必要という決まりもある。

ヨーロッパの作家は全体を一度に捉えて話をし、日本の編集者は雑誌掲載を踏まえて一話づつの構成を基に話をする。日本の編集者は、一度作家に「1話32ページまで」と言えばそれは不文律になると思っているし、ヨーロッパの作家は、一応全体を幾つかの章に分けていても、全体の構成から必要とみなせば一章のページを増やしたり減らしたりするのは当然と思っている。

こうした思考の違いがあることを認識するまで、堤さんとイゴルトだけではなく、他のヨーロッパ担当編集と作家達の間でもたまげ合いが頻繁に起こった。ちゃんと双方の言語を介す通訳が間に立っているのに、意思の疎通に時間がかかった。

私自身、日本のMANGAとヨーロッパマンガの違いを意識の上に登らせていなかったから、互いのたまげぶりにたまげつつも、なかなか助けの手を差し伸べられなかった。フランスのある作家は、プロとして長年やって来ているのに、今さらそんなにがたがた言われる筋合いはない! と怒って企画から降りてしまった。

1992年12月半ばのやり取りに、雑誌掲載を意識している編集者と意識していないイゴルトの戸惑いがよく現れている。「アモーレ」の第1話の原稿が完成し、第2話のネームのやり取りが済んで、原稿の完成へ向けていた。

同時に、話し合いの結果、マフィアとは何かという解説を含めたプロローグがあったほうがわかりやすいということになって、そのネームについてのやり取りだ。

プロローグの内容については「このプロローグをもって本編の物語が現実に支えられたものであることを読者に承知させられる」と編集者も満足だった。問題は提起したページ数だった。イゴルトは32ページを越えて、35ページから36ページくれと言ってきた(単行本脳である)。

編集者は雑誌の編成上不都合だ、どうしても32ページ以上必要なら、カラー4ページ+モノクロ32ページなら可能だと返答した(雑誌脳)。雑誌では、新連載や特に推したい作品を最初に持ってきて、カラーページでアイキャッチをすることはよくある。だから、イゴルトの新連載を巻頭カラーで掲載する(それを編集会議で何とか通す)と考えたわけだ。

イゴルトの返事は、カラーとモノクロ原稿が一つの章で混ざるなんて、単行本になった時に意味がない(単行本脳)、だった。単行本脳は、さらに、いっそのことプロローグを全部カラーにさせてくれ、そうすればプロローグがドキュメンタリーになり、その後の本編のフィクション(モノクロ)へつなげる意味も出てくるという提案をしてきた。

単行本脳発言はまだ続き、カラー32ページ一挙掲載ができないのはわかるので、8ページづつ掲載していけばいいと提案した。編集者は当然雑誌掲載の効果を考えて返事をする。

「プロローグは一回で掲載したほうが読者に与えるインパクトは大きい。また、仮にオールカラーで掲載するとしても、32ページのものを機械的に8ページづつ分けて掲載すればいい、というものではない。32ページ以上必要だと理解したから4ページカラーを提案したが、32ページで収まるのならモノクロ32ページでお願いしたい」

(日本の)雑誌脳があれば、プロローグを何ページにするかのやり取りで三日間無駄にしなくて済んだわけ。

この頃、イゴルトはボローニャにアトリエを持っていた(今はパリ)。プロローグを描くにあたってマフィアに関するかなりの資料を集め、壁には歴代ボスとファミリーの顔写真を貼り、友好関係や敵対関係を示す矢印でつないで「カラビニエリ(イタリアの国家憲兵)の捜査室みたいだよ」と言っていた。↓こんな感じ
< http://www.sicilia24h.it/droga-e-truffe-a-finanziarie-maxi-operazione-dei-carabinieri-52-arresti_103498/
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マフィア発祥の中世から、アメリカでの拡大、第二次大戦でのイタリアへの逆輸入というマフィアの歴史。マフィアのファミリーの構成。構成員に成るための儀式など、多角的にマフィアの予備知識を32ページで解説した秀逸な構成になっていた。

【みどり】midorigo@mac.com

ちょうどこれが掲載される日、40日間預かった日本の小学生が帰国のために旅立つ。ホットスポットからイタリアへ保養へ来た34人のうちの一人。ボランティアをやっている知り合いに頼まれて引き受けた。

11歳で親兄弟から離れ、言葉も習慣も知らないところへ一人で置かれて、なんだかそのほうがかわいそうに思える。もっとも、親からしてみれば、「怖い怖い」放射線を浴びさせるよりは、僅かな期間でも「健康な」土地へ避難させたいとわらにもすがる思いで子を国外に出すのだろう。

国内でもそうした保養の受け入れ先があるようだけ、ど日本から出さないと親が安心できないのか、国内では「放射能が伝染る」とか、言われるのか。

福島の事故から、色々読んで低放射線では健康に害が出ない、という説を私の脳みそは受け取った。ただ、この子にしても、事故以来鼻血が出たり下痢をしたりするようになったという。そのキーワードで検索してみて、粘膜に放射性物質が付着すると、その粘膜の細胞を壊して、つまり表皮が壊れて鼻血になることはあるようだ。

なる人とならない人がいるわけで、どうも免疫力のせいではないかと理解した。抵抗力をつければ、ちょっと放射性物質が余計にくっついても表皮が壊されないと思ったので、毎日乳酸飲料をあげてみた。

というのも、昨年の秋から便秘対策でヨーグルトを毎朝欠かさず食べ始めたら、今年の春、ほとんど花粉症に苦しまなかったのだ。花粉症も免疫に関係があると読んだので、つながってると理解した。ちなみに便秘も解消した。そのせいか、ローマが「健康な土地」なのか、鼻血は出なかった。

親から離れた11歳は、当初、きちんとお辞儀をして朝の挨拶をし、言われたことはやり、殆ど喋らず動かず、手間はかからないけど大丈夫かしらと思わせる子だった。その内、私にはポツポツと学校の友達のことや、家族のことを話しだし、息子のプレステで遊んで居場所を見つけたような感じになってきた。

イタリア人である旦那や、息子や、週末に泊まりに来る舅にはどう接していいのか戸惑うらしく、まるで存在しないかのようになるべく彼らを見ないようになったのに気がついた。挨拶だけでいいからと、イタリア語のおはようや、簡単にチャオでいいことを教え、日本語でもいいと言ったけど、どうしても見てみないふりをする。

大人の方からお願いと頼んで、旦那と息子に先に声をかけてくれるようにしてもらった。ほぼ40日経った今、時々ポツッとイタリア語の単語を口にし、かんべんして! というくらい私におしゃべりするようになった。人は慣れるもの。

それでも、こんなに遠くまで出すほどのことなのか、と、私の脳みそは納得できないでいる。11歳、しっかりしてる子でもまだ親が必要な年だよ、と思う。34人のうち、一番小さい子は7歳。一人でイタリア人だけの家庭にいる。

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>

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編集後記(08/28)

●自転車系2題。月に一〜二回、妻と自転車(ママチャリ)で川口市のディスカウントスーパーに食品の買い出しに行く。8月のある暑い日の午前11時、駐輪場で妻が自転車の鍵をなくしたと焦りまくっている。店内を注意深く探し回ったが見つからない。仕方なく、妻をわたしの自転車で帰宅させた。鍵はリアに装着された円状のもので(馬蹄錠というらしい)、プラスねじ2本でシートステーにセットされている。とりあえずこのねじをはずしてみようかと、ストアのサービスカウンターからドライバーを借りたが、小型のひ弱なやつでまったく歯が立たない。そこで歩いて10分の100円ショップに行って、頑丈なプラスドライバーと潤滑剤スプレーを買って来た。

ねじは容易にはずれ、鍵本体がフレームから分離できたが、閂部分が刺さったままで車輪からはずれないのだから何の解決にもならない。途方にくれた。後から考えたのだが、鍵本体はフレームにつけたままで、鍵穴部分にマイナスドライバーを入れて、無理やり鍵を表と裏に二分割すれば閂を引っ込めることはできたはずだ。あるいは、金ノコで閂部分を切断するとか。結局、一番ばかな方法だが、両手で力任せに鍵本体をねじり曲げて、車輪から取り外すことに成功した。とてもチープなやつだから手で曲げられたが、高級品ではこうはいかない。それからは、ダイヤルナンバー式のワイヤ錠を使っている。

スーパーバルブを使い始めたのも最近だ。100円ショップに虫ゴムを買いに行ったら、虫ゴム不要で虫ゴムの10倍長持ちするというこの新型バルブを見つけた。一般に使われている英式バルブ用である。虫ゴムは劣化すると空気が漏れるため定期的に交換が必要だったが、これなら不要だ。空気入れも楽になった。こんないいモノ知らなかったが、ずいぶん前からあったようだ。自転車マニアの知り合いに話したら、「知らなかったね。俺の自転車はみんなフレンチバルブだから」と言う。高級ロードレーサーを何台も持つお方であった。ママチャリですいません。(柴田)

< http://www.geocities.jp/taka_laboratory/20060205-Bicycle-Valve/20060206-Super-Valve.html
>
懇切丁寧にスーパーバルブを解説したサイト

●続き。きれいな前面ガラスをキープすべく、その足で『AppBank Store 心斎橋』に行った。徒歩1分。液晶フィルムのメーカーは選べないのだが、前回も使っていた『パワーサポート』のものだったのでお願いする。定価で貼り替えまでしてくれるのは助かる。つけていたカバーを外したり(外そうとしたら、こちらでやりますよと言われた)、貼ったままだった背面用フィルムをはがしたりと余計な手間はかかったんじゃないかなぁ。でも約5分で前面・背面ともに完了。確かにプロの技。気泡やゆがみはない。

そして、おまけの『おさわり探偵 なめこ栽培キット ホームボタンシール』をもらいご機嫌。ホームボタンにシールを貼ると、ボタンが押しやすくなっていい。ただし、Siriが勝手に起動する恐れあり。私は前面までカバーされる革ケースを使っているから問題なし。iPadや他のスマホでもサイズが合えば使えるよ。シークレットは『白なめこ』だった。サイトを見たら、出やすい筆頭だったわ......。(hammer.mule)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003TI9VO6/dgcrcom-22/
>
→アマゾンで『Power Support AFP クリスタルフィルムセット』を見る
あれ? 余った表側のフィルムとクロスはもらったっけ?
< http://www.appbank-store.com/store/1/9/9/3591/goods/goods_detail.html
>
おさわり探偵 なめこ栽培キット ホームボタンシール