[3325] 私、困ってます!:UX/UIの話

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《いー加減にせーよ、客をなめとんのか?》

■電網悠語:HTML5時代直前Web再考編[196]
 私、困ってます!:UX/UIの話
 三井英樹

■デジクリトーク
 「ぎっくり肩」(!?)の日々
 石北由理



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■電網悠語:HTML5時代直前Web再考編[196]
私、困ってます!:UX/UIの話

三井英樹
< https://bn.dgcr.com/archives/20120906140200.html
>
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米国で表紙を見て惚れ込んだ本(全部は読んでないけど)。でも、邦題は「ユーザビリティの法則」。翻訳が致し方ないのは理解しているつもりだが、オリジナルの味をもう少し加味できなかったのかなぁと時々思い返す。

   Don't make me think !
   【原 書】< http://www.amazon.co.jp/dp/0321344758/
>
   【和1版】< http://www.amazon.co.jp/dp/4797315970/
>
   【和2版】< http://www.amazon.co.jp/dp/4797339098/
>
    → 【標準】私に考えさせないで!
    → 【意訳】私、困ってます!
    → 【意味】キーッ、訳わからんわ、もう!
    → 【真意】いー加減にせーよ、客をなめとんのか?

そんなことを思い出させてくれるお話が、らばQに載っていた。キーッとなっている(かどうかは分からない)お婆ちゃんのために用意したTVのリモコン。

「おばあちゃんでもリモコンが使える、とてもシンプルなやり方」:らばQ
    < http://labaq.com/archives/51759394.html
>
    笑っちゃうほどシンプル。
    でも、これなら迷いようがありませんね。
    DVDプレイヤーは[再生]と[電源]ボタンのみ。
    テレビの方は[チャンネル変更]、[音量]、[電源]ボタンのみ。

先ずこの記事を見て引っかかるのは、「お婆ちゃんでも」の「でも」。お婆ちゃんがTVリモコンを使えないというのが、さも常識のように説得力を感じてしまうところが問題だ。

私の知る限り、「お婆ちゃん」は私の数倍TVを見ている、というか彼女のいる部屋のTVはつきっぱなしだ。にも関わらず、操作に長けていないことが常識化/定説化している。

お婆ちゃんが本当にヘビーユーザかどうかはデータがないので分からないけれど、一番使うと思われる人が一番使えていないという状況は、UX(ユーザ体験/UserExperience)に関わる者にとっては、かなり忌忌(ゆゆ)しい問題だ。更に、そんなものだという雰囲気が、自分の中にも普通に漂うのが尚まずい。



手元のTVリモコンを眺めつつ、やはりボタンは多いなぁと思う。そして使用するボタンは、このお婆ちゃん程ではないけれど、かなり限定される。更に、我家もTVとDVDを統合できなかったので、リモコンは2台。常に両方持たなければならない煩わしさは、かなり腹立たしい。実際テープで合わせちゃおうとか考えたこともあるし、学習リモコンにしようかとも考えた。

引き算のデザインというか、シンプル化の流れは、言葉の上ではここ数年の主流だろう。ゴテゴテしたものよりもシンプルなものを望む傾向は、様々な場面で嫌というほど顕著だ。しかし、最終的に出来上がるもの(手にするもの)がシンプルである確率は余り高くない気がする。

このリモコンも、そうしたシンプル化プロセスを経て来たのだろうか。実際に使い難い(決して使い易くはない)結果を見れば、この開発プロジェクトでは、何かしらの失敗があると言うしかない。では、何が失敗をさせたのだろう。



他にもあるかもしれないが、大別するとこれくらいだろうか:

A)UX的な視点が開発プロセスに入っている場合
  A1)プロジェクトリーダーの知見不足
     → そもそも無理解(=知らなければ導けない)
     → レベルの問題(努力したけど低次元)
  A2)担当者(デザイナ+エンジニア)の知見不足
     → そもそも無理解(=知らなければ対処できない)
     → レベルの問題(努力したけど低次元)
  A3)採用した方法論がチープ、あるいは残念なもの(レベルの問題)
     = 頑張ってはみたがハズレだった、あるいは判断ミス
  A4)予算的/時間的な問題でやむなくUX部分を断念

B)UX的な視点がそもそも開発プロセスに入っていない場合
  B1)そもそも知らない(気付きようがない)
  B2)意図的に無視(不必要と判断=自分達の知識だけで
    素晴らしいものが開発できるという自信、或は奢り)
  B3)予算的/時間的な問題でやむなくUX部分を断念

そもそも、UX的な視点とは、利用者の求める(求めない)ものは何か、ユーザが喜ぶ(嫌う)ことは何か、を考えながら開発を進めることで、そのための手法としてペルソナやシナリオやユーザテストなどがある。

でも、UXとは、知識として知らなくても、出来上がったリモコンを見て、「ほぼNHKしか見ない人が週に一回他チャンネルを見る生活をしていて、これで便利か」を考えられるかというコトだし、「食事の支度をしながら間違えないで見たい番組を常に選べるか」をテスト/検証しようとするかというコトだ。

UXというか、別人格の人の立場でモノを考えられないと、可能かどうか(スペック)だけを見て、便利であるかは二の次にしてしまう傾向になる。でも便利かどうかを考えられると、誰にとって便利かという問題に直面し、だからこそ対象ユーザをどの層に絞るかが問われ、販売戦略そのものに触れざるを得ない。

開発者自身が、そこに関与することで、言われたことに対処するだけの「他人事プロジェクト」から、自分で熟考した「自分事プロジェクト」に昇華でき、プロジェクト自体に命が吹き込まれる。

活性化されたプロジェクトに、戦略の根底にある仮説などが正しいなどの追い風が吹くと、ビジネス的な大成功に化ける好循環に入る。UXが多くの場面で大切だと言われる所以である。

今現在、UXの宣教活動が充分かどうかという問題はあるにせよ、上記のリストを見ると、確信犯(B2)を除いて、人選を含めたプロジェクト設計時にほぼ勝負が決まっているようにも見える。つまり、かなり初期の段階から、見る人が見れば、このリモコン(実際には「テレビ」としての製品)が、どの程度のものになるかは予想がつくのだろう。



予想がつくことが正しいのであれば、このリモコンが「失敗である」としていることに問題があるのかもしれない。誰も失敗するためにプロジェクトを進めることはないし、誰も勝算もなしにビジネスは進めない。この商品が世に出続けているいうことは、「失敗」とはカウントされていない証拠なのだ。

つまり「お婆ちゃんは困っても良い」という前提があるのではないか。それが、自分の中にも漂う雰囲気として存在しているのではないか。

多少不便でも我慢して使えばいいや、という変に大人っぽい諦め。あるいは、値段相応なんだから、そこまで求めちゃ可哀想だと無意識にでも考えているのかもしれない。更に、お婆ちゃんは、偉い企業が作ったものをちゃんと操作できないのは、自分が悪いんだと思い込んでいる可能性だってある。

でも、だからといって、これは本当に「失敗」ではないのだろうか。少なくとも私は今使っているTVメーカーのは二度と買わない。懲りた。でも、私は貧乏性で結構モノ持ちが良いから長期戦となり、メーカーの売り上げには誤差ほどにも影響しない気がする。気がするが、この会社にとっては望む未来ではないはずだ。痛くない小さな失敗がここにある。



iPadのようなUXの勝利的な話は大々的に報道されるけれど、失敗の方はあまり語られない。UXだけが原因と断定できないし、分析する側もUX的な評価を避けているようにも見える。

でもUX系の人間から見れば、すべてのことがUXに関わるし、「ユーザは自分達が望まないモノにはお金を払わない」という大前提に従った結果が起こっているようにしか感じない。だからこそ、ユーザに目を向けて「望まれるモノを売る」という根本に立ち返るしかないんじゃあないだろうかと常々思う。

そのためにも、どうすればこの失敗が「失敗」としてカウントされるのか。やはり、「困ってます」と言うことなんだろう。あるいは、「いー加減にせーよ、客をなめとんのか?」か。利用者が本心を語ること、それが製品を育てる根源なのだろうと思う。語り続ければ、いつか聴く耳も育つはずだ。

しかし、毎日山程「○○製リモコン、サイテー」とTweetされたら、開発者は参るだろうなぁ。でも、それで良いものが出てくるのであれば、良い試練なのではなかろうか。



ちなみに、私の望むリモコンは、ダブル型。ひとつは最低限ボタンでちっこいヤツ、カード型でもOK。もう一つは小型キーボードタイプで、両手で左右両手で持つ感じのヤツ。

この二つが美しくドッキングもできるし、後者はTVやDVD本体にしまうことも出来るイメージ。

現在主流のスティック型リモコンは、チョイ操作にはゴチャゴチャ過ぎで、予約録画やタイトル入れ等の複雑操作にはよりメンドウな中途半端なものに感じる。操作シナリオが違うんだから、無理にひとつにしないで分割した方がいいんじゃないか、と。

【みつい・ひでき】@mit | mit_dgcr(a)yahoo.co.jp
・< http://www.mitmix.net
>
・書いてみないと分からないと、チャレンジ:
 割切り型 格安SIMスマホ生活やりくり情報 - NAVER まとめ
 < http://matome.naver.jp/odai/2134665448842146301
>
 → 思ってたより難しい。巧い人は巧い。

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■デジクリトーク
「ぎっくり肩」(!?)の日々

石北由理
< https://bn.dgcr.com/archives/20120906140100.html
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ある朝、起きたら肩が動きません。しびれるような痛さで、歩いているだけでズシズシ響く始末。初日はショッピングモールど真ん中のソファで、口開けて気絶3時間という醜態をさらし。。。

翌日に病院に行って、レントゲンまでとってもらって受けた診断は、関節の間の筋の炎症とのこと。全治2週間。う〜ん、ぎっくり腰が肩にきた「ぎっくり肩」って感覚です。ともかく、何をしても痛いので疲れてしまい、常にだるさと眠気も襲ってきます。

でも、納品の時刻は刻々せまる上に、今週は山のようなフィードバックが予定されていて、むしろ納品を前倒しせねばという状況。こんな体に鞭打って仕事をはじめざるを得ず。。。

まずは、肩が上がらないので、椅子の座高を30cm上げ、腕をおろした状態で作業ができるようにしました。おかげでモニタを見下ろすという、ちょっと変わった光景に。これでもグキグキはいわなくなりました。

私のメインマシンは、iMac20インチと純正キーボードにIntuos4 Largeサイズ。作業アプリケーションはphotoshopです。

この環境でよく行われる作業として、キーを押しながら描く、複数のキーを押さえる、この二つが多いのですが、これがとにかく、キツイのであります。

Intuos4 Largeサイズは奥行きが32cmほどあり、その奥にくっつけるようにキーボードがいます。痛めた肩のおかげで、手前のIntuosのフィールド上はなんとか手首と腕で動かせるものの、このキーボードまでは肩を動かさないと届かないことが判明。

たとえば、塗りつぶしの作業は、通常だとoption+deleteキーを同時押しのワンアクションで済みますが、現状だと、左手で右手首をつかみ前に移動させ、左手でoptionキーを押さえて、右手で持っているIntuosペンでdeleteキーを押し、また左手で右手首を元の位置に移動という4アクションになるのです。

とはいえ、ですね。キーボードを打つだけでも疲れてしまう状態だったので、twitterもfacebookもすっかりやらなくなりまして、その二つにかける時間が減った分、意外に作業時間的にはスムーズだったりしてますのですがw。

で、さらに翌日は、毎月必須の支払回り日(給料日とかの日にお金をおろしてコンビニでの支払い等をまとめて済ませる日です〜。近所の主婦の間ではそういってます)。

合間に、サブマシンのMacBookAirとA4サイズBambooで仕事をしてみました。これが、予想外に快適! まぁ、細かい仕上げとか色補正等はメインマシン頼みになるにしても、ほとんどの作業はこのサブマシンでこなしていたこともあり、元々作業に慣れてはいましたが、それでも、肩への負担が少なくいつも通りに作業ができるのはうれしいことです!

どうして、こんなに快適なのだろうと考えてみたら......、キーボードまでの距離なのですね。メインマシンでは一番奥のファンクションキーまでの距離が43cmに対して、サブマシンの方は37cm(いつも、Bambooの上にMacBookAirの先を重ねて作業しています)。この6cmの差が意外に大きいのですね! 肩を動かさなくても作業できるだけでかなり違いました。

facebookでは、こんな話もコメントで頂きました。

 知人が腱鞘炎になってかかった医者で「Macつかってるんですよね? なる
 人多いんですよ、Macってうすぺったいマウスだから、だめ! マウスはぼ
 っこりしたのに替えてね。手〜肩〜首すべてに良くないのよ!」と言われた
 そうです。Macのマウスは危険かもという事で!

4日目あたりからじっとしていれば痛くはなくなりました。油断はできませんが、ひとまず安心です。

とはいえ、まだまだ夜中の寝返りでイテテテテっと目が覚める日が続いてます。どうか皆様も肩と腰を大事にして下さいね!

【石北(花山)由理】イラストレーター

主に家電や雑貨等をキャラクターにし、photoshopで3D風ツルテカテイストで描いています。正直3Dの方が早くね? と言われそうなことやってます。
< http://www.yuri-hanayama.com/
>

これから、イラストレーターのお知り合いがおすすめして下さった、「スパイラルテープ」を使ってみようと思います。どこまで快適になるでしょうか、楽しみです(^^)

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編集後記(09/06)

●飼い犬ハニー号(別名クニキチ:柴犬雑種)は、ここ数か月で驚くべき早さの老化が進んだ。現在14歳と9か月、中型犬だから人間の年齢で83歳相当とか、今年12月で88歳だという(いい加減な数字だとは思うが)。かなり前からわたしよりずっと年上になっていたのだ。

お互いが犬の散歩で、時々会うおばさまはハニー号のファンで、いつも「かっこいいわね〜」と褒めてくれていたのだが、先日久しぶりに会ったら「どうなさったの〜」と驚いていた。目の下が黒くなってタヌキみたいだし、見るからに痩せて、尻尾も垂れてとぼとぼ歩く姿は情けない。尻の穴まるだしで尻尾をくるりと巻き上げて、エラそうにズンズン歩いていたのが数か月前とは、信じられない思いだ。

4月中旬にかかりつけの犬猫病院に狂犬病予防注射を受けに行ったときは、家からの往復を元気いっぱい歩いて、リッパなウンコもなさったのだった。しかし、一か月後の受診では、往路は自転車の荷台に段ボール箱を載せ、その中に入れて行った。帰りこそ自分で歩いたが、かつてほどの野蛮なくらいの元気さは失っていた。

現在は、時々しつこい咳が出て、食欲もあったりなかったり。散歩も一日三回から二回に減って、ソコソコ歩くのは一回だけだ。彼は5年間、一戸建ての家の庭を走り回っていた。それから後の9年余は、日中はマンションのテラスと庭で暮らし、夜間だけは家の中に入っていた。いまはほとんど家の中にいるが、なるべく頻繁に庭に出して体を動かすよう仕向ける。抱き上げて移動するその出し入れはめんどうだが仕方ない。

だいたい午前中は玄関、昼からはわたしの部屋に入れてやる。わたし机の下が一番のお気に入りで、スキさえあればもぐりこんで寝ている。じっさい、邪魔だし、暑苦しいし、迷惑なんだけど。こんなに犬と密着した生活になるとは思ってもみなかった。

だが、要求するときの声の大きさ鋭さはかつてよりも激しいくらいで、どこにそんな元気があるんだろうと思う。さいきん、ハニー号をゼンちゃんと呼んでいる。ときどきゼンソクのような咳をするからだ。いちおう年上だから、わたしは彼を「ゼンさん」と呼んでいる。あ、デジクリ筆者にもゼンさんいるんですね。失礼してます。(柴田)

●昨日、『大阪880万人訓練』が実施された。朝の11時に大阪府下にいると、訓練版の緊急地震速報メールが一斉に届き、携帯電話が鳴るというもの。マナーモードにしてもダメで、電源を切っておくしかないらしい。他府県の人がたまたま大阪にいる時にも鳴る。この訓練を知ったのは先月で、とてもわくわくしていた。

仕事でばたついている上、火災保険の地震特約の書類提出締め切り日(半月以上前には届いていたのに)だったり、消防点検実施日でもあった。ここ数日、どこかで点検のため警報器が鳴っている。掃除はルンバに任せ、適当にウェーブ(ほこり取り)をする。気になるところが多々出てくるが、開き直ることにした。いま抱えている仕事を早く終わらせたい。

お昼すぎに点検が終わり、仕事の見通しが立ち始め、食事をとろうと立ち上がった時に気がついた。11時に鳴ってない。テレビをつけたら、ちょうどその話。ドコモの人の多くは鳴ったらしい。が、auやソフトバンクは今年の1月からはじめたサービスであること、そのため対応機種が限られていること(ドコモはほぼ全種類らしい)、もちろんiPhoneは対応していないことを伝えていた。楽しみにしていたのにっ。(hammer.mule)

< http://www.unicharm.co.jp/wave/
>  ウェーブ
< http://www.pref.osaka.jp/shobobosai/trainig_top/h24_880.html
>
大阪880万人訓練