[3350] 枯れた技術の水平思考

投稿:  著者:


《思いつきでネタを挟まない》

■まにまにころころ[11]
 枯れた技術の水平思考
 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

■クリエイター手抜きプロジェクト[330]イベント編
 「Mashup Award 8」レポート
 古籏一浩

■講師だって、最初は初心者だもの[番外]
 人間、反省するから成長するものだと信じて
 〜「CSS Nite in KOBE, Vol.1」登壇の顛末〜
 森 和恵

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■まにまにころころ[11]
枯れた技術の水平思考

川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito
< https://bn.dgcr.com/archives/20121015140300.html
>
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こんにちは。先週は祝日でお休みでしたが、あっという間に次の締め切り到来。日が経つのって早いですねぇ。前回は神戸ITフェス直前だったのに、なんか、もう神戸ITフェスが遙か昔のことのように感じます。来月は「KOF2012」だ!

・KOF2012 -- 懇親会の受付も始まりました。
< http://2012.k-of.jp/
>

◎──本の話

神戸ITフェスでは、「本」にフォーカスを当てたセッションがいくつかあり、その中で、関係者を中心に、自分のお薦めする本を紹介するコーナーが。私は当日の朝までお薦めを選べず、展示に間に合わなかったんですけれど。(笑)

本のお薦め、って難しいんですよね〜。自分でも、その瞬間、瞬間で変わるし、人に薦めるとなると、相手によっても変わってくるし。

◎──任天堂のDNAを創造した男

本棚とにらめっこして、悩みに悩んで、とりあえず選んだお薦めの一冊が、「ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男」(角川書店)でした。

クリエイティブに関わっている人はもちろん、そうでない方も含めて、これは読み手を選ばない一冊かなというのが理由。

まあ「読んでみて」以上のことは何も言えないんですが、横井軍平さんは今の任天堂の礎を作られた開発者で、分かりやすいところで言えば「(ファミコンなどの)十字キー」を作った方、「ゲーム&ウオッチ」、そして「ゲームボーイ」を生み出した方と言えば、その凄さの一端は垣間見ていただけるのではないでしょうか。

任天堂を退社し新会社設立の翌年、残念ながら横井さんは、97年に交通事故で他界され、この本は生前のインタビューを元に、本当に伝説となってしまった横井さんの生涯をまとめたもの。伝記と言うよりは、インタビューした著者の回顧録というか、追悼文というか、想いのこもった一冊になっています。

◎──枯れた技術の水平思考

横井さんを知る人にとっては、「枯れた技術の水平思考」という言葉が、最も有名じゃないかなと。「枯れた技術」というのは、廃れたという意味でなく、月日を重ねて練られてきた技術、不具合も除かれ、コスト面も落ち着いた技術、という意味。

「水平思考」は、通常の論理的思考を垂直思考とし、それに対し、発想の幅を広げて、思考をジャンプさせることで、早く答えにたどり着いたり、新しい答えにたどり着きましょう、過程はさておいて本質を押さえましょう、というような問題解決の考え方です。

水平思考や垂直思考については、また、次回かそのうちにネタにするとして、今回は横井さんの話に戻ります。

本の中のエピソードから拾うと、例えば、横井さんが初期に作ったおもちゃに「ラブテスター」というものがあります。これは、要するに、電子工作で使う検流計そのもので、二つの端子をそれぞれ男女(別に同性でもいいですが)が握って、空いてる手を互いに繋いで、愛情度を計りましょうというもの。

もちろん電流の流れ具合を計るだけなので、愛情には何も関係ないんですが、検流計という既存のものに対して、「これで愛情計れるってゆーたら面白いんとちゃう? しかもゲームやゆーことで自然に意中の子と手も繋げるで」とアイデアをくっつけたもの。

元は検流計という枯れきったものなので、新規開発のコストは特にかからず、原価も安くつく。愛情度なんて計れなくても「公然と女の子の手を握る」という目的は達せられるので問題なし。ただ、ラブテスターを持って出かけた上司が、会社に戻って来るなり、「キスして計っても針の振れが変わらないじゃないか!」と怒鳴ったそうですが。(笑)

また「ゲーム&ウオッチ」は、液晶電卓で遊んでいたサラリーマンを見て、それをヒントに持ち運べるゲーム機を開発、そこに「液晶デジタル時計」を少しの実用性として盛り込んだ。

当時、卓上デジタル時計がまだそんなにも普及していなかった時代、大した追加コストをかけずに、ゲームを購入する言い訳を付け足したわけです。時計にゲームが付いてるんだ、ゲームに飽きても時計になるなら無駄じゃない、と。

もうひとつ例をあげると、初代ゲームボーイ。ゲームボーイ開発時点で、既に世にはカラー液晶は存在していたのに、横井さんはあえてモノクロ液晶を採用。

当時のカラー液晶では、バックライトの仕組み上、明るいところで見にくい、消費電力が大きいなど弊害が多い。もちろん、製造コストも高い。加えて、画面がモノクロでもゲームの面白さの本質は損なわれないと横井さんは考え、モノクロ液晶になった。

モノクロで雪だるまを描いても雪だるまは白く見え、モノクロでリンゴを描いてもリンゴは赤く見えると、人のイメージする力に委ねた、というか、イメージする余地を残したんですね。

モノクロ液晶は、横井さんの、任天堂での最後の仕事であるゲームボーイポケット、そして、退職後に立ち上げた会社が開発したワンダースワンにも採用されました。

ゲームボーイの例の延長線上には、横井さんがその後の、高機能追求競争のあまりにジリ貧となっていく家庭用ゲーム機の姿を予見していたという話に繋がっていきます。

ただ結果的には、ゲームボーイでは時代の流れを止めることはできず、任天堂も含めて、高機能化の波に乗らざるを得なくなりましたが、それでも任天堂は「ニンテンドーDS」そして「Wii」で、横井さんの亡くなられた後のことながら、「ヨコイズム」に立ち戻った感じがします。3DSがちょっと心配でしたけど、そこそこ出てるようで何より。

◎──これ!

「ニンテンドーDS」そして「Wii」が出た時、私は「これ! これがゲーム! ゲームの本質に帰ってきた!」と、喜んで言ってました。横井さんのことはその頃は知らず、さっき挙げたエピソードももちろん全く知らなかったのに。

横井軍平伝の中で著者の方も似たこと書いてますが、私も、ゲームの進化について行けなかったクチで。複雑なコマンド入力は、諦めてスルーしつつ、単純なコマンドだけで遊んだりしていましたが、どんどん増えるボタンと、キー操作を駆使しなければ、基本的な遊び方もおぼつかないゲームが次々と登場して、完全に蚊帳の外状態に。

セガサターンの6ボタン+LR+スタート+十字キー程度、ドリームキャストの4つボタン+LR+スタート+アナログスティック+十字キー程度が限界でした。正確にはドリキャスも持てあまし。PSのLR2個ずつとか、アナログスティック2本とか、無理無理。

グラフィックも綺麗すぎて逆に没入できないし、美麗なムービーとか正直、あまり興味ないし。まあ、その辺はソフトによって上手く使ってるか次第、ではありますけれども。

今、多くの人が家庭用ゲーム機でなくスマホアプリで遊んでるのは、その単純さに惹かれてる面も多分にあると思います。



今日、書き始めた時点では、本の名前だけ紹介して、内容はそこそこに、「面白いと思うから読んでみて」くらいで終わるはずだったのに、思わず、こんなに長々と書いてしまいました。それくらい面白い本だということで。

直近で読んだ本は自己啓発系の本だったんで、そっちの話にしようかと、ちょっと迷ったんですが、構成考えてたらちょっとドロっとした生々しい感じになりそうだったんで今回は見送り。疲れた心に刺さりすぎたりして。

その話はその話で面白そうなので、そのうち書こうかなとも思ってますが、危険なネタになりそうだし微妙かなー、とも思ったり。ま、気が向けば。

ということで今回はここまでー。特にオチもなくて申し訳ありませんが、いつものことじゃんって、そろそろ慣れていただければ嬉しいです。(笑)

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan
>
< https://www.facebook.com/caputllc
>

最後にまたセミナーイベントのご案内。

・【大阪】10月20日(土)
まにゼミP6
「制作者も担当者も知っておきたい、結果を出すSEOの基本」
< http://m2.cap-ut.co.jp/event/semi06.html
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あの佐藤尚之さんが講師です!
< http://dcc-net.biz/event/
>

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■クリエイター手抜きプロジェクト[330]イベント編
「Mashup Award 8」レポート

古籏一浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20121015140200.html
>
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10月14日(日)に塩尻インキュベーションプラザ(SIP)で、Mashup Award 8というイベントが開催されました。Mashupというのは、複数のAPIを組み合わせて新たなサービスを提供するものです。

・Mashup Award 8
< http://ma8.mashupaward.jp/
>

・信州MashupCaravan&Meetup with GDG信州
< http://mashupawards.tumblr.com/post/33294660977/10-14-ma8-mashupcaravan-meetup-with
>

今回のポイントは、長野県(信州)の塩尻市というロクに名前も知られていない豊かな田園都市から最新情報を発信しようという試みです。今年はGoogle I/O, CSS Niteなど他のイベントも次々と行われ、塩尻市にとってIT系イベントの当たり年になってます。

・豊かな田園都市 塩尻市
< http://www.city.shiojiri.nagano.jp/
>

当日は午後2時からの開催でしたが、都合により午後4時から出席しました。第一部は「MashupCaravan」で、各社が提供しているAPIの解説が行われました。私は聞いていないのですが、以下の会社が提供しているAPIの説明が行われたようです。ゼンリンとニフティは確認してなくて分かりませんでした。

・インクカートリッジ里帰りプロジェクト「回収拠点取得APIについて」
・PUX株式会社「PUX画像認識API/SDKについて」
・KDDIウェブコミュニケーションズ「電話API "boundio"」
・ヤマレコ「山の地名データ・登山の記録を共有できるヤマレコAPI」
・ゼンリンデータコム
・ニフティサーブ

第一部が終わった後にいったん休憩のあと、第二部が始まりました。ここでは「ご当地セッション」ということで、ご当地キャラの紹介やGDG信州の紹介が行われました。

その後、怪しい球体Nexus Qが出てきました。Nexus QはYouTube、Google Music、Movieの3つしかできないとのこと。Social Streaming Media Playerとスライドには表示されていました。よくわかりませんでした。さらにGANTZではないと解説がありましたが、漫画読んでないので何ともわからず。

・Nexus Q
< http://www.google.com/nexus/#/q
>

・GANTZ
< http://gantz-movie.com/index.html
>

Nexus QはAndroid 4搭載で最初はBluetoothで、12GBの外部ストレージ云々。聞いても入手できるわけではないので遊べない。ということで発表が終わりました。

そうこうしているうちに、次の人(adakoda氏)のセッションが始まりました。どうもライブコーディングを行うようです。これは会場でプログラムを作成していくもので、今回は15分でライブコーディングをするとのことです。自宅で練習するのと実際に会場でやるのでは、かなり入力にかかる時間が違うようです。また、着席せずに起立して入力しているからと言い訳をしていました。

ライブコーディングは難しいみたいで、笑みが消えていくというのを面白くみることができました。また、どんどん口数も減っていきました。まあ、しゃべりながらプログラムを組むというのは、ほとんどありませんから口数が減っても当然と言えば当然です。

ライブコーディングしながら、解説しつつジョークもとばすというのは至難の業......とはいえ、予定よりも2分ほどオーバーで目的のアプリケーションができあがりました。拍手で無事に終了しました。

その後、休憩にならずに即第三部に突入。第三部はアイデア損......じゃなくてアイデアソン。これはA〜Eチームに分かれてアイデアを考えて何か発表することになります。チームごとに発表されたAPIを使うアプリケーションやサービスを考えることになります。

私はEチームに割り当てられました。Eチームはboundio電話APIを使ったものを考えろとのこと。発表を聞いていないので、APIの概要も何も知らないまま放り込まれるという何ともな状態。何案でもかまわないけど、5分以内で発表することになっているようです。発表後にどのチームのアイデアがよいのかを投票して優勝を決めるそうです。

ということで、グループに分かれました。まずは自己紹介。ところがてぶらできてもよいという主催者のアナウンスにより、名刺を持っていない人が続出。仕方ないのでエア名刺で名刺交換をしました。

その後はアイデアを80分間にわたって出しまくるという状態。アイデアがたくさん出過ぎて、残り時間が10分。大急ぎでスケッチブックにまとめました。

発表はC、D、E、A、Bチームの順番に行われました。Cチーム名は「ヤマガエル」。内容はヤマレコの情報を使って10代〜30代のヤマガールを検知するというもの。うちの山には一人もヤマガールが来たことはないけど......。

次はBチーム。名前は「マップアップ5」。サービス名はリアルシリーズ。リアル地図パックマン。好きな地図を選択して遊ぶリアルパックマン。二つ目はリアル地図ゴルフ。三つ目が美人地図、イケメン地図。自分の近くにいる美人、イケメンが地図にマップされるというもの。四つ目が聖地マップ。アニメの聖地巡りをする際に便利なマップで、そこにいかないと入手できない限定グッズ等があるというもの。五つ目が寄り道自転車地図。いつもは通らない道を紹介するサービス。他の道を通ることで新たな発見につながるかも。

次はわがEチーム。名前は「チームイイ!!」。一つ目はパケット使い過ぎお知らせサービス。使いすぎると電話で通知。二つ目は不審者通知。画像認識と組み合わせて警察に通報。三つ目は明るい農村。田んぼや山の管理を行うというもの。四つ目が電車に乗り遅れないようにするサービス。降りる前に通知してくれるので居眠りしても大丈夫。五つ目は一人暮らしのじいさん、ばあさん向けサービス。話し相手がいないので定期的に電話をかけてくれるもの。

次はAチーム。Aチームはパソコンで発表。出てきたのは「アルクマ」。こんなのです。

・アルクマ
< http://nihonichi.nagano-ken.jp/e2564.html
>

チーム名は「アルクマ8」。長野県の観光名所があり、アルクマ君があちこち歩いていて、一緒に写真を撮ると何かもらえるらしい。で、アルクマ君と一緒に撮影すると、アルクマ君のかぶりものが画像合成で表示されるとのこと。

最後はBチーム。名前は「リアル出会い系」。サービス名がリアル出会い系アプリ。人と人、人と食材、人とお店の出会いをサポートするもの。スマートフォンをかざすと、目的の人や物と合致した場合、自動的に音が鳴るという仕組みらしい。何かきっかけを作ることで男女の出会いが多くなり、人口が増え子供も増えて年金も大丈夫だとのこと。

すべての発表が終わり、いよいよ投票となりました。一位はアルクマ8でした。二位がヤマガエルとチームイイ!!。四位がマップ5。五位がリアル出会い。ご当地キャラには勝てないということが分ったMashup Awardでした。

あとは飲んで食べてというお決まりパターン。ということで今回のイベントのあらましは以上でございます。なお、イベント会場にしてこのテキストを書いたので、おかしなところがあっても許してくださいませ。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

山に行ったら、キノコが大量に生えてました。キノコの当たり年かなと思うほどの量。結局、4人で行っても全部採りきることができずに下山。昨年はひとつしか採れなかったのに。

・Nexus 7使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/
>

・jQuery Mobile例文辞典(1.2.0)
< http://www.openspc2.org/reibun/jQuery_Mobile/1.2.0/
>

・HTML5ガイドブック 増補改訂版【10/19発売予定】
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844332937
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・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4774148199
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・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/
>
吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。

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■講師だって、最初は初心者だもの[番外]
人間、反省するから成長するものだと信じて
〜「CSS Nite in KOBE, Vol.1」登壇の顛末〜

森 和恵
< https://bn.dgcr.com/archives/20121015140100.html
>
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こんにちは! 森和恵です。ようやく暑さもおさまり、秋の兆しが見えてきましたね。それなのに......衣替えをする時間が取れず、肌寒い日を送っています。( >_< )

さて今回は、先日登壇してきたセッションについて、顛末をまとめてようと思います。

このような機会を頂くたびに、「オールオーケー! 100点だ!」と思ったためしはないのですが、今回も例にもれず「嗚呼、ああしておけば...、こうしておけば...」の反省点がザックザク(苦笑)。せめて、反省を後悔の形で終わらせないように、形に残しておこうと思います。

●これまでのあらすじ

地元神戸で、初めて開催される「CSS Nite」。登壇したくって、立候補したのはいいものの...一緒に登壇される方々の大御所ぶりにビビりつつ、準備をしました。

今回のテーマは、「プレゼン」らしくすること。どうしても、いつものセミナーの口調が出てしまって、学校の授業みたいになってしまいがちなのを、なんとか克服しようと、資料作り、リハーサルといつもより力を入れて準備しました。(この辺は、以前に書きました↓)

  伝えるのって難しい 〜ただいまセッション準備中〜
  < https://bn.dgcr.com/archives/20120910140100.html
>

●どんなセッションをしたのか? も、少し。

私は、一番最初のセッションでした。準備のため少し早めに会場にはいったのもつかの間、設営準備、リハーサル......一呼吸つく間もなく、すぐ本番でした。

「Web担当者さんに向けて、入門〜初級のWeb系セミナー講師をしています」という自己紹介から始め、続いてWeb系の勉強を進めるための3つのポイントをお話ししました。

・自分に何が必要なのかを見極める...習得目標設定の話
・欲しい情報を日頃から集めるための...情報収集の話
・集めた情報を消化するための...学習の話

  セッション内容には細かく触れませんが、スライドを公開ましたので、そ
  ちらをどうぞ。
  「教えてみてわかった、新しいことを覚えるしくみ」スライド
  < http://www.slideshare.net/r360studio/ss-14720840
>

●終了後すぐの後悔と反省

終わった直後に後悔したことは、三つありました。

ひとつは、「あの...」などのつなぎ言葉が多いこと。二つは、時間には収まったものの、準備していた実習(スライド13・44・56枚目のように、「ではここで、〇〇してみましょう!」という手や口を動かす実践課題を用意していた)が、ほとんどできなかったこと。三つは、時間が足りずに最後にテンパってしまい「ありがとうございました」スライドに切り替えるのを忘れたこと。

なかでも、一番大きい失敗が二つめ。実習で間にクッションが入らなかったので、ずっと一方的に話した状態で40分も進めてしまい、流れの緩急がつけられなかったことが悔やまれました。

「ハァ〜」...と、楽屋でため息をつきながら、ひとしきり後悔し終えた後、ふと、「他の方々は、どうしてあんなにうまいんだろう?」と思いあたり、他の方のセッションをじっくりと観察することにしました。

「お手本がそこにあるなら、研究しないでどうする!」という気持ちです。今回は特に、話し方や運び方に注目して拝聴しました。すると、いろんなことが見えてきました。[当日のメモより抜粋]

◇次に続ける言葉を迷った時は、「何も言わずに止まる(ためる)」(慌てなくてすむし、観客からは「なにか意図があって」ためているように見える。「あの〜」と続けると聞きづらいし、よい印象にはならない)

◇実習の時は、「こちらは黙って、思い切って時間を観客に渡す」「独りで取り組む実習ではなく、まわりとコミュニケーションを取る形式に」(観客の動きが悪いと、どうしても口を挟みたくなるけれどグッと我慢。まわりとの会話が入ると雰囲気が一気に和んで、緊張感が解れる)

◇授業と違ってプレゼンでは「思いつきでネタを挟まない」(笑わすところでさえ、計算された予定調和のほうが美しく決まる)

◇できるだけ「自分は〇〇でした」のように、経験談や実例を大胆に挟む(説明が上滑りにならず、自信にあふれ、奥行きが深くなる)

どれも、知識としては知っていたけれど、自分はまったくできていなかったな...。ズギュンと反省しました。やはり、大御所の方々のセッションは、よいと評価されるだけの理由がありますね。

●まわりの反応は? から、足りなかった部分を反省

そんな感じで大反省だったので、終わってから参加してくれた友達に「ごめんね。うまくできなくて...」と愚痴をこぼしていました。「どうやったら、よかったのかな?(涙)」とアドバイスを求めると、いろんなことを教えてもらえました。感謝!

また、頂いたアンケートは、すみずみまで熟読しました。アンケートは、参加された方のオブラートに包まない生の声。辛辣なご意見を頂くこともしばしばで、読むのはつらいのですが、真摯に受け止めないとならない、気づきの場所です。

日頃から向上意識が高い方からは、「話していることは理解できたけど、特筆する内容がなくてつまらなかった(SNS活用とか、もう知ってることばっかりだったし)」と。「"習得目標"とか"メンター"とか、たまに指してる言葉の意味がわからなかった」や「アドリブでアニメネタとか挟むのはいいけど、きちんと話してくれないから意図がわかりにくかった」などなど。

どのご意見も納得のゆくご指摘ばかり。ごめんなさい...という気持ちで一杯になりました。

もちろん、「わかりやすかった!」「自信をなくしかけてたけど、勉強してみようと思えました!」など、共感して頂けた方々も多くいらっしゃいました。よかったの声を拾うたび、「少しでも伝わってうれしい」と思えたことは、励みにつながりました。本当に、ありがとうございます。

●せめて、リカバーをせねば。

さて。ご意見を頂いて、改良すべき点が見えたのなら、やるしかないですよね。(`・ω・´)キリッ

帰宅後、自分の反省点や、ご意見をまとめたメモ、当日のTwitterのツイート、などなどを見ながら、まずはスライドを改良しました。

「役に立たなかった」というご意見を多く頂いたのですが、それから私が反省したことは、「主旨がきちんと伝わっていなかった」「話す時間の配分を間違えた(「情報をストックする」で、ツールの使い方などのテクニック的な部分の時間を取りすぎたために、そこが主題と勘違いされてしまった。知っている人にとっては、つまんないですよね)」ということでした。

そこで、スライド冒頭(3〜5枚目)を追加し、「なぜ、この題材を取り上げることにしたのか?」という背景を最初に強調しました。つぎに、「情報をストックする」の冒頭に「無理なく続けられる自分にあった方法を使うことが大切」と一枚入れて(15枚目)、この先のテクニック的な話は私が実践している一例なんですよとテクニック的な部分が主題ではないことを強調しました。

また、ご指摘いただいた「わかりにくい言葉」は、説明を加えたり、別の表現で表したりしました。

次に、当日のセッションを録画しました。「あの...」とできるだけ言わないように、主題を誤解されないような時間配分を心がけて。方法論を教えているのではなく、Web系の勉強を日頃どのようにして進めているか、という自分自身の話を伝えるための表現に変えてみました。

録画したものを聞き直し、「ああ、当日のセッションよりは、多少マシだな」と思えたところで、反省会は終了です。「CSS Nite」では、後日にフォローアップメールとして、当日のスライドなどを公開するのですが、そこで改訂版のスライドと再録画した動画を公開しました。後は、少しでもリカバーできていればよいなぁ...と祈るのみです。

●今後の課題

表現の仕方や話の流れのまずかったところは、これであらかたなおせたと思います。次回は、同じ轍を踏まないようにすればよいだけです(ま、頭で解ってても、実践となると難しいのですが)。

ただ今回、決定的に自分に足りないなと感じたのは、人間的な経験の幅です。もう、四十も超えているのに、薄っぺらな自分の人生を突き付けられたようで、それもまたショックなことでした。

次回、このような形式のセッション(技術の勉強系ではなく、啓発系のセッション)をするのであれば、それなりに自分の中に何かが確立していないとダメだなと思いました。しばらくは、これからの自分の人生の有りようを腰を据えて見つめ直し、一本筋の通った何かを得ないといけませんね。

...ということで、今回は終わりです。公開反省会みたいになってしまいましたが、「人のふり見て...」的な感じで読んでいただけると幸いです。

次回は、久しぶりに勉強できるような内容を...と思います。
ではまた!(^θ^)

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編集後記(10/15)

●「立川談志自伝 狂気ありて」を読む(亜紀書房、2012)。この本で叩かれたら怪我しそうなものすごく丈夫なハードカバー。鈴木成一デザイン室の装幀が美しい。巻頭の高座の写真がすばらしい。本文中に写真も多く、上品な組版で読みやすい。「この作品は、2009年8月〜2010年9月に執筆され、ご遺族の校訂を経て刊行の運びとなりました」と奥付の前のページに編集部の告知がある。筆者は2011年11月21日に亡くなった。「立川談志の想い出という名の未練を書き残しておく。能書きは長いがそういうことだ。」と前書きの最後にある。

「本を書く理由は『整理』ともいえる。人間誰しもそうであろうと思うが、当然くる人生の終焉に対する己が身の『整理』、これであろう。」という覚悟で「毎度のことながら、資料も見ずに記憶だけで書いている。早い話が面倒臭いからだ。喋ったほうが楽ではあるが、それでは駄目なのだ。」と、深夜、腰痛に耐えながら思いつくままに原稿用紙の升目を埋めていったようだ。見返しに黒バックで金色でその原稿が印刷されている。

この人の記憶力が尋常ではない。人の名前を思い出せなくなるのが老化を実感する初めだが、談志は多くの芸人の芸名はもちろん本名まで、いつどこで演じていたか、ネタはなにかまで記憶にあるようだ。他人のネタや当時の歌なども容易に再現できるという。芸人ばかりではない。その人脈の広さにも驚く。

だから、出て来る記憶を延々と書き綴っただけの本。理屈っぽくなく、淡々と記述しているが、ここでは異常な記憶以外には芸を見せていない。談志の娘の若い頃の文章が挿入されていて、そっちのほうがうまいくらいだ。最後の章は「エゴの塊のような気狂いが老いた」で、声帯のガンを患い話芸が成立しなくなるさまを描く。本人は言わないが無念であろう。300ページ近いが、2時間もあれば読める。わたしは談志に思い入れはないから、丁寧な作りのわりに内容はスゴイとは言わないが、ファンにはたまらない"最後の"談志本だ。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4750512133/dgcrcom-22/
>
→アマゾンで見る(レビュー2件)

●川合氏の年齢は、きっとアナタが想像しているより若いです(笑)。/古籏さんの話を読むと、塩尻の熱さを感じる。/人前で話すのが苦手な私にとって、森さんは努力家で素晴らしいと思う。私も人前で話せるようになりたいし、でもまずは他のことをと思ってしまったり。逃げてるのかな。

後記で何度も書いていたスポーツジム行かなきゃ、を実現した。仕事の谷間で、今日しかないわと準備。2年は行っていなかったと思う。今月末に切れる招待券を家人に渡し、ついてきてもらうというヘタレぶりを発揮。きっかけがないとなかなか行けない。チェックイン・アウト方法すら忘れてたわ。カウンターでは、久しぶりだという話をし、家人がビジターなので利用説明を一緒に聞く。

以前はバレエに行っていて、ジムの利用はなかった。個人記録用紙は作ったかなぁ、どうだったかなぁと棚を探す。そこからか! もちろん無くて、家人とともに作ってもらう。目標を聞かれたのだが具体的な数字は言えず、「体力をつけたい、やせたい」とだけ書いた。体力が衰えていて、仕事もなかなかはかどらない。あともう少し、詰めをもうちょっと、という手前でしんどくなってやめてしまう。外出も億劫。

1m以上ある、小さな冷蔵庫ぐらいの大きさの測定計に乗る。体脂肪やら筋肉量、水分量やらがパーツごとに出てきて、それを元に説明をしてくれる。体のバランス、基礎代謝、どこの筋肉が衰えているかとか。で、それを元に練習メニューを組み立ててくれた。マシン類を使うのは初めてで、自分の苦手としているところ、得意としているところがわかって良かった。特に脚力、腹筋はあきれるほど衰えてたよ。まわりの人たちはストイックにこなしていて、年配の方でもスタイル良かったな〜。

初回だったのでインストラクターが横についてくれ、細かな指導を入れてもらえたんだけど、次回からはそれはなかなかできないだろうな。膝が中に入るから傷めやすいとか、ひじが脇から離れると効果的な筋トレができないとか、肩甲骨を開いたままでとか、そういうチェックはありがたかった。通って、体力つけて、もう一踏ん張りできるようになりたい。(hammer.mule)