[3610] ニューヨーク行き3つの目

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《中年です。中年も人間です。》

■ショート・ストーリーのKUNI[148]
 ひとり暮らし
 ヤマシタクニコ

■ローマでMANGA[70]
 キャラクターをめぐる攻防
 midori

■ところのほんとのところ[105]
 ニューヨーク行き3つの目的
 所 幸則 Tokoro Yukinori

■どうしたらできるかな?[step:13]
 目標が出来た!
 平山遵子


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■ショート・ストーリーのKUNI[148]
ひとり暮らし

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20131219140400.html
>
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あるところに外山さんという男の人がひとりで暮らしておりました。愛想をつかした女房に逃げられてはや8年。はじめこそめそめそしくしくしておりましたが最近ではすっかりひとり暮らしを満喫しておるようなあんばいでございます。しかし、アパートの大家さんなどは心配して時折声をかけてくれたりもします。

「外山さん。あんた、もともとフリーのデザイナーで、自宅でひとりで仕事してはるやろ」
「ええ、そうです」
「ほな、いまは文字通りのひとりで話し相手もいてへんと思うけど、さびしないか」
「そんなことありません」
「ほんまかいな。さびしいあまりにひとりで二人羽織したりしてへんか」
「どないやったらできるんですか」
「いや、やってないんやったらええんやけどな」

てな調子で、今日もひとりで、わずかばかりの仕事をだらだらとやる合間に買い物に行って食料を仕入れ、帰ってまいりました外山さん。

「ただいま〜」
だれもいない部屋に向かって声をかけながら靴を脱ぎ、あがります。

「はー、スーパーえらい混んどった。ほんまにおばはんらは元気や。元気なんはええけど、揚げたてコロッケのコーナーでコロッケすれすれに手をかざしてぬくいかぬくないかチェックするのはやめてほしいわほんま」

歩くと築40年のぼろアパートの床の一部がきゅう、きゅうっと鳴ります。
「そうか、おまえもわかってくれてんねんなあ」

流しでは何回パッキンを取り替えても水が完全にとまらんようになった蛇口からぽちょぴちょ、ぴちょりんこと水がしたたります。
「おまえも同意見か。そやろ。あと、野菜売り場でいきなり『にいちゃん、これどないして料理するん?』と聞くおばはんもやめてほしいわ。おれエリンギとかパプリカの専門家ちゃうし」

靴下の替えを出そうとたんすのひきだしを引くといびつになったひきだしがごごご、ごっとんごっとんごとごっとんとまた音を立てます。
「そやろそやろ。たんすのおまえもそう思うわな」

なんと、外山さん、ひとり暮らしを長年続けているうちに家の中のいろんなものの言語を解するようになったのでございます。えらいもんですね。そもそも自宅でフリーのデザイナーをやってるのは、人間づきあいがあまりうまくないからということもあるんでございますが、人間、ある能力が欠落してると別の能力がそれを補うようにできてるといいます。

つまり人間との意思疎通ができないひとは「もの」との意思疎通ができるのかもしれません。ちなみにさっきの床の「きゅう、きゅうっ」は「めっちゃ同感や」、蛇口の「ぽちょぴちょ、ぴちょりんこ」は「わしも前からそう思てた」、たんすのひきだしの「ごごご、ごっとんごっとんごとごっとん」は「ほっとけほっとけ。おばはんにかもてもろくなことない」を意味するのだそうです。えらいもんですね。

外山さんは買うてきた焼き鳥をさかなにビールを飲んだりします。
「あー、うまい。焼き鳥うまいなー。おまえも食えへんか」

話しかけられた冷蔵庫はぐるぐる、ごう、ごう、ぐいーんと音を立てます。外山さんに言わせると「食べたいのは山々やけど冷蔵庫が焼き鳥食べるゆうのもあれですよって、遠慮さしてもらいまっさ」と言うてるのやそうです。
「おまえも遠慮深いな」

ぐるぐる、ぐいーん。
「はあ?それにどっちか言うと私はタレより塩派?ああ、そうかいな」

夕刊を広げるといろんなニュースが紙面をにぎわせております。
「ふうん。強行採決か。感心せんなあ」

椅子の背中にもたれると古くなった椅子がきこきこ、き、き、きと音を立てます。
「ほー。いまの政権も長くはないでしょうてか。椅子のくせに鋭い分析やないか」

じーこ、じーこ、と半分黒くなった天井の蛍光灯も横から口をはさみます。外山さんによると「近々閣僚の失言問題が相次ぎ支持率一気に降下も」と言うてるのやそうです。蛍光灯もああみえて政局を読み取りつつ未来の予言までしているのだそうでございます。えらいもんですね。

そんなわけで、家のものたちと水入らずでそれなりに楽しい日々を送っておりまして、特に不自由を感じていなかった外山さんですが、ある日大家さんがやってきて
「あんたにぴったりの人がいてるんやけどな」

「え、ひょっとして縁談ですか、上戸彩と多部未華子をあわせて2で割ったようなひとですか」
「前半は合うてるな」
「後半が大事なんですけど」
「この人なんやけど」

大家さんが見せてくれた写真に写っていたのは、上戸彩と多部未華子をあわせて2で割ったものに半径の二乗をかけてひと晩寝かせ、原型をとどめなくなったものに小麦粉をまぶしてこんがり焼いたような健康的な女性でございました。

「ほー」
「名前は内村由紀子さんという。とにかく明日ここへ来ることになってるさかい、部屋かたづけて用意しといて」
「はあ」

えらいことになったもんです。このむさくるしい、古アパートの、8年間やもめ暮らしのこの家に。外山さん、大急ぎで部屋をかたづけ、よけいなものはとりあえず押し入れに押し込みましたが、それだけではなく気がかりなことが。

「えーっと。そういうわけやよって、君ら明日はちょっと静かにしといてもらえるかな。その、はずかしいから、見て見ぬふりをしてもらえたら助かるんやけど……」

きゅうきゅう、ぽとぽとぽちりんこ、じーこじーこ、ぐる、ぐる、ぐい〜〜〜〜〜ん、きこきこきーきー、といっせいににぎやかな音がしました。たぶん、了解したということなんでしょうな。

当日。

「えー、あの、その、由紀子さん。おおおおお茶でもいかがですか」
「まあ、お茶を。ええ、いただきますわ」
「そそそ、そうですか。では紅茶をいれさせていただきます」
「あ、私が」
「いえいえ、ごゆっくりしてください。私がこここ紅茶をばいれさせていただきます」

ばりばりに緊張した外山さんがキッチンに立ち、茶びんに水を入れて火にかけますと、これも古くなったこんろの火がぶおっ、ぶおっ、ぼぼぼぼ、ぼぼぼんぼぼんぼん、と音を立てます。

「どないや〜、えらい緊張してるやないか。ふひひひ」と言うたわけでして、思わず外山さんは「やかましわっ!」

するとたちまち熱をおびた茶びんがちりちりちん、ちりちりちんつつとてとてちん…これは「緊張してるのは口では上品なこと言うて腹のなかではやらしいこと考えてるからやろ〜〜〜〜〜」にあたるそうで、またしても外山さんは

「ややや、やかましわっ、ぺこぺこのおんぼろ茶びんのくせして、こ、今度の金属ゴミの日に出してまうど!」

冷蔵庫にアップルパイを用意してあったのですが、食べやすいようにほんのちょっと、レンジであっためます。スイッチを入れるとふつうはぶーん、と鳴るところ、これも10数年たっている古参レンジ。最近はどこに笛が仕込んであるのかと思うような妙なる響きを奏でます。ぴ〜〜〜ぴ〜〜ひゃらり〜〜ぴろぴろぴ〜〜〜ぴ〜こぴ〜こ。

「し、しばいたろか!」
言うのと同時に外山さんは果敢にも鋼鉄製のレンジをしばいたものですから、「あたたたたた! 痛い痛い痛い!!!」。はずみで椅子をひっくり返す、振動で棚のボウルが落ちてくる、それが命中して鍋がはねる。大騒ぎでございます。そらレンジに「うれしいなうれしいな〜今日は楽しいお見合いだ〜。お紅茶にアップルパイ、そのあと何すんねん〜ぴ〜〜〜ひょろり〜」とひやかされたら黙ってはおれんというものです。

さて、そんなことがあったものの、何と縁談はとんとん拍子で進みまして無事結婚までこぎつけました。えらいもんですね。世の中どうなるかわからんといいますか、この世界は謎に満ちておりますな。

大家さんがやってきます。
「ああ、由紀子さん、どないや。外山くんと仲良うしてるか」
「大家さん、どうもお世話になりまして。ええ、やさしいし、私を大事にしてくれるし、申し分ありません。すごく幸せです」
「そうかそうか。それやったらわしも世話のしがいがあったというもんや」

「ただ……」
「ただ?」

「夜中とか、朝早くとか私が寝てるときにだれかとしゃべってるんです。だれもいてないはずやのに。それもきーこ、きこ、ぽとぽとぽっとん、ぴちょりんこ、きゅうきゅうきゅいーん、ぐいんぐいん、ごとごととか、人間の言葉と思えないような言葉を駆使して……」

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
< http://midtan.net/
>
< http://koo-yamashita.main.jp/wp/
>

いわゆる喪中欠礼はがきを出す立場になり、実際に出したのだが、少し悩んだ。私の友人は実のお母さんが亡くなったとき、「みんなの年賀状がほしかったので」喪中欠礼はがきは出さず、寒中見舞いでそのことをさりげなく知らせた。本来喪中欠礼しても年賀状を拒否するわけではないが、遠慮して出さない人がほとんどだもんな。ネットで文例を調べてみたら「…なお皆様からの年賀状は楽しみにしております」とつけ加えるタイプもあったが、これって柔軟なのかとらわれているのか、考えたらよくわからん話である(笑)


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■ローマでMANGA[70]
キャラクターをめぐる攻防

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20131219140300.html
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講談社のモーニング編集部が日本人以外の作家を起用して、描き下ろしを作ってもらって掲載するという、前代未聞の企画を進行した時に、イタリア人作家と編集部の仲介をするという嬉し楽し仕事をしていた時の記録の意味を込めて書いているシリーズです。今は、「幸運が服を着て歩いている」楽天的なヨーリとの関わりを書いてます。

●翻訳調で助けてくれる編集者

今回の編集部とヨーリとのやりとりファックスのスキャンは、1993年6月から8月まで。6月の第一報は、3月から顔を出し始めた「不思議な世界旅行」準担当の木原さんからのファックスだ。大雑把なヨーリの担当にふさわしく、温和な人柄の方だ。

しょっちゅう手書きでファックスを送ってきて、「遅くて済みません」が何度も出てくる。6月第一報も、第3話のネームの返事が遅くなって済みません、の連絡だった。もちろん、のんびりしてて遅くなるわけではなくて、他にも担当している作家さんがいるからなのは、言うまでもない。

私への連絡は普通の日本語だけれど、ヨーリへの通信は、イタリアとフランス担当のボス、堤さんの教えのおかげで、いかにも翻訳調の書き方をしてくれる。例えば、6月の次の送信にこんな文が見える。

「あなたがこの『不思議な世界旅行』の制作に熱意をもって取り組んでいることを、改めて知ることができ、大変嬉しく思いました」「私はこのラフとネームを受け入れます」「私は、あなたがこの第3話の原稿を完成に向けて薦めてくださることを希望します」

なるべく主語と述語をいれて短いセンテンスで、あいまいな表現を回避している。このおかげで、ほぼ直訳でいいので、翻訳時間を大いに短縮することができた。

●まったく毛色の違う作品を提案

7月はファックスの感熱紙ではなくて、オリジナルプリントアウトに担当編集者、堤さんの似顔印が朱肉の赤も生々しく押されているA4のコピー用紙で始まる。日付は七夕。私が東京に赴いて、直接手渡されたからだ。

生まれた子供を実家に見せに、旦那と三人で里帰りをしたのだった。子供は5か月。離乳食を少しづつ始め、歯が生え始めて歯茎がイジイジしていた頃だ。飛行器の中で赤ちゃん用のボックスの中で、歯固めや自分の足をガジガジしてよだれでぐじゃぐじゃにしていたのを思い出した。

連絡内容は、ヨーリが新しい作品の提案をして、それを受け入れるということだった。イゴルトがマフィアをテーマにした大河を制作しながら、カラー作品の全く毛色の違う「ユーリ」を提案したのと同じように、イゴルトのお友達のヨーリもまったく毛色の違う作品を提案してきたわけ。

私がほそぼそとエッセイMANGAを掲載してもらっていた時、たったの2ページか4ページだったのにヒィヒィ言っていた。なのに、この御仁達は長編を描きながら短編連載を描くと言うのだ。プロ根性というのだろうか。

もちろん定収入があるわけではないから、できるときになるべく多くの原稿料を発生させようとするのは正しい姿だけど、それにしてもよく頭の切り替えが出きて、アイデアを次々と出していけるものだと感心した。

●戦うヨーリ

新しい提案は「ミヌス」。「ミヌス」はキャラの名前だ。製作中の「不思議な世界旅行」と同様、過去にイタリアで何回か掲載したもの。セリフはほとんどなく、鮮やかな色が支配する目に楽しい、シンプルな読み切り短編だ。イタリア版を翻訳するのではなく、キャラはそのままにして、日本向けに新しく作る。

国際版権部とも話し合って、まず、週刊誌に掲載し、のちに絵本として出版するという提案が編集部からなされた。ただし、全面的な受け入れではなく、主人公の造形について待ったがかけられた。

以下のURLで画像をご覧ください。
< http://bit.ly/1c0kWgV
>
画像は編集者がカラーコピーを使って、週刊誌掲載状態をシュミレーションしたもの。

ご覧のようにミヌスはとても単純な造形をしている。編集者はその特徴をよしとしなかった。編集者の朱印がついた手紙では、「強いキャラクター性を感じることができないので、工夫を加えてみる気はないか」と聞いている。聞いている形をとりながら、実は、変えて欲しいと依頼しているのだけど。

イタリアで掲載したものは、穏やかなミヌスの形状や陽気な色彩とは裏腹に、ブラックユーモア的な題材が多かった。これについても編集者は、ブラックを否定するつもりはないが、これに限定してしまうと作品世界を最初から狭めてしまうのではないか、と危惧している。

これに対してヨーリは、ブラックに限るつもりはないと答えてきた。そして、形状に関して、うまい戦い方をした。ミヌスというキャラを復活させたいという希望が大きいので、堤さんの出す条件はすべて飲むつもりでいるけれど、まず戦ってからだ。

1)この単純な造形は抽象的でどんな背景、風景にも調和する
2)年齢がなく、大人にも子どもにもなれる。
3)わかりやすく、必要不可欠なものだけで成り立っており、慣れるのに時間がかかるかもしれないけれど最後には好きにならずにいられなくなる。

ヨーリの攻撃は大成功、「かいしんのいちげき!」だった。

担当編集者は、「この造形が完成度の高いことであることは認める。小さな丸い目と口に、時折眉毛が出てきて様々な表情をつくる技量も評価している、ついてはこの所見を尊重し、造形はこのままで行きましょう」という全面降伏に終わった。

ヨーリの喜びは言うまでもない。
「不思議な世界旅行」制作も着々と進んでいく。

【みどり】midorigo@mac.com

お小遣い稼ぎ大冒険は続く。ウェブライターの道を探していて、「ガジェット通信」でもウェブライターを募集しているのを見つけた。応募要項に「中年です。中年も人間です。」と、前に応募した時に不採用になった理由に年齢があるだろうと推測したので、逆にこれを武器にする自己紹介にした。翌日に、すぐに採用のお知らせが来て、逆にびっくりした。

12月1日に中部イタリアで起きた中国人経営の工場の火災について記事を書いた。でも、ガジェット通信が望むトーンや扱う記事内容が、今ひとつ把握しきれずにいる。

そして、10月終わりに高齢の姑が入院し、11月末に天に召されて、お見舞いやらお葬式やらでごちゃごちゃしていて、お小遣い稼ぎに時間を割けなかったせいもある。毎月末連載のはずの電子書籍も用意できなかった。

姑は91歳。高齢と27年前の脳溢血の後遺症がだんだん進行して、ここ数年は家の中では椅子に座ったまま、我が家に遊びに来るときは車いすの移動だった。頭もだんだん機能しなくなっていった。

医療が進んで、難しい病気から生還できても、現代医療はあくまでも肉体を重視していて患者の生活のレベル、人としてのレベルは考慮に入っていない気がする。体のあちこちの痛みに耐えつつ、何をするにも同居人に声をかけて手伝ってもらわねばならず、視力も落ちて、一日、ただ、生きているという感じで、自分が姑の立場だったらと考えると、生きていること自体が拷問に近いような気がして気の毒でならなかった。

麻生さんがだいぶ前に「さっさと殺して」みたいなことを言ってマスコミが問題にしていたけれど、麻生さんは自分がそうなったらと言っていたのであり、私も自分がそうなったら、さっさと召されてしまいたい。

「イタリアで新しい漫画を作る大冒険」
< http://p.booklog.jp/book/77255/read
>

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>


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■ところのほんとのところ[105]
ニューヨーク行き3つの目的

所 幸則 Tokoro Yukinori
< https://bn.dgcr.com/archives/20131219140200.html
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本当なら[ところ]は個展の準備で東京にいなければならなかったのですが、以前から親交のあった和楽器の奏者達がNYに行く時は[ところ]も同行すると約束していた関係もあり、ハードなスケジュールでしたが行くことになりました。渋谷での個展は11月25日からなのですが、NYから帰ってくるのは20日という、とんでもないスケジュールでした。

とりあえずプリントできる作品はすべてプリントして、マットの注文も出し、NYに旅立つ[ところ]でしたが、成田に着いた時にはもう個展のことが心配になり、というよりも荷物が重量オーバーじゃないかどうかで頭がいっぱいでした。やはり寒い時期の荷物は重くなりがちだし。

空港では2.4kgオーバーは見逃してくれて、日本はいい国だと胸をなで下ろして機内に。これがシャルルドゴール空港なら240ユーロの出費。16時に成田を出て、到着して飛行機を降り、NYのJFK空港を出たのが同じ日の15時という不思議な魔法。ハワイ辺りだともっと巻き戻されるんですけど。やっぱり不思議です。

ホテルに着き、とりあえずウエルカムディナーが待っているサリバンストリートのイタリアンレストランへ、NY時間の19時に集合。そこで全員が顔を合わせて食事。英語がさっぱり耳に入ってこなくて、やっぱりもう少し英語力が必要と痛感した[ところ]でした。

次の日は、さっそく午後からハーレム地区の再開発事業の一環だと思われる、NDIというダンススタジオ(?)でワークショップを見学&軽く撮影。そこに行く前にブライアントパークに寄ってしばらく撮影。これは「NY1セコンド」のシリーズとして。こういう時間があるから、わざわざNYにまでつき合って来ているわけです。

今回のNY行きは、長唄の奏者たちの大事な瞬間を記録すること、NYを撮ること、NYスタイルのステーキで美味しいと言われる店の中で唯一行けていないピータールーガーに行くこと、これが三大目的だったわけです。ブライアントパークではなかなかいいショットが撮れ、ハーレム地区の撮影も無事に終えて、すこしほっとした[ところ]です。

次の日は一日オフでしたが、あいにくの雨。撮影は今いちかなーと思っていたけれど、寒い時期のNY特有の、道路から立ち上る水蒸気に消える女性のカットが撮れてよかった。そして、今回友人になれたフランコのブルックリンの家に招待されて、美味しいコーヒーも飲めたし、満足の行く三日目でした。

四日目は、初日のイタリアンレストランに来ていた、コリオグラファーのジャクリーンの教えるスタジオに会いに行き、動きの優美さに見とれたのはもちろんでした。NYにあるダンススタジオの規模、こういった場所が数えきれない程あるという事実に驚きました。日本のバレエやダンススタジオの現状ってどうなんだろうって、なんとなく考えたりした[ところ]です。

ジャクリーンとは、またすぐに会って写真を撮ろうねと言って別れ、NYで一番という評判で期待しているNYスタイルのステーキハウス、ピータールーガーで食事。本当にわかりやすく一番でした(笑)。山のような肉の塊はあっというまに胃袋におさまり、まだ食べ足りないような気がする程でした。

そして、今回の旅のメインであるアジアンソサエティでのライブも無事終わり、次の日には帰路へ。ところが、帰ってみるととんでもないことが待ち受けていたのでした。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/
>


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■どうしたらできるかな?[step:13]
目標が出来た!

平山遵子
< https://bn.dgcr.com/archives/20131219140100.html
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残すところ残り7体のぬいぐるみ。とにかく他にもやりたいことはてんこ盛り。その後も出来ることからやろう! を念頭にマイナス思考を抑え込み、ぬいぐるみ制作に励みました。そうすると不思議なことに以前に比べ、あせる時間もなく作業に没頭出来ました。オーダーメイドノートを眺めると、以前よりもいろんなアイデアが浮んでくるのです。

「この子の工作のカラフルな色使い、青、赤、緑、黄色を取り入れ、カブトムシのキャラクターのぬいぐるみを作ってあげよう」

「この子は音が好きなのかな? ぬいぐるみの中に鈴を入れ縫い込んで、赤ちゃんのガラガラみたいに、振ると音が鳴るようにしよう。音符をキャラクターにしたぬいぐるみを作ってあげよう」

「この子はウサギ顔の絵を沢山描いている。まだ小さいし上手く胴体を描けなかったのか? あ、そうだ、この子のウサギの絵をキャラクター化してぬいぐるみにしてあげたら喜ぶのでは」

そんなこんなで、とにかくぬいぐるみ制作に没頭した8月が過ぎました。気が付くと、9月上旬に残り7体のぬいぐるみが全部完成したのです。自分でもとても不思議でした。

さらに不思議なことに、自分では言われるまで気付きませんでしたが、裁縫の達人である母親からこう言われました。

「一番最初に作ったぬいぐるみを持ってきてみなさい。そして、ここに並んでいる子供たちのために作ったぬいぐるみ14体と見比べてみなさい。何かに気付くわよ」

「えっ!?」と思いながら、私は一番最初に作ったぬいぐるみと、子供たちの
ために必死で作った(卒業制作という理由もありますが)ぬいぐるみを見比べ
てみました。

「あれっ? 一番最初に作ったぬいぐるみがとても雑で、しょぼく見える」
「そうね、他には何か気付かない? 明らかに上達しているわよ。やれば出来るじゃない!」
「あ、確かに縫い目が違う! 今の方が断然きれいで仕事が丁寧になっている」
「あら、自分で気付かなかったの? う〜ん、継続は力なりね。もっと上手くなりたかったらとにかく続けなさいね。ふふふっ」

ぬいぐるみを作る! 誰かのためにぬいぐるみを作る! と言い出した私。裁縫の出来ない、やったことのないあなたには続かないわよ。卒業制作は他のことでもすれば、といった母。そんな母に褒められて、とても嬉しかったことは今でも忘れられません。

話は飛びますが、この出来事があったからこそ私は、今も時間を見つけては縫い物をしたり、ぬいぐるみや小物を作ったりしています。卒業制作展では見に来てくれた来場者の方や友人から「縫い目がきれい! これ手縫いですか?」「手作りの温かみを感じて素敵!」など嬉しい感想や励ましの言葉をいただき、私自身一つの目標ができたからです。

その目標とは「私にしか縫えない縫い目。私にしか縫えないぬいぐるみ。」

なんだか凄いことをいっているな! と自分でも思ってしまいますが、これが私の目標です。これからもこのことを忘れずにお婆さんなるまで、手が動く限りぬいぐるみを作り続けようと本気で思いました。

話を戻すと……。オーダーメイドのぬいぐるみが完成して、ひとまずほっとしたいところですが、自分が書き出した「やりたいことリスト」を見直してみると、まだまだ課題が残っています。

(1)ホームページの制作
⇒「公開、稼動開始は11月末日したいな。ということは10月くらいからホームページの企画デザイン、データ作成を始めたい。あと、サーバーとドメインの手配もしなきゃ」

(2)グッズのパッケージを作る
⇒「これは最悪1月からスタートすれば何とかなるな!」

(3)オーダーメイドのぬいぐるみ制作
⇒「ホームページの事を考えると10月末日までには終わらせたい!」(終了!)

(4)卒業制作最終審査会の準備
⇒「発表会は12月頭だから、提出物や発表データを作成に4日から1週間は取り
たい」

(5)オーダーメイドのぬいぐるみの広告を作りたい
⇒「実際に作ったぬいぐるみを先行して一人のお子さんに渡して、感想を聞き、お子さんが遊んでいる実際の風景を撮影したい。これはホームページのことを考えて10月中に実行したい」

あ、まだやりたいことが4つもある。優先順位的には(5)→(1)→(4)→(2)。(5)はよいとしても……。うげっ! (1)はホームページ制作……。Web……。「私まともなホームページ作ったことがないし、ど〜しよう!」

まったく……先程までの意気込みはどこへいってしまったのでしょうか? ホームページという言葉に苦手意識がふつふつと湧き出してきたのです。

【平山遵子・ひらやまじゅんこ】
J★(Junko allstars)〜思い出を形に未来につなぐハンドメイド〜
< http://www.j-allstars.com/
>
夢は「世界一楽しいぬいぐるみ」を作る!


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編集後記(12/19)

●藤原正彦「管見妄語 グローバル化の憂鬱」を読む(新潮社、2013)。週刊新潮の連載コラムをまとめたもので、真の教育改革ほど難しいものはない、グローバル化の憂鬱、誰が市場原理主義をまき散らしたか、世事はすべて灰色なのだ、日本人に生まれた宿命、という五章52編が収録されている。ユーモラスで単刀直入で、いちいち納得させられるコラムを読むと、ますます文部科学大臣になっていただきたいお方という確信が深まる。一番共感を呼ぶのは、苦渋に満ちた(と強調する)30余年の結婚生活の大げさなボヤキであるけど。

世事一般は無彩色である。黒と白だけではない。灰色がある。黒白は数学のみだ。と数学者は書く。声高らかに「平和」や「戦争反対」を唱える人々がいる。彼らは、これを唱えない人を邪悪な軍国主義者のようにみなし、自分たちを気高い人々と悦にいっている。これは「黒白幻想」という。だが、そう唱えないからといって平和が嫌いとはならないし、戦争賛成ともならない。人類すべてが戦争を嫌い平和を望んでいる。だから「平和」とか「戦争反対」を叫ぶことは、「1+1=2」と絶叫しているようなもので、「完全に正しいが無価値のもの」だ。嗚呼、快哉を叫んじゃうね。

「黒白幻想」は原発でも繰り返されている。反原発、脱原発とかしましいが、そう言わない人は原発が好きとはならない。わたしはかつて反原発だった。無知だったから。3.11以来、反・反原発になった。少しは勉強したから。数学者は「即時全面撤廃」を黒とする。対するのは白ではない。

それは「代替エネルギーの目処がつくまで、原発の安全性を飛躍的に高めつつ、新エネルギーや安全な廃棄法の研究を加速させ、新たなガス田などの鉱脈の探査などに全力を傾ける」という灰色である。「国家予算をこれらの研究や探査に今後どれだけ傾注するかだけが論点なのだ」。その進展によって、何年後かに全廃が達せられる。即全廃というヒステリーは論外である。「黒白幻想は本質をぼかし正解へたどり着く時間をいたずらに遅らせる」。まことに数学者らしい指摘だ。

ところで、「原発は即ゼロがいい」という発言を繰り返して、いらざる火種を煽り立てていた小泉元首相だったが、さいきん動静が聞こえて来ない。このまま静かにしていてもらうのが日本のためだと思う。原発ゼロならぬ科学的視点ゼロの感性のみの発言で、他の人が言ったら非難ゴーゴーのはずだが、なぜかいまだに大衆的人気があるところが厄介で、小泉発言支持が朝日の世論調査で60%超。何度騙されれば気がつくんだ、バカな大衆は。あろうことか、都知事候補になんて声まで。頼むから、もう黙って静かに老後を送ってくれ。安倍昭恵、まだ法的には老人じゃないけど、お前もな。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103274107/dgcrcom-22/
>
藤原正彦「管見妄語 グローバル化の憂鬱」


●iPhone 5sに変更。更新期間中にMNPしなければとバタバタ。4年使っていたソフトバンクからauへ。ドコモと比較検討していて、決定打となったのはスマートバリュー。光電話と固定通信サービスを利用していたら、一台につき980円+500円(2年間)の当初月額1,480円の割引があるとのこと。該当サービスを利用していたので使わない手はない。auひかりユーザだけのサービスだと思ってたら、地元ケーブルテレビなど提携回線は約130あったわ。

MNPした理由は、通話品質。1時間ぐらい電話で打ち合わせをすることはザラ。なるべく固定からかけてはいるが、あちらからだと携帯にかかることは多い。大事な話をしている時に、毎回通話が切れてかけ直すことになる。固定電話との通話でも切れるため、どう考えてもこちらの問題。アンテナは常時5本立っていて繋がりやすいとは思うのだけれど、切れやすいとも思う。

奈良に住むソフトバンクユーザーの友人は、きれいに聞こえるよ〜と言っていた。うちは近所に高層建物がいくつかあって、GPSも迷うような場所。ランニングアプリでは、近所で場所が取れないみたいで、いくつかの場所に瞬間ワープする。地図アプリでも現在地が近所の別の建物になる。ソフトバンクにも通話品質向上の希望は出していたけれど、地図上ではプラチナバンド化しているのに切れるし、ホームアンテナを設置するとしても設置したところだけ品質が良くてもなぁと。続く。(hammer.mule)

< http://www.au.kddi.com/mobile/charge/list/smartvalue/catv/#anc_service
>
固定通信サービス一覧