[3516] 「すべて昔のこと」と言えるとき...

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《ポシャる恐怖......》

■映画と夜と音楽と...[596]
 「すべて昔のこと」と言えるとき...
 十河 進

■ところのほんとのところ[100]
 ところとアインシュタインロマン
 所 幸則 Tokoro Yukinori

■エンドユーザー大変記[51]
 世の中は諦めの塊で出来ている
 ジョニー・タカ




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■映画と夜と音楽と...[596]
「すべて昔のこと」と言えるとき...

十河 進
< https://bn.dgcr.com/archives/20130712140300.html
>
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〈ギャングスター/ニキータ/アサシン/レオン/そして友よ、静かに死ね〉

●現在のフレンチ・ノアールではオリヴィエ・マルシャルがお気に入り

斜め後ろからの撮影なのではっきりはしなかったが、「見た顔だな...」とまず思った。初めての登場なのだが、その女優はいきなり男の上で裸身をくねらせている。背筋が通ったきれいな背中だ。お尻も丸出しである。男はシーツに隠れているが、女の露出度は高い。どういう展開になるのかは予想できなかったし、娼婦の役だ。名のある女優ではないのかもしれない、そう思った。

僕はフランス映画を偏愛している。中でもフィルム・ノアール作品は、どんなものであっても一応は見る。劇場で見逃しても、最近はWOWOWが「フランス映画特集」を組んでくれる。昨年は、クロード・シャブロル監督特集を放映してくれた。先日は、未公開フィルム・ノアール作品が何本か流れた。それで火が点いたのか、僕は未公開作品でDVD発売になっているものを探した。

現在のフレンチ・ノアールの監督では、オリヴィエ・マルシャルが僕のお気に入りだ。「あるいは裏切りという名の犬」「やがて復讐という名の雨」「いずれ絶望という名の闇」と、昔に比べれば描写はどぎついが伝統的なフレンチ・ノアールのテイストを楽しませてくれる。僕より7歳若く、アラン・ドロン主演映画で俳優デビューした正統的フランス映画人だ。「裏切りの闇で眠れ」「すべて彼女のために」「唇を閉ざせ」などでは、俳優として活躍している。

そのオリヴィエ・マルシャルの未公開作品がDVDで発売されていた。「ギャングスター」(2002年)という。初監督作品らしい。ネットのレンタルで検索し、見付けたときは嬉しかった。すぐにリクエストしたが届くまでにタイムラグがあり、僕はまったく内容も出演者も確認せずに見始めた。見覚えのない俳優がふたり登場し、会話をする。内容から暗黒街の住人だとわかる。日本で言えばヤクザ、そのふたりのシーンに「ギャングスターズ」とタイトルが出た。

タイトルバックが終わると、主人公らしい男を逮捕するために集まった刑事たちが映る。短時間で6人の刑事のキャラクターを描き分ける。キビキビした描写が心地よい。部屋の中では、前述のシーンが繰り広げられている。男がアップになり「いった方がいい。後で逢えるさ」と言うと、女が「どうなるの?」と訊く。女は美人だが、小じわの目立つ顔だ。倦怠感を漂わせている。娼婦の演技をしているのだろうか。やはり、見覚えのある女優だった。

刑事たちがなだれ込み、男は逮捕される。警察署で男の取り調べが始まる。女が連行されてくる。「彼女を釈放したら話す」と男が言うが、女も別の部屋で尋問される。刑事との会話で、男は逃亡中の犯罪者、女は娼婦だとわかる。しかし、取り調べの間に回想シーンが挟まれ、次第に真相がわかってくる。うまい造りだ。男と女の本当の狙いが明らかになったとき、ふたりは警察署の前で背中合わせに立ち拳銃を構える。拳銃を構えた女の姿に、記憶の中から何かが甦ってくる気がした。

ラストシーンに重なってエンドクレジットが流れ始める。僕は、キャストを見逃さないように目を凝らした。ふたりめに女優の名前が出た。Anne Parillaud......、「ニキータだ!」と叫んだ。アンヌ・パリロー、22年前に僕は一度だけ彼女を見た。ミニドレスにハイヒールで、大型の自動拳銃を撃ちまくる姿が記憶の中から浮かび上がる。「ニキータ」(1990年)から12年分の年を重ねた、憂愁の女殺し屋と僕は再会した。

●疾走するオープニングシーンがリュック・ベッソン作品の刻印

「グレート・ブルー」(1988年)で、リュック・ベッソンという若き監督に注目した。フリーダイビングを題材にした素晴らしい映画だった。主人公はストイックすぎて感情移入できなかったが、ライバルのエンゾを演じたジャン・レノの男らしさと、鼻がツンと上を向いた(若きオードリー・ヘップヴァーンを連想させる)ロザンナ・アークェットのかわいらしさが印象的だった。

「ニキータ」(1990年)は、リュック・ベッソンの鳴り物入りの新作だった。公開のずいぶん前からテレビで紹介され、直前には派手なCMが流れた。体にぴったりしたミニドレス姿の若い女殺し屋が疾走する。爆発する炎に追われ、キッチンの通気口に飛び込むシーンが繰り返し流れた。映画雑誌で、ベッソンとアンヌ・パリローの出逢いが生んだ映画だと書かれていた。ふたりは恋愛関係にあり、後にアンヌ・パリローはリュック・ベッソンの子供を生む。

「ニキータ」のオープニングは、「グラン・プルー」のオープニングシーンをもじっている。夜のパリの濡れた舗道をカメラが流れるように映していく。移動撮影というより、高速で走る車から舗道を見ているようだ。濡れた舗道は光を反射して美しい。「グラン・ブルー」のオープニングシーンは、光を反射している海面の俯瞰撮影だった。スクリーンいっぱいに輝く海面が猛スピードで流れていく。そのスピード感がわくわくさせたものだったが、「ニキータ」も同じだ。

カメラが停止し、アングルが変わると数人の若者たちの脚が映る。彼らはジャンキーで、薬ほしさに薬局を襲う。警官がやってくる。銃撃戦になる。ジャンキーのひとりであるパンク風の少女が拳銃を拾い上げる。目の前に若い警官が転倒している。少女は警官と目を合わす。警官が命乞いをする。少女は無表情のまま、ためらいもなく警官を撃ち殺す。そこで、暗転した。プロローグだけで、リュック・ベッソンの映像センスが抜群なのがわかる。

「ニキータ」から派生したジャン・レノ主演の殺し屋映画「レオン」(1994年)のオープニングシーンも同じだ。こちらは「グラン・ブルー」と同じく空撮で、ニューヨークを俯瞰する。風景が凄い速さで流れていき、最後にカメラがアングルを変えると、そこはマンハッタンである。続いて、リトル・イタリーのイタリア料理店で、店主がレオンに説教している。ここまで繰り返すと、冒頭の移動撮影シーンはリュック・ベッソン作品であることの刻印になる。

「ニキータ」は「殺し屋版マイ・フェア・レディ」と言われた。死刑を宣告されたニキータは別人となって、政府の組織に暗殺者として養成される。訓練するのは、笑わない黒ずくめの中年男(チェッキー・カリョ)である。このキャラクターの存在感が凄い。「ニキータ」をハリウッドがリメイクした「アサシン」(1993年)ではガブリエル・バーンが演じたが、こちらも棄てがたいもののオリジナル版には及ばない。ニキータに女の優雅さを仕込むのは、名女優ジャンヌ・モローだった。

「ニキータ」は訓練シーンがじっくり説得力をもって描かれるから、後の展開が切なくなる。ニキータは訓練終了のお祝いディナーだと教官に誘われ、高級レストランにドレスアップして赴く。渡されたプレゼントを開くと、大型拳銃と指令の文書が入っている。冷酷に警官を射殺した(観客として感情移入できない)女は、もうそこにはいない。高い教育を受け洗練された大人の女になったとき、皮肉にも彼女は人を殺さねばならない。だから、殺伐とした殺人シーンが続くほど、ニキータの悲しみが身に迫ってくる。

●湾岸戦争が始まった頃に「ニキータ」は公開された

1991年、僕は「ニキータ」を池袋の映画館で見た。「ニキータ」が公開されてすぐの1月17日には湾岸戦争が始まった。その日の僕の日記に「ついに湾岸危機が戦争に。今朝、アメリカを中心として多国籍軍がイラクを攻撃。圧倒的に優位に立つアメリカが猛烈に爆撃した」とある。2月9日の土曜日には「昨日で仕事はヤマを越す。本日は久しぶりに仕事をせずに過ごす。木曜日にビクターのNさんに接待されタクシーで帰宅。明日は妻と映画へいく予定」と書いている。

僕は「ニキータ」をカミサンと見にいったのは記憶していたが、なぜ、ふたりでいったかと記憶を探ると、招待券を二枚もらったからだったと思い出した。当時、僕はビデオ雑誌の編集長で、ビクターや松下電器やソニーの広報担当者と付き合いがあった。「ニキータ」は、VHS方式のビデオで飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本ビクター(JVC)が出資している。だから、ビクターのNさんから僕は招待券をもらったのだ。

当時、ビクターはソフト方面の事業に手を出そうとしていた。ビデオデッキ、ビデオカメラのハード面はVHSで制覇し、後にソニーがハリウッドに進出したようにソフト面に進出しようとしていたのだ。そのひとつが映画への出資である。「ニキータ」は、そのハシリだった。同じ頃、ビクター音楽産業は「ニューフリックス」という映画雑誌を創刊した。編集スタッフの中心になったのは、元「キネマ旬報」の編集者たちだった。

創刊号の発行は「1990年6月22日」になっているから、5月くらいに書店に並んだのだろうか。隔月での発行だった。創刊号の奥付を見ると、編集長のSさんとは直接の面識はなかったが、副編集長のMさんとは電話で話をしたことがあった。アドバイザーなのだろう、映画評論家の山田宏一さんが名前を連ねている。そして、アートディレクターには高崎勝也さんの名がある。「ニューフリックス」は、まるで女性誌のような美しいデザインでスタートした。

当時、僕は「ビバ・ビデオ」というビデオ雑誌の編集長になったばかりだった。僕は金をふんだんに使えるのなら「エスクァイア」のようなクオリティ・マガジンを作りたかった。今から思えば青臭い編集者だったが、僕の理想の雑誌が「エスクァイア」だった。そんなときに「ニューフリックス」が創刊された。それは、ビデオ時代ならではの映画雑誌だった。表紙は毎号、ハリウッド全盛時の女優たちのモノトーンのポートレートで、デザインが素晴らしかった。

一流のアートディレクターが参加しなければできないエディトリアル・デザインの「ニューフリックス」は、僕が思い描いたビジュアル誌の理想型のように見えた。だから、創刊から2年間買い続け、今も大切に書棚に並べている。「ニキータ」の記事が載ったのは、創刊の翌年の2月号だった。特集は「1991年のアメリカ映画徹底ガイド」だ。表紙はブルートーンのヴィヴィアン・リー。輝くように見えるのは、銀を使っているからではないか。贅沢な印刷だ。

あれから22年の月日が流れた。今は、もうブルーレイの時代である。日本の家電メーカーもずいぶん変化した。経営危機に陥り韓国メーカーの資本下になったり、膨大な赤字を計上して吸収合併されたり、あの頃、こんな時代がくると誰が予想しただろうか。栄枯盛衰...といった言葉がよぎる。まさに「治乱興亡...夢に似て、世は一局の碁なりけり」である。

自分自身のことを振り返ると、1990年の秋から1991年にかけては激動の年だった。慣れたカメラ雑誌編集部から、何もわからないビデオ雑誌編集部に異動した変化の年だった。おまけにすぐに編集長になり、鬱のスタッフや新人部員を抱えた。そんなとき、大手出版社の競合誌の統括編集長からヘッドハントの話があり、断ってもなかなか諦めてくれなかった。それでも、20年以上の時間が流れてしまえば、他の記憶と同じになる。すべて「昔のこと」である。

●「ニキータ」で有名になった俳優の21年後の姿

「ニキータ」はアンヌ・パリローを世界的に有名にしたが、冷徹にニキータをきたえ暗殺の指令を与えるボブ役を演じたチェッキー・カリョの存在も観客の記憶に刻み込まれた。その後、ハリウッドに呼ばれたりしたようだが、僕は「ニキータ」以外の出演作の記憶がほとんどない。ところが、昨年、オリヴィエ・マルシャル監督の久しぶりの公開作「そして友よ、静かに死ね」(2011年)を見ていると、冒頭、年を重ねたチェッキー・カリョが登場した。

渋い初老の男がホテルの屋上に上ってくる。上半身は裸だ。もう年だが、鍛えた身体である。彼は、幼い頃からの人生を回想する。そして、自分が送ってきた人生の結果、現在、直面している葛藤を見据える。迷い、決断する。彼は海を見下ろしながら、「誰もが望む人生とは? 家を持ち家族に囲まれ、楽しく心穏やかに暮らす。信頼できる友人も必要だ。俺は幸運にもすべてを手に入れた。余計なものまで...」とひとりごちる。

男はプールのある大きな屋敷に住み、リヨンで悠々自適の老後を送る元ギャングである。足を洗って20数年、孫の洗礼式を終え、庭で大勢の知人や親戚に囲まれてパーティを開いているとき、10数年ぶりに故郷に帰ってきた昔の友セルジュ(チェッキー・カリョ)が逮捕されたことを聞く。主人公エドモン(通称モモン)を演じるジェラール・ランヴァンが渋い。この映画のとき、実年齢で61歳。こんな男になりたいと僕は思った。

男は、ロマ人(ジプシー)として子どもの頃から差別されてきた。彼をかばってくれたのがセルジュだ。以来、親友になる。ふたりは悪ふざけでサクランボを盗み、一緒に投獄される。やがてギャングの仲間になり、抗争の後、独立して自分たちのギャング団を作り、銀行や現金輸送車を襲い「リヨンのギャングたち」として有名になる。だが、密告されて警官隊に囲まれ、懲役を勤めた後に足を洗ったのだ。

しかし、セルジュは麻薬密売の世界に飛び込み、警察から追われていた。また、麻薬組織のボスを裏切ったことから、闇社会からも命を狙われている。そんなとき、帰郷し逮捕される。昔の仲間たちが「助けよう」と集まってくる。刑務所に移送されれば、セルジュは間違いなく殺されると彼らは言う。エドモンは「もう年だ。それに違法なことはしないと妻に約束した」と答える。しかし、彼に友を見棄てることはできない。

一方、逮捕されたセルジュは何も喋らず、「その年で懲役になれば、老衰で死ぬぞ」と刑事に揶揄されても表情を変えない。チェッキー・カリョが、いい味を出す。「ニキータ」から21年後である。老けた。白い髪を短く刈り上げ、こけた頬に白く短い髭を生やしている。しかし、濃い色のランニングシャツから出ている両腕には衰えはない。何10年も裏社会で生きてきた男の匂いがする。

結局、エドモンは若いギャングたちに依頼してセルジュを逃亡させる。だが、若い奴らの荒っぽいやり方が気にくわない。若いギャングたちのひとりはセルジュの娘の夫で、妻に暴力をふるうろくでなしである。助け出されたセルジュは、無表情にその男の眉間を撃ち抜く。「娘に何て言う?」と訊くエドモンに、「悩みがなくなったと言えばいい」とセルジュがクールに答える。

僕が「フィルム・ノアールの神」とあがめるジャン=ピエール・メルヴィル監督は「人生は三つの要素でできている。愛と友情と裏切りだ」と言った。それは、すべてのフィルム・ノアールのテーマである。「そして友よ、静かに死ね」も例外ではない。いや、メルヴィル作品以上にそのことを深化させている。エドモンの葛藤、迷い、決断...、そのひとつひとつが長く生きてきた僕の心に響いてくる。そして、こう語りかけるのだ。

──いくつになっても、現在を生きている限り、「すべて昔のこと」にはならないのだ......

【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com < http://twitter.com/sogo1951
>

梅雨明けの週末。このところ、まともに5日間の勤めを果たしていない。人間、年をとることは、自分で経験しないとわからないのか。目が見えにくくなり、身体の動きが衰える。いつの間にか、ゆっくり歩いている自分に気付く。イヤでも早朝から目が覚める。フルタイムで働くのが辛くなる...。

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「楽天電子書籍(コボ版)」などで出ています/以下はPC版
< http://forkn.jp/book/3701/
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< http://forkn.jp/book/3702/
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■ところのほんとのところ[100]
ところとアインシュタインロマン

所 幸則 Tokoro Yukinori
< https://bn.dgcr.com/archives/20130712140200.html
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さて、晴れた日の森では何枚も良い作品が撮れたという実感を掴み、次は雨の森だなあと思いを馳せる[ところ]でした。

うどん県高松に帰るために、雑誌を数冊買い込んで新幹線品川駅から乗ったのはいいけれど、名古屋あたりで全部読み終わって暇になった。窓から外を眺めていると、当たり前のことに気がつきました。

線路際に立つ柱のようなものは、なにがなんだかわからない。近くにある建物なんかもよく形状を把握できない。ある程度離れたところの建物は、だいたい認識したかと思うと流れて消えて行く。もっと向こうの山とか島はしばらくじっとしている。

極端に速いスピードで動く物を見るとき、近くの人にとっては影にしか見えない。もっと早ければなにも見えない。しかし遥かアンドロメダ星雲から眺めると、ほとんど静止しているように見えるかも知れない。

つまり時間の経過が運動のことであるから、感知できない物は運動していず、時間も止まって見えるかも知れない。それはずっとずっと考え続けると、アインシュタインロマンなのかもなあと思う[ところ]でした。

とりあえず、京都辺りから継続してシャッターを切り始めた。なかなか思うようには撮れなかったが、新大阪あたりですごく不思議な感覚の写真が撮れた気がしました。

考えても見れば、新しい[ところ]の原点は、これだった。目の前を通り過ぎる人、遠くに見える渋谷西武や渋谷駅。その感覚を表現したくて考えたのが「Shibuya One second」でした。

[ところ]は子供の頃からアインシュタインにとらわれているのかもなあと思いつつ、高松に着きました。

そしてまた、梅雨の東京にやって来て森を撮っている。アナログの時はあまり気にしなかった雨も、デジタルカメラだとやはり弱点が見え始めた。小雨でも微妙にエラーが起きるのだ。予備も含め3台持って行っていたからなんとかなったかなと思います。

さらに次の日は雨上がりの森に向かう[ところ]でした。かなり満足のいくところまで撮れたと思います。今回は森を撮るプロジェクトのための撮影でしたが、いい作品がどんどんできたなら、[ところ]は個展をするつもりです。

明日から現像作業を始めます。Macintoshは最新型だし、HDDもThunderbolt対応だし、現時点では最高の環境で仕上げに入れるわけです。といいながらも、新たに高松の撮影も始めています。

ところで、TJ所塾特別写真講座では、熱心に毎回通ってくる二人がとくに上達が早くビックリしているのだが、次回も驚かせてくれるのだろうか。やっぱり執着心だよね。詳しくはこちらに問い合わせてね。次回は7月28日です。
< http://miyamasuzakastudio.net/tj/
>

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/
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■エンドユーザー大変記[51]
世の中は諦めの塊で出来ている

ジョニー・タカ
< https://bn.dgcr.com/archives/20130712140100.html
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この稿のネタが思いつかない時には、ネットニュースサイトが定期発信している、その日のニュースをまとめたメールに目を通すようにしている。

その中でおや、と思ったのがこれ。

◆サムスン、初の「Tizen」搭載スマートフォンのリリースを延期か[Cnet JAPAN]
< http://japan.cnet.com/news/service/35034298/
>

どうやら、戦わずして引いてしまうらしい。このニュースの文面でも

「しかし、誕生したばかりの同OSはまだ、「BlackBerry 10」や「Windows Phone」といった同じターゲットに向けて競合する他の後進OSにかなりの遅れをとることになる。」(引用・原文ママ)

とあるように、スマホOSではFirefoxOSと並び、最後発になってしまう。しかし、BlackBerryはユーザーを限定するため、シェアが広がらないのは致し方ないが、

◆(参考)特性がわかった上で使うと凄くいい端末なんだけどなぁ... BlackBerryが日本だけでなく世界で苦戦している現状について[GIZMODO JAPAN]
< http://www.gizmodo.jp/2012/07/blackberry_isnt_dead.html
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しかし、悪い噂を打ち消すかのごとく話で、

◆Tizenは死んでない! Intelが瀕死説を否定[GIZMODO JAPAN]
< http://www.gizmodo.jp/2013/07/tizenintel.html
>

結局、「続けるのか? やめるのか?」の水掛けになってしまう様相と化している。開発前の計画段階でポシャるならまだ分かるし、開発が始まってからすぐにポシャるんであれば予算は降りてもダメージは軽微になる。

しかし、ある程度開発が進行していて、プロトタイプが出始めた段階でポシャるなら相当のダメージになる。

◆サムスンとIntel、「Tizen」アプリ開発コンテスト開催--賞金総額400万ドル[Cnet JAPAN]
< http://japan.cnet.com/news/service/35034438/
>

400万ドル...日本円でおよそ4億円である。飛びつきたくはなるだろうが...。AndroidなりiOSでひとつ作ったら仕様だけ変えればいい...という簡単な問題ではなく、プラットフォームが増えれば端末を購入あるいはレンタルする費用も、かかる人材も当然増えるわけで、ひとりの人間が複数以上のプラットフォームを担当したらパンクするのは当然である。

◆Android用アプリ開発が難しい原因が機種数の多さによる断片化であることがよくわかる図[GIGAZINE]
< http://gigazine.net/news/20120530-android-fragmentation-visualized/
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しかしその中で、FirefoxOSが虎視眈々と準備を始めている。

◆「Firefox OS」搭載スマートフォンが一般への販売スタート、まずはスペインから[GIGAZINE]
< http://gigazine.net/news/20130710-firefox-os-smartphone-zte-open/
>

届ける層が低所得帯中心、ということなのでまずはローエンドから様子をうかがうのだろう。シェア云々という話ではなく、まずは出してみて様子見をするのだと思う。

「ポシャる恐怖」でちょうどいい事例がある。

◆牧ノブユキの「ワークアラウンド」:とあるiPhoneアクセサリが開発中止に追い込まれた事情[ITmedia PC USER]
< http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1305/17/news047.html
>

この場合、アップルの度量によって翻弄された不幸な例である。つまり"先方の都合"というよく飛び交う言葉で、誰もが一度は経験があるかもしれない。

例えば「上に通らなかった」「予定してたけど不況だから」「担当社員(あるいは役員)がいなくなった」...etc。
言う方は簡単だが言われた方はたまらないわけである。

その恐怖とどう向き合わなければいけないのか、プロジェクトメンバー全員の器量も問われる。スパっと切り替えて新規と向き合うか、それとも諦めのもやもやを抱えたまま別のプロジェクトに移行するのか、あるいはリスク覚悟で独立も視野に入れるか......。

これからの企業が抱える課題はそういう胆力であると思うのだが、いかがであろうか。

【ジョニー・タカ】johnnytaka32(a)gmail.com

1976年、横浜・関内で生まれ、上州と越後の風を受けて育ち、来世でもFUNKを踊り続けるフリーランサー。ヴァーチャル・キャラクターに曲を付けて選曲を展開する"コンピレーション"を1998年から行っている(といっても勝手にやってるだけです。それを続けて15年目)。
< http://music.ap.teacup.com/cafedejohnny/
>
ツイッター < http://www.twitter.com/johnnytaka1962/
>
tumblr < http://johnnytaka.tumblr.com/
>

○参議院選挙でしか見られない光景は、ポスター掲示で貼る優先順位(スピードとも言う)が区によって異なること。私の住んでる区は県道を境に区が異なるため、目と鼻の先に掲示板があるものの、こっちの区ではA党とB党、向こうの区ではC党とD党というふうに、貼る優先順位で支持基盤が強い政党が分かりやすいというもの。

というわけで当日の開票後は池上さんの特番を見る。

・TXN選挙SP「池上彰の参院選ライブ」:テレビ東京
< http://www.tv-tokyo.co.jp/ikegami_senkyo13/
>

○しかし暑さが半端ではない...去年より強烈じゃないか? 結局いつの間にか梅雨も明けてるし、異常にメリハリがききすぎている。


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編集後記(07/12)


●隔週土曜日夕刊に小学生(中学受験生)のための算数教室のページがある。かつて何度か挑戦したが、ことごく敗退してきた。算数っていつのまにかこんなにむずかしくなっていたのかと嘆息する。ここ数回続いているのは文章題で、食塩水の濃度がテーマである。算数の問題の難易度は、解く側の知識、経験、能力、制限時間などの要素に左右されるが、決定的のは経験だと先生はいう。解答に要する目標時間も設定されていて、類型問を解いたことがある人は5分、ない人は15分である。15分奮闘したが手も足も出ない。

解くヒントとして、意味を考えよ、面積図を使え、天びん図を使え、とあるがそんな図は初めて聞く。算数に盛んに使われる面積図だが、わたしの記憶では小学生のころ習っていない。また大学4年のとき、小学校の産休代用教員として4年生を受け持ったが、算数はすらすら教えられたから、その頃もこの教育法はなかったと思う。ともかく、小学校算数がわからない。孫娘が5年生なので戦々恐々だったが、学習塾に行くことになりホッとした。

先週金曜日のデジクリ。会社員であり、セーラー服おじさんであり、数学者であるGrowHairさんの「数学を試食してみることは可能か」という難解なテキストの中に、数学専攻であるからと飲み屋のワリカン暗算を押し付けられ「やってやれないことはない」と書いていたので、「目をつぶっていても可能」にしたほうが正しいのではないですかと聞いてみた。

「ううう、そこですってばー。誤解誤解。数学の本に数字なんてめったに出てきませんからー。計算がデキることと、数学になじんでることって全然別物なんですー。私、計算はふつうの人よりも遥かに遥かに苦手ですからー。子供のころ、そろばん塾に入れられて、いつまで経っても級が上がってかない落ちこぼれで、みんなからも低くみられてていまだにトラウマになってますからー」

とのこと。おまけとして、数学者がいかに計算ができないか、って笑い話をしてくれた。「数学者には3つのタイプがある。数が数えられるタイプと、数えられないタイプだ」。それじゃ、2つじゃないのか? 「だーかーらー、数えられない側の数学者が自分で言ってるってオチですってばー」。......ちっとも笑えない。(柴田)


●続き。と、友人から「熱中症?」と返事あり。えっ? これ風邪じゃないの? なるほど汗は出なかったし、最初は喉も乾かなかった。トイレも行っていない。仕事と打ち合わせのことで頭一杯だったよ。エアコンのきいた寝室で水分補給しながら寝たら、翌朝はスッキリ。これなら大丈夫だろうと外出。

こういう時の友人は頼りになる。直射日光の当たるところには行かず、移動は涼しい方法、地下通路だったり。定期的に食事とおやつと水分を摂取。無理せず休憩を多くとる。暑い時に熱いものを食べるのは昔の話と、別の友人が提案してくれたのは冷製パスタ。栄養、栄養とばかり、とろろと卵、納豆になめたけ、オクラにかつおぶし、夏野菜の入ったパスタを注文したざます。

エアコンつけたらだるくなるって思わないようにした。体感温度を信じず、計測温度や予測温度が高い時には冷たい飲み物を飲むようにした。冷製パスタのおかげか、翌朝はスッキリした目覚めで、ジョギングまでできたよ。室内でも危険です。皆様もお気をつけください〜。(hammer.mule)

< http://ja.wikipedia.org/wiki/熱中症
>
27度以上では室内外の冷却や、直接的な体内や体表面の冷却により体感温度を下げ、体内の水分・塩分が失われないような環境を作ることが一番重要な予防法となる。
< http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120816/dms1208160715003-n1.htm
>
かくれ脱水を疑うポイント。爪を押したあと、色が白色からピンク色に戻るまで3秒以上かかる
< http://www.kakuredassui.jp/whatis3
>
脱水症の重症度は体重でもわかります。